スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第33章 脱・違法労働 捨て身の忍耐勝負(第三部)

『さらば難民生活』


はて、次ぎは何段階だったか? 

尋常ならぬ執着と言おうか、ガッツと言おうか、一体、何が我々をここまでやらせたか。
あまりにも長い道のりで、これを書いていて自分でも驚いてしまう。

読み返してみると、次ぎは第5段階らしい。

 ついに手にした難民手帳は1年間しか有効期間が無く、また、期限が切れた時に、
更新が可能なのか、或いは、「はいそれまでよ」と、よくぞ自ら出頭してくれたとばかりに、
さっさと国外退去を命じられるのか、誰にも判らなかった。
恐らく、スペイン政府も、この法令を発した時点では、適用した人々の1年後の扱い方を
決めていなかったのだと思う。
そして、有効期限が迫ってきた。
周囲の状況は?

誰もが更新申請を試みた。勿論、我々も同じである。
結果、また1年間有効の難民手帳を渡された。 とりあえずはひと安心である。

また1年間、と言っても、手にした時にはあと数ヶ月しか有効期限が残っていない
のであるが、とにかくスペインにいられる訳だ。
そう、この第5段階は、ただただ、いつ追い出されるのかと言う不安と一緒に
難民としての生活を続ける事だった。


2度目の更新の時期がやって来た。
今回も前回同様に、新しい手帳を渡された。
相変わらず移民局発行の難民手帳である。
そして、不安な生活を続ける中、3度目の更新の時期が訪れ、新しい手帳を受け取った時、
大きな驚きと喜びがそこにはあった。
一見、似たような手帳だが、そこには、移民局ではなく、スペイン政府内務省のマークが
入っていた。
それは難民手帳ではなく、紛れも無い自営業用の滞在・労働許可証だったのだ!

一緒に頑張って来た仲間が皆、どれだけ喜んだか、想像頂けるであろうか?

正確な年月は今となっては思い出すのが困難だが、恐らく、この戦いを始めてから、
6、7年の歳月が流れた事と思う。
その間、いつ追い出されるかもしれないと言う不安を抱きながら、何度、駄目と言われても
諦めず、頑張り続けてきた結果、ついに勝ち取ったのである。

このあと、私の許可証は、1年の有効期限であったものが、2年になり、そして何回かの
更新を繰り返すうちに、最長の5年となった。
これはスペイン人が持つ身分証明証と同じ有効期限であり、また、5年ごとに手続きを
せねばならないだけで、権利としては、ペルマネンテ(無期限)と記されるようになった。
後に、このペルマネンテと言うカテゴリーが姿を消し、ラルガ・ドゥラシオン(長期)と言う
微妙な表現に変わるのだが。


「自分がスペインで住むための許可証を持っているからと言って、調子に乗るなよ!
世の中には、スペインに住みたいと思っても許可証を入手出来ないがために
住めない人だっているんだ。
お前はただ運良く、許可証をもらえただけじゃないか!」


この発言をした方が、どれだけ自分なりの戦いを挑まれたのか、私には知る由も無い。
ただ、私も、「運良くもらった」とは、今でも思っていないし、これから私のように海外での
生活をしてみたいと夢見ている方々には、「多少の事でくじけるな!」と言う励ましの
言葉を送りつつ、長かったこのテーマを終りにしようと思う。


目次へ

トップページへ戻る

無断転載、お断り致します