スペインニュース・コムがお届する
毎日のトップニュース


7月31日(水)

モロッコのモハメド6世、セウタとメリジャの領土権を主張

モロッコの国王モハメド6世は昨日、タンジールの王宮で毎年恒例の国民演説を行い、「モロッコにはスペインにセウタ、メリジャとその周辺諸島の占有をやめるよう要求する“正当な権利”がある」と主張し、さらに「スペインと“係争中になっているすべての問題について”話し合う用意がある」と述べた。モハメド6世が国王として国民演説を行うのはこれで3回目で、通常より長かったこの演説の中で国王は、国内政治問題、西サハラ問題について触れると共に、ペレヒル島へのスペイン軍の侵略についても触れた。
ペレヒル島問題に触れる際、モハメド6世は“両国がお互いに望んでいるものを念頭に置きながら”スペインがモロッコとどういう関係を築きたいのかをはっきりさせることを求め、「モロッコは自国の統治権と完全な領土保有を主張する」と述べた上で、「モロッコは我々の島を元通りの状態に戻すことを望むと同時に、武力によって行われる介入を否定する。我々はジブラルタル海峡のような戦略的に重要な地域において、安定して良好な周辺諸国との関係の保証を望む」と付け加えた。「歴史的、地理的事実からみて明らかなように、常にペレヒル島はモロッコ王国の領土であったし、現在も統治下にある」と述べながらも、モロッコが領土回復のために武力を行使しないというのが、モロッコ王国と国王の方針である。
国王はこれまで2回の演説ではスペインがモロッコ北部に所有する領土問題について触れたことがなかった。父のハッサン2世は4回の演説で取り上げたことがあり、最後に演説にこの問題が出たのは1997年だった。モロッコの国連大使は毎年、国連総会でこの問題について触れている。

故ティッセン男爵の遺産相続問題再燃

今年の4月26日に81歳でこの世を去った、世界的な美術収集家ハンス・ハインリッヒ・フォン・ティッセン−ボルネミッサ男爵の遺産相続問題が持ち上がっている。故男爵の残した遺産は、総額31億ユーロ(約5.157億ペセタ)といわれるが、これまで3年間にわたり、1億5千万ユーロの弁護士費用を費やして、相続に関する争議が続けられており、今年2月になってようやく合意に達し、文書に調印した。しかし先ごろイタリアの新聞が、故男爵の最初の妻であるテレサ・フォン・リッペさんが合意文書にはない2億5千万ユーロの相続権を要求したためこの合意が破棄されたと報道した。この報道を知った5人目の妻で男爵未亡人のカルメン・セルベラさんは、「相続に関する合意は、どのような理由があっても破られるべきではない」と反論している。

原子力安全委員会の危機

トリジョ・ソリタ原子力発電所の安全管理の不十分さが明らかにされて以来、原子力安全委員会は内部分裂の危機にある。5人の委員のうちの2人が、マスコミに情報を流したという理由で明らかな証拠無しに発電所の職員を免職、または異動したとして、マリア・テレサ・エステバン・ボレア委員長を糾弾している。エステバン・ボレア委員長は書面でこれを否定しているが、機密情報が漏れたのは発電所職員からであることに関しては強く主張している。
彼女が委員長に就任したのは1年前。就任以来、彼女への支援は減る一方である。社労党(PSOE)所属の2人の委員、ホセ・アンヘル・アスアラ氏(副委員長)、カルメン・マルティネス・テン氏の書簡により、委員会は内部分裂の危機に瀕している。この書簡で両氏は“委員会職員への不審を公にした”“ある職員グループからの情報によって、はっきりした証拠無しに情報をリークした職員を決めつけた”などの内容で委員長を非難している。
両委員によると、トリジョ・ソリタ原子力発電所の安全管理に関する機密情報がマスコミに取り上げられたとき、委員長はある技術者の異動を命じ、その上司(数日前に辞職後、民間企業に転職)に機密情報管理不備の責任を負わせたという。 委員長と直接対話する機会を求めていた両委員に対し、エステバン・ボレア氏は書簡で回答。その中で、技術者の異動は危機管理部門の再編のためで、その上司の辞職は彼自身が以前から望んでいたためのものであると反論した。さらに、漏洩された機密の内容を知っていたのは1つの部門だけで、その部門の技術者が報告書をマスコミに送ったとは思っていないが、マスコミがその情報を入手したということは発電所の誰かがそれを送ったということに間違いないと述べている。
アスアラ、マルティネス・テン両委員はこの委員長非難の書簡を経済相ロドリゴ・ラト氏、国会経済委員会にも送付しており、委員長もそれに対する回答の書簡を同様に送っている。
経済委員会エネルギー政策担当官であるPSOEのハビエル・ガルシア・ブレバ氏は、エステバン・ボレア委員長のお粗末な情報対策と、彼女が行った“魔女狩り”を嘆き、「現在の環境は、原子力の安全管理というデリケートな問題に対する技術的な決定に悪影響を及ぼしうる」と述べ、環境改善のため、エステバン・ボレア委員長の辞任を求めている。

