((((( Spain Nandemo Jouhou Real Time !! )))))

PENELOPE CRUZ

今スペインでどんな映画がはやってるのか、
最新の情報を現地から
ちょっと独断と偏見を交えてお届けします。


★スペイン映画界注目の俳優さんたちをこちらで紹介してます。★



インデックス(1999年まで)

*Nadie conoce a nadie/みんな誰も知らない(1999/11/29)
*La mujer mas fea del mundo/世界一醜い女(1999/11/11)
*サン・セバアステイアン映画祭開幕!!(1999/09/17)
*La novena puerta/The ninth gate/第九の扉(1999/08/30)
*Manolito Gafotas/マノリ−ト・ガフォ−タス(1999/07/27)
*Flores de otro mundo/別世界の花たち(1999/07/08)
*ペドロアルモドバルの話題(1999/05/28)
*La fuente amarilla/黄泉(1999/05/03)
*Todo sobre mi madre/私の母についての全て(1999/04/20)
*Muertos de risa/死ぬほど笑っちゃう(1999/3/23)
*Lágrimas negras/黒い涙(1999/03/23)
*El Milagro de P. Tinto/ピ−・ティントの奇跡(1999/March)
*Barrio/バリオ(1999/March)
*Los amantes del círculo polar/北極圏の恋人達(1999/March)


Nadie conoce a nadie
(ナディエ・コノセ・ア・ナディエ/みんな誰も知らない)

1999年/スリラ−
監督:Mateo Gil
出演:Eduardo Noriega, Jordi Molla


作家を目指しているが今は新聞のクロスワ−ド・パズルを作って生計を立てているシモン。 ある日彼のもとへ奇妙な脅迫の電話がはいる。そのときから彼は、何者かによって企てられた “ゲ−ム”に巻き込まれてしまう。セマナ・サンタ(聖週間)のセビ−ジャを破壊するという テロリスト・ゲ−ムに・・・
2000年のセビ−ジャ、聖週間を舞台に繰り広げられるサスペンス&スリラ−。

エドゥアルド・ノリエガとジョルディ・モジャという私にとってはよだれのでそうな顔合わせ。 さらに監督はマテオ・ヒル。これが長編映画の監督としてはデビュ−ですが、あの アレハンドロ・アメナバルの相棒としてすでに映画界では有名でした。「テシス/Tesis」 「オ−プン・ユア・アイズ/Abre los ojos」の脚本はアメナバルと彼との共作。 さらにこれらの映画では助監督として名を連ねていました。アメナバル抜きでとった彼の短編映画が スペイン国内の賞を総なめし、晴れて新人としては別格の豪華キャストでの長編デビュ−を飾りました。

聖週間が最も華やかに祝われる都市のひとつであるセビ−ジャが舞台。そこで繰り広げ られる狂気の“シュミレ−ション・ゲ−ム”。参加者はそれぞれに割り振られた“役”を演じ、 ゲ−ム・リ−ダ−のきめたスト−リ−やル−ルにしたがって行動していくのです。そのスト−リ− というのがテロリストがセビリアの聖週間を破壊するというものだから冗談ではすみません。 ゲ−ム・リ−ダ−によって“選ばれ”てしまったエドゥアルド・ノリエガ扮するシモンは、 この恐ろしいゲ−ムに巻き込まれて行くわけです。

小説をベ−スにしていて、コンピュ−タ−・ゲ−ム、クロスワ−ド・パズル、聖書などが 絡み合ってなかなかこったスト−リ−です。テロリストはサリンガスを使い、オウム真理教の 東京の地下鉄襲撃事件を参考にしているという設定で、いきなり麻原ショ−コ− (漢字がうかばない・・・)氏の写真なんかがでてきてびっくりしたりしますが。 主人公は知らぬ間にどんどんとそのゲ−ムの“こま”として操られていくわけで、 その追い詰められるエドゥアルド・ノリエガ君の苦悩の表情もいいんですが、 今回はジョルディ・モジャが一枚上手というかんじ。あいかわらず若いのに芸達者です。

アメナバルの前の2作を見たときほどの衝撃は正直言ってなかったんですが、スト−リ−良し、 俳優良し、セビ−ジャの風景もふんだんで、楽しめる映画であることは間違いなしです。

