スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第29章 チンチョン(後編)

『異文化に対する敬意』


 第2次世界大戦が終わったあと、日本におけるアメリカの影響があらゆる面で
強く感じ取れるのは確かである。
その時代に生きた人々にはそれなりの言い分もあるだろうし、その影響を強く受けた事自体、
特に悪い事だとも思わない。
しかし、この男性と同じような認識を持っている人が、ずっと若い世代にも非常に多い事に
驚かされる。

英語が世界共通語だとは、はて、一体何時誰が決めたのだろうか? 
少なくとも私が日本に住んでいた頃は、そんな事を聞いたことが無いのだが。

 「スペインって英語が通じますか?」

この質問も、今まで何度受けた事だろう。
ごく普通の質問だとは思うが、私は英語が世界共通語だと思っている方々に尋ねてみたい。

 「日本って英語が通じますか?」

 「道標や看板に何故、英語表記が無いのですか?」

私は生まれも育ちも、日本では最も観光地として知られる京都の人間だが、京都の街中でも
英語表記されているものなど、ほんの一部でしか無い。

まぁ、日本の事はさておいて、もしも、英語が世界共通語だと思っている方がおられれば、
一度、スペインにお越し頂きたい。フランスにお越し頂きたい。イタリアにお越し頂きたい。
英語は、主に英国、アメリカ合衆国、オーストラリアなど英語圏の国々で話される言語であり、
その他の国々では全く違った言語を話しているのである。
当たり前の事だと思うのだが、これを本当に理解していない日本人は残念ながら予想外に多い。

英語ぐらい勉強しているのでは、と考えるその根拠は一体何なのであろうか?
話す人口から言えば、中国語、ヒンズー語に適う言語は無いであろうし、話す国の数からすれば
スペイン語にかなう言語は無かろう。
中南米へ行けば、一部を除いてことごとくスペイン語であり、アフリカ大陸へ行けば、
たくさんの言語が混在するなか、より通じる外国語と言えば、フランス語、スペイン語、
ポルトガル語、そして英語である。
アジアにはそれぞれの言葉が存在し、ロシアにはまた独自の言葉がある。
英語は?

 戦後、アメリカの影響を受け、英語の勉強をするのも善し、洋服なる文化を取り入れたのも結構。
親アメリカ的政策をとる事の是非についても全日本国民の政治討論に任せるが、
先に述べたおおまかな言語文化の分布は今の日本で施されている通常の義務教育を
受けている人であれば、当然ご存知のはずである。
それだけの教育を受けられる国に生まれ育ったのであれば、世界には様々な民族や文化が
存在し、さまざまな言語が存在するぐらいの事は、理解、把握しておくべきであろうし、
また、どこの文化もただただ外国文化、そして、それイコール、アメリカ文化、或いは英語の文化
と言う極めて不思議な認識を持ち、更にはそれを恥ずかしげもなく、異国で口にすると言う事が、
どれだけそれら個々の文化に対する敬意の念を欠いているかと言う事を再認識する必要が
あるのではなかろうか。
中国は中国であり、日本ではない。韓国も韓国であって、中国ではない。
それぞれの民族や国は、それぞれの独自の文化を持ち、皆がそれに誇りを持っているので
あるから、日本と言う境界を越えて、異国へ足を踏み出すのであれば、最低限、これらの認識を
持って出かける必要があると思う。

スペインでは、スペイン語が話されているのだ。
国内の地域による文化と言語のバリエーションはあるが、決して、英語と言う言語文化圏では無い。

外国語を学ぶ時、言葉だけを勉強するのではなく、異文化を持つ人々との礼を欠く事の無い
接し方をも同時に学びたいものである。


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