スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第54章 日本遠征 プロジェクトJ(第三部)

『スペインの引力』


  日本遠征プログラム、プロジェクトJは、約2週間の日本滞在を持って行われる事と
なった。
その活動内容は、日本とEUの両政府によって企画された「文化交流年」における
公式イベントの一つとして登録された。

大まかな流れとしては、日本文化に興味のあるスペイン人5名を伴って私も日本へ行き、
2週間の滞在期間の内、前半を関東で、後半を関西で過ごし、その間、スペ飲会の
メンバーを中心に、掲示板仲間の誰かが毎日の文化活動を企画・コーディネート
してくれると言うものだった。

長年スペインに住む私は、日本の諸事情も判らなければ、情報にも疎いため、
日本における活動の全てを、日本在住のスペイン仲間に委ねることにした。
私の役割は、日本に滞在する2週間、スペイン人達に同行して、言葉と文化の通訳を行う事。
彼らが初めて訪れる日本で快適に過ごせるように、そして日本文化を正確に理解出来るよう
手助けをする事だった。

かくして、日本に住む仲間達と緻密な連絡を取りながら、プロジェクトJは、その毎日の
詳細にわたる予定が組まれていった。

東京近辺や京都近辺の主な観光地への文化遠足は勿論、毎日の食事に至るまで、
全てその担当者が決められ、それぞれが必要に応じて下見を繰り返し、手落ちの無い
見事なコーディネートを実現してくれた。

通常の観光地訪問だけではなく、書道や茶道教室など、日本人である私にとっても
興味深い活動を盛り込んだプログラムを用意してくれた。

ホテルや温泉旅館だけでなく、日本の一般家庭と言うものを見せるために、個人宅での
歓迎を惜しまない方もあった。

皆が、スペインと言う一つの引力に引かれて、そして惹かれ、まるで何か巨大な
エネルギーに導かれるかの如く、心が一体となって動いていたように思える。

2週間の日本滞在中、延べ人数にして日本全国からスペインファンが200名集まった
大イベントとして、大成功に終わったプロジェクトJ。

唯一、残念だったのは、スペインから参加するはずであった5名の内、3名が親族であったが、
スペイン出発直前に彼らの身内にご不幸があり、彼ら3名が文字通りドタキャンと
なってしまった事だろうか。

今振り返っても、何があそこまで我々を押したのか不思議な気がするが、何が原因であれ、
集まって下さった方々のおかげで、スペインファンの歴史として、SNJの歴史として、
そして私の人生の想い出として、素晴らしい活動が実現出来たと思う。
この場を借りて、プロジェクトJの実現に尽力下さった方々に深い感謝の意を表したい。


目次へ

トップページへ戻る

無断転載、お断り致します