スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第37章 マドリッドのくま誕生(後編)

『スペイン仲間の輪』


 運営を始めて間もない頃は、一日に数件の問い合わせに答えていれば良かったのだが、
1日のアクセス数が200件、300件、と増えつづけ、ついに1000件を越す頃には、
もはや掲示板での対応は、大変な業務と化していた。
何十件と届く質問に対して、可能な限り正確で的確と思われる答えを書くためには、
毎日5、6時間を要した。
これはもう、大変な労働であり負担である。

当然、私には自分の生計をたてるため通訳ガイドと言う仕事があるわけで、まさか毎日、
全ての時間をこの掲示板書きに充てるわけにはいかなかった。
それでも、せっかくこの掲示板にヘルプを求めてきた人々を放っておくわけにもいかず、
毎日夜中までかかって、返事を書きつづけたのだ。
時には、へとへとに疲れている事もあり、そんな時にはついつい感情的な答えを
返してしまう事もあったが、これはもう個人の限界としてお許し戴きたい。

そんな私の返答ぶりを毎日見守ってくれる読者も沢山あった。
私が通訳ガイドの仕事で何日か出張に出ると、常連となった読者の方々が、
私の代わりに、掲示板に残された質問に対して、私と同じポリシーを守りながら
可能な限り安全で的確なアドバイスを書き込んでくれたのである。

ここに、間違いなくスペインと言う共通のものを媒体とした一つの理想的な共同体が
出来上がりつつあった。
世界中のいろいろな国々に住む日本人が、インターネットを通じて、スペインと言う
共通のテーマに集まり、そこで素晴らしい交流が行われていたのである。

皆、興味の対象や思い入れに差異はあっても、スペインに愛着を持つ仲間である。

ここまで達成すれば、もはや、仮に社会的に知名度の高い大手企業や、影響力を持つ
著名人が、スペインについてどんな発言をしようが、どのような無責任な商売を試みようが、
その試みはスペインファンが持つネットワークの中では、成功する事はない。
少なくとも、かなりの人数がそのような情報操作や無責任なビジネスの被害にあわずに
すむだろう。
インターネットにおける「お目付け役」の効果がはっきりと現れ始めたのである。
スペインを使って商売しようと考える全ての企業が、適当に自社に都合の良い情報を
流したり、無責任な商売をしようとする時、在住者とスペインファンによる現地発信の
このサイトからその不当性を指摘されるかもしれないと言う、ちょっとした恐怖感のような
ものが存在すれば、それで、このサイトの存在意義は充分にあるのである。
このスペインファンの強いネットワークが出来上がり始めるのを見て私は幸せだった。
そう、スペインはビジネスの道具ではないのである。


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