スペインニュース・コムがお届する
毎日のトップニュース


12月31日(火)

PSOE、テロリストの最長刑期延長に同意

昨日、政府と最大野党PSOE(社労党)の間で行われた会談で、PSOEはテロと特別凶悪犯罪に対する最長刑期を現行の30年から40年に延長するという政府の提案を支持することを表明した。しかし同時に、政府に対し犯罪者が更生する道を閉ざさないように要求している。
今回の刑法改正で政府の目的とするところはテロリストへの刑期の延長だけではない。“見せかけだけの改心”を防ぎ、他のテロリストを逮捕し、テロ組織を壊滅するための協力を約束した“本当の改心者”に対して特典を与えるよう審査を厳しくすることも目的としている。
昨日PSOEのフアン・フェルナンド・ロペス・アギラル法務担当広報官とホセ・マリア・ミチャビラ法務大臣との間で2時間にわたって行われたこの会談では、減刑を認めず、テロリストには判決で言い渡された懲役年数を完全に服役させるという政府の案にはPSOEが反発、テロ対策会議を召集し、この案について討議することを求めた。
一方バスク政府は刑期の延長について反発、政府がこのような提案を持ち出したのはもっと重要な問題、プレステージ問題に蓋をするためだと政府を非難している。
ここ数年間、テロリストグループETAメンバー逮捕者で30から200年の懲役が言い渡された17人は、懲役の40%も服役しないで釈放されている。

強い北西の風により、黒い波はフランス方向へ

2002年最後の日、ガリシア北部地域は時に時速90キロ以上の北西からの突風をともなった嵐に見舞われる模様で、ここ数日はゆっくりした速度でフランスに向かっていたこの石油溜まりの黒い波は、この強風により今日から急速にフランス岸へ押し流されそうである。昨日、石油溜まりはフランス岸から300キロ、スペインのエスタカ・デ・バレスから120キロ沖で見られている。しかしながらスペイン北部の漁師の心配は終わったわけではない。1月になれば例年通りの北の風が吹き、フランスの海岸に到着する前にまた石油溜まりがスペイン側に戻ってくる可能性があるからである。この石油溜まりは直径3〜4メートルの石油の塊の集団で、ここ数日の間に実際この石油集団を見た漁師の話では、コスタ・ダ・モルテを先週襲ったのと同様にこの石油も厚さ1メートルほどのビスケット状のものに変わってきているという。
昨日は好天に恵まれたため、ガリシアとカンタブリアでは漁船が石油回収に出ることができたが、海岸近くには石油溜まりがみつからず、カンタブリアでは122艘が出動したものの、回収した量は10トンにも満たなかった。
また昨日はサンティアゴ・デ・コンポステラでBNG(ガリシア民族党)とCiU(カタルニャ同盟)の幹部会談が行われ、BNGからの要請を受けてカタルニャ州政府がガリシアに石油回収作業用の船3艘を提供することが決められている。

1年の締めくくり、サン・シルベストレ10キロマラソン(マドリッド)

マドリッドで行われるサン・シルベストレ10キロマラソンは今年で25周年を迎え、今年は史上最大の13500人が参加する。スタートはパセオ・デ・カステジャナ、ゴールはスペインサッカー一部リーグのラジョ・バジェカノのホームスタジアムであるテレサ・リベロ・スタジアム。今年は参加選手の顔ぶれも豪華で、今年ミュンヘンで開かれたヨーロッパ陸上選手権の金メダリスト4名−チェマ・ガルシア選手(男子1万メートル)、マルタ・ドミンゲス選手(女子5000メートル)、アルベルト・ガルシア選手(男子5000メートル)、フィンランドのJanne Holmen選手(マラソン)−も参加する。去年の優勝者は男子がパレンシア出身のイサック・ビシオサ選手、女子がガリシア出身のマリア・アベル選手だった。スタートは一般参加が午後6時、プロ参加が午後8時となっている。


12月30日(月)

ガリシア州政府、受け入れボランティアの数を4500人に制限

ガリシア州政府はボランティアの手を必要としているにもかかわらず、人数制限を行い、統率のとれた状態で来ることを望んでいる。これについて、社会問題担当官で、ボランティアのコーディネーターでもあるコリナ・ポロさんはその理由を「生態系の回復が最優先される状況の中、ボランティアに参加しようとする全ての人を呼んでしまったら、押し寄せるボランティアの波で逆に環境を破壊することになるため。」と述べている。そのため、受け入れるボランティアの数は4500人が限度としているが、すでに宿泊施設の問題により、ボランティア受け入れ電話では宿泊先が自分で用意できない人々に対しては、2月まで受け入れをしないと返答している。
PP(国民党)のビゴ市長候補でもあるポロさんは「宿泊先がないというのが問題なのではありません。事実、我々は学校や軍施設を開放し、保管してある7000のマットレスを使うこともできます。問題は、ボランティアに来ようという人の数に制限を設けなければ、人間の手で生態系を破壊してしまうからです。現在浜辺の清掃作業は人の手で行っています。重機を使うと石油溜まりを沈めてしまうからです。もし大勢の人が一度に海に入ればこれと同じ現象が起こるでしょう。また、現在岩場に生息しているペルセベス貝も、統率の取れてていない人間が岩場に入り踏みつければ死んでしまうでしょう。私達が人数制限を設けるのはこのためです。」と説明している。
事故発生当初は、1万人のボランティアが働いていたこともあるが、現在のボランティアの数は1日平均4500人(昨日は4210人がア・コルニャ県、50人がポンテベドラ県、104人が大西洋群島で清掃作業に従事)。これは、最初のボランティアの働きにより、汚染海岸線の一部がきれいにされたことから現在は以前ほどのボランティアが必要でないためであるという。しかし、訓練された手が必要な岩場はいまだに人手を必要としており、この作業には軍隊があたっている。
しかし、このガリシア州政府の姿勢に反発している市町村長も多い。カルノタのホセ・マヌエル・ガルシア氏(BNG-ガリシア民族党)は州政府の4000人強というボランティアの数字に不信感を露にした。「カルノタだけでも2000人のボランティアが長期にわたって必要なのに、4000人だけ来いとは州政府は何を考えているんだ?もし、州政府が我々の必要としている数だけボランティアを送ってこないなら、我々は州政府の電話にでなく、直接我々に電話してくる人の中からボランティアを選ぶつもりだ。」と述べている。PP所属の市町村長からは過激な発言は聞かれていないが、PSOE(社労党)の下院議員マリソル・ソネイラさんは「今まで8000人から1万人だったボランティアの数を減らすPPの意図は、ボランティア活動を行った人々が帰宅して、ガリシアで経験したみじめさと第三世界に見えるスペインの現状を語るのを恐れているからだ。」と述べた。
現在見られる大きな石油溜まりの核は昨日、カンタブリア地方海岸の60から86マイル沖まで遠ざかった。これまでに回収された石油は30600トンで、昨日はガリシア、アストゥリアス、カンタブリア、バスク地方で8600人(ボランティア4900人、軍人2200人、プロ1600人)が働いた。

アストゥリアス地方で50の浜辺が石油により汚染

アストゥリアス地方中央政府出張所が同地方の231の浜辺を調べた結果、150ヶ所では石油の漂着が見られず、31ヶ所は見たところ汚染が認められず、残り50ヶ所がプレステージからの流出石油に汚染されていることがわかった。1ヶ月半前からすでに石油の漂着が見られているクディジェロのコンチャ・デ・アルテド浜には今日PSOE(社労党)のホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ書記長が訪れ、村長のフランシスコ・ゴンサレス氏、船主と漁師たちと会談する予定で、その後書記長はアストゥリアス州都のオビエドへ向かい、ビセンテ・アルバレス・アレセス知事、汚染地域の漁業関係者とも会談する予定。

ビスカヤ湾でも漁船が石油を回収

昨日、ビスカヤ県のマチチャコ岬の沖8マイルで小さな石油溜まりが半径500Mの集まりになっているのが見られ、ベルメオから4艘の漁船がこの石油溜まり回収に出たとバスク州政府広報官のジョス・ジョン・イマズ氏が発表した。イマズ氏によると、石油たまり一つの大きさは2ユーロ硬貨大から直径1メートル大であるという。
バスク地方の浜辺に関しては、イマズ氏は「今のところすべてきれい」であると述べているが、唯一の例外がアレナ・デ・ムスキス浜で小さな石油溜まりが長さ50Mにわたって漂着しているという。ヨーロッパプレス紙によると、ラガ浜でも岩場に張り付いた石油を回収、アスコリでも50キロの石油が回収されたという。
イマズ氏の指摘する“最大の懸念”とは、現在ガリシア地方とアストゥリアス地方の中ほどにある3000トンの石油からなる塊で、この石油溜まりは現在の風向きではフランス方向に向かっているものの、「今後風向きが北西に変わってこの石油溜まりがバスク地方の浜辺に着く可能性もあるため予断を許さない状況である。」とイマズ氏は述べた。

ソルで年越し、ガラス瓶持込は禁止

“薬物依存およびその他の錯乱を引き起こす物質中毒予防法”(通称ボテジョン禁止法)がマドリッドで施行されて初めての年越しを迎える明日、プエルタ・デル・ソルで年越しの鐘を聞く人々はアルコール飲料を摂取することはできるが、広場にガラス瓶を持ち込むことはできない。これは例年人々が瓶を割る、投げるなどして怪我人が出ているのを今年は防ごうというねらいのため。
また、大晦日の夜の清掃作業には5000人の作業員と1300台の清掃車があたる。プエルタ・デル・ソルだけで除夜の鐘の前後に働くのは100台の特別清掃車と作業員300人が予定されている。


12月27日(金)

沈没したプレステージ問題の決定的解決は夏まで持ち越し

ガリシアの漁業関係者の間に現在立ち込める不安とは、沈没しているプレステージから石油が今後数ヶ月にわたって流出しつづけるのではないかというもので、これに対しガリシア州政府漁業局長エンリケ・ロペス・ベイガ氏は昨日、彼らに楽観的見解を与えるような発言をせず、プレーステージに対し決定的な石油流出対策が取れるようになるのは、天候がよくなる夏まで待たなければならないであろうとの見解を示した。
現在のようにしけが続く状態では、タンクに開いている亀裂に継ぎあてを施すことしかできないという。これは一時的処置にすぎず、問題の大きさから見て、解決策と呼べるには程遠い手段。この2週間でスペイン政府と契約したフランスの潜水艦ノーティルは4つの亀裂に蓋をすることに成功したが、その間新たに6つの亀裂が船のあちこちで発生している。政府の諮問機関である科学委員会では様々な分野から寄せられた解決策のいずれも選択するにいたっていない。これは、積載石油の移し変えから難破船全体を一種のセメントで被ってしまうものまで、どの案も水深4000Mの場所で行うには技術的にかなりの難度を要しているたである。
朗報は、フィニステレの沖140マイルの沈没現場から流出している石油の量が今のところ大した量には達していないことであり、これは、流出石油の動向をこれまで詳細に追ってきているポルトガルの水路学研究所(IHP)のデータによっても確認されている。IHP所長のアウグスト・エセキエル氏によると、この2週間の間に付近で見られた唯一大きな石油溜まりは50トンの石油からなるものであったが、数日後には姿を消したという。これは、しけによりこの石油が細分化されたためだと見られる。「我々の見解では、流出している石油は海上で散らばり、四方に流れていっていると思われる。」と所長は付け加えた。
一方、ここ数週間ガリシア海岸を襲った石油溜まりの集まりはビスカヤ湾に近づいており、昨夜はオルテガル岬の起き60マイルにあるのが確認されている。しかし、この石油溜まりは移動しながらも後に石油をmの越しており、引き続きコスタ・ダ・モルテのフィステラ、コルクビオン、ムシアの浜辺と岸壁に打ち寄せている。

PP、単独で刑法改正を推進へ

昨日、与党PP(国民党)の執行部臨時委員会会議が、プレステージ問題対策について話し合うために開かれたが、会議はテロリストとその他の重犯罪者に刑期を完全に務めさせるための刑法改正の発表という形で終わり野党を驚かせた。会議からはプレステージ問題について新たな対策が出されることはなかったが、PPへの非難を続ける野党PSOE(社労党)の“連帯感の欠如”に対する厳しい告発がなされた。
2月までは行われないという野党の予想を裏切り、ホセ・マリア・アスナル首相は刑法改正を前倒しし、1月3日に閣僚会議で承認することを決定した。月曜日にはこの改正への同意を取り付けるため与党とPSOEの間で会談が持たれることになっているが、第一野党であるPSOEはこれは、アスナル首相がプレステージ問題から逃れるためにこの前倒しを決めたとして政府を非難している。
この改正では刑法の代78条と36条が改正されるが、具体的な内容は以下のとおり:
対テロリスト−1996年から施行されている現行刑法では懲役期間の4分の3を勤めた後仮釈放が認められているが、刑法で最長服役期間は30年。したがって例えば懲役90年の判決を受けたETAメンバーへの仮釈放を認めるまでの期間の計算は30年を基準として計算されている。これを今回の改正では90年を基準にするため、60年服役した後でないと仮釈放は認められなくなる。
対公金横領犯−横領した金を返却しない場合は刑期第三段階(夜だけ刑務所に戻り就寝する)を認められない。
安全期間−懲役5年以上の判決を受けている者は、刑期の半分(安全期間と命名)を務めるまでは刑期第三段階を認められない。

クリスマスシーズン中の交通事故死者数67人

交通総合局(DGT)が先週の金曜日から始め、1月7日まで行われるクリスマス・年始交通安全キャンペーン中の現在、先週金曜日の午後3時から今週水曜日の真夜中までの間に昨日現在すでに58件の交通事故で67人が命を落とし、53人が重傷、42人が軽傷を負っている。クリスマス当日には6件の交通事故で7人が志望、8人が重傷、1人が軽い怪我を負った。
社労党の国会交通問題担当広報官のビトリノ・マヨラル氏はDGTがEUの規則を守って30日後に最終的統計結果を発表するべきであると述べた上、この数字は高速道路で起こった事故のみを対象としているため、事故数はさらに増える可能性があるとしている。マヨラル氏は、連休の度に繰り返される悲劇を防ぐために早急に措置を取る必要があると訴えた。

ドメスティック-バイオレンスによる死亡者急増

DV(家庭内での配偶者または恋人への暴力行為)による死者の数が急増している。2002年の公式発表データでは44人の女性が夫、恋人または別れた夫や恋人により殺されているが、このデータは9月発表のもので、実際にはその後さらに8人の女性が亡くなっているため、現在の犠牲者数は52人。
スペイン内務省内の女性問題研究所では10年前から統計を始め、これまで犠牲者の数が年間42人を超えたことはなかったが、2002年は最初の9ヶ月間でそれを上回る44人の女性が殺されている。また配偶者や恋人の手にかかって殺される男性の数も増加しており、2002年9月までに16人が亡くなっている。(2001年は3人、2000年は6人、1999、1998年はそれぞれ10人。)
女性への暴力と闘う団体から提供されるデータはさらに深刻である。女性への暴力調査委員会のデータでは犠牲者数は64人、子供と両親に殺された女性の数も含める別居・離婚女性財団協会のデータでは74人が昨日までに亡くなっている。この協会代表者のアナ・マリア・ペレス・デル・カンポさんは「ここ数年にわたってクリスマス当日に毎年一人の女性が殺されているという恐るべき事実があります。政府が否決したため、いまだに暴力に対する完全な法律がないというのは恥ずかしいことです。」と話した。
今年、政府はようやく家庭内暴力に苦しむ女性への経済援助(10ヶ月にわたって毎月300ユーロ、家庭を出なければならないケースに対しては3ヶ月間にわたってさらに600ユーロを支給)を始めた。しかし、今年のクリスマスもサラマンカで夫の手により12才と15才の娘の目の前で一人の女性が銃殺されており、政府のさらなる対策が待たれている。