エクストレマドゥラ州、デクレタソを憲法裁判所に提訴

エクストレマドゥラ州政府知事補佐官マリア・アントニア・トルヒジョ氏は、昨日デクレタソ(とんでもない政令)の労働改正法に対してエクストレマドゥラ州議会が憲法裁判所に提訴状を提出したと発表した。彼女によると、中央政府が承認した今回の改正法案は“解雇を促進し、不安定な雇用状況を創り出し、労働者の社会的権利を切り捨てる”点で憲法違反を犯しているという。
エクストレマドゥラ州労働担当議員のビオレタ・アレハンドレ氏によると、このデクレタソ適用によってエクストレマドゥラ州で9200人の早期退職者が人生設計の変更を余儀なくされ、27300人の補助金受給者が影響を受けているという。彼女は「中央政府は国の雇用状況安定に対しての責任を取っておらず、その重荷を失業者に押し付けている」と述べた。
一方、アンダルシア州議会もデクレタソの労働改正法に対する提訴状を今日にも憲法裁判所に提出する予定。社労党(PSOE)所属のマヌエル・チャベス氏が知事を務めるアンダルシア州は“例外的、または緊急”の状況にない不必要な法改正は違法であるとしている。


7月30日(火)

「バネスト銀行事件」発覚から14年、マリオ・コンデ元頭取に懲役20年の判決

最高裁は昨日、横領、詐欺および文書偽造の疑いで起訴されていたバネスト銀行の元頭取マリオ・コンデ容疑者に対して、懲役20年の実刑判決を下した。また当時の役員だったアルトゥーロ・ロマニー元副頭取、フェルナンド・ガーロ元総務部長、ラファエル・ペレス・エスコラル元専務、エンリケ・ラサルテ元専務取締役、ジャック・アチュエル元取締役(国際指名手配中)にもそれぞれ4年から13年の実刑判決が下りた。マリオ・コンデ容疑者は、昨日午後アルカラ−メコ刑務所に収監された。
「バネスト事件」の発端は、1987年12月にマリオ・コンデ容疑者が頭取に就任した5年後、スペインのエイプリルフールに当る1993年12月28日に、6.050億ペセタの赤字が発覚した同銀行に対して、スペイン銀行が介入したことに始まる。スペイン銀行は、JPモルガンやBBV、サンタンデール銀行に対して再建のための援助を仰いだが、各銀行ともバネストの実情からためらいを見せ、結局スペイン銀行は介入を余儀なくされ、マリオ・コンデ頭取と役員らの解任を命じ、アルフレド・サエンス氏が新しく頭取に就任した。翌年の3月に開かれた特別株主総会では、コンデ元頭取の社会的責任を問う決議がなされ、バネストはサンタンデール銀行に買い取られた。同年7月「アルヘンティア・トラスト社事件」発覚により、検察庁はコンデ氏および役員ら9名を文書偽造、横領の疑いで起訴し、国会でもバネスト事件調査委員会が設けられた。
96年4月に17ヶ月に及んだ捜査の概要が出来上がり、検察側からはコンデ元頭取に対して懲役42年が求刑され、97年と2000年に全国管区裁判所から有罪判決が下されたが、いずれも最高裁に上告、98年2月には最高裁でも懲役4年6ヶ月の実刑となったものの、翌年8月には仮釈放処分となっていた。
そして昨日は、2000年の最高裁判決内容を倍に膨らませた、懲役20年という実刑判決となった。またホセ・アントニオ・マルティン・パリン最高裁判事は、「情報通信業界でつい最近起きた世界的にも重要な事件」と米国の“エンロン事件”を遠まわしに引き合いに出し、バネストを担当していた会計監査事務所の関与・責任も否定できないとした。