BY KUMI(11月29日)


La Mujer Mas Fea del Mundo
(ラ・ムヘ−ル・マス・フェア・デル・ムンド/世界一醜い女)

1999年/ブラック・コメディ−
監督:Miguel Bardem
出演:Elia Galera, Hector Alterio, Javivi


ロラは類まれなく醜く生まれてしまったため、子供のころからず―っと、みんなからひどい仕打ちをうけてきた。しかしある医師による、極秘の、非合法的実験をかねた整形手術で絶世の美女に生まれ変わる。最愛の男性を恋人にし幸せの絶頂だったが、その恋人を「ミス・スペイン」に奪われたときから、復讐にもえる連続殺人犯になってしまうのだった。
2011年の近未来のマドリッドを舞台に繰り広げられる、サスペンス、スリラ−、SF、コメディ−がごっちゃになった映画です。

この監督のミゲル・バルデムは名前からもわかるように芸能一家バルデム家(とかってに私はよんでいますが)の一員。いとこは俳優のハビエル・バルデム、父親も映画監督のなんとか・バルデム。まえに「Mas que amor, frenisi」という映画を他の2人の監督と共同で撮りましが一人で長編をとるのはこれがはじめてです。私は元来映画好きなので、たいていの映画には愛情をいだけて、どんなひどい映画でもどうにかいいとこをみつけて好きになるよう広い心で見るようにしています。しかし、そんな私ですら彼の前作「Mas que amor....」をみた直後は「金返せ―」とわなわな震えたもんです。その彼の2作目だからおそるおそるみたんですが、はい、成長しました。前作では全然登場人物たちに説得力がなく、魅力もなかったんですが、今回はちゃんと端役の人物達までいい味がだせています。だからといってまだまだ「すごくいい」って感じとはほどとおいですが、鑑賞に堪えうる作品を作れるようになってよかったよかった、という意味でここで紹介します。

“近未来のマドリッドが舞台”というのがこの映画のひとつの売りなんですが、ハリウッド製の映画を見なれてる人にとっては「えっ?」って感じのちゃちな近未来セットです。予算がないんならあえて近未来という設定にしなくてもよかろうに。・・・などなど、あらさがしをすればきりがないですが、役者さんたちがそれをカバ−してます。犯人を追い詰める刑事役の人がいいです。この人は夏休みのスペイン映画最大のヒット作となった「マノリ−ト・ガフォ−タス」でトラックの運ちゃんのお父さん役をやってた人。笑顔に憂いがあってなかなかいいが禿げてしまっているのが残念、と思っていたんですが、今回、そのはげを最大に利用して、さらなる憂いをかもし出しています。

最後に主演の女優さん。彼女は映画初主演。それどころか女優の経験もなく、モデルをすこしやっていた程度。でも、彼女の淡々とした演技、主人公の悲しさを引き立たせて私はとても好感がもてました。いったいどこからこの女優を探してきたのか話題になってますが、なんと彼女、本職は弁護士さん。労働問題が専門だそうで。かっこいい・・。

BY KUMI(11月11日)


サン・セバスティアン映画祭開幕


世界10大映画祭のひとつであるサン・セバスティアン映画祭がはじまりました。

開幕式にはアントニオ・バンデラス&メラニ−・グリフィス夫妻が出席。 アントニオ・バンデラスの初監督作品「Crazy in Alabama」(メラニ−・グリフィス主演) が、映画祭のオ−プニング映画として上映されます。ただしこれはコンペティション外。 コンペティション部門はロ−レンス・カスダン監督の「Mumford」で幕開けとなります。

このセレモニ−を進行したのはフアン・ディエゴ・ボット(Juan Diego Botto)という 俳優なんですが、このこがなかなかの母性本能をくすぐる美少年なんです。今、 写真が手元にないんですが、手に入れ次第アップします。お楽しみに。