12月26日(木)

国民に向け、国王からクリスマスメッセージ

今年もクリスマスイブ恒例の、国王からスペイン国民へ向けての演説が行われた。国王は演説を始めるにあたって最初に、“多くの家族、特にガリシア地方の家族”に対する親愛の情を示され、11月13日にガリシア沖で起きた7万トンの石油を積載したタンカー、プレステージの沈没事故に関して「我々が一丸となれば、この不幸に終止符を打つことができる。」と述べられた。
国王とフェリペ王子がガリシア地方の現場を訪れられたことからもわかるように、今回のプレステージ事故発生後から常に王家はその後の経過を気にかけられており、それが今年の国王のクリスマス演説にはっきりと表された。国王はまた現行憲法についても言及され、複合国家のもとすべての国民に権利と平等を保証する憲法はまた、スペイン社会にあらゆるテロ活動と闘う権利を与えているとも述べられた。移民問題については、スペインに経済的、社会的に新たな可能性を求めてやってきて、スペインの発展に貢献する移民たちとスペイン国民が連帯することを呼びかけられ、国王は、スペインが国民の権利を尊重し、民主主義的司法制度を保証した国家であるため、移民たちがそれに引きつけられてやって来ていると述べられた。

パイス・バスコで住民に独立についてアンケート

10月に行われたバスク州政府の住民に対するアンケートの結果が発表され、バスク州がスペインから独立することに賛成でない人の数が増えていることが明らかになった。独立に反対する人は34%でこの数は1998年以来増加を続けている。逆に独立に賛成する人は25%であるが、32%の人は“状況による”として、賛成とも反対ともしていない。
このアンケートは、レエンダカリ(バスク州知事)フアン・ホセ・イバレチェ氏がバスク州自治領化案を発表して数日後に行われたもので、この案を進めるため、バスク州の3大県都とロンドン、南アメリカで行われる予定の広報キャンペーンはまだ始められていないが、すでに独立支持派は2002年5月の調査時より3ポイント増え25%となっている。しかし、これは1998年と同じ支持を回復できただけで、反対派も5月には31%だったのが3ポイント増加し、34%と依然として賛成派を上回っており、反対派の数は1998年の24%から継続して増加している。
反対派が賛成派を上回る傾向はバスク州内の3県すべてで維持されており、賛成派の支持の強いギプスコア県でも賛成派29%に対し、わずか1ポイント差の30%で反対派が上回っている。またビスカヤ県では9ポイント差、アラバ県では21ポイント差といずれも反対派の数が多い。世代別に見ると、賛成派が反対派を上回っているのは調査対象となっている最も若い世代(18歳から29歳)だけで、この世代では賛成30%、反対27%となっている。また、パイス・バスコ出身者の家庭では賛成39%に対し反対22%でバスク出身者と非バスク出身者の混ざった家族や非バスク出身者の家族では正反対の数字が出ている。
自分を民族主義者だと思うかどうかという質問に対しては、はいと答えた人が1996年には39%だったのが今年の5月には38%、そして最新のデータでは36%とわずかずつながら減少の傾向を見せている。

汚染地域の環境回復に関して専門家が見解を発表

プレステージから流出した石油が浜辺や岸壁から消えても汚染による効果は消えないだろうというのが、科学者達の見解である。彼らは生態系が汚染から回復するには何年もかかるであろうと見ている。すぐに生態系を回復させる方法は存在しないが、それを早め、促進する方法はあるという。
自然は何年もの年月がかかるものの、自らの力で今回の汚染から回復するであろうと科学者達は見ているが、それでもアメリカやペルシャ湾ですでに効果が確認されているいくつかの方法を取って、回復を人工的に助けるべきだと助言している。専門家によると、最も効果が期待できるのは微生物が自然に持つ力を高めて石油を分解する方法で、バクテリアのコロニーを増殖させるためにリン、窒素といった物質を与える。これにより再生が加速され、数年で有効な効果が現れると見込まれている。
しかし、自然に対してはいかなる人工的手段も、徹底した分析に基づいて慎重に行われなければならず、専門家の中には再生に時間がかかろうと、あらゆる人工的手段の適用をせず、自然の持つ治癒力に任せるべきだとする者もある。すでに専門家の間では、洗剤や溶解剤といった刺激的な方法は、生態系に今よりさらに大きい被害を与えるため使わないことで意見が一致している。
今回の生態系再生に関してはたくさんの科学者たちから協力の申し出が寄せられているが、その多くはいまだに当局からの返事を待っているところだという。生態系の研究と再生のための広範なプログラムは一刻も早く展開されなければならない。


12月25日(水)

クリスマスの祝日のため、今日のトップニュースはお休みします。


12月24日(火)

モロッコ政府、ガリシア漁船64艘の領海内操業を許可

1999年11月までモロッコ領海内で操業していたガリシア地方の漁船の半分が1月15日から再び、操業を許可された。期間は3ヶ月で、石油の汚染状況に応じて延長もできる。これは、モロッコの国王モハメッド六世の申し出の後、スペイン、モロッコ両国が実現にむけて外交官レベルで話し合いを先週から行っていたもので、ガリシア地方を中心とし、アストゥリアス、カンタブリア地方も含むプレステージ事故で被害を受けた地域の漁船64艘がモロッコ領海内で自由に操業できるようになる。
モロッコからのクリスマスプレゼントはスペイン農林水産相ミゲル・アリアス・カニェテ氏の率いるスペイン外交団の考えていたものより気前のいいものであった。64艘はモロッコ領海内の禁漁区を除くすべての地域で操業することができ、3年前と違って、操業許可料を払うことも、モロッコ人乗組員を乗せることも、モロッコ政府による監督も、漁獲量の一部をモロッコに水揚げすることも要求されない。モロッコとEU間の漁業協定は1999年12月に失効、その後交渉は決裂している。アストゥリアス、カンタブリア地方の漁船はこれまでモロッコで操業したことはなかったが、モロッコ領海での操業に興味を示しているという。今回の石油流出事故後、漁に出るのをやめたスペイン北部の漁船はおよそ2500人、1999年までモロッコ領海で操業していたスペイン漁船は約400で、その3分の1はガリシア地方のもの、残りがカナリアス諸島とアンダルシア地方の漁船であった。
モロッコからは最初に海岸の清掃のための人員の提供の申し出があったが、スペイン政府はスペインの人材で足りていることを理由に申し出を断っている。その後モロッコ側は他の援助の可能性を探り、今回のモロッコ領海開放が申し入れられた。この申し出は、モロッコ国王からスペイン国王に電話で伝えられ、その後ホセ・マリア・アスナル首相はモロッコ国王に感謝の電話をかけている。両国がこれを機に関係改善への道を歩むことが期待されている。

マタス環境大臣、国会で報告

「これまでの経験からして、プレステージから流出した石油の回収作業は機械ではなく、手作業で行うしかない。」と昨日、ジャウメ・マタス環境大臣は国会で報告した。これは、BNG(ガリシア民族党)とPSOE(社労党)による、設備不足と連絡不備の糾弾に対し返答したもので、環境大臣は海上の石油回収作業は環境省の管轄ではなく、勧業省の管轄であると述べた。また、環境省の管轄内にある浜辺については、完全に汚染されているのは2つだけであると発表している。
プレステージ事故発生から40日、マタス大臣の発表によると大西洋、カンタブリア海岸にある1064の浜辺のうち、深刻な汚染状態にあるのは8つだけであるという。うち2つ、トウリニャン岬(ムシア、ア・コルニャ県)とシンプロン浜(カルノタ)は完全に石油に汚染されており、コスタ・ダ・モルテにある4つの浜辺と、オンス島(ポンテベドラ湾沖にある島で大西洋諸島国立公園に属する)の2つの浜辺では大量に石油の塊が見られる。さらに516の浜辺が“部分的に汚染”で、いくつもの地域で沼沢地と岩礁に対する特別な清掃作業が必要とされている。
マタス大臣の見解は楽観的であるとし、BNGとPSOEはさらに今回の災害に対する政府の対応のまずさを非難した。

カディスでも人為ミスによる石油もれ

昨日、カディス県のサン・ロケにあるグアダランケ浜からアルヘシラス湾(カディス県)に長さ2キロ、幅200メートルの石油溜まりが漂着した。この石油は、人為ミスによりサン・ロケにある石油会社セプサの石油精製工場でイギリス船Eileenから漏れ出たもので、会社の説明によると、すでに一杯になっているタンクに職員が誤って石油ホースをつないだためおよそ3トンの石油が海上に流出したという。これにより海岸線が800メートルにわたって汚染され、およそ50人が2台のショベルカーとヘリコプター1台を使って清掃作業にあたった。Eileenには罰金60万ユーロが課された。

さらに押し寄せる移民の波

移民の漂着は止まるところを知らない。昨日、カディス県の海岸に漂着したボート5艘には移民54人が乗っており、カナリアス諸島に漂着した2艘には40人が乗っていた。これでボートによる不法入国を企て逮捕された外国人は先週の土曜日から数えると471人となった。また、昨日はモロッコから北アフリカにあるスペイン領セウタに泳いで入ろうとしたサハラ周辺地域出身者の男性1人が溺死している。

バタスナ党メンバー、保釈金1.2万ユーロを支払い

木曜日に全国管区裁判所のバルタサル・ガルソン判事から1.2万ユーロの保釈金を申し渡されていた18人のバタスナ党メンバーは昨日、現金でパイス・バスコとナバラの裁判所に保釈金を支払い、刑務所行きを免れた。彼らは今後毎週金曜日にこれらの裁判所に出頭しなければならない。ガルソン判事は彼らを、バタスナ党における“ETAの代理人”または“ETAとの連絡係”として糾弾している。
バタスナ党に対する捜査の網はさらに絞られており、裁判所への出頭命令を無視し、現在は行方がわからなくなっているホセ・アントニオ・ウルティコエチャ、通称ジョス・テルネラの発見と逮捕命令が最高裁判所に申請された。また、政府はETAの活動家たちが再びテロ活動に戻ることを阻止するための、刑法の改正を推進する見通し。この目的はテロリストたちに刑の軽減、仮釈放などの恩恵を与えることなく刑をまっとうさせることにある。
一方、フランス当局は引き続き、土曜日にバイオナの刑務所から逃亡したイボン・フェルナンデス・デ・イラディ、通称Susper容疑者の捜索を行っている。彼と共に逮捕された残り8人のテロリストたちはテロ組織所属の罪でフランスで司法措置が取られている。


12月23日(月)

ビルバオで12万人参加の反ETAデモ

昨日、フアン・ホセ・イバレチェ・バスク州知事が召集し、“ETA kanpora”(ETA、出て行け!)の標語を掲げた反ETAのデモがビルバオで開催され、12万人以上(警察の発表)のバスク人が参加した。バタスナ党とPP(国民党)以外のすべてのバスクにある政党が参加、CCOO(労働者委員会)、UGT(労働者総同盟)も参加する中、バスク地方最大の民族主義労働組合であるELAはデモには参加しなかった。
イバレチェ知事の「今回のデモは、反ETA運動の主役は政治家ではなくバスク地方の住民である。」という考えを反映させ、デモ隊の先頭に立って“ETA kanpora”の垂れ幕を持ったのは、主としてPNV(バスク民族党)の青年部に所属する若者から選ばれた。デモ隊は正午過ぎにアイタ・ドノスティ広場を出発、およそ1時間後に先頭が目的地であるビルバオ市役所前に到着したとき、最後尾の人々までの距離は1キロ以上もあった。人々は口を閉ざしたまま行進し、沈黙が破られるのは、時折行進に合わせて誰かが手拍子を打つときだけであった。行進は、市役所前の広場で2000年7月ETAに暗殺されたフアン・マリア・ハウレギ氏の未亡人でバスク政府テロ犠牲者ケア事務所の所長を務めるマイシャベル・ラサさんが声明文を読み上げ、終了した。
今回のデモへの参加に際し、特定の政党のシンボル、また旗を掲げることは控えるよう参加者の間で同意がもたれていたが、唯一反ETA運動組織“Basta Ya”は、デモ隊の中で唯一のイクルニャ(バスク地方の旗)を掲げて行進、主催者側と距離をおいた姿勢でデモに参加していることを示した。また彼らは“Por la libertad.ETA fuera(自由のために。ETAは出て行け。)”とスペイン語、バスク語で書かれた独自の垂れ幕を掲げて行進、他の参加者からブーイングを受け、ヤジを飛ばされるシーンもあり、参加者の間で小競り合いとなった。組織の代表者である哲学者フェルナンド・サバテル氏は「今日、我々はPNVがテロリストより我々のほうをより憎んでいることを確認した。」と語っている。
PPは、イバレチェ氏の所属するPNVが反ETAのデモを召集する一方で、ETAの得になるようなバスク自治領化プランを進めようとしていることに反対の意を表すために参加しなかったが、これに関しては参加した他政党政治家から批判と理解の言葉が聞かれた。PNV党首のハビエル・アルサジュス氏が「バスク人は彼ら(PP)とデモに参加することを望まなかった。我々には彼らの不在はこたえない。」と述べたが、イバレチェ知事は「今日のデモの主役は住民である。」とし、特にコメントすることを控えた。バスク州議会社会党広報官のロドルフォ・アレス氏は「PPが今回のデモに参加を拒否したのは間違いだった。」としながらも、イバレチェ知事が全ての民主主義政党を参加させるための対話の場を設けなかったことも批判した。サン・セバスティアン市長(社労党)のオドン・エロルサ氏は「ETAへの拒絶感は、バスク地方の住民の圧倒的多数が感じているもので、その中にはデモに参加しなかった人々も含まれている。なぜなら、私の考えでは、PPのメンバーも一部のバタスナ党議員もETAの撲滅に力を注いでいるからだ。」とコメントした。

漁業組合のハンガーストライキ終了

ビゴ湾のカンガス・デ・モラソ、アロウサ湾のオ・グロベ、ア・ポブラ・ド・カラミニャルで火曜日からハンガーストライキを行っていた漁業組合の人々は昨日、32日前から彼らが行っていた要求の一部を政府が呑んだことによりハンストを終了した。
彼らは、漁師たちが手作業で石油を回収しなくてもいいように、スキマーズと呼ばれる排水ポンプを少なくとも50個、各湾に配置することを要求していたが、政府執行部は昨日書簡で、リアス・バハス全域に8個ずつ置くこと、今日にも5つの汚染対応柵を送ることを約束した。彼らの要求すべてが呑まれたわけではないが、政府が彼らの行動に注意を向けたこと、また彼らはまだまだ続ける気でいたが、体力が限界に近づいていたことから昨日、ハンガーストライキの終了が決定された。オ・グロベで参加していた一人、フランシスコ・イグレシアスさんは、休むことなく打ち寄せる石油と30日間闘った後、5日間のハンストに参加して5キロ以上痩せ、昨日は気絶する寸前であった。しかしながら、ハンストにより要求の一部を勝ち取ったことイグレシアスさんを始めとする参加者たちは昨日村の英雄となり、祝福のキスと抱擁を受け、彼ら自身も喜びに泣いた。政府と漁師の交渉は金曜日からさらに続けられることになっている。

