スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第33章 脱・違法労働 捨て身の忍耐勝負(第一部)

『偽の雇用契約』


 労働許可証を取得するのが極めて困難になり始めた時期にたまたま重なったのは、
それこそ私にとって、「運が悪かった」としか言い様があるまい。
そう、私はそう言う意味では、決して誰かが言ったように「運が良かった」のでは無い。

スペインの観光通訳・ガイド業と言うのは、100%と言って良いほど、一人一人が
自営業として行なっているもので、ツアー会社と雇用契約を交わし、社員として
行なっている者はいない。
つまり、仕事のある時にだけお呼びがかかる日雇い労働者であって、固定給も無ければ、
退職金も無い。
よって、この仕事を合法的に行なうためには、自営業用労働許可証を取得する必要がある。

私を含め、早急に自らの立場を合法化しなければならない仲間数人が集まって、
無い知恵を絞り、また弁護士にも相談した。
私に対し、「お前はただ運良く、許可証をもらえただけじゃないか!」とののしった方は、
本当にそうであったか、また、労働許可証を得るために、それだけの事を
他人に言えるだけの努力をされたのかどうか、ここから先にお話する事を
良く読んで頂きたい。
また、スペイン語を学び、スペインに住みたいと言う漠然とした夢を持つ方についても、
ここからのお話は、よく覚えておいて欲しい。

 弁護士と相談した結果、現状では、最初から自営業用の許可証を得るのは
不可能であろうとの判断で、まずはどのような形であるにせよ、合法化するのが
先決であると言う結論に至った。


第一段階:雇用主を見つけ、偽りでも良いので雇用契約書にサインしてもらうこと。

これはそれぞれが最も付き合いの深かった旅行会社に頼んでクリアする事が出来た。
勿論、通常なら雇用主は月給を支払うだけでなく、月々の社会保険料も
負担しなければならないが、偽りの契約書にサインしてくれたからと言って、
月給や社会保険代を支払ってくれるはずも無い。
給料は請求しないこと、そして、毎月の社会保険・会社負担分は現金で各自が持参する事、
これが条件となった。
これにより弁護士を通じて労働許可証申請手続きを終え、全員が無事、第一関門を突破。
サラリーマンとしての労働許可証を手に入れ、これにて仮に空港での仕事中、
身分証明証の提示を求められても、違法労働とは見なされないまでに持ち込めた。
がしかし、言うまでも無く、この形での更新は出来ない。
なぜならば、サインをしてくれた旅行社にしても、書類の偽造と言う罪を犯している訳で、
この様な状態を持続する事は不可能であった。
そして、文字通り追われるようにして次ぎのステップへ移らねばならなかった。
本来、最初に受け取る労働許可証と言うのは、1年間の有効期限があるはずなのだが、
スペインと言うお国柄、全ての手続きが超スローペースで行なわれるため、
実際に許可証が手元に届いた時には、1年間の有効期限が切れる1ヶ月程度前と言う、
信じがたい現実があった。
つまり、受け取るなり、次なる手段を考えねばならなかった訳である。


第2段階:雇用者用労働許可証をベースにし、これを更新するのではなく、
自営業用労働許可証への変更申請を行なう。

再び弁護士を通じ、この変更申請を行なった。
その結果、全員、見事に却下される。

これで、諦める気など誰にも無かった。次なる手段を講じるのみである。

先方の判決に対し、異議申し立てを行なう訳だが、今度は少し工夫を凝らしてみる。
日本人でなければ出来ない仕事であると言うニュアンスを持たせての申請を行なう。
簡単に言えば、日本語を話せるスペイン人ガイドの数は極端に少なかったので、
日本人のガイドがこの国には必要であると言う旨、アピールすれば良いのだが、
困った事に、この国では、正規ガイドになるためには、試験を受け、ライセンスを取得する
必要があり、その最低限必要な条件が、「スペイン国籍を有するもの」であった。
つまり、我々外国人がどれだけ勉強して試験にうかっても、ガイドのライセンスを
得ることは不可能であり、この問題がある以上、「日本人ガイド」と言う職種での
労働許可申請そのものが有り得ない事が判明した。

そこで第3段階へ突入である。


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