開幕式では国際映画記者協会が選ぶ今年の最優秀映画賞が、ペドロ・アルモドバルの 「Todo sobre mi madre」へ贈られました。ペドロ・アルモドバルは現れず、 代理でこの映画を含み、数々のアルモドバル作品に出演しているマリサ・パレデスが登場。 というのも、アルモドバル監督のお母さんが数日前に亡くなったからです。 マリサ・パレデスが涙して読み上げた監督のメッセ−ジ。
「この賞を出演女優の4人に捧げます。今まで、こんなに賞が心にしみたことは ありませんでした。なぜかを説明する必要は無いでしょう。」
受賞作が“私の母についての全て”という題名だけに、私はちょっとじぃんときました。

これから10日間に渡って100以上の映画が上映されます。アンジェリカ・ヒュ−ストン をはじめ“有名人”も続々とサン・セバスティアン入りする予定。1300人と去年の倍の マスコミが詰め掛けているそうです。 コンペティションの様子なんかはまた次回報告しましょう。それでは・・・

BY KUMI(9月17日)


La Novena Puerta/ The Ninth Gate
(ラ・ノベナ・プエルタ/第9の扉)

1999年/サスペンス
監督:Roman Polanski
出演:Johnny Depp, Emmanuelle Seigner, Lena Olin


価値のある古書を見つけてきてコレクタ−に売る、いわゆる “古本の探偵”というのがコルソ(ジョニ−・デップ)の仕事。 客の依頼で、悪魔の協力のもとに書かれたとされる古書“第9の扉” を追う。しかしその持ち主たちは次々に殺されて行き、彼自身にも 危険が迫る・・・

ポランスキ−監督にジョニ−・デップときくとアメリカ映画と思いがち ですが、これはスペイン−フランスの合作です。原作はスペイン人作家 アルトゥ−ロ・ペレス・レベルテのベストセラ−小説“El club de Dumas"。 トレドでもロケが行われました。とはいっても台詞は英語だし、トレドも “えっ”ていうくらい一瞬しかでてこないし、スペインっぽいものを 期待していくとがくっときます。これはあくまでも“ポランスキ−映画” です。

ハリソン・フォ−ドやジェレミ−・アイアンが主役の候補に上がっていた そうですが最終的にはジョニ−・デップに。映画の中では実際よりかなり 年上の中年をがんばってやってます。脇役の女優さんたちがいいですね。 ポランスキ−の奥さんがコルソを助ける謎の女役で出ていますが、 この人の視線には相変わらずぞくっとさせられます。そして、 “蜘蛛女”レナ・オリン!!強暴な女をエレガントにやれるのは この人だけでしょう・・・

“悪魔物”の元祖“ロ−ズ・マリ−の赤ちゃん”からおよそ30年。 再び同種の題材に挑んでいますが、今回の映画はおどろおどろしさより 謎解きの部分が大きな比重を占めています。だからすこし物足りない 気がしたのは、あまりにもおどろおどろしさを期待しすぎたせいかなぁ・・・

BY KUMI(8月30日)


Manolito Gafotas
(マノリ−ト・ガフォ−タス)

1999年/コメディ
監督:Miguel Albaladejo
出演:Antonio Gamelo, David Sánchez del Rey, Adriana Ozores
     	


マノリ−ト・ガフォ−タスは主人公の男の子の名前。この子を主人公にしたシリ−ズはラジオと本で大人気となり今回映画化となりました。このシリ−ズ、子供向けということになってますが、大人のフアンのほうが結構多いんじゃないかな、と思えるくらい世代を超えた人気です。マドリッドの下町(カラバンチェル)の典型的な超庶民、トラックの運転手の家庭に起こる日々の出来事が、マノリ−トの目を通して語られていきます。

“ガフォ−タス“は“ガファス=眼鏡”からきていて、日本語に訳すと「メガネザル」とか「眼鏡こぞう」とかいうかんじですかねぇ。 眼鏡をかけているマノリ−トをからかって小学校の同級生達は彼をそう呼びます。でもマノリ−トは「ここ、カラバンチェル では、あだ名を持つのはとても大切なこと」と、気にしてません。自分の弟に「インベシル=ばか」というあだ名をつけ、そう呼ぶたびに お母さんから平手打ちをくらいます。唯一のマノリ−トの味方はおじいさんのニコラス。前立腺を患っていて頻繁にトイレに行きますが、ワインはやめられません。お父さんはトラックのロ−ンを返すため一生懸命働いていてあまり家にいませんが、帰ってくると、たとえ夜中でもマノリ−トは弟インベシルといっしょに表に出迎えにいきます。