スペイン政府、40〜60艘のガリシア漁船のモロッコ領海での操業を依頼

プレステージ事故で被害を受けた漁師への援助として10日前にモロッコの国王モハメッド六世が行った、モロッコ領海でのスペイン北部からの漁船の操業を条件付で許可するという提案を受け、先週農林水産省の事務官がモロッコの首都ラバトへ飛んだ。今日にも数ヶ月ぶりにモロッコを訪れるスペインの閣僚として、ミゲル・アリアス・カニェテ農林水産大臣がラバトを訪問し、モロッコのモハメド・タイエブ・ラフェス漁業相と詳しい内容について話し合う。
これまでの事務官レベルでの話し合いでは、最低3ヶ月間はガリシアの漁船にモロッコ領海内での操業を許すがそのための条件はモロッコ漁船とほぼ同じにし、漁船は許可料を払うこと、ある種の魚は獲らないこと、一部禁止区域では操業を行わないこととするという。1999年12月に失効しているEUとモロッコの漁業協定に従えば、スペインはモロッコ政府に一定の金額を支払い、漁船には少なくとも一人モロッコ人の乗組員を乗せ、漁獲量の一部はモロッコに水揚げしなければならないが、今回は国王の命により特別措置が取られる見込み。
しかしながら、PP(国民党)の国会漁業問題広報官のカルロス・マンティジャ氏は今回の申し出により恩恵を受けるのは、最も被害を受けている漁師にはならないであろうと示唆。これは、彼らの船は小さく、モロッコまで出向くのに適さないためで、実際に操業できるのはもう少し大きいサイズの漁船となるであろうと述べた。しかし、アンダルシアも含めたスペインの漁師たちは、これを機にスペインとモロッコの間で漁業協定締結のための話し合いが始められることを期待している。

木曜日に逮捕されたETAメンバー、留置所から逃亡

フランスで木曜日に逮捕されたETA幹部の一人、イボン・フェルナンデス・イラディ容疑者、通称Susper(31歳)が土曜日の夜、バイヨナ警察の留置所から脱走した。フランス内務省は詳細について発表ていないが、その夜当直勤務についていた職員5人が停職処分を受けている。
Susper容疑者は土曜日の午後8時から6時間、監視なしで一人で牢に入っていた。彼は送風ダクトから逃げ出したと見られているが、このダクトの幅は30センチしかないが、鉄格子は付けられていなかった。ここから大人一人が逃げ出したとは考えにくいが、容疑者が背が高く非常に痩せていたことから、彼の逃げ道はここしかなかったと見られている。
フランス警察はこれまでにもETAメンバーを逃しており、2000年11月にフェリックス・アルベルト・ロペス・デ・ラ・カジェ容疑者、通称モブツがスペインに送還される直前にホテルから逃亡、この夏にはイスマエル・ベラサテギ容疑者がパリのラ・サンテ刑務所から逃亡している。


12月20日(金)

コスタ・デ・モルテに長さ30キロの巨大な石油溜まり迫る

石油タンカー、プレステージの石油が漂着し始めてから32日、新たな石油を運ぶ黒い波が陸地から見ることができる距離に迫っており、コスタ・デ・モルテの住民は、海岸にすでに打ち寄せられた石油の回収も終わらないうちに第3の黒い波の襲撃があるのではないかと恐れている。この石油溜まりは北端がトウルニャン岬、南端がムロスに広がる長さ30キロの巨大な塊で、昨日の午後からずっと陸地に吹き付ける風の助けを借りて、コスタ・デ・モルテに迫っている。
最初にプレステージから漂着した石油の清掃がいまだに行われていないいくつもの小さな入り江、人の入りこめない小さな浜辺が石油にまみれたままになっている今、新たに第3の石油溜まりがコスタ・デ・モルテを襲おうとしている。この石油溜まりは厚さが1メートル以上あり、2日前からフィステラ付近にすこしずつ漂着を始めている。しかし、最悪の事態はまだ始まっていない。ここ数日の間にポルトガルとの国境付近から風に吹かれて北上を続けるいくつもの小さな石油溜まりからなる“群島”が岸から30キロまで近づいているためである。
明日には風向きが南に変わるため、石油は岸に向かって流されないのだが、問題は南西の風が石油の漂着を助ける格好になっている今日までで、もしこの石油溜まりが再び岸に流れ着けば、浜辺を清掃するためにスペイン中から集まったボランティアのこれまでの努力はほぼゼロに戻る。退屈で地道な作業に従事したボランティアたちは邪魔者扱いを受けることも往々にしてあり、受け入れ側の体制が整っていないため、一部の浜辺にボランティアが詰め込まれ、不便な場所は何週間も全く誰も派遣されないままであった。環境省が清掃作業用人員の雇用を依頼した公共会社Tragsaと地方自治体、軍隊の衝突は日常茶飯事で、ボランティアのコーディネートから外された市町村は自らの手で対策を講じなければならないこともしばしばあった。最初の石油溜まりが漂着してから32日、中央政府は対策の指揮を取る権限をガリシア州政府に委譲することを決定。1月1日からはガリシア州政府が唯一の機関となり、これまでの市町村役場からの要請を受け入れ、現場での直接指揮はガリシア州政府の管理下において市町村役場が行うことになる。

ETAメンバー9人をフランスで逮捕

2ヶ月前からフランスとスペインの警察で行っていた共同捜査の努力の成果として、昨日、フランスのバイヨナでETAの作戦実行部隊の幹部2人とその他7人のメンバーが逮捕された。
逮捕されたのは幹部イボン・フェルナンデス・イラディ容疑者、通称Susper(31歳)、アイノア・ガルシア・モンテロ容疑者、通称Laia y Mariman(27歳)とその他メンバー7人で、2人の幹部は2ヶ月前にフランスで警察に逮捕されたフアン・アントニオ・オララ・グリディ容疑者とアイノア・ムジカ・ゴニ容疑者の2人の幹部の後継者であった。
イラディ容疑者とガルシア・モンテロ容疑者は昨日偽のナンバープレートをつけた車に乗っているところ、警察の急襲を受け、所持していたオートマチックのピストルを使うことなく逮捕され、ETAの作戦実行部隊は幹部なしとなった。10月以降に逮捕されたETAのテロリストたちが命令はSusperとLaia両幹部から受けていたと供述している。彼らにはサラウツの墓地でのPP幹部襲撃未遂事件、新聞Diario Vascoの経理部長暗殺などにかかわった容疑がもたれている。また、2人の幹部逮捕後、ポー、ルルド、バイヨナなどのフランス南部の5つの都市でETAメンバー7人が逮捕された。彼らが住んでいたアパートからは武器、偽造書類、爆薬などが見つかっている。

ガリシア救済のために立ち上がるアーティストたち

中央政府、州政府の対応に抗議し、プレステージ事故の被害にあった人々を救済するための資金を集める目的で、アーティストたちが集まる。まず明日の午後8時からサンティアゴ・デ・コンポステラでNunca Maisが主催する一連のコンサートが幕を開ける。ガリシア出身のアーティスト、俳優達が自発的に集まって作ったグループで、ラシェの文化センターに立てこもり政府の対応への抗議を行ったContra Burla NegraはSiniestro Total、Berrogueto、Budino、Ruxe Ruxeなどが参加する催し物を行い、12月23日にはガリシア出身のキコ・カダバル、ナチョ・ノボ、パトリシア・バスケス等のコメディアンたちがア・コルニャでGran Noite de Humor Negroに出演し、厳しい状況にあるガリシアに笑いを届ける。
支援コンサートの輪はガリシア地方以外にも広がっている。今日はマドリッドにあるClamoresにJoaquin Sabina、Manolo Tena、Carmen Paris、Complicesを始めとする数々の歌手が集まり、Josep Maria Flotats、Fernando Trueba、David Trueba、Eduardo Mendicutti、Imanol Uribe氏等文化人の支援のもと、コンサートが開かれる。
12月27日にはマドリッド州レガネスのLa CubiertaでAlex Ubago、Amaral、Dover、Presuntos Implicados、Sober、Rosendo、Los Suavesが出演するコンサートも開かれ(20時開演)、司会者にはEl Gran Wyomingを始めとする数人の人物が予定されている。

イスパノアメリカと赤道ギニア出身者を対象とし、スペイン軍に300のポスト

組織再編成にあたり外国人への募集をやめていたスペイン軍が今日から再び外国人へ門戸を開くことになった。応募できるのはイスパノアメリカと赤道ギニアからの合法移民で募集人数は300人。希望者は1月2日までに電話または直接56ある徴募センターに出向いて試験と面接の予約をすることになっている。希望者の選考は、健康診断、身体能力検査、精神検査からなり1月8日から22日まで行われ、合格者は2月12日に入隊する。その後2ヶ月の訓練があり、最終的に今後3年間脱走の罪に問われることなしには、除隊できないことを了承した旨署名することになる。
入隊資格はスペイン語を母国語とする中南米の18カ国のいずれかまたは赤道ギニアの国籍を持ち、18歳以上28歳未満で、スペインの一時または永住資格を持っていることで、以前は入隊資格の中に“自国またはスペインで、スペインで犯罪と見なされる行為の前科のないこと”が条件に含まれていたが、今日の政府公報で今日発表された募集要項ではこれが“スペインでの前科のないこと”に変わっている。
防衛省関係者の話では、“スペインまたは自国で前科のない”という文中の“または”という言葉が以前から混乱を招くとして議論の的になっていたといい、これが“不必要で効率が悪い”という理由から、より重要な前者だけを残すことに決定したという。“効率が悪い”というのは、希望者が自国から無犯罪証明書を取り寄せるのに時間がかかり手続きのスムーズな進行の妨げとなっていたことで、“不必要”というのは、理論上は合法的居住許可を取るのに移民は無犯罪証明書を提出しているからである。しかし、証明書の偽造の可能性とともに、スペイン当局にはわからない恩赦または刑期の満了にともなう無犯罪証明書の提出の可能性の中、武器を使う仕事に彼らをつけることに危惧の声もある。このため新たな規定には、防衛庁が必要と判断した場合には警察またはCNI(スペインの情報機関)を使って、すでにスペイン人に対して行われているのと同様の調査を行えることが取り決められている。


12月19日(木)

政府、プレステージの亀裂修復をフランスの潜水艦に依頼

政府は、フィニステレの南西131マイル、水深3600Mに沈没しているプレステージから漏れつづける石油対策措置を取ることを決定した。これ以上ガリシア海岸に石油が漂着しつづけるのを防ぐため、フランスの潜水艦Nautileが毎日100から125トンの石油を吐きつづけるプレステージにあいた14の亀裂を塞ぐことを試みる。政府はプレステージからの石油流出を完全に止めるため、Nautileの保有者であるフランスの公共機関Ifremarに120万ユーロでこの仕事を依頼した。昨日の記者会見で科学委員会のエミリオ・ロラ-タマヨ委員長が発表したところによると、気象状況にもよるが、Nautileが悪天候によりこれまでの日程の半分しか作業を行えていないことを考慮にいれると、作業は1月20日頃に終了する予定だという。作業の責任者の計画では、Nautileは清掃のためまず2回の潜水行い、その後亀裂を塞ぐために15から20回の潜水を行うことになっている。作業は今日から行われる予定。しかし14の亀裂を塞いだ後も、最悪の場合プレステージから石油が流出することが考えられる。この場合流出量は現在の10%(1日あたり約11トン)にとどまるという。
現在のところ、このプレステージ沈没事故による政府の臨時支出額は2.3億ユーロとなっている。

国会で続く与党と野党の衝突

昨日の国会審議はただならぬ空気に包まれた。PSOE(社労党)広報官のホセ・カルデラ氏が発言を始めようとしたとき、与党PP(国民党)の議員たちが議場から退出したからである。PPはこうして、前日カルデラ氏が政府の体面を傷つけようと一部のデータを削除した書類を配布したことに抗議の意を表明した。これまでも国会で同様の抗議方法が取られたことがあったが、与党がこの手段に出るのは初めて。議場に残ったのは閣僚と国会広報官ルイス・デ・グランデス氏、妊娠している女性議員一人だけで、カルデラ氏が質問を行った相手であるラホイ第一副首相は、カルデラ氏を議員にふさわしくない人物であるとし、質問に答えず、カルデラ氏の辞任または免職を重ねて求めた。
カルデラ氏の事実を削除した文書とは、火曜日にPSOEが配布し、カルデラ氏が昨日ラホイ副首相糾弾の根拠にしたもので、プレステージ曳航先の変更を決定したのはラホイ副首相が国会で報告していたように船舶会社だったのではなく、政府執行部である、つまり国会でラホイ副首相は嘘をついたという内容のものであったが、PPによると、この文書には一部の事実が省かれているという。政府の言う一部の省かれた公式データとは、最初にプレステージを南に曳航するように決めたのは船長であったことである。これに対しカルデラ氏は故意にそのデータを載せなかったことを強調、いずれにせよ責任は政府にあると反論した。
PSOE議員たちは、失敗に終わった1981年2月23日、国会でのクーデター以来、これほど“反民主主義的”なできごとが起こったことはないと言い切り、ガリシアに住む人々の要求に応えないための言い訳探しばかりしていると政府を糾弾している。

ガリシア、カンタブリア海岸の半分が石油により汚染

1ヶ月以上前にタンクが壊れ、流出が始まったタンカープレステージからの石油はすでにガリシア、カンタブリアの海岸部の半分以上を汚染していることが明らかになった。汚染されているのはスペインの海岸線の41%にあたる。今日から環境省はwww.mma.esというホームページを設け、石油で汚染された海岸の状況を日替わりで伝える。昨日は7200人が清掃作業にあたり、前日までの清掃作業で浜辺から集まった石油19,200トンが回収された。
昨日までに集まったデータによると、ガリシア、カンタブリア地方にある浜辺1,064のうち、505が汚染されているといい、そのうち浜辺が完全に石油で覆われているのはポルト・ネグロ、シンプロン、ラリニョ、アルデレイロ、アンコラドイロの5つ。ア・コルニャ県の海岸線の127キロは汚染されている。
昨日作業に参加した7,200人のうち、2,264人がボランティア、3,200人が軍隊、1,700人が公的機関または公的機関から依頼された人々であった。環境省は、ボランティアの希望者には勝手にガリシアやカンタブリアに向かわないよう繰り返し、あらゆるトラブルを避けるため、岩だらけの海岸部での清掃作業は禁止している。力ずくで行ったり、溶剤を使用する方法は使わないように、また、石油の含む揮発性物質が蒸発し、波の力で表面が拭い去られるまでは作業はまたなければならないという。すでに、フランスの海洋事故研究機関CEDREから勧告されており、岩だらけの海岸部の効果的清掃方法が、現在CSIC(科学調査高等委員会)により調査中で、結果が出次第清掃が始められることになっている。
今までのところ、政府、地方行政機関が、公的会社Tragsaを通じて用意したのは、清掃セットが170,700組、道具類が30,600、コンテナが13,460だが、これでもまだ不足しているとみえ、ロドリゴ・ラト第二副首相は建設業者にコンテナを含む設備の提供を依頼している上、世界各地から様々な清掃手段の提供が寄せられている。

ETAの大晦日、マドリッドテロ計画露見

一昨日治安警備隊員アントニオ・モリナさんを殺害したテロリスト2人組は130キロの爆薬を使った爆弾を運んでいたことがわかった。爆弾は90キロの爆薬を使ったもの1つ、残りの40キロを使ったもの4つの計5つで、大晦日の午後から夜にかけてマドリッドのショッピングセンター5箇所で連続テロが計画されていた。これは逮捕されたヘスス・マリア・エチェベリア容疑者の供述により明らかになったもので、他にも今月4日からサッカーチーム、ラジョ・バジェカーノのホームスタジアム裏に又借りしたテロ後の隠れ家があることも明らかになっている。もう一人のゴツォン・アランブル・ソドゥペ容疑者は頸部と腹部に銃弾を受け、引き続き重体で病院に入院しているため尋問は行われていない。内務省は標的となっていたショッピングセンターの名前を明らかにはしていない。


12月18日(水)

