スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第48章 ローン返済の対策「前編」

『日本民族の不思議な一面』


 公定歩合の変動に伴って変化する変動制年利14.5%と言う、当時の日本では
考えられないような高金利にて、ようやく手に入れた住宅ローンであったが、
固定給も正社員契約も持たない私にとって、このローン契約は、大きな精神的な
負担となっていた。
日雇い労働者としての通訳ガイド業による収入が、いかに不安定なものであるか
と言う事は、1990年に湾岸戦争が勃発した時に嫌と言うほど思い知らされていたのだ。

日本人民族には、一つの不思議な特徴がある。
それは、世界と言うものを、「日本」と「海外」と言うたった二つのエリアに区切って考える
傾向があると言うところだ。

イラクによるクエート侵攻によりペルシャ湾岸が戦場となると、日本人の安全意識が
どういう反応を示すかと言うと、『日本は平和だが、「海外」は戦争中で危ない』と言う
捉え方をするように思える。
つまり、「ペルシャ湾近辺が危ない」と言う解釈をするのでは無く、「日本以外の全ての
国は危ない」と言う感覚が広がり、その延長上で、「海外旅行は控える」と言う判断に
走る傾向が見られる。

 カナダで新型肺炎サーズが流行ると、日本は安全だが、「海外」、つまり、「日本以外の
全ての国」は危ないと言う考え方に走る。

 A型インフルエンザがアメリカで流行った時にも、全く同じ傾向が見られた。
日本だけは安全で、その他の全ての国を危険視し、更には感染国と呼んで
政府レベルで差別化を始めたことはまだ記憶に新しい事である。
その後、すぐに日本も感染国の仲間入りをすると、今度は、日本を感染国と呼び、
その他の国々については蔓延国と、その呼称を変えたのに気づいた方もおられたのでは
無かろうか。

とにかく、どこかの国で何か問題が起きると、異常とも思える過剰反応を示し、
日本鎖国体制に入る特徴が見受けられる。
そうなると、驚くべき事に、アメリカが販売するタミフル薬は巨額の国費を費やしてでも
購入するが、世界保健機構が発表する新型ウィルスの特徴とそれに対する対応策
については、ろくに耳を貸そうともしない。
世界保健機構は、A型インフルエンザについて、従来のウィルスよりも死亡率が低い事、
感染した場合でも、家庭療養で治るという事を早期から発表していたが、日本政府を含め、
日本の社会全体としては、これをほとんど無視しつづけ、経済的には多額のタミフル代の
浪費を生み、更には、「海外渡航=悪」とも言える社会的雰囲気を作り上げてしまった。

私にはこれら全てが、とても不思議な反応に思えてならない。

日本人ほど、高レベルの教育を受けている民族が、世界保健機構の発表に耳を貸さず、
ほとんど情報を持ってもいない日本政府の取る、どこから見てもおかしな対応と、
その結果出来上がったこれまたおかしな社会的風潮だけに流された行動パターンを
取ると言うのが、理解に苦しむところである。

その必要性も、また、効果も疑わしいタミフル薬に多額の国費を費やし、騒ぎ立て、
海外渡航を控えよと言う風潮が出来上がった事により、いったいどれだけの人々が、
楽しみにしていた海外旅行をふいにされたことか。
大学卒業の時期を控え、就職が確定していた学生達の中には、社会人になる前に、
最後の長期海外旅行を計画していた人も多かったであろうに、その人達の多くが、
内定をもらった会社から、まだ正式には社員になってもいないのに、海外旅行禁止通達が
あったことは明らかな事実で、今、思い出しても卒業旅行を断念した彼等が気の毒で
ならない。

ちなみに、この頃、スペイン政府もタミフルを大量に輸入したが、それは政治家の
独断でやったことで、医療関係者のほとんどが彼等自身へのタミフル接種を
無意味だと判断して拒否した。
また、騒動が治まったあと、その大量に輸入されたタミフルが全て無駄になった事は
言うまでも無い。
ところで、日本政府は無駄になったタミフルをどう処理したのだろうか?

 話が随分と反れてしまったが、こう言った、私には不思議にも思える日本人の民族性が
見られる事もあって、日本人相手の海外旅行業と言うものは、いつどのような些細な事が
原因となって途絶えてしまうか判らないものなのである。
湾岸戦争の時を例にあげると、スペインの治安状況には何等無縁の事件であったにも
関わらず、日本からの旅行者は実に90%ダウンとなった。
そのような経験があったため、初めての住宅ローンを組む時、これら大きな
社会的事件については仕方ないにせよ、せめて自分が病気になったり、怪我を
したりした時のための収入保証と言うものだけは対策を立てておく必要があると思った。


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