このマノリ−トの家族をはじめ、近所の人、マノリ−トの友達なんかの登場人物、みんなその辺に本当にいそうな人達ばかり。登場人物だけじゃなく、おじいさんいきつけのバルとか、町並みとか、マノリ−トの家の間取りとか、まさに現実の世界そのもの。普通の人の日常生活をみてなにが面白いの?と思われるかもしれませんが、これが笑えるんです。関西系の普通の人達の会話ってそのへんの芸人よりおもしろかったりするって、日本にいた頃よく思ってました。マドリッド人(?)にも同じ傾向を感じていた私としてはこの映画でそれを再確認しました・・・・。

BY KUMI(7月27日)


Flores de otro mundo
(フロ−レス・デ・オトロ・ムンド/別世界の花たち)

1999年/ドラマ
監督:Icíar Bollain
出演:José Sancho, Lissette Mejí, Luis Tosar
     	


スペインのある過疎の農村。嫁不足解消の為、村役場はよその町から独身女性達を運んでくる「お見合いバス」を企画する。よりいい生活をもとめてキュ−バからきた女の子、労働許可証を手に入れたい子連れの中南米の女性、都会で孤独を感じているスペイン人看護婦・・・様々な事情を抱え、女性達は村を訪れる。そして何組かのカップルが誕生するのだが・・・

この間のカンヌ映画祭で批評家賞を取った作品です。
一緒にスペインからはペドロ・アルモドバルの作品が出品されていたため、その影でちょっと“地味”な感じになっていましたが、この受賞で一躍脚光を浴びました。
ビクトル・エリセ監督の名作「エル・ス−ル」で主演していた少女、彼女がこの映画の監督イシアル・ボジャインです。「エル・ス−ル」のときは15歳でした。その後、女優としてケン・ロ−チ作品などに出演するかたわら、監督としての技術も学んでゆき、2作目であるこの作品ではやくも確固たる地位を築いた感があります。

女の子を殴ったりする典型的「Macho ibérico(イベリア半島産の雄、とでも訳しましょうか・・)」役のホセ・サンチョ以外はみんな無名の俳優さんたち。ドミニカから来たパトリシア役の人は、実際に中南米からスペインへやってきて、掃除婦などをしながら生計をたてていたそうで、映画の役柄そのもの。また“村人たち”の役をしている人達も撮影が行われたセゴビアの片田舎の本物の村人。この素人のおじいさんたちが異様にいい味をだしています。

別世界から小さな農村にやってきた女性達は、習慣の違いとか、嫁姑問題とか、狭い社会での差別的な視線とかにいろいろと苦しむわけです。でも、それぞれが、それぞれのやりかたで自分の進むべき方向を見出していきます。
見た後で、私も頑張らなきゃなっ、て元気づけられるような映画です。

BY KUMI(7月8日)



ペドロ・アルモドバル、カンヌ映画祭で最優秀監督賞受賞


ここのところちっともおもしろそうなスペイン映画か公開されないのでペ−ジを更新できないでいました(さぼってたわけじゃありません)。で、今回は映画の紹介ではありませんが、第52回カンヌ映画祭でスペインを代表する映画監督ペドロ・アルモドバルが最優秀監督賞をとったという話題を。

この2つ下に紹介してある「Todo sobre mi madre/私の母についての全て」での受賞です。もともと、彼はこの映画をコンペティション部分に出す気はなく、コンペティション外でカンヌに参加したかったんですが、どういう訳か正式出品作に選ばれてしまいました。前もって「本命」といわれる作品がなかった今年のカンヌ、候補作品上映後は、デビット・リンチかアルモドバルが本命ではとの声がたかかったようです。スペインのマスコミでは「アルモドバル最有力」ってかんじで報じられていたんですが、おなじように日本じゃ「北野たけし最有力」ってかんじで報じられてましたよね。やっぱりみんな地元の人を贔屓目にみちゃうのねってほほえましく感じました。