ETAメンバーにより、治安警備隊員一人が殺害、一人が負傷

昨日の午後3時50分、治安警備隊員の2人組が、マドリッドとア・コルニャを結ぶ高速道路A-6の36番出口(マドリッド州ビジャルバ)に近い減速車線に駐車されていた車のナンバープレートがその車の車種のものにしては古いのを不審に思い、車に近づいた。アントニオ・モリナ・マルティンさん(27歳)が運転手に挨拶したところ、いきなり発砲、モリナさんは腹部と足に銃弾を受け、同僚のフアン・アギラル・オスナさん(26歳)が応戦、モリナさんを撃った襲撃者の腹部に弾は命中したが、彼自身も腕に銃弾を受けた。偶然現場を車で通りかかった非番の治安警備隊員が本部に通報、救急車がただちに到着し負傷者3人を病院へ運んだが、20分後、モリナさんは死亡した。もう1人の襲撃者、ヘスス・マリア・エチェベリア・ガライコエチェア容疑者は、ピストルでA-6を通りかかった車の女性運転手を脅して乗り込み、20分後彼女を解放した。この車は後にバジャドリッドで乗り捨てられているのが見つかり、容疑者自身は昨日の夜10時半頃サン・セバスティアンで逮捕された。
銃撃戦で負傷した襲撃者はゴツォン・アランブル・ソドゥペ容疑者でETAのビスカヤ部隊の一員と判明している。不審車はフランスで盗まれたもので、偽のナンバープレートがつけられていた。爆弾処理班が到着し、警察犬を使って調べたところ、爆弾が積まれていることが判明、処理班が爆発させたが、推定50キロ以上の爆薬があげた炎は高さ20メートルにも達し、爆発の衝撃により車は約30メートル移動した。この車に詰まれていた爆薬は首都マドリッドで爆弾テロを起こすためのものであったと見られている。

コスタ・デ・モルテに新たな濃い石油溜まりが漂着

政府の発表によると、ガリシア沖を漂う石油溜まりは日ごとに濃さを増しているといい、それは最初に“黒い波”が押し寄せたコスタ・デ・モルテに新たに漂着しつつある石油溜まりに証明されている。これらの石油溜まりは幅が数メートルある上、厚さも1.5メートルに達する。コルクビオン湾に石油が流入するのを防ごうと月曜には33艘の船を使って200トンあまりの石油が回収された。しかし石油はその重さによって水中に沈むため、人々が存在に気づくのは石油溜まりが岸に流れ着いてからというのもよくあることだという。
被害地域はどこも設備不足に悩まされている。そこで石油回収作業にあたる人々は各自で色々な工夫を施している。漁師たちは熊手の先を曲げることを思いついた。これによりこの数日間のように海が荒れている時にも作業にあたれる大型船に石油を上げることが可能になった。しかし、石油溜まりの一つ一つが5トンほどの重さのため、彼らは石油溜まりの上を船で通ってスクリューで切断、その後改造熊手で石油をすくい上げている。小さな船で作業する場合は直接手で石油をすくい上げられるので作業は大型船より容易となる。
コスタ・デ・モルテの陸上では船主のホセ・マヌエル・マルティネス氏が作業の統率を取っていた。昨日は波の高さが2メートル、風と雨が吹き付ける状態であったが、漁師たちにとってこのような状況は日常茶飯事。マルティネス氏は8艘の船を石油回収に出した。彼はもう誰の指示も仰ごうとしない。特に、理論上は船の出動指示を出す責任者であるア・コルニャの海軍基地の指示は。「月曜日、彼らはすることはないと言ったが、その日我々は200トンの石油を回収した。」とマルティネス氏は不信感を露にした。マルティネス氏は船が常に湾内に待機しいつでも回収作業に乗り出せるように船団を組織した。
しかし、夜になると作業は中止せざるを得ない。こうして前日ボランティアの人々が清掃した岸辺は毎朝、新たな石油にまみれて夜明けを迎えることになる。
コスタ・デ・モルテの毎日の景色はまるで月面世界のようである。白い作業服に身を包み、石油の黒い染みに汚れたボランティアが海岸中に散らばり、どの港にも石油にまみれた船が停泊しており、軍用トラックが行き来する。しかし、この地の漁師たちは、彼らが1ヶ月前から毎日苦しんでいるにもかかわらず、人々の関心がまだ石油の流入していないリアス・バハスに集中しているとこぼしている。
実際のところ、リアス・バハスでは沖に引き続き大きな石油溜まりの集合体があり、5日前から風向きによって海岸に近づいたり、遠ざかったりを繰り返し蛇のようにうごめいている。現在リアス・バハスの入り口から約20マイルにあるこの集合体は10×3マイルの範囲で海を占拠している。そのうちのいくつかの石油溜まりは、アロウサ湾から5マイルほどにまで近づいているのが昨日目撃されている。

ラホイ氏とカルデラ氏、国会で衝突

政府のプレステージ事故への対応について報告するため昨日マリアノ・ラホイ第一副首相が国会に出頭したが、この報告はPSOE(社労党)国会広報官のヘスス・カルデラ氏との非難対決となった。1時間にわたるラホイ第一副首相の報告の後、社労党はプレステージの曳航先の変更を決定したのは船舶会社であったと断言したことが嘘であったことについてラホイ副首相を糾弾。ラホイ副首相はカルデラ氏が政府が国民の信用を失うようにと、プレステージの曳航先変更についての情報をねじまげて発表していていたと応酬。国会でこのような下劣な手段を使ったカルデラ氏に辞任を求めた。

ガリシア救済のため、労働者から毎月0.75ユーロを徴収

政府は労働組合と経営者側の提案を受け入れる模様。これは、2.7億ユーロからなるガリシア救済の特別基金を創設し、プレステージ事故により被害を受けた人々の生産活動の復旧と復職に使おうというもので、労組、経営者側は2003年度だけ社会保険料を0.1パーセントあげることを示唆している。これにより納められる社会保険料は1.5ユーロ(会社負担0.75ユーロ、雇用者負担0.75ユーロ)増となり、雇用者と被雇用者から各9000万ユーロの捻出が見込まれ、政府も9000万ユーロを供出することを受け入れている。エドゥアルド・サプラナ労働大臣は今週中にも合意に達する見込みであると述べ、経済省はどのような形で実行に移すかをすでに検討し始めている。
被害地域の生産活動の復旧と人々の復職が目的のこの基金は、新規投資、雇用創出を援助し、黒い波に汚染された地域の人々に職業能力開発を行うことにより、彼らが独立して事業を始めることも援助する。


12月17日(火)

フェリペ王子、ガリシアを訪問

自らの手で石油回収作業に乗り出してから15日。ガリシア地方の漁業関係者達は昨日のフェリペ王子の現場訪問中、初めて彼らの絶望感と落胆ぶりを露にした。王子が訪れたのは最も被害の大きい地域、ポルトノボ、オンス島、アギニョ港で、漁業関係者たちは、石油タンカープレステージから流出した石油と闘うのに十分な設備を王子に直訴し、同行した政治家たちにヤジを飛ばした。最もヤジを受けたのは、ガリシア州政府知事、マヌエル・フラガ氏で、彼に辞任を求める叫び声が四方から飛んだ。
2日前にアスナル首相が行ったつかの間のガリシア訪問では、首相は汚染地域に近づこうともしなかった。しかし、フェリペ王子はジャンパーに身を包み、大西洋諸島国立公園内にあるオンス島のペレイロス浜に降り立った。頭のてっぺんからつま先まで石油にまみれた100人以上のボランティアと海軍兵士に囲まれ、王子は小さな石油溜まりが波に運ばれ流れてくる岸に近づいた。王子は海の状態にショックを受けられたようで、「これはひどい。」とつぶやいた。
ペレイロス浜に到着するまでに、島内を歩いている王子にはすでにいくつもの浜辺を目にしていた。コンショルのボランティアたちはこの機会を逃さず、王子がここまで来たにもかかわらず首相は来なかったことを非難し、叫んだ。「ひげの奴(アスナル首相のこと)が来いよ!」王子に作業を手伝うよう叫んだボランティアもいた。王子に同行していたフラガ知事は非難の的となり、「でくのぼう、フラガ!作業を手伝え!」「フラガ、辞任しろ!」などのヤジが飛んだ。この日、非難が集中したのはフラガ知事であった。ジャウメ・マタス環境大臣に向けられたものもあったが、漁師たちにあまり顔が知られていないため彼への非難はフラガ氏ほどではなかった。
高齢のフラガ氏は歩行に支障を来たすため浜辺には下りなかったが、浜辺に下りた王子は作業の困難さを理解した。「我々は何時間も手作業で石油を回収しているが、石油の黒いラインの場所は変わらない。海を見て状態が変わっていないことを見ると落ち込むので、陸にある我々がすでに回収した石油の方を見るようにしている。」とムルシアからやってきているボランティアの一人は語った。もう一人のボランティアは「国王の訪問のとき、私はムシアにいて、国王に軍隊を派遣してくださいと直訴した。それから軍隊が到着するまでに12時間かかった。今は100人が列になってバケツリレーで回収した石油を運んでいるので、王子にはベルトコンベアーを頼んだ。何時間で到着するやら。」と述べた。
最初に訪問したポルトノボで王子はリアス・バハスの漁業組合所属の船主たちと会った後、町長からボランティアの統率が取れていないこと、また設備の不足についての苦情を訴えられた。町長は王子に中央政府とガリシア州政府の過ちについての報告書を渡した。午後には王子はアギニョへ向かった。ここではアロサ湾に石油が流れ込むのを防ごうと必死の作業が行われている。王子は何人もの人々と握手を交わし励ましたが、同時にフラガ氏への非難も聞く羽目になった。フラガ氏自身は王子の傍らで非難が聞こえない振りをしていた。
一方。リアス・バハスにある主要漁業地のうちオ・グロベとカンガス・ド・モラソでは今日からハンガーストライキが行われる予定。これは、“尊厳ある対応”と“組織的な援助”を求めて行われるもので、関係者の一人は「我々だけが奮闘しなければならないのは、人道的ではないし道理にかなっていない。我々のできることには限界があり、新しい設備が必要だ。」と述べている。
政府第一副首相のマリアノ・ラホイ氏は昨日、日曜日には40マイル離れていた石油溜まりがシエス島のわずか9マイル先にまで接近していることに懸念を表明した。またアスナル首相は、コペンハーゲンで首相が失敗した、こういった環境被害に対する基金を創設しようという欧州委員会への働きかけを今後共に行っていこうというPSOE(社労党)のサパテロ書記長の申し出を断っている。

イタリアで新たな小包爆弾

昨日新たにイタリアで2つの小包爆弾が見つかり、この5日間で見つかった爆弾は全部で5つとなった。昨日の爆弾のうちの一つはローマのフィウミチーノ空港にあるイベリア航空のオフィスに送られてきたが警察の手により爆弾は解除された。もう一つはイタリア国営放送RAIのローマ本社に送られ爆発したが、もうもうと煙が上がり、従業員を驚かせた以外に被害はなかった。
イベリア航空に送りつけられた小包には、またしてもシンコ・セス(「5つの"C"」という意味で、資本主義(Capital)、刑務所(Carcel)、獄吏(Carcelero)、監獄(Celda)に反対する組織(Clula)。)からの脅迫状が同封されており、この中には『12月25日から1月1日までに同社のフライトを利用する乗客の間に、火災を伴うような装置を使って混乱が引き起こされるであろう』との予告があった上、レプソルなど他のスペイン企業に関する言及もあった。この脅迫状の中で、スポンサーを変えるようにと警告されているレプソルオートバイチーム所属のイタリア人バレンティノ・ロッシ選手には警察の警護が付けられことになった。
2つの小包爆弾はいずれも、バルセロナのエル・パイス紙編集部(木曜日)ローマのイベリア航空支店(木、金曜日)、ミラノのマルペンサ空港にあるイベリア航空オフィス(土曜日)に送られた小包爆弾と酷似している。どの小包にも脅迫文が同封されており、その中でマラガでイタリアの副領事を誘拐し、銀行強盗の末2人の警官をコルドバで殺害した罪でスペインに収監中のイタリア人クラウディオ・ラバッツァとミケーレ・ポントリッロの2人の釈放を要求している。

政府の“すべての人にインターネットを”計画、行き詰まり

科学技術省の野心的な計画であった“Internet para todos(すべての人にインターネットを)”が予想されたような結果を出していない。政府は2001年から2003年の間に100万人の人がインターネットの使い方を学べると見積もっていたが、今日までにクラスに登録した人の数はわずか9万人となっている。「コースはおもしろい上に、15時間15ユーロと安いのに、なぜこんなに登録者の数が少ないのかについて我々はわからないでいます。定員にはまだまだ余裕があるにもかかわらず申し込みが少ないということは、我々が宣伝の仕方を誤ったのかもしれません。」と科学技術省の一人は述べた。この原因究明のための委員会が設けられたが、2003年までに当初の見積もり人数が申し込むのはもはやありえないこととなっている。
野党のPSOE(社労党)は宣伝が失敗だったのは確かだが、それは副次的な理由であると考えている。「問題は最初からこの計画には信憑性がなかったことです。計画が立てられた当時から誰もたった4億ペセタの予算で100万人にインターネットが教えられるなどと信じていませんでした。」と述べたのは、フランシスカ・プレゲスエロス議員。今になって文部省との協定が結ばれ、受講を生徒に勧めることと学校の校舎を受講場所に使用することが決まった。さらにカイシャ財団などの私的機関とも交渉が進められている。


12月16日(月)

強風により流出石油回収作業進まず

長さ18マイル、幅6マイルの大きな石油溜まりがリアス・バハスを襲おうとしている。しかし、昨日は午後になって南西の風が南風へと変わったため、今のところヨーロッパ最大の海産物繁殖地であるリアス・バハスへの侵入は免れている。今月3日から漁業関係者たちは自分の船で石油回収作業を始めているが、昨日は強風と高波のため、彼らの小さな漁船では海に出ることはできなかった。
ア・コルニャを訪問した勧業大臣のフランシスコ・アルバレス-カスコス氏は、昨日主要な石油溜まりはビゴ湾の入り口にあるシジェイロ岬の沖28マイルにあると発表したが、バイオナの漁師たちは、ポンテベドラ県サンタ・マリア・デ・オイアの沖わずか3マイルの場所に石油溜まりを発見している。昨日、風速毎時50キロという強風にもかかわらず石油回収に乗り出したのは彼らだけで、バイオナの漁業組合は養殖ムール貝の箱を引き上げるクレーンを搭載した全長15メートルの船で40トンの石油を回収した。一方、カンガス・デル・モラソでは漁師たちが、魚市場を閉鎖し、石油の清掃作業はボランティアに任せることを決定している。ガリシア湾岸のその他の地域では高波のため全長4〜5メートルの小船では海に出ることが難しく、アロサ湾にあるオ・グロベでは新しい石油溜まりがあるかどうかを調べるためだけに船を出し、新しい石油溜まりはみつからないのが確認されると船は港へ引き上げた。浜辺では約240人のボランティア以外にも多くの人々終日清掃作業に参加した。
ポルトガルの気象協会によると、スペインとの国境にあるカミニャから10キロ以下の場所でいくつかの小さな石油溜まりが発見されているが、今後48時間の予報では引き続き南風が吹くと予想されている上、すでにこれらの石油溜まりはスペイン海域にあるため、ポルトガルがこれにより被害を受ける可能性は極めて低いが、リアス・バハスには深刻な被害をもたらし得るという。
沈没したプレステージからは引き続き石油が漏れ出しており、周囲には200×65メートルと150×50メートルの2つの石油溜まりがあるという。またアストゥリアスのジャネスの沖3マイルで極めて濃い石油溜まりが見つかっており、政府の発表によるとこの長さ2マイル幅10メートルの石油溜まりからは昨日20トンの石油が回収されたというが、バスク州政府はこの石油溜まりが2日以内にバスク地方に漂着すると見ている。今日は、現場へのフェリペ王子の訪問が予定されている。

