スペイン生活30年・今も続く私の冒険

くま伝

日本を飛び出してみたいと考えている方々、目的を見出せず悩んでいる方々へ


第44章 文化協会と私

『くまさんトラベル』


 生ハムの工場を見学したい、ワイナリーを見学したい、幼稚園を見学したい、老人介護施設の
見学をしたい、消防署の見学をしたい、車椅子でヤコブ巡礼の全行程を旅したい、羊を見たい、
スペイン料理の勉強をしたい、スペインで働きたい、リタイヤしたのでスペインに移住したいetc...
SNJ日西文化協会に寄せられる相談は実に様々である。
また、逆に、何等、具体的な依頼内容が無く、日数と予算だけを伝えて、面白い旅を作って欲しい
と言う方も多い。

インターネットをさ迷い、情報を探すうちにSNJのホームページに辿り着き、旅の相談をいただく方が
どんどん増える中、私の耳に、あまり嬉しく無い噂が届いた。
それは、一部の旅行会社が、「旅行会社でも無い文化協会が旅行会社のような顔をして、ツアーを
販売している(=我々の邪魔をしている)」と、当協会の文化活動を非難していると言うものだった。

どこの世の中にも、どの時代にも、少し目立ち始めると、とやかく言う人が現れるようである。
心配なさらなくても、一般のツアー会社が行っているような旅の企画も案内も当協会では行なっておらず、
それはつまり、競争の対象とはなっていないはずなのだが。

とは言え、そう言う心理状態に陥るのを理解するのはそう難しいものでも無い。
ただ、そのような発言をされた方がご存じない事実が一つある。
SNJは文化協会であって旅行エージェンシーでは無いが、SNJが企画する旅の全ての手配は、
旅行エージェンシーが行っているのである。
つまり、先のようなクレームをつける旅行社には依頼していないが、別のエージェンシーに担当して
もらっている訳である。
誰かが旅行をしようとする時、どこの旅行社に相談し、手配を依頼するかは、その人の自由であって、
自社に依頼が無いからと言って、クレームを出す事など、ナンセンスでは無いか。
旅行エージェンシーを通して全ての手配を行っている事実は、SNJのホームページ上で、特に公に
していないために、このような誤解が生じるのだろうが、もしも、どこかの旅行社が、当協会で企画する
旅の手配を 是非やらせて欲しいと言うのであれば、どれだけの手配を行うことが出来るのか、説明、そして
セールスにいらっしゃれば良い。
ただ、これまでにも書いたように、協会の文化活動としての旅は、営利団体である旅行社と言うものを
省いた点に、その一番の利点がある訳で、これを覆すほどの利点が存在しない限り、どこかの旅行社と
提携する事が有り得ないのは言うまでも無い。

これをお読みいただいている方の中には、そろそろ、どうも話が見えない、、、と首をかしげる方も多いのでは
無かろうか。

この章で、私は、四十二章で述べた事と全く矛盾した事を書いてる。

一方で、「旅行社は使わない」と言っておきながら、もう一方で「SNJの旅はその全ての手配を旅行社が
行っている」と説明している。
誰が聞いてもおかしな話であるが、その実態は実に単純である。

旅を企画するにあたって、営利法人である旅行社は介入していないが、先述のような旅行業界からの
騒音がいずれ生じる可能性を予測し、文化活動としての旅の依頼が増え始めるのを感じた時、
私は自ら旅行エージェントのライセンスを取得しておいたのだ。

旅行社と言うものを好きになれなかった私は、それを表面に出す気も無く、宣伝する気も無かった。
ただ、無意味なクレームを出す人が現れる事を予測して、トラブルを防ぐだけの目的で旅行エージェンシーの
タイトルを取得しておいた。
つまり、SNJの旅は全て、文化部担当の私が手配を行っているが、それは同時に、私と言う一人の
協会会員が、「くまさんトラベル」と言うマドリッド自治州政府公認旅行エージェンシーとして手配を
行っていることを意味する。
単純なからくりである。
くまさんトラベルは、何人もの従業員を抱え、立派なオフィスを構える旅行社とは違い、それだけのものを
維持するための営利を追及する必要など無いのである。
ただただ、そこに一つの旅行エージェンシーのライセンスが存在すると言う、それだけの事なのだ。


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