で、蓋をあけてみると最優秀作品におくられるパルム・ド−ル賞はベルギ−から出品の「ロゼッタ」へ。アルモドバルは最優秀監督賞を受賞したわけです。受賞後「ちょっぴりがっかりした」ことを正直に告白した監督、「賞をとるために映画を撮ってるんじゃないけど、ここのところ毎日“パルム・ド−ル確実だよ”ってみんなにいわれたんで、その気になっちゃってたよ」。

でも、世界最高級の映画祭で、すばらしい賞をもらったわけですから、満足しているようです。受賞後のインタビュ−で、スタッフ、出演女優、彼の家族、友人、スペインの観衆などなど、あらゆる人々への感謝をあらわしました。でもスペイン人ならまっさきにあげるはずの「母(mi madre)」という言葉をだしませんでした。その理由は「私が母に一番感謝してるのは当然のことで、当然過ぎるから敢えて言葉にはしない。」、だそうです。

(5月28日 KUMI)


La Fuente Amarilla
(ラ・フエンテ・アマリ−ジャ/黄泉)

1999年/サスペンス
監督:Miguel Santesmases
出演:Eduardo Noriega, Silvia Abascal, Miguel Hermoso
     	


 ロラは15歳のときに両親を何者かに殺されてしまった。犯人の手掛かりは、チャイニ−ズ・レストランのカ−ドだけ。ふとしたきっかけで知り合った、変わり者の青年セルヒオを巻きこんで犯人を探すが、その背後には、母方の血統である中国系マフィアの巨大な力がうごめいていた・・・

 題名の「ラ・フエンテ・アマリ−ジャ」は直訳すると「黄色い泉」。中国では、死後の世界には黄色い泉があり、死者はその水を飲むといわれてる、と映画の中で主人公ロラが説明します。まさに日本語でいう「黄泉(よみ)の国」のことですね。
スペインでは珍しくチャイニ−ズ・マフィアを題材にしたこの映画は、ミゲル・サンテスメサスの監督としてのデビュ−作です。主演の女優シルビア・アバスカルも、テレビの連ドラなどにはでていましたが映画の主演ははじめて。若干20歳ながら、かなりの好演をみせてます。
 で、映画全体の出来としては、監督のデビュ−作としては、まあ、いんじゃないのってかんじです。サスペンスなんだけれどいまひとつスト−リ−にひねりがなかったのが物足りなさの原因でしょうか。

 そのなかで、光っていたのがもうひとりの主演、エドゥアルド・ノリエガ。彼はアレハンドロ・アメナバル監督の「Tesis」(邦題:殺人論文)でデビュ−、その後同監督の「Abre los ojos」(邦題:オ−プン・ユア・アイズでこの夏日本で公開予定)にも主演、2作連続の大ヒットとなり、出演依頼殺到中の、スペイン映画界注目度ナンバ−・ワンの俳優さんです。25歳ながら、テレビなどにはでず映画だけに仕事を絞ってやっていける数少ない俳優のうちの一人となっています。「Tesis」でデビュ−したときはひさびさの正統派二枚目俳優の登場だっとみんなが思ったものです。上の写真が彼ですが、実物はも−っとかっこいいんですよ、ホント。その後ず−っと二枚目のもてもて男の役ばかりやっていたので、、カッコイイから売れてるんであって、このままじゃ−行き詰まっちゃうんじゃないかしら、と私はひそかに心配していたのですが、今回やってくれました。屈折した、クラ−イ、どもりの、いかにももてそうにない男のこを見事に演じてます。新聞のインタビュ−で、「俳優と言うのは本当の自分を決して観客にみせてはいけない。そのつど全く違う人間となってスクリ−ンに登場するのが理想だ。」と語っていましたが、その理想に着実に近づいているようです。

BY KUMI(5月3日)


Todo sobre Mi Madre
(トド・ソブレ・ミ・マドレ/私の母についての全て)

1999年/ドラマ
監督:Pedro Almodóvar
出演:Ceciliaa Roth, Marisa Paredes, Penélope Cruz, Antonia San Juan, Toni Cantó

     


 マヌエラはひとりで息子のエステバンを育ててきた。父親についてはだれにも、息子にさえもなにも語らない。二人はマドリッドで幸せに暮らしていたが、エステバンは彼の17歳の誕生日に交通事故に合いマヌエラの目の前で死んでしまう。息子を失ったマヌエラは、彼の父親に会うためにバルセロナへと旅立つ。息子の死を告げるために。