バルセロナでアスナル首相辞任を求めるデモ

石油タンカープレステージの沈没、重油流出事故への対応の責任を取ってアスナル首相、マヌエル・ラホイ第一副首相とマヌエル・フラガ・ガリシア州知事は辞任すべきだと、警察の発表では1.2万人、主催者側の発表では5万人が昨日バルセロナでデモに参加した。バグパイプの音色に合わせて行進したデモ隊は、中央政府カタルニャ出張所前まで進んだが、警官隊との衝突等は起こらなかった。
デモにはガリシアセンター、UGT(労働者総同盟)、CCOO(労働者委員会)の2大労組、ERC(カタルニャ左翼連合)等の左翼政党、BNG(ガリシア民族党)からの参加者があり、またカルル・カンプサノ氏、ジョルディ・マルティ氏といったCiU(カタルニャ同盟)議員の姿も見られた。デモ隊はラ・ランブラ通りにあるガリシアセンター前に集まり、そこからコロンブスの銅像まで下った後、中央政府カタルニャ出張所まで行進、出張所前で代表者が政府の対応と情報操作を非難する声明を読み上げた。Nunca Maisの広報係であるパウロ・ジャブロウスキ氏は行政機関の無責任さと無関心さを批判し、さらにアスナル首相が土曜日の現場訪問で漁業組合を訪問せず、海岸に下りることもなかったことを非難した。
またロンドンでは、主にガリシアからの移民が中心となって昨日、今回のような事故を繰り返さないための措置を求め、国際海運協会本部前に集まった。

セビジャへの敗北に対し、バルサのファンが社長と監督に辞任を求める

昨日バルセロナのホームスタジアム、カンプ・ノウで行われた対セビジャ戦でバルサが0-3で敗北したことから、3年間にわたりファンが溜めていた怒りが爆発。セビジャがゴールを決めると、観客席のファンたちはハンカチを振り始め、スタジアムから「辞めろ!」というGMと監督への叫びが沸き起こった。叫び声は激しさを増したが、ジョアン・ガスパール社長は厳しい表情まま試合終了時まで観戦席に残り、明け方になって自身の辞任もファン・ハール監督の解雇も考えていないことを社長は述べ、チームの危機への対策会議を開くと発表した。昨日の敗北により、バルサは2部リーグ落ちグループに入るまであと2ポイントとなり、トップのレアル・ソシエダとの差は16ポイントに広がった。

アンチOTのコンサート

音楽、エンターテインメント、文化担当新聞記者協会がTVEの人気番組OT(Operacion Triunfo)に対し、厳しい反対運動を始め、これにはBunbury、 Sabina、 el Gran Wyoming、 Miguel Riosといったアーティストたちも名を連ねている。明日はマドリッドのTabooで午後6時からこの運動に共感するアーティストが参加してコンサートが行われることになっており、 Andy Chango、Quique GonzalezやPablo Carbonellなどが出演する。
この人気番組OTは、一般公募で選んだ若者数名をアーティストに育てるもので、視聴者からの投票によって彼らのうちから毎週一人をアカデミーから追放していく形式を取っている。オーディションで使われる曲がオリジナルでないことから、現在スペインのアーティスト達はこの番組に反対するグループと、支持し、番組に出演もする(Rosana、Miguel Boseなど)グループに分かれている。これまでにManolo Garcia、Jaime Urrutia、Marta Sanchez、Paco Iabanez、Juan Perro、Pedro Guerraなどのアーティストが批判的意見を表明している。

週末のスポーツの結果

バイク:スペインのテネリフェ島で開催された、インドア・トライアル世界選手権で、アルベルト・カベスタニー、アダム・ラガ、マルク・フレイシャ選手からなるスペインチームがイギリス、イタリアチームを抑えて優勝した。
水泳:アルゼンチンのマル・デ・プラタで行われた身体障害者水泳世界選手権でスペインチームが50メートルリレーで世界記録を出して優勝。2位はブラジル、3位は中国。


12月13日(金)

災害発生後29日目にして初めて政府は、プレステージ遠隔移動の決断を下したのは勧業省である事を発表。

昨日12日、政府のプレステージ災害対策の総指揮者である第一副首相ラホイ氏は、事故発生から29日経って初めて、事故発生直後タンカーをガリシア沿岸から遠ざけ沖へ移動させる判断を下したのはアルバレス・カスコス勧業大臣と「海難事故による海洋汚染対策国家委員会」の5名の委員である事を発表した。一昨日の11日、国会においてラホイ氏は、プレステージを沖へ移動させる判断は11月14日に政府ガリシア出張局に専門家17名を召集して開いた対策会議の結果に基づいて政府の災害対策本部が下した判断であると述べていた。 しかし、その後このラホイ氏が言及した専門家による会議は11月19日に行われたものでありその時点でプレステージはガリシア沖200キロメートルの海上でほぼ沈没しかかった状態であった事、 およびラホイ氏が挙げた17名の専門家の内3名は政府からタンカーの遠隔移動に関する専門的見地からの意見を聞かれた覚えは無いと発言があった事などから、国会におけるラホイ氏の説明に事実に反する部分があるとして野党側がラホイ氏に事実関係の究明を求め、これに対してラホイ氏は自分の説明に誤りがあった事を認め真実を明かすに至った。
プレステージの沖合への移動は、事故発生翌日の11月14日に、2001年に発足した「海難事故による海洋汚染対策国家委員会」のメンバーである5名の専門家のアドバイスに基づいてアルバレス・カスコス勧業大臣が判断を下した事が明らかになった訳だが、同大臣は「判断の政治的責任は自分にある」と発言する一方、この決断を下したのはあくまでもこれら技術分野の専門家達であると述べている。

事故発生から1ヶ月が過ぎた今日13日午後、政府は今回のプレステージ災害によって引き起こされた被害対策としての全国規模の協力体制を検討する為、全国の自治州政府代表をモンクロア首相官邸に召集した。直接被害を受けているガリシア、アストゥリアス、カンタブリア、バスクを始め全国の自治州の代表が参加を表明している。

沈没したプレステージの亀裂からは重油の流出が続き、既に海面に浮上した重油群は多数の石油溜り群となってガリシアの海岸そしてアストゥリアス、カンタブリア、バスク地方に向かって移動している。ロシアの潜水艦クルスクの回収作業に当った経験をもつオランダのスミット社は、沈没したプレステージの腹中にある重油ポンプで吸い上げ回収するプロジェクトをスペイン政府とEUに提出した。このプロジェクトによると、3500メートルという深度とその深海の高水圧そして重油の高粘度の為この吸出し作業は非常に難しいものであり、約4ヶ月の時間と5千万ユーロの費用を必要とする。
一方、ガリシア地方各地の大学で海洋学の研究に従事する専門家や、ビゴにある国立海洋研究所の専門家などから、これら専門家に対し政府から専門的見地からの分析や意見の打診が一切無い事に対し、不信と不満の声が挙がっている。これら専門家は、当初からこの時期の気候、海流などの状況を分析していれば事故タンカーをガリシア沖南西に向かって牽引する事はあり得なかった事、又一旦事故が起こった後もボランティアや漁業関係者の手による作業を当てにするのではなく、専門家の意見を聞き科学的見地から判断した適切な作業を海洋関係の専門家や海軍の指揮によって行うべきであった事などを指摘している。重油群に汚染されてしまった海岸や入り江では自然生態系が崩れてしまい、完全に元に戻るのは難しい。できるだけ早急に重油やその汚物を消化する生物を増殖させるなどして対策を講じる必要がある。政治的見解に阻まれている事態ではなく、一刻も早く科学的見地からの対策が必要とされていると警告している。

ペンタゴン、スペイン海軍に謝罪

米国国防省のウォルフォビッツ副国防長官は昨日、スペインのトゥリジョ軍事大臣に連絡を取り「スペイン海軍が拿捕して米軍に引き渡したスクッドミサイルを多数積載した輸送船ソ・サン号の身柄を解放してイエメンへの航行を継続させる事」をホワイトハウスは決定した旨を直接伝えた。ウォルフォビッツ副国防長官は今回の輸送船拿捕に当ったスペイン海軍の手際のよさとその技術を賞賛した後、危険を冒したスペイン軍の作業にも拘らず同輸送船の解放という結末になってしまった事に対する謝罪を述べたが、なぜ突然同輸送船を解放する事になったかの理由には言及していない。昨日イエメン政府がソ・サン号内で見つかったミサイルの返還要求を行った後、セメント輸送を装いミサイルを隠して輸送していた事実にも拘らず、米国政府はソ・サン号を解放している。

エル・パイス紙のバルセロナ編集部にイタリアから「小包爆弾」届く

昨日木曜日午前11H20頃、スペインの主要紙エル・パイスのバルセロナ編集部に書籍らしい小包が届いた。小包の形状と具体的に担当者の宛先のない宛名に不信をもった警備担当者はこの小包をスキャナーに通した所、書籍とは思えないような配線が見えた為、即警察に通報した。警察は爆発物処理班(TADEX)を伴ってバルセロナ中心地にある同編集部へ急行して同小包を回収した。TADEXによると、この小包には40グラムほどの爆薬が内包されており、小包を開くと自動的に爆発する様に仕掛けられていた。内務省の発表によると、この小包はイタリアのミラノから送られており、内部にはイタリア語で書かれた「5つのC」と名乗るグループによる脅迫状が存在した。資本主義(Capital)、刑務所(Carcel)、獄吏(Carcelero)、監獄(Celda)に反対する組織(Clula)という「5つの"C"」と名乗る組織は刑に服す人々の釈放を要求している。このグループがどの組織に属しているかは未だ不明の様だ。

カタルーニャ自治州知事夫人、カタルーニャの若者の「国家意識欠如」の理由は教育にある、と発言

カタルーニャ自治州知事ジョルディ・プジョル氏の夫人であるマルタ・フェルソラさんは昨日、ラジオ局のインタビューにおいて「今日の若者達にはカタルーニャを国家として認識する感覚が欠如している。そしてそれは、我々カタルーニャがその祖国の為のどれだけの犠牲を払って来たかを教える事を怠った結果である。」と発言した。先ごろ行われた社会意識調査の結果、アンケートに答えた内の47.6%はカタルーニャを「一地方」であると答え、カタルーニャを一つの国と考える人は全体の36.8%であるという数字が出ている。フェルソラさんは「スペイン民主化後の若者は幼少時からカタルーニャはスペイン中央政府に属する自治州の一つであると言い聞かされて成長してきている。カタルーニャが国家として存在する為に払ってきた努力や犠牲について教えられる機会を持たなかったという教育環境がこの国家意識欠如という結果をもたらしている」と述べている。


12月12日(木)

ガリシア議会、州知事フラガ氏の不信任動議提出

ガリシア州議会では今日、ガリシア民族同盟(BNG)、社会党など野党側から提出されたフラガ知事の不信任動議が審議される。昨日ガリシア各地で多くの州民が集まってデモ行進を繰り広げ、今回の災害対策における中央政府と自治州政府の対策に対する不満・拒否を表明し、それぞれの政府責任者の辞任を要請した。警察の発表によるとビゴでのデモには13万人が集まった。議会はフラガ氏の民衆党41議席、BNGと社会党を合わせて34議席であり、民衆党が絶対多数を有するのでこの不信任動議が可決される可能性は無いが、今回のプレステージ災害における自治州政府の対応に対するガリシア州民の不満を反映する意味で同動議は提出された。

ラホイ第一副首相、政府と自治州の間にはプレステージ災害発生当初から完璧な連携ありと発言

昨日国会のプレステージ災害特別審議の中で、社会党の質問に対して答える形でラホイ氏は、プレステージ災害が発生した当初から中央政府とガリシア自治州の間には完璧な連携があり共同して作業にあたって来たと説明した。これは12月5日にガリシア自治州知事(民衆党)のフラガ氏が行った「中央政府と自治州との連携がうまく作動していない。中央政府ガリシア担当局の出す指示は的外れである。権限領域に関しては後で論争するとして、とにかく自治州としては独自で対策を打ち出す」という旨の発言に反しており、これを訂正する形となった。 また野党の批判に対して、同第一副首相は、プレステージ災害対策の指揮の第一線にあって、常に専門家・技術者のアドバイスに従って発言し行動して来たと主張した。政府のとった判断の中で特に非難されている「プレステージを陸から引き離し洋上へ持って行く」という判断に関してラホイ氏は、この決断は同時ア・コルーニャの中央政府ガリシア出張局で海運関係の専門家17名を集めて行われた対策会議の結果に基づいて取られたものであると説明した。

また同国会ではアスナル首相が初めて今回のプレステージ災害の審議に出席し野党の質問に答えた。社会党書記長ロドリゲス・ザパテロ氏とアスナル首相の間で激しい討論が交わされた。アスナル首相は「より速くより有効な対策を講じる事ができればよかった、そしてプレステージが遭難しなければもっとよかった」と述べる場面があった一方、ロドリゲス・ザパテロ氏は「政府は常に事態を過小評価し続け、事実を隠蔽し、現状を踏まえて周りの発言に耳を傾けるという態度を放棄し続けてきた。」と発言し、被害地域への軍隊派遣を1万人まで増員する様要請したのに対し、アスナル首相は「国家の責任を担う重要なポストについた経験のない者」の発言と揶揄した。

一方リアス・バハス地方は、風向きが変わり再び吹き始めた西風によって陸に向かって移動する重油群による第3の黒い潮の上陸必至と見られている。ヨーロッパ最大の魚貝類養殖地であるリアス・バハスでは、スペイン海軍の軍艦“ガリシア”、政府が他の国から借り入れた汚物回収船、数百人のボランティア、地元漁民などの総力を結集した努力にも拘らず、湾への重油の流入は時間の問題と見られる。湾への自然の防御壁となっていたシエス島も既に第三の黒い潮に洗われており、リスボンの高等科学局の分析によると、厚く広い石油溜りは明日にはリアス・バハスに上陸すると発表している。

財務省のバルセロナ出張所、自家製爆弾で爆破される

今朝午前2時ごろ、バルセロナ市内レス・コルツ地区のカバジェロ通り52番に位置する中央政府財務省のバルセロナ出張所の入り口に仕掛けられた爆弾が爆発し、同派出所を始め周りの建物にまで及ぶ大きな被害を引き起こした。幸い怪我人や死亡者などの犠牲者は出なかった。爆弾は自家製で中規模の破壊力のもので、出張所は1階と2階の事務所のドアやガラスが吹き飛び、小規模の火災が生じ、隣接の建物のガラスやブラインドなどが破損するなどの被害が生じた。捜査当局によると、今のところ犯人側からの犯行声明もなく、誰による犯行かはわかっていない。犯行に使われた爆弾を調べている警察の爆発物処理班は犯行現場周辺の車に他に爆弾が仕掛けられていないか調べたが、何も見つからなかった。

スペイン海軍が横収したミサイルをイエメンに返還するという米国の決定にスペインは不快感を隠せず

月曜にイエメン沖のインド洋上でスペイン海軍によって拿捕された北朝鮮の輸送船に詰まれていたミサイルをイエメンに返還するという決定を米国は下した。米国の指導のもと洋上でこの輸送船を拿捕するという危険な作業にあたったスペイン海軍の責任者であるスペイン軍事大臣は、この米国の予想外の決断に対し遺憾の意を表明している。チェニー米国副大統領はイエメンの国家元首アリ・アブドゥラ・サレ氏に直接電話をし「インド洋上で拿捕された北朝鮮の輸送船は、ブッシュ大統領の命令により元通りイエメンに向けて航海を続ける」と伝えたとされる。米国ホワイトハウス・スポークスマンは「拿捕されたソ・サン号を徹底的に調べた結果、国際法に照らし合わせて違法と思われるような事実は何も発見されなかったので、同輸送船は解放された。」と発表した。 このソ・サン号が北朝鮮を出港した時点から監視を続けていた米国軍の指示の元で、スペイン海軍は兵士の生命の危険も充分に考えられる危険な作業であるこの輸送船の拿捕を行っている。 輸送船を米軍側に引き渡した後に取られたこの米国側の突如の態度変更に対し、スペインのトリジョ軍事大臣は公式な理由の説明を求めている。


