スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第37章 マドリッドのくま誕生(前編)

『掲示板』


 毎日更新による現地発信サイト、「スペインなんでも情報リアルタイム!」公開開始後、
しばらくしてから、一方的にこちらから情報を提供するだけではなく、読者の側から
自由に質問が出来るようにと、掲示板を設置した。
最初、誰もメッセージを残す人はいなかったが、ここでも、徐々に訪問者が姿を現し始めた。
スペインへの旅行を間近に控えた方が、観光情報やお天気情報、治安情報などについて
質問してきた。
私はこれらの質問に対して、精一杯、親身になって答えた。
唯一気をつけていた事は、偏りが無く、ビジネス色の無い、安全で正確な答えを返す事。

インターネットと言う相手の顔が見えない媒体を通じた信用ならない危険な情報は
すでに満ち溢れつつあった。
そんな中で、誰もが安心して相談出来るサイト、どんなにデタラメな情報が氾濫していても、
誰もがここに来れば疑問をぬぐいさる事が出来、真実を確認する事が出来るような
そんなサイトに育てたかったのだ。

インターネットが生まれるまで、世間の情報を牛耳っていたのはテレビ、ラジオ、新聞、
雑誌である。
例えスペインの事情を全く知らなくても、これらのマスコミを使って報道すると、
あたかもそれが正しいスペイン像であるかのごとく、世間では受け入れられてしまう。
これらマスコミが報道する情報の中に大変な頻度で過ちや誤解が含まれている事を、
一般視聴者は知る由も無いのである。

そして、今、インターネットと言う全く新しい報道メディアとも言える媒体が広まりつつ
ある訳だが、やがて、経済力のある企業が、今までの報道媒体と同様に
この世界でも幅を利かせるようになり、またしても、過ちや自社に都合の良い記事だけを
掲載し、操るようになるであろうと言う予想を立てるのはそう難しい事ではなかった。
ならば、これら財力とブランドからなる社会的影響力を武器に、スペインに関する
好き勝手な情報を流し、自らの利益だけを求めるようなサイトが横行する前に、
我々在住者が、あらゆる嘘や作為的な情報操作からこの国を守れるような、
絶対的な信頼と影響力を持った基盤を作り上げておく必要があるのではなかろうか? 
私はそう考えて、自分が好きで住むこの国を、悪質な営利活動の食い物にされないための
「お目付け役」としてのホームページを育てていく決意をした。

例えどこかの企業が商売目的で、無責任に何かの商品を売りつけようとしても、
それが現地在住の我々の目から見た時に危険な商品であると判断されるような場合、
我々のサイトではダイレクトにその危険性を伝えるのである。

現地事情を知らない日本人にとって、例えば危険な場所にあるから利用しない方が良いホテル、
立ち入らない方が良い地域、利用しない方が良い交通手段はたくさんある。
しかしそれらの情報に精通したスタッフが書いた新聞記事も無ければ、雑誌も無ければ、
テレビ番組も皆無と言って良かった。
勿論、インターネット上の情報にも同じ事が言える訳である。

逆に、それらの危険な情報について、一切調査をしようともせず、ただ商品として
他人に売りつけるための情報はあらゆるマスメディアの中で氾濫しているのである。
少なくとも、これらの無責任なビジネスにスペインを食い物にされる事、そして
それによる被害者が増える事だけは防ぎたかった。
そのためには、スペインに関する質問をしてきた読者に対して、ただただ親身になった
アドバイスを返すだけ。
毎日、毎日これを続ける事によってのみ、社会的に名も無い1個人が運営する
ホームページがそれだけの信頼をも勝ち得る事が出来るのだと思った。
心から接していれば、きっとそれが伝わるはずである。
そう信じて、明けても暮れても私は掲示板読者からの質問に答えつづけた。
私が住むスペインの首都マドリッドの紋章である動物、熊にあやかって、
「マドリッドのくま」と言うハンドルネームで。


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