 待望のアルモドバル監督の新作です。この作品は全ての母親、全ての女性に捧げられたオマ−ジュです。
「神経衰弱ぎりぎりの女たち」で題名どおり男に振り回されぎりぎり状態になる女たちをかなしくもおかしく描いて、世界中映画祭の賞をかっさらったのはもう10年以上も前になります。
今回再び、悩み、傷つき、苦しむ女たちを描きます。しかし、今回女性達は男に翻弄されて、というのではなく、女であるがゆえに、その母性によって苦しみます。また、生物学的には男である女性(ニュ−ハ−フ)の、女性であろうとするがための悲しみも織り込んでます。
 というと、すごく重た−く感じるかもしれませんが、それをおかしく仕上げてしまえるのがアルモドバルの才能です。私が映画館に見に行ったとき周りのスペイン人たちは、しまいにはてぇたたいてまで笑っていました。

 スペイン映画界ではアルモドバルの映画に出る女優達は、007の「ボンド・ガ−ル」のように「アルモドバル・ガ−ル」(スペイン語ではチカス・デ・アルモドバルといいます)と呼ばれ、一種のプレステ−ジを得ます。
「ハイ・ヒ−ル(Tacones Lejanos)」、「私の秘密の花(Flor de mi Secreto)」に出演した大御所、マリサ・パレデスと「ライブ・フレッシュ(Carne Trémula)」で冒頭にバスの中で出産する女のこを演じたペネロペ・クルスがここのところのアルモドバルのお気に入りのようです。
 今回アルモドバル作品にはじめて出演した、ニュ−ハ−フ、アグラド役のアントニア・サン・フアンは見事にスペインの観客を魅了。彼女がひとことしゃべるたびに映画館中が大笑いでした。今までほとんど無名だっただけに今後の活躍が楽しみです。
 この映画、ほとんど男性の出番がありません。しかし、このあいだゴヤ(スペイン版オスカ−です)で主演男優賞を取ったフェルナンド・フェルナンゴメス氏にふれずにはいられません。ペネロペ・クルス演じるロサの父親役をやっているんですが、出番は数秒間、せりふも2こと3ことしかありません。ですが、その存在感はう−ん、やっぱりすごい。
 話はそれますが、少ない出演男優のなかの1人でエステバンの父親のニュ−ハ−フ役をやっているトニ−・カントは、この映画では気持ち悪いですが、ほんとはすご−くかっこいいんですよ。

 終わり方がちょっとあっけなくて、後味がすっきりしなかった気もします。でも、男性側からでもない、女性側からでもない、アルモドバル側とでもいうべき彼独自の視点からみた女たちの映画、見る価値ありです。

BY KUMI(4月20日)


Muertos de Risa
(ムエルトス・デ・リサ/死ぬほど笑っちゃう)

1999年/コメディ−
監督:Alex de la Iglesia
出演:Santiago Segura, El Gran Wyoming, Alex Angulo

     

 ニ−ノとブル−ノはお笑いコンビ。つっこみのブル−ノがぼけのニ−ノにびんたをくらわす という超単純なギャグが大うけし、お笑い界のみならずテレビ界のトップスタ−の座に のしあがる。しかし、仕事での名コンビぶりとはうらはらに、この2人私生活では “死ぬほど”憎み合っている。
 フランコ独裁体制から民主主義への移行期にはじまり現在に至るまで、30年あまりの スペインのテレビの歴史を2人をとおして振り返っていく。

 私が10前にスペインに旅行で滞在した時、テレビが公営放送の1チャンネルしか なくって愕然としたものです。しかし、今や全国ネット4局(民放2局含む)をはじめ 各地方に地方局、有料のケ−ブル、デジタル各局もあり、ここ10年のスペインの テレビ界はすっごい発展を遂げたんでしょう。
 この映画がスペイン人に大うけしたところは、主演の2人の人気はもちろんのこと(あとで じっくり説明します)、70年代、80年代のなつかしのテレビ番組、CM、なつメロ なんかをふんだんに織り込んだところ。だから、その時代をスペインで生きてない 外人の私にとっては100%この映画のおもしろさが掴めたわけではないんでしょうね。 でも、スプ−ンまげのユリゲラ−が出てきた時は、「このひと、スペインまで行って 営業してたんだぁ。」と感心してしまいました。