12月11日(水)

プレステージ船体の14の亀裂から毎日125トンの重油が流出

昨日政府第一副首相ラホイ氏は、船首と船尾に分かれて3600メートルの海底に沈んでいるプレステージの腹中からは休み無く重油が流出し続けて海面に浮上しており、事態は当初政府が発表した「海底の低温によって重油は凝固してしまう」という見解とは全く異なった現状である事を認めた。

一方海上を浮遊している石油溜り群は、風が西風に変わってきている為、再びガリシア海岸線に向けて移動している。

政府の任命で発足した科学対策委員会のロラ・タマヨ委員長はフランスの特殊潜水艦ノーティルがいままで入手した情報に基づいて同委員会が行った分析と今後の対策を発表した。それによると「プレステージにあると発表されている14の亀裂は全てが亀裂ではなくいくつかは蓋の開いてしまったバルブである。亀裂は拡大する危険があるがこれらのバルブはこれ以上口径が大きくなる危険は無い為、対策としては深海で作業できるノーティルを使ってこれらバルブに蓋をする事を考えている。これから4日間に渡って行われるノーティルの作業の主目的は亀裂が拡大する可能性を調べる事と、現在流出している重油の温度を確認する事である。タンカーで輸送する重油は通常ある程度の高温にして操作しやすい液体状態でタンクに所蔵されるが、3600メートルの深海の2.6度という深海にあって未だプレステージ腹中にあるはずの6万トンの重油は、凝固はしないが次第にその粘度はあがり最高値に達する。粘度が高くなるほど流出量は減少してく。現在流出している重油の温度を測る事によってその粘度が最高値に達する時期を計算できる。現在の粘度で1日125トンの重油が流出しているがこのペースだと2006年まで流出が続く、粘度が上がり流出量が減るという事はその流出期間が長くなるという事である。今後の対策としては、まず短期的にはタンカーからの重油流出は続き海面の石油溜りは続くので、これを回収して海岸に黒い潮となって流れ着かない方法を検討する。長期的には海底にある6万トンの重油をどうするか。これにはまずノーティルを使って流出口を塞ぐという作業の現実性(技術面と経済面)をまず調査・検討する。他にも、タンカーを爆破し一挙に重油を流出させ海上に多数の吸引船を待機させ一気に重油を回収してしまう案や海底のタンカーをまるまる囲みこむ“海底の棺”の中に封じ込めてしまう案などが出されている。」と述べている。

一方、昨日プレステージ事故発生時の状況の説明を国会で行ったアルバレス・カスコス勧業大臣は、野党からの質問に対して技術的な見地からの説明を行った。本来緊急時にスペイン政府の要請に応じて海難救助機関(Sasemar)から発せられる任務を緊急に遂行しなければならなかった牽引船リア・デ・ビゴは、スペイン政府から「故障したプレステージを牽引せよ」という要請を受けていながら、プレステージの船主会社やオランダの牽引会社などと交渉(タンカーの船体および積荷の重油を救済できた場合にはその価値の30%の報酬を受ける)を行っていた疑いがある。事故発生後のこの貴重な時間に利害関係上の折り合いが付かず何処にタンカーを牽引していくかが決まるまでの時間タンカーの船長は船のエンジンを止めるという判断を下しその間プレステージは故障した状態で海上を漂流していたと見られる。アルバレス・カスコス大臣はリアス・デ・ビゴが所属するRemolcanosa社に対し法的措置を取る事を表明した。

野党の全政党は同国会において、この事態を国家的非常事態と考え政府首相に書面にて「緊急審議」を持つ事を申請した。これに答える形で、11月13日のプレステージ事故発生からほぼ1ヶ月が過ぎた今日12月11日に初めてアスナル首相が国会の「プレステージ対策特別審議」において答弁することになった。同審議では社会党のロドリゲス・ザパテロ書記長、左翼連合のジャマサレス書記長などは「一連の政府の行った状況分析と対策」を追求し、与党民衆党はアスナル首相が災害発生後にEUと交渉して来た成果を分析すると予想されている。

スペイン海軍、イエメン沖で弾道ミサイル“スクッド”を積載した北朝鮮の船に発砲

一昨日月曜日イエメン南のインド洋上で、少なくとも20以上の弾道ミサイル“スクッド”を積載して航行していたカンボジア船籍で乗員は北朝鮮人の輸送船「ソ・サン」に対して、スペイン海軍の巡洋艦“ナバラ”と補助艦“パティーニョ”が発砲した。この船「ソ・サン」は米国の進める対テロ作戦中の「世界の船舶のブラックリスト」の中の一隻である事を認めたスペイン巡洋艦は、北朝鮮の輸送船に接近し同船の身元証明を求めた所、「ソ・サン」号は速力を上げて逃げ去ろうとした。スペイン巡洋艦は警告の為に「ソ・サン」号の船首先数メートルに向けて発砲した。怪我人などは出なかったが航行が難しくなった輸送船上にヘリコプターから海兵隊特殊部隊が入り込み、「ソ・サン」号を拿捕した。拿捕された輸送船の船長は当初セメント輸送船であると主張したが、船内点検に参加した米国海軍専門家によると少なくとも20基以上の弾道ミサイルを製造する為の部品が積載されている事がわかった。北朝鮮から出港しインド洋を航行していた「ソ・サン」号の行き先がどこだったかは不明だが、今日にも同船はスペイン海軍から米国海軍に引き渡される予定となっている。拿捕のあった海域では、米国の指示の下、アル・カエダなどテロ組織の進入を阻止する為、8隻の軍艦からなるEU・米国連合部隊が警戒に当っているが、その総指揮は現在スペイン海軍が行っている。今回の「ソ・サン」号拿捕がこの警戒態勢に入ってから初めてのケースであったが、犠牲者を出す事もなく速やかに行われた一連の行動が評価されている。

バルセロナのスタジアム「カンプ・ノウ」2試合禁止措置

去る11月23日にカンプ・ノウ・スタジアムで行われたリーグ戦、バルセロナ対レアル・マドリッドの試合で起こった事故を調べていたスペインサッカー協会の競技委員会は、事態は非常に深刻であると判断し、バルセロナのチームに対しスタジアムを2試合分閉鎖する事と、4000ユーロの罰金支払いを命じた。又同委員会はバルセロナチームの会長であるジョアン・ガスパル氏に対しても、事故のあった試合後に彼が行った発言に対して懲罰を審議すると発表した。この審議の結果によっては、ガスパル氏は2ヶ月以上5年以内の役職停止命令を受ける可能性がある。11月23日の試合中に、かつてバルセロナの花形選手であったが突如超高額の移籍金によってレアル・マドリッドに移ったフィーゴ選手がコーナーキックをしようとした所、バルセロナ側の客席から様々なものがコート内に投げ込まれ試合が中断された。投げ込まれたものの中にはガラス瓶やゴルフボールなど危険なものも多く、審判の判断で試合は一次中断し、場内が治まるまで選手を控え室に待機させる処置がとられた。又試合終了後、バルセロナ会長のガスパル氏は、この「事故」を引き起こしたのは挑発的なフィーゴ選手の態度であったと発言し物議を醸していた。


12月10日(火)

ガリシア自治州政府、「海中に沈んで移動する重油群」のリアス・バハスへの到来による第三の黒い潮を予告

プレステージからの流出重油に関する情報を伝えているガリシア自治州政府の広報ウェブサイト上で、上空からは認識できない、海中を移動している重油群がリアス・バハスに上陸する可能性があると発表している。この情報によると、海中を移動している重油群は、沖では海流に押されて海中を移動するが陸に近づくにつれて海流の動きが小さくなり次第に海面に浮上してくる。この海流に押されて移動する重油郡の存在は、今までにガリシア各地の海岸に事前の上空からの調査でも発見されなかった石油群が突然現れて住民を驚かせたケースによっても裏付けられている。海中の重油群の移動は海面を風に押されて移動する石油溜り群の移動より遅い為、今後この海中の重油が東に移動を続けリアス・バハスに漂着する可能性がある、としている。

一方3700メートルの海底でプレステージの船体調査を行っていたフランスの特殊潜水艦ノーティルからの情報によると、船尾には新たに3つの亀裂が発見され計5つの亀裂が存在する事が報告された。また3700メートルの深海の2度という低温にも拘らずタンク内にある石油は液体のままであり、スペイン政府が考えていたように凝固する可能性は無いと考えられると報告。第一副首相ラホイ氏はこの現実を受け入れ、災害発生後26日目にして昨日ようやく、海運、海洋学、水路学、化学などの分野の専門家達を任命して「科学委員会」を発足させた。政府は今後取るべき短期、中期、長期的見地からみた対策に関して、これら専門家による科学委員会にアドバイスを求めると発表した。又フランスから「借りている」特殊潜水艦ノーティルはスペイン政府から当初要請された深海での調査作業を終了したが、今後も科学委員会の対策はノーティルからの情報を必要としているので、スペイン政府は外交筋を通してこの特殊潜水艦の貸借期間の延長を交渉しフランス政府の承諾を得た。

今回のプレステージの災害が発生してから今まで第一線の指揮は全て第一副首相のラホイ氏に任せ、野党側が提唱する合同対策会議、国会での首相による状況説明、国会の委員会における首相による答弁などを一切拒否してきたアスナル首相が、昨日夜09H30ニュース後のゴールデンタイムの時間帯にオンエアーされた国営テレビのインタビューに登場した。被害地域の住民を始め、ガリシアに駆けつけたボランティア、野党政治政党、など多くの分野から、今回の災害における政府の対応姿勢に対する批判が膨れ上がる中でのこのテレビ出演だった。インタビューの中で「政府の対策が出遅れた可能性、あるいはその対策が最良のものでなかった可能性がある事は認める。しかし災害発生当初から政府は各時点で最良と思われる選択をし、全力を尽くしてきた。」と述べた。災害発生当初から中央政府の姿勢は一貫して事態の「過小評価」「希望的観測に基づいた対策」の傾向があり、「タンカーから流れ出た石油はほんの少量でありガリシア沿岸には流れ着かない、沈没したタンカーの腹中の原油は深海の低温で凝固してしまう、軍隊の出動を必要とする規模の汚染ではない」などの説明をし続けてきた中央政府だったが、ここに来て、抑えきれない世論に対し消極的ではあるが「自己批判」をテレビのインタビューという形で行った事になる。しかし災害地で現在も汚物回収作業に追われながら第三の黒い潮の到来を待ち受ける漁師ら住民にとってテレビで首相が話す言葉は信憑性を失ってしまっていたようだ。

また昨日からようやく、今回の災害によって操業不可能になった漁業関係者に対して、中央政府と自治州政府からの援助金支給が開始されたが、この援助金受給に必要な書類関係の手続きの為に昨日は地元各地の漁業組合窓口には長い行列ができた。職種によって1日あたり21ユーロから41ユーロの援助金の給付に対して、漁師らは「今日の食の為には有効だが、家族を養い子供を学校に行かせる為にはあまりにも少なすぎる額だ。一体この先どうなるのか」と不安を隠せない様子だ。

映画館の売上金輸送途中のガードマン2名、現金強盗団に撃たれて死亡

昨日カタルーニャ地方のタラサ郊外にあるショッピング&プレイセンター内の映画館前で、セキュリティーサービス会社プロセグールのガードマン2名、フランシスコ・フステ・ルビオさん51歳とエラディオ・ロメロさん40歳が銃弾を受けて死亡した。毎月曜日と同様昼頃に、ガードマン2名が売上金をアタッシュケースに入れて映画館から運び、300メートルほど離れた駐車場でドライバーが待機している現金輸送車まで行こうとしていた。入り口で待ち構えていた3名の顔を覆面で覆った賊は、2名のガードマンが映画館から出てきた所に20発以上の銃弾を乱射し、殆んど即死状態のガードマンの手から週末の売上21万4千ユーロの入ったアタッシュケースをもぎ取って逃走した。3人の賊は現場から細い道を走って逃げた後、近くで第4の犯人が待機していた車で逃走したと見られている。警察捜査当局は、拳銃を20発以上も発砲するという冷血だが確実な方法を使っている、3連休という特に売上金の多い週末明けを狙っている、安全の為にその日によって変えられる現金輸送車のルートや回収時間などを熟知している、逃走経路を巧妙に選定している、また一旦ショッピングセンターを出てしまうと高速を抜けた後多くの工業団地のある地区に入り捜査の眼を眩ませる事のできる地域を選んでいる、などの点からこの犯行は犯罪組織による計画犯行と見ている。

8人の犠牲者を出した交通事故を引き起こしたのは指名手配中の無免許20歳の女性

おととい日曜日の午後、ジロナ県の高速A7号線で反対車線に突っ込み、正面衝突で8名の死亡者を出す大事故を引き起こした車を運転していたのは、運転免許を持たず、全国指名手配を受けていた20歳の女性だった事が判明した。この女性はバルセロナとマドリッドの裁判所から2件の罪状で指名手配を受けていた。又運転免許を持っていなかったにも拘らず家族4名を同乗させたアウディを時速120キロの制限速度を超える高速で走らせていたと見られている。アウディに乗っていた5名の女性は事故の前夜に、近く刑務所から出所する家族のお祝いパーティーを行っており、女性らの家族は「運転していた彼女は酔っ払ってはいなかったが一晩中一睡もしておらず疲れていた」と語っている。ガードレールの破損状態や大破した車の状態などから、アウディはかなりの高スピードで走行しており、運転者のちょっとした不注意が中央分離帯を飛び越えて反対車線へ落下するという惨事を引き起こしたと見られている。同乗の4名の内、1名は貨幣偽造で起訴されマドリッドの裁判所で禁固刑の判決を受けており、他の1名もバルセロナの裁判所への出頭命令が出ていた。 アウディに乗っていた5名、そして正面衝突された車に乗っていた親子連れ3名の計8名は即死だった。


12月9日(月)

コスタ・デ・ムエルテ沖250キロのプレステージ沈没海域に3つの巨大な石油溜り

漁業関係者やボランティア達はプレステージ沈没前に流出した石油の上陸による重油汚物の清掃をこれまで2回繰り返しているが、ガリシア各地の海岸には第三の黒い潮が迫ってくる可能性が大きくなっている。昨日飛行機で上空から現場を視察した政府第一副首相ラホイ氏は、プレステージが3600メートルの海底に沈んでいる海域の海面には3つの巨大な石油溜りが浮遊している事を発表。これら3つのの石油溜りはそれぞれ直径4.6Km、7.4Km,15.7Kmであり、厚さも大きく粘り気も強い様子。 海底で沈没したタンカーの状態を調査しているフランスの特殊潜水艇からの報告では、船尾にも2つの亀裂が新たに発見されそこから石油の流出が見られる事が解った。既に先週木曜日の時点で同潜水艇の調査によって、船首部分には4つの亀裂がありそこから細い糸状になった半固形状態(水飴の様な状態)の原油が海面に向かって浮上している事が報告されている。その流出量は未だ限定できていないが、当初スペイン政府が発表した「深海の低温の為石油は凝固してしまう」という説は覆されている。フランスの専門家は深海の高水圧によってタンカーの船体は潰されてしまう可能性も考えられ、その場合にはタンカーの腹中にある5万トンの原油は海中に散らばるという最悪の事態となると語っている。 12月6日(金)の憲法記念日から土日を合わせた3連休に、スペイン各地からガリシア沿岸に駆けつけたボランティアは3000人を超え、天候に恵まれたこの3日間漁業関係者や軍関係者と共に石油汚物の清掃作業に当った。ボランティアを迎えた町や村では、バルやレストラン、ホスタルでは食事や宿泊所を提供し、商店などは食材を始め必要品の提供、女性は総出で炊き出しや作業着の洗濯に当るなど、ボランティアと住民が一体となって作業が進められる光景が見られた。 細かくなった石油溜り群は西風に押されてアストゥリアス地方やカンタブリア地方の海岸にも多数上陸し、汚染された海岸の数は70にも登った。これらの地方でも連日石油汚物清掃作業が続けられている。 連休が終わり、ボランティア達が引き上げて行った後、ようやく動員され始めた軍隊がその作業を引き継ぐ事になる。既にこの連休に清掃作業に当っていたカディスから派遣された海兵隊に加えて、今日にも陸軍から1800ほどの兵士が派遣され作業にかかる。またスペイン各地の陸軍支部からも今週中に増員され、合わせて8200人の兵士が陸上で清掃作業に当る予定。海上では13隻の石油吸引船が石油回収作業に当り、19隻が石油溜り群追跡作業に、15機の飛行機が空からの追跡調査に、それぞれ当ると発表されている。 今回の「災害」の被害者である漁師、養殖従事者などにようやく今日から中央政府および自治州政府から援助金が支給される。海が生活の糧であるこれらの人々にとって一切収入の無い状況が既に25日近く過ぎている。従事する職種によって異なるが1日20ユーロ〜30ユーロの援助金は、災害発生時から12月15日までの分が一括して今週の月曜か火曜に被害者に支給される事になっている。

