スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第47章 定住計画 (第二部)

『積み上げた実績』


 そこで気づいたのが、自分の事を一番良く知ってくれている銀行の支店とまだ話を
していなかったことだ。

説明を加えると、私がスペインで最初に普通預金口座を開いた銀行はカハ・デ・マドリッドと言う
信用金庫のような金融機関だったが、バジャドリからマドリッドへ引っ越して来て以来、市内で
何度か引越しを繰り返すうちに、長らく付き合いがあった支店からは離れたエリアに住むように
なっていた。
カハ・デ・マドリッドはその名前の示すとおり、マドリッドに拠点を持つ金融機関であるため、
マドリッド市内にはあちらこちらにその支店を持っており、どこへ引っ越しても近くに支店があって、
お金の預け入れ、引き出しに不自由する事は無かった。
よって、引っ越す度に新しい支店を利用するようになったが、口座そのものの引越しは
一度も行わず、ずっと最初の支店に置いたままだったのだ。
つまり、引っ越すごとに新しい住居の最寄の支店と付き合っていたため、各支店との付き合いは
浅いものだったが、最初に口座を開いた支店にずっと口座を維持していたため、
その支店については、口座所有歴と言う意味では、それなりに長いものとなりつつあった。

そこで、長い間ご無沙汰だったその支店へ足を運んでみた。
幸い、この時代、同じ銀行内での人事異動はあまり行われていなかったため、口座を開き、
その付近に住んでいた頃と同じスタッフが何人も残っていた。
今なら、こうは行かないと思う。
支店長他、スタッフと地元民との余計な癒着を防ぐため、頻繁に人事異動を行う銀行が
増えているからだ。

 久しぶりに訪れたその支店では、私の顔を覚えていてくれたスタッフが何人かいた。
お互いに、「元気だったか?」 と言ったありきたりの挨拶が終わったあと、私はここを訪れた
訳を話した。
すると、すぐに支店長室へ通され、こちらの話を聴いてくれた。
そして、支店長はにっこり笑って私への融資を約束してくれたのだ。

この支店に口座を開いてから、6,7年だったろうか、、、

僅かな預金から始まった普通預金通帳だったが、この時、私の預金額はおそらく
200万円ぐらいに達していたと思う。
一文無しに近い状態から、200万円まで預金を築き上げたとは言え、正式な雇用契約も
持っていなければ固定給も無い日雇い労働者であった一外国人に、この支店長はあっさりと
OKをくれた。
どうやら、単身乗り込み、親兄弟、親戚のコネなど全く無いこの国でも、10年近く暮らす内に、
自分でも気付かぬうちに自分自身で作り上げてきた実績と信頼が形になり始めていたようだ。
そう、この支店から離れて住んでいたために、同じ銀行の別の支店と交渉をしてしまったが、
私と言う「人」を何年も前から知っていてくれていたのはこの支店の人達だったのである。

コツコツと貯めてきた僅かな預金であったが、水道光熱費自動引き落としの滞納も無く、
堅実に預金を増やしてきたその実績を彼等が認めてくれ、そして信用してくれたことが
本当に嬉しかった。

かくして、お金の目処がたった私は、見つけてあった物件の売買契約に臨んだ。


目次へ

トップページへ戻る

無断転載、お断り致します