 さて、さっきもちょっとふれましたが主演の2人、右上の写真からは想像しがたい でしょうが、すごい人気で、この2人と監督の名前をみたら、スペイン人は条件反射で 映画館へ足を向けてしまいます。人は見かけによりません。
 まず、ニ−ノ役のサンティアゴ・セグ−ラ(写真で前の方。カッコ悪いというレベルを 通り越して見苦しい容姿です。)は俳優でもありますが、自らメガホンも取ります。昨年 主演&監督をこなした「Torrente」は98年の最大のヒットのみならず、スペイン映画史上 最高の興行成績を記録し、今のりにのっている人です。ちなみに、トヨタカップで勝利を おさめたレアル・マドリッドのメンバ−慰労のため、球団が映画館を貸切ってこの映画をみせ 選手達は大喜びしたということからも、このおじさんの威力、わかっていただけるでしょう。
 さて、ブル−ノ役のグラン・ワイオミングは実際でもお笑いの人。「Caiga quien caiga」 という有名人にアポなしで突撃取材をするという人気テレビ番組(日本にもにたよ-なの ありましたよねぇ)を持っています。
 最後に監督アレックス・デ・ラ・イグレシア。数年前に「ハイル・ミュ−タント」という 彼の作品が日本で公開されています。シニカルかつグロテスクなコメディ−が彼の芸風です。 若い層を中心に絶対的人気があります。
 スペインの昔のテレビ番組なんか知らない私たちですが、主役2人のおろかなまでの いがみ合いを見るだけでも楽しめ、かつ“スペイン大衆文化”の勉強になること間違いなし です。

BY KUMI(3月23日)


Lágrimas Negras
(ラグリマス・ネグラス/黒い涙)

1999年/ドラマ
監督:Ricardo Franco, Fernando Bauluz
出演:Ariadna Gil, Fele Martinez, Elena Anaya

 アンドレスは若きカメラマン。仕事にも満足し、結婚を約束した恋人もいて、 両親を亡くしてしまってはいるものの、平穏で幸せな日々をおくっていた。 ある夜、突然ピストルを持った女の2人組に襲われ、車を奪われてしまう。 その後彼は、精神病院を取材した時、患者達を撮影したビデオの中に、 その2組のうちの1人の姿を見つける。彼女は二重人格者。そして、 アンドレスは危険なまでに彼女にひかれてゆく。

 リカルド・フランコ監督はこの映画の撮影中に急逝してしまい、これが彼の 遺作となっってしまいました。彼の死後は助監督が監督として撮影を引き継ぎました。
 監督が最後まで撮影を指揮できなかったせいでしょうか、それとも彼の前作 「La buena estrella」があまりにもよすぎたせいでしょうか、全体を通して 半端な感じがどうしてもぬぐえません。

 しかし、それを救うのがアリアナ・ヒル。彼女は日本でも公開された オスカ−外国語映画賞受賞作「ベル・エポック」でレズの次女を演じていました。 この映画では幼児期に暗い過去を持つ二重人格者を頬の筋肉をひくつかせるまでに 熱演してます。
 アンドレス役のフェレ・マルティネス君のせつないまなざしも◎。

BY KUMI(3月23日)


El Milagro de P. Tinto
(エル・ミラグロ・デ・ペ・ティント/ピ−・ティントの奇跡)

1998年/コメディ−
監督:Javier Fesser
出演:Luis Cigas, Silvia Casanova, Pablo Pinedo

     

 ピ−・ティントとオリビアは子供がいっぱいの大家族を持つのが夢。 でも、子宝に恵まれないでいたところに、ちびではげの宇宙人2人が彼らのに庭に 突然着陸し住みついてしまう。
その後さらに、母親を子供のころに亡くした 大男も加わり妙な家族を形成していく。ピ−・ティントとオリビアは大男を実の子のように かわいがるのだが、大男は宇宙人のUFOを使って時間をさかのぼり亡くなった お母さんに会いに行こうとする…