連休の交通事故は37件、死者47名

金曜の憲法記念日を合わせた三連休の為、先週木曜午後から金曜午前中にかけての大都市脱出組み、そして日曜の午後から夜にかけてはその逆の「民族大移動」の為、スペイン全国の道路ではあちこちで渋滞がみられた。また木曜・金曜は全国的に寒波に見舞われ、雪・霧・路上凍結などマイカーで移動する人々の足を大きく乱した。この連休中に起こった交通事故は計37件で、死者47名、重傷者36名、軽症15名の犠牲者を出している。その中で注目さるのは、昨日ジローナの高速A7号線で起こった事故で、5名の女性が乗ったアウディ100が高速で走行中に中央分離帯を飛び越えて反対車線に突っ込み、そこに走って来た親子連れ3名の乗るラントラに正面衝突し、全員が死亡した事故。アウディは物凄いスピードで暴走し正に中央分離帯を乗り超えて「飛行して」反対車線に落下した形となった、と捜査当局は発表しているが、暴走の原因は未だ解っていない。またアウディに乗っていた5名の女性はいずれも身元を証明する書類を携帯していなかった模様。14H30頃起こったこの大事故により、連休を終えてバルセロナ方面へ帰る車で4キロ以上に及ぶ渋滞となった。

政府、カトリック教会による「宗教」担当教師給与の中間搾取を認める

スペインの公立小学校(EGB)に通っている子供達の時間割を見ると週2回「宗教」の時間がある。現在この教科を教える教師は教育科学省に属する公務員であり給与はスペイン国家から支払われるがその任命権はカトリック教会(スペインカトリック司教協会)にある。 離婚した事によって、あるいは離婚暦のある人と交際している事によって、この教師の職を剥奪されたケースがあり、これら「宗教」科目の教師らが主張する基本的人権と、カトリック司教側の主張する「宗教を教える者に求める適正とモラル」の対立したケースが最近注目を集めている。 一方、多くのこれら「宗教」担当教師らは1998年度の給与を未だに受け取っていない。現在彼らの身分は国家公務員でありその給与は国庫から支給されるが、当時は直接国家がこれら教師に支払うのではなく間にスペインカトリック司教協会(CEE)を介在させてその支払いが行われていた。1998年12月当時第一次アスナル内閣はスペインカトリック教会との交渉の末、教育基本法を一部改革し、それまでCEEによって行われていた「宗教」担当教師への給与支払いを国家が直接行う形に移行する事でカトリック教会側と合意に達した。これ以降CEEは「宗教」担当教師の給与支払いには仲介せず、その任命・解雇のみに介在する事になった。 教師側は1998年度給与未払いを裁判に訴えており、いくつかの廷においても中央政府は教師への給与を支払いは1998年の時点で行われた証拠を提出している。国会において野党左翼連合(IU)の質問に対しても、政府側は1998年度9月から12月分の公立小学校教宗教担当師の給与として66億2千3百万ペセタをCEEに対して送金している事を認めている。IUによると、裁判の法廷において教師側が給与を未だに受け取っておらず裁判官が中央政府に対してその早期支払いを勧告したケースでは、政府はその勧告に従って原告ら教師に支払いを行っているが、それは当時CEEに支払った給与をさらに本人に直接、つまり2度支払っている事になるとし、政府のCEEに対する態度を明らかにする様求めていた。カトリック教会を擁護する立場を取ってきた保守民衆党政府だが、明白な証拠の前にはカトリック教会側が公立学校教師に払うべき給与を中間搾取していた事実を認めざるを得なかった。

週末のスポーツ

ロナウド、ラウルはその威力を発揮して1−5でマジョルカに圧勝。一方バルセロナはラジョ・バジェカノに1−0で負け、さらにリーグ内での下降を続けている。 トヨタカップを獲得して帰国したレアル・マドリッドにとって最初の試合はマジョルカで行われた。チケットを完売したマジョルカのホームグラウンド、ソン・モイス・スタジアムの2万3千の観衆は「世界一」のカップを持って凱旋したチームを拍手で迎えた。試合は最初から圧倒的なレアル・マドリッドの優勢で進められ、ロナウドはその威力を遺憾なく発揮して4点差で圧勝した。一方試合の入場券を入手できなかったレアル・マドリッドの過激ファンら24名が滞在ホテルで暴れ、ロビーの家具などを道路に放り出したりガラスを割ったりして大きな被害を与えた末、逮捕されるという騒動があった。レアル・マドリッド側は逮捕された24名がクラブのメンバーであるかは今の時点では不明だが、もしメンバーであった場合には即追放処分にすると発表している。


12月6日(金)

憲法記念日で祝日にあたるため、今日のトップニュースはお休みさせて頂きます。


12月5日(木)

サンタンデールの車両爆弾はETA移動部隊のよるものか

火曜日の午後起こったETAによるサンタンデール市内中心部の駐車場爆破の捜査が続けられている。 車両爆弾として使用された灰色のルノー19は殆んどその原型を残さずばらばらに吹き飛んでおり、この残骸からの犯人捜査は難しく、駐車場のモニターカメラに記録された映像などを頼りに捜査は行われている。捜査当局によると、テロリストらは少なくとも2人で2台の車を使って当日バスク地方からサンタンデール市に来、爆破数時間前に駐車場に入ったものと見られている。彼らは内1台に35キロのアモナル爆弾を搭載し時限爆破装置を設置して、もう一台の車で駐車場を出ており、爆破が起こった時点ではかなり遠くへ逃走していたはずと見られている。テロ対策特殊斑の見解によると、カンタブリア地方に常駐のETAの部隊がある可能性は無く、今回の爆破もバスク地方のコマンドが“出張”して行った犯罪と見ている。

ETA,イバレチェ氏の“主権主義”案はバスクに戦争をもたらすと発表

バスク独立をめざすテロ集団ETAはガラ、エグンカリアのバスク地方紙2社に送りつけた声明に中で、「レンダカリ(バスク自治州知事)イバレチャ氏が掲げている“スペインとバスクという2つの主権を共存させる共同統治”という形の国を作る」という案は、バスク地方を戦争へと導き、ひいてはスペイン国家への服従へと導く、と発表した。 イバレチャ氏はこの“共同統治案”を提案し、バスク地方の政治政党、バスク経団連など様々な団体にこの案に賛成するよう説得にあったており、1年後にはバスク地方住民による国民投票を行いたいとしている。これに対して社会党、民衆党を始めとする非民族系政党は「レンダカリの提案は、バスク地方住民の半数を占めるバスク民族主義を指示しない人々に対してバスク地方を出て行けという事だ」と、反対の意を表明している。バスク経団連を始めとする経済界は、スペインから独立することによって生ずる経済面でのマイナス面を懸念して難色を示している。 一方イバレチェ氏の属する自治州政府与党PNV(バスク民族党)党首アルサジュス氏は「バスクとスペインの両方が主権を持って“共同統治”するという考えは、我々にとって充分ではない。主権はあくまでもバスク政府が握るべき」と、同党内でもさらに急進的な意見を掲げている。 今回のETAの声明は「イバレチャ氏の提案にはゲルニカ憲章(現在のバスク自治州の政治憲章)に欠落しているものと同じもの(独立統治権)がかけている。従ってこの案がバスクを平和へ導く事はありえない。PNVはまたしてもバスク民族をまやかしの自治政治で丸め込もうとしている。」としている。

パスカル・エステビル元判事、「開放処遇」となる

かつてバルセロナ地方裁判所判事で司法審議委員会の一員でもあった、ルイス・パスカル・エsテビル氏には、1996年複数の背任行為により「6年間の裁判官免許停止」処分が下され、その後詐欺罪などで起訴され最高裁判所から下された6年の懲役に服していた。この刑期の約3分の2を果たした同氏は昨日から、昼は刑務所から出て夜だけクアトレ・カミンス(バルセロナ)の刑務所へ戻ってくれば良いという半自由段階処遇(開放処遇)扱いとなった。 この処遇を得る為に、パスカル・エステビル氏は日中バルセロナ市内の弁護士事務所での就労をオーファーした。同氏は近々別件の裁判の為に法廷に出廷する事になっているが、その裁判では同氏が裁判官だった時期にその地位・職務を利用して行ったと見られる複数の恐喝・収賄容疑で起訴されている。Dragados、Macosa, Bertran de Caralto, Rogelio Roca Salamanca などのバルセロナの建設業者幹部が関係した一連の裁判で、裁判官の地位を利用して、“不利な判決を避ける便宜をはかる”為にこれら幹部を脅迫、恐喝、して賄賂を受け取っていた疑いがもたれている。

プレステージからの流出石油、遂にリアス・バハスに上陸。アストゥリアス地方、カンタブリア地方、ポルトガルへも接近

漁業関係者やボランティアらの必死の努力にもかかわらず、分厚い石油溜り群は昨日リアス・バハスの海岸を襲った。サルボラ島、オンス島などを既に飲み込んだ黒い潮は、ガリシア沿岸随一地の国立自然公園であるアトランティカ諸島、シエス島などを汚染した後、さらにヨーロッパ最大の魚貝類養殖地を抱えるリアス・バハスにまで及んだ。 長さ70キロメートル、総量600トンにおよぶ細かくちぎれた石油溜りの大群は更に南下を続けポルトガルとの国境を形成するミーニョ川河口までおよぶ恐れが見られる。ポルトガル政府は「災害に引きずられないように、先手を取って対処しなくてはならない」として警戒態勢に入っている。 アストゥリアス地方やカンタブリア地方には一両日中に石油溜りの漂着が予想されている。カンタブリアのロレド海岸では既に砂浜に漂着した200キロの石油汚物を回収した。またフランス政府は流出石油が9日以内にフランス領沿岸にも漂着すると見て、現在ガリシア沖で石油回収作業に当っている同国の特殊作業船2隻をフランス海域に移動して、漂着する石油溜り群の回収に当らせるとしている。ジーン・ピエール・ラファラン首相は国会において「万全の体制を整えて必要な時必要な行動を取れるようする」と述べた。

漁業関係者やボランティアらが「物資の不足と指揮統率体系の欠如」に苦しみながら必死の清掃作業を続ける中、中央政府は「プレステージ災害」が始まってからほぼ20日が経った今日初めて国会において現状説明を行う。本日午後政府第一副首相ラホイ氏は、国会に出頭してEU(ヨーロッパ連合)共同委員会に対して、一連の災害状況とそれに対して取られた政府の対策などを説明する。

ガリシア地方紙「Voz de Galicia(ガリシアの声)」によると、漁業禁止海域は913キロメートルの海岸線に及び、この禁漁によって影響を受ける漁業関係者は16,140になる。ガリシア州のGDPの10%を占める漁業の受けた被害は、沿革産業である魚貝類加工食品製造業、物流・輸送関係、造船、観光などにも波及し、ガリシア経済に大きな打撃を与えるだろうと見ている。

現地住民、漁業関係者、ボランティア、そして野党政治政党、知識人など多くの分野からの軍隊出動要請の声に答えて、ようやく軍事大臣トゥリジョ氏は海軍から500名を送る事を決めた。多くの批判の声が挙がる中、ワシントン訪問から帰国したトゥリジョ大臣は、海軍所属の海軍学校の活動を一時的に停止して同学校の生徒と教官500名をガリシアに派遣して清掃作業に当らせると発表した。一方陸軍からは、明日からの3連休に各地からやってくる3000人以上と予想されるボランティアへの食事と仮眠所の世話を統率する為、兵士と物資が送られた。


12月4日(水)

ETA、サンタンデール市内中心地の駐車場で車両爆弾を爆破

ほぼ2ヶ月の沈黙を破って昨日車両爆弾を設置したETAはその標的にサンタンデールを選んだ。 サンタンデール市内中心地にあるフォンソ13世広場に位置する地下駐車場に35キロにおよぶ爆薬を仕掛けた車をETAは昨日15H45に爆発させた。爆破の30分前にETAはサン・セバスティアンの新聞ガラ紙に予告電話を入れている。爆破後、車両爆弾があった階には直径10メートルにおよぶ巨大なクレーター状の穴があき、駐車場全体およびその周りの施設も大きな被害を受けた。予告電話後、警察は駐車場および隣接施設から人々を非難させた為、死亡者や怪我人などの犠牲はなかった。中央政府カンタブリア担当官のアルベルト・クアルタス氏は、ETAからガラ紙へ、ガラ紙からバスク自治州警察へ、そしてそこから国家警察へと爆破予告が伝達され、実際の爆破は予告時間の4分前に起こったと発表。爆発のあった駐車場は市内中心地に位置し周りには中央郵便局、中央政府カンタブリア出張所、財務省カンタブリア出張所などがある。使用されたルノー19は数日前にアストゥリアスで盗まれた車で偽装ナンバーをつけていたと見られる。駐車場は地下3階建てで320台収容可能だが、爆破当時120台ほどが駐車していた。車両爆弾と同じ階にあった30台以上の車が破壊されたと見られている。警察の急遽避難命令を受けた人々や、付近の商店街で警察や消防隊の活動を見守る人々は、今年6月22日に同市でおこったETAによる爆破を生々しく思い出していた。

オロットの薬剤師フェリウさん、今日法廷に出頭

ジローナ地方裁判所で審議されているフェリウさん誘拐事件の法廷で、今日被害者のマリア・アンジェルス・フェリウさんは、492日に渡る長い囚われの時間を振り返って証言する事になる。法廷では彼女を誘拐したと見られる容疑者グループも証言する事になっているが、フェリウさんの精神的苦痛を軽減する為、特殊オーディオシステムを使用し、犯人らと直接顔を合わせなくて良い様に配慮されている。 検察側は被告らに対し、フェリウさんに対する不法勾留と不逆的な肉体的・精神的損傷を加えたかどで合計162年の懲役を求刑している。 フェリウさんは、誘拐されていた期間の苦悩を思い出す事への恐怖は当然あるが法廷に出頭して証言する気力は充分あると述べている。 フェリウさんは今日から2日間同裁判所法廷で、1992年11月20日夜自宅の駐車場で拉致されてから1994年3月27日にリサ・デ・バルのガソリンスタンドで解放されるまで、当時森林警備官だったラモン・ウジャストレ氏の自宅の地下を掘って作られた湿気が多く暗くて非常に小さな穴の中で強いられた492日間の監禁生活を振り返って証言する事になる。

