スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第26章 南禅寺(前編)

『これはローマ建築を真似たものですか?』


 学生時代、私は学費を稼ぐためにいろいろなアルバイトをやったが、その一つとして、
有名な某カニ料理レストランで働いた事がある。
外国人観光客の多い店だったが、英語とスペイン語が話せた私は結構重宝がられたものだった。
国籍を問わず、とにかく外国人の客が店に入ると、必ず私にお呼びがかかった。
メニューの説明をして注文を取るためだ。

 ある時、ドイツ人の老夫婦が食事にやって来た。
私はドイツ語は話せなかったが、スペイン人の家政婦を雇った経験があった彼らは、
かなりスペイン語を解する事が出来た。
話をするうちに彼らと仲良くなった私は、翌日、京都の町を案内してあげる約束をした。
ガイドの仕事でいつも案内していた金閣寺や二条城、京都御所などはお手の物だったが、
その他の場所となると、さっぱり勉強不足だった。

すでにそれらのメインスポットを見学した後であった彼らは、南禅寺を見たいと私に告げた。
一度もこの寺について勉強をした事がなかった私は、特に説明する事は出来ないが、
通訳として同行するだけでも助かるだろうと思い、一日、彼らに付き合う事にした。

 初めて訪れる南禅寺の大門に私自身も感銘を受け、こんな事でもなければ自分だけで
この寺を訪れる事は無かったかもしれない、などと考えているところへ、老夫婦が私に
質問を投げかけた。

 「これはローマ建築を真似たものですか?」

彼らが指差す方向を見ると、そこには何やら大きな橋のようなものがあった。
当時の私には恥かしながらそれが一体何なのかさっぱり判らず、ただ首を傾けるだけだった。

すると、彼らが言った。

 「これはおそらく水道橋で、ローマ建築を参考にして作られたものだと思う。とっても似てるよ。」

ローマ、、、
何やら昔、世界史で習ったような名前だが、はて、どこか昔の国名だったか、
民族名だったか、或いは町の名前だったろうか、、、


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