ガソリンスタンドからアルコール飲料が消えた日

昨日から、“薬物依存およびその他の錯乱を引き起こす物質中毒予防法”(通称ボテジョン禁止法)が施行されたのを受けて、マドリッドの508のガソリンスタンドからアルコール飲料が消えた。これは、この法律でガソリンスタンドでのアルコール飲料販売が禁止されたためである。ガソリンスタンド経営者連合は、今回の法令に反対するものではないとし、各ガソリンスタンドに回覧文書を回し、対処の仕方を伝えた。マドリッドのとあるガソリンスタンドでは、昨日朝、従業員がすべてのアルコール飲料を片付けていた。「ビールとワインぐらいは売れると思っていたけれど、今日回覧文書が来て、アルコール抜きビールもダメだって言うんだ。」と従業員は語った。
連合は法令に反対ではないとしているが、オーナーたちは今年初めにアルコール販売に対する税金を納めており、政府に総額24万ユーロの返還を求める意向。さらに、300万ユーロにものぼる在庫アルコール飲料に対し、マドリッド自治州に賠償金を求める準備も進めている。
今回のボテジョン禁止法施行によりガソリンスタンドでのアルコール飲料販売は全面禁止、スーパー、小売店では販売許可があれば、朝の8時から夜10時までは販売できるが、政府が設けた3ヶ月の申請期間内に市役所に許可を申請、取得しなければならない。しかし、昨日、中小規模商店組合に問い合わせの電話が殺到したにもかかわらず、この新しいアルコール販売許可申請の方法については、組合に市役所からのなんの通達もなかった。組合によるとマドリッドには約12000店でアルコール飲料を販売しており、彼らはこの新しい販売許可の申請を必要としている。しかし、申請手続きについての説明が市役所からないため、「これでは法令制定の意味がない」と苦情が出ている。市役所衛生課に問い合わせたところ、申請の手続きについては近日中に説明文書が発行されるという。
この3ヶ月の猶予期間は、未成年者向けの雑誌、テレビ、ラジオ放送からアルコール飲料の宣伝を撤回するためにも適用される。薬物反対運動の担当官は、今回の法令は未成年者のアルコール摂取を防ぐのが目的であることを強調、9月からは30人の調査官による立ち入り検査が行われると発表した。 

モロッコ政府、スペイン海軍の演習に抗議

モロッコ外務省の発表によると、モロッコのモハメド・ベナイサ外務大臣は昨日、“スペイン海軍がモロッコ海域に停泊していることへのモロッコ政府の懸念”をスペインのアナ・パラシオ外務大臣に伝えたという。
この報告書には、スペイン海軍の船がンコル島(スペインではアルセマス島と呼ばれる)の傍に昨日の朝から正午頃まで停泊していたと書かれている。これに対してスペインのパラシオ外務大臣は“スペイン海域での海軍通常演習”であると答えた。
今月初めには、同じ場所にスペイン海軍の船5艘が現れたため、モロッコ政府から在ラバト・スペイン大使が説明のために召喚されており、さらに先週木曜日にはモロッコの国会で、スペインがモロッコの海空域を占有しようとしているという外務関係者の発言があった。
昨日、モロッコではモロッコ自由党によるセウタ、メリジャのモロッコ返還を求めるデモがあり、デモ隊がスペイン領土内に入るのを防ぐため、メリジャにあるベニ・アンサル国境検問所は90分間にわたって閉じられた。


7月29日(月)

マドリッド州の「ボテジョン禁止法」本日から施行

“ボテジョン”とは、マドリッドなどの都市部で、若者たちが集まって通りや広場・公園などで明け方まで飲酒をするという、近年騒音、ゴミ、モラルなどの面で社会問題と化していた現象であるが、マドリッド州では、このような行為は今日からすべて違法となる。
今年2月にマリアノ・ラホイ内務大臣(当時)が提案したこの法律は、正式には「薬物依存およびその他の錯乱を引き起こす物質中毒予防法」、また一般には「ボテジョン禁止法」「乾燥法(Ley Seca)」などと呼ばれる。この法律の施行により、バルやレストランのテラス席や各市町村のお祭りで役所によって許可された場所以外の公道や広場などでの飲酒は一切禁止となった。
これに違反した者は清掃や落書き落としなどの社会奉仕の罰を受けなければならず、もし応じない場合には、保護者が3.000ユーロの罰金の支払い、また販売する側に対しても、3.000〜600.000ユーロの罰金、そして営業停止処分もありうる。
法律では、午後10時から翌朝8時までは、バルやディスコなど店内でのみ消費される場所を除いては、購入者の年齢にかかわらず、酒類の販売を一切禁止する。また同じ時間帯に、“テレボテジョン”と呼ばれる酒類宅配サービスも禁止。さらにガソリンスタンドや自動販売機、屋台などでの酒類の販売はできなくなる。スーパーマーケットで販売を希望する場合には、あらかじめ役所の許可が必要で、販売は22:00までで、店内の一角に特別なコーナーを設けて、未成年は購入することができない旨の張り紙をしなければならない。
広告に関しては、テレビ・ラジオの公共放送と未成年向けの広告で、酒類の宣伝を禁止。急性アルコール中毒や、薬物中毒にかかった未成年を診断した医師には、その保護者への報告を義務付け、また煙草を吸うことができる年齢が16歳から18歳以上に引き上げられた。
昨夜は、午前0時の新法施行直前まで、ボテジョンのメッカである「5月2日広場」で、いくつかの若者のグループが“カリモチョ”(赤ワインとコーラ)や“リトロナ”(ビール)などを手に、すでに習慣となっている週末の過ごし方との別れを惜しんだ。スペインでは14歳〜18歳までの未成年の78%は日常的に飲酒をしているという。そしてその約半数が、バルやディスコなどではお酒が高いため、広場などに集まって飲むようになり、数年前から、ボテジョンが頻繁に行われている広場の住民から苦情が出ていた。ある少年は、「この法律は、バルの経営者を喜ばせるだけ。テラスや店内では泥酔できるのに、広場