テロ被害者連盟(AVT)、「不正」は無いとしながらも内部調査を開始する予定

テロ活動による被害を受けた犠牲者によって作られている私的団体であるテロ被害者連盟(AVT)は国家予算から同団体に支給された援助金を不正使用した疑いがあるとされ、中央政府は一時的に援助金交付を差し止める可能性を示唆している。 元同連盟の会長をしていたアナ・マリア・ビダル・アバルカさんは今年4月にAVT総会を開いた際に、「過去5年間の連盟内の会計記録を調査し、援助金の不正使用が無かったかどうかを明らかにする為の内部審査を行う」事を提案してその役職を辞した。 同連盟の現理事長ラファエル・ビジャロボ氏は「内務省からの通達があり、連盟の経費や遺族支援金などの明細に不明な部分がある事は指摘されている」と認めている。アンヘル・アセベス内務大臣は昨日AVTの援助金不正使用疑惑が明らかにされるまでの間、一時的に政府からの援助金支給を見合わせると発表した。ビジャロボ氏によると、連盟幹部のひとりの家族3名が連盟事務局で雇用されており、その内1名は身体障害者でありその幹部の娘である。AVTが年間に中央政府から支給される1億3千6百万ペセタ相当の援助金の内、少なくとも4千5百万ペセタ相当は同連盟の職員13名に支払われていた。

流出石油、リアス・バハスに上陸

今日早朝、プレステージから流出した石油はついにビゴやシエス島沖に漂着し、これでガリシアの大西洋岸は全て黒い潮の洗礼を受けた事になる。ポルトガル、フランスも近日中にそれぞれの国の沿岸に漂着するであろう石油溜りに備える体制に入った。 フィニステレからミーニョ川河口におよぶまでの海岸線にプレステージ沈没時に流出した石油が漂着している状態の中、ヨーロッパ最大の魚貝類養殖地帯であるリアス・バハスと国立公園シエス島への石油漂着を阻止する事に全力が注がれている。 ガリシア州漁業局は、魚貝類捕獲の操業禁止海域をカンタブリア地方からポルトガル国境地帯に渡る範囲まで拡大すると共に、漁業関係者にも流出石油回収作業に協力する様要請した。 ガリシア沿岸全体がじわじわと石油汚物に汚染されて行く中、漁業関係者を始めとする地域住民の間には「無力感、情報不足あるいは情報隠蔽に対する怒り、事態を収拾するための指揮・統率の欠如に対する憤懣」など中央政府や自治州政府に対する怒りも堆積して行っている。 リアス・バハスの魚貝類養殖地を控える沿岸洋上では石油回収船(全て外国から出動している)が全力を挙げて漂流する石油溜りの吸引作業を続ける中、その後ろでは漁師や魚貝類捕獲に従事する人々が漁用の小船にバケツを積み込んで繰り出し、手あみで石油を漉くっている。作業用のマスクや手袋などの物資も欠乏している為、漁師達はマスクも手袋もつけないでタールまみれになってこの原始的な方法で黙々と石油を漉くっている。被害が広がっていく一方で、災害対策の杜撰さに対する住民の怒りはあちこちで現れている。ムール貝の捕獲船を動員して石油流入を食い止める作業に当っていたが当局の無策さに業を煮やたした養殖業者達が、ボイロ、リベイラ両町の町長らと口論の末、石油回収作業でタールだらけになった作業衣を町長らに投げつけるという場面も見られた。


12月3日(火)

石油溜り群リアス・バハス海岸線一帯に接近

沈没したタンカー、プレステージから流出した石油は今日にもガリシア西部沿岸、リアス・バハス一帯に到着すると見られている。昨日オンスの沖13キロメートルの長さ30キロメートル・幅14キロメートルに及ぶ広い海域が多数の石油溜り群に覆われていた。 これらの海域では汚染回収船の懸命に石油吸引作業を進めているが、石油溜り群のアロウサ、ポンテベドラ、シエス島などへの上陸は必至と見られている。一方特殊なブイを海洋上に浮かべて衛星経由で流出石油の動きを探知しているポルトガル国営水路学研究所では、衛星経由の情報と気象情報とを分析した結果、石油溜り群のブエウ、バヨナへの上陸は必至と発表している。又沈没したプレステージから石油が流出し続けていると主張している同研究所は、これら沈没後の流出石油は無数の長楕円形の石油溜り群となって数日内にガリシア西部沿岸一帯に漂着するだろうと予測している。

漁業関係者、ボランティアら国王に物的援助と軍隊の出動を陳情

スペイン国王は昨日、ボランティアーの人々が石油汚物回収作業を続けるムクシアのコイド海岸に降り立った。この海岸からラクシェにかけて最も被害の大きい海岸線であるこの地域を視察した国王に対して、各町の町長、漁業関係者、養殖業関係者、ボランティアらの人々は、「国からの物資援助、ボランティアらの汚物回収作業を統率・指揮する体系、そして何よりも軍隊の出動」を可能にする為の仲裁を要請する声が挙がった。国王にはフラガ自治州知事、ラホイ中央政府副首相、ムクシア町長ブランコ氏などが同行し、被害状況を国王に説明したが、国王は実際に砂浜に降りてそこで作業する人たちの肉声を聞いて行った。海岸に降り立った国王には2種類の異なる声がかけられた。一方は300人ほどの住民らの、国王の視察を歓迎し感謝する声、一方は汚物回収作業を行っていた大学生を中心とするボランティアらの「政府は状況を隠蔽し、現実に即した対策を何も講じていない。嘘で塗り固めている」という批判の声。これらの声に耳を傾ける国王の足元には、既に2回清掃作業をした後に、この海岸を三度目に襲う分厚い石油汚物が打ち寄せていた。「状況は非常に悪い、最悪です。」と説明するフラガ知事の発言に対し、ボランティアらからは「必要なのは言葉ではなく、具体的な対策です」と反論。又内務省所属の救援部隊本部で働くボランティアらからも「回収作業をする為の全てが不足しています。でも一番必要とされているのは軍隊の出動です。」と国王に助けを求める声が聞かれた。先週土曜にベルギー政府が派遣したベルギー軍隊が汚物回収作業を統率している地域では「フラガもラホイもブランコもみんな首!国王だけが頼り!」の弾幕が見えた。フィニステレ漁業組合長のマルティネス氏も「とにかく国王が自分の目で耳で現状を見聞きして欲しい。そうすればなんらかの策を講じてくれるだろう。首相アスナルを説得して援助を要請してくれるか。われわれは忘れ去られている。もしこの災害がカタルーニャで起こっていたら、アスナルは軍隊を引き連れてすぐに駆けつけて行っただろう。」と語った。サンティアゴ巡礼を途中でやめてボランティアとして回収作業にあたっているフィゲラス氏は「スペインはこの種の災害に対応する物的・人的手段を持っている先進国の一つのはず。もしそれらを持っていないのなら世界に援助を求める行動を起こすべきだ。このプレステージからの石油流出は史上最大の環境破壊災害の一つである事を政府は認識するべきだ。又与党らもこの災害を政治論争の種にして政府を批判する前に、現場に来て現実を認識し、一刻も早く被害対策処置を講ずる為に政治的な違いを超えて一致団結して働くべきだ。」と批判している。 プレステージから石油流出が始まってから既に20日が経とうとしている今、数千に登るボランティアとONGの人々が汚物回収作業に従事しているが、中央政府からは20人の内務省所属救援隊が派遣されただけで、スペイン軍隊は一切派遣されていない。この種の災害の特殊作業を統率する為にベルギー政府やドイツ政府が派遣した軍隊の軍人達の「スペイン軍の兵士はどこにいますか?」という問いに誰も答える事ができない。

社会党・左翼連合はマリオ・コンデ氏の「開放処遇」に反対を表明

元バネスト銀行頭取のマリオ・コンデ氏はいままでも世の中の注目を集めて来たが、今回は現在禁固20年の刑に服役中の刑務所から管轄の裁判所に対して「開放処遇」(昼間は自由の身で世の中に出られ、夜だけ刑務所に戻らねばならない)を申請する27ページにおよぶ書面を提出して物議を醸している。マリオ・コンデ氏は決して裕福でない家庭に生まれたが、超明晰な頭脳と人一倍強い野心を持ち、25歳で国家弁護人試験を主席合格し輝かしい高等国家公務員としてのキャリアを積んだ後、その手腕を買われ経済界にデビュー、着々と実績を残してついに1987年39歳の若さでスペインの主要銀行バネストの頭取となった。当時「スーパーマリオ」の名を馳せ、女性週刊誌などにも常連として記事が載るような「華麗なる人々」の1人となった。経済のからくりの裏の裏まで熟知していた彼は少数の精鋭部下とともに膨大な裏金利益を創出していった。しかし同時にバネスト銀行にも巨大な闇穴が生じて行き93年にはその額は6000億ペセタに達し、1993年12月28日ついにスペイン銀行(中央銀行)が介入し調査が開始された。ここからコンデ氏の失墜が始まった。転んでもただでは起きない彼、両刀の刃を使って、当時政権にあった社会党の幹部にもそれなりの“報酬”を払ったと発言し、これによってバネスト銀行頭取としての横領・詐欺罪に加え、アルヘンティア横領罪という2件の裁判の被告となった。アルヘンティア横領罪裁判は禁固6年の判決がおり、97年4月に収監された。しかし10億という保釈金を払い1年半ほどで出所。その後97年からはバネスト事件の方の裁判が行われ、自らの弁護を自らが行うというセンセーショナルな形で裁判が行われた末全国管区裁判所は禁固10年の判決を下した。これを不服としたコンデ氏は最高裁に控訴したが、審議の末コンデ氏の思惑とは逆に、その倍の禁固20年の判決が下された。この様な経緯で今年2002年7月29日に収監されたコンデ氏だが、法律のエクスパートでもある彼は法の細部まで研究しつくし今回の「開放処遇申請書」を作成し、提出した。 社会党や左翼連合は「このコンデ氏の主張が通れば、スペインの司法の信憑性は失墜してしまう。ホワイトカラーの受刑者のみが特別に扱われるべきでない。」など反対を表明している一方、保守系のバスク民族党やカタルーニャ同盟などは「コンデ氏は横領した膨大なお金を未だ返済していない。これを返す事が先決。」と発言しているが処遇の問題には触れていない。政府も裁判所をも手玉に取ってしまうスーパーマリオの処遇は如何になるのか、当分注目を集めそうだ。


12月2日(月)

石油溜りの群れ、再びガリシア海岸線を汚染

先週多くのボランティアによって石油汚染の清掃が行われたトウリニャン、フィニステレ、ムクシア、カマリニャスなどガリシア北西部海岸線一帯は、石油溜り群の再来により再び黒く汚染された。一度目の汚染被害の後、グリーンピースなどONGの協力によって石油汚物の処理が行われたこれらの沿岸地区の人々は、再度厚さ3〜4センチの石油汚物に覆われた真っ黒な海岸線を目の前にして絶望の色を隠せない。 海上を西風の押されて漂流し続ける9000トンに及ぶ巨大な石油溜りはガリシア沖19マイルにあり、今後も余談を許さない状況であり、その他にもの小さな石油溜りの群れはアストゥリアス地方の海岸線にまで達する事が懸念されている。 気候条件が許せば、ようやく到着したフランスの特殊潜水艇(超深海での探索作業可能な潜水艇)が 3500メートルの深海に沈没しているプレステージから今も石油漏出が続いているかあるいは深海の 低温によって凝固してしまっているかを調査する事になっている。

サンティアゴで「もう絶対繰り返すな!」と15万人が抗議デモ

この30年間にガリシア地方は今回のプレステージのような災害によって7回も被害を受けている事 とそれに対する当局の対応の遅さ不十分さに対し、昨日悪天候にも関わらずガリシアを始め全国 から15万人が集まり「こんな災害をもうこれ以上絶対繰り返すな!」と抗議デモを行った。 漁業、海産物養殖業に従事する人々など海域・海岸汚染によって被害を受けた人々を始め、 環境保護団体、野党政治政党、労働組合、知識階級や芸能人なども参加して、アラメダ広場から 始まった行進はサンティアゴ巡礼の道のゴールである大聖堂前のオブラドイロ広場に終着したが、 2万5千収容可能なこの広場を6回も入れ替えねばならないほど多数が参加した。 陣頭指揮を取るべき立場にありながら猟に行っていて不在だったガリシア州知事フラガ氏や中央政府の仕切りの悪さなど与党PP(民衆等)に対する非難が主流だったが、一方でデモに参加した社会党書記長ザパテロ氏に対しても、「92年に石油タンカー”エーゲ海”が大量の石油を流出してガリシアを襲った時の事を忘れたのか?」と当時政権に有った社会党の対応の悪さを被害者達は決して忘れていない事を主張する声もきかれた。今回のプレステージの石油流出とそれによる汚染は、発端は悪天候だったが、様々な見地から「人的災害」であり、その原因責任(海洋航行の安全基準)や、事故後の対応のまずさなどをめぐって、野党社会党は中央政府を激しく批判している。一方、政府アスナル首相は「報道陣相手に写真を撮る為にガリシアへ飛ぶ事よりも、このような問題が二度と起こらない様な具体案をEU内で取り付けるために自分は奔走しているし、具体的な成果を携えてからでなければ私はガリシアへ足を踏み入れるつもりは無い。」とガリシアを訪れている社会党のザパテロ氏を揶揄している。悪天候の中石油まみれになって汚物処理にあたる人々や、もう神に祈るしかないと沖に浮かぶ石油溜りを見つめる沿岸住民の思惑とは別の次元で、来年の地方選挙を念頭においてかこの「災害」を肴にした政治闘争も火花をちらしている。 ホアン・カルロス国王は今日ガリシア被害地域を訪問する事になっている。

今日からスペイン全国の空港でのセキュリティーチェック強化

スペイン空港公団(AENA)は本日付けで新しい「セキュリティーチェックプロトコール」を制定し、 全国の空港で実施する事とした。AENAの発表によると、このプロトコールはEU(ヨーロッパ連合)の基準に沿い、スペイン政府の治安当局の指示に従っている。既に実施しされていて、全ての搭乗客に義務付けられている金属探知機によるコントロールに加えて、AENA側が必要と判断した場合に検査官による手探りの身体検査を行う事ができる様になる。機内持込手荷物に関しても、X線検査を行い、必要があれば検査官が荷物を開けてチェックする事が可能となる。又一旦搭乗エリアに入った後および機内に入った後でも、当局が危険あるいは不適当と判断すればその場で没収または 保管する事ができる様になる。AENAは同時に2003年度中に機内預け荷物の100%の安全チェックを達成する事を目標としている。

トヨタカップいよいよ明日キック・オフ

レアル・マドリッド監督ビセンテ・デル・ボスケ氏は、先週末日本に到着した同チームの選手らの 体調は良好で、明日のトヨタカップでは自分の予定どおりのスターティングメンバーでプレイができるだろうと述べている。選手らは今日午前中「IT製品の殿堂?」秋葉原電気街でショッピングを楽しんだ後、等々力スタジアムでのトレーニングに入った。マケレレ、グティ、パボン、ラウル・ブラボらの選手は日本到着時には風邪や故障で今一体調が良くなかったが、日本での調整後、現在は回復しているので、オリンピアチームとの対戦に予定している12名の選手の入れ替えはまず不要と見られている。そうなるとグティはベンチ入りとなる。2日目のトレーニングは、折からの寒さにもかかわらずアイドル達を見ようと駆けつけた熱狂的な日本のファン達の見守る中、約1時間半ほど続けられた。




QUEDA TOTALMENTE PROHIBIDO LA REPRODUCCIÓN, LA REPUBLICACIÓN, O COPIAR CUALQUIER CONTENIDO DE NUESTRAS PÁGINAS.
全て内容おいて無断で使用・転載・複製することを禁じます

メールコンタクトはspnews@spainnews.comまで