 短編映画で数々の賞をかっさらっていたハビエル・フィッセル監督の長編デビュ−作。 1作目にして大ヒットとなった。どうしてこんなこと思いつくんだろうって感じのスト−リ− もさることながら、映像だけでも笑えてしまう。小人の宇宙人、大男(名前忘れてしまった・・)、 妻のオリビアなんかは、もう立ってるだけでおかしい。ゴヤ賞(スペイン版オスカ−)をとった 特殊効果にも注目。
ゴヤでは新人監督賞は惜しくものがしたけど(新人監督賞はスペイン映画史上 最大のヒット作となった「Torrente」の主演&監督のサンティアゴ・セグ−ラが獲得した) 今後も期待できそうな監督さんです。今年のサンダンス映画祭出品作品。

BY KUMI


Barrio (バリオ)

1998年/ドラマ
監督:Fernado Leon
出演:Crispulo Cabezas, Timy, Eloy Yebra
   

 マドリッド周辺の、あんまり豊かではない人たちがすむ地域(バリオ)。
そこでくらす、ロ−ティ−ンの男の子3人のひと夏の話。
 八月のマドリッドといえばみんながバケ−ションに出かけて、人口が半分以下になってしまうが、 彼らはどこに行くお金もなく夏を家で過ごさなくてはいけない。
それぞれがそれぞれの家庭に問題を抱えながらもなんとか夏を楽しく過ごそうと試みるのだが・・

 主人公3人の家庭は結構悲惨なまでに貧しくて、家庭内の事情もごたごたしているんだけれど たくましく生きている。3人の会話、せりふがとっても自然でいい。(脚本もレオン監督が 書いている)
 いっしょにこの映画を見たスペイン人の友達に、 「スペインの家庭が全部こんなに悲惨だなんて思わないでよ」って言われたけど、 まあ全部じゃないのはわかるけど、実際にこの映画にでてくるような家庭はマドリッド周辺に 珍しくないのが現実だと思う。現実の子供達も、この映画の主人公たちみたいに、 たくましく生きててほしい。地下鉄の線路を散歩するシ−ンがとてもきれい。

 フェルナンド・レオン監督にとっては2作目の長編。この映画でサン・セバスティアン映画祭 銀賞、ゴヤの最優秀監督賞とオリジナル脚本賞を獲得した。オスカ−監督フェルナンド・トゥルエバ (「ベル・エポック」でオスカ−最優秀外国語映画賞を受賞)を押しのけて、ほとんど新人の 監督が今年のゴヤを獲得したというわけ。ちなみに主人公の姉を演じた女のこはゴヤの 新人賞を獲得している。サンダンス映画祭出品作品。

BY KUMI



Los Amantes del Círculo Polar
(ロス・アマンテス・デ・シルクロ・ポラル/北極圏の恋人達)

1998/ドラマ
監督:Julio Medem
出演:Fele Martinez, Najwa Nimri
   

 アナとオットは8歳の時に運命的な出会いをする。強い絆で結ばれているのだけれど、 運命のいたずら、すれ違いではなればなれに。しかし、北極圏の美しい町が 2人を再び引き合わせる・・

 スペイン映画というよりも、ヨ−ロッパ映画って感じのする数少ないスペイン映画です。
主な部分は2人の主人公のモノロ−グで淡々とすすんでいく。挿入されるオットの おじいさんの話がいい。映像もすごくきれい。

 メデム監督は、俳優(特に女優)の発掘や起用に定評がある。「ミツバチのささやき」の 主役を演じてそれ以降くすぶっていたアナ・トレントを復活させたし、彼の映画の常連の エンマ・スアレスが女優として確固たる地位を築いたのも彼の力が大きい。
今回、主役はアレハンドロ・アメナバル監督の衝撃のデビュ−作「Tesis」 (邦題は「殺人論文」とかゆうんじゃなかったっけ)でおなじくデビュ−をかざった フェレ・マルティネス君。そしてアメナバル監督の2作目「Abre Los Ojos」で謎の女を 演じてたナジワ・ニムリ(発音間違ってるかも、この人の名前難しい・・)。 2人ともアメナバル監督の作品の時とは別の顔を見せてくれます。 これもサンダンス映画祭出品。

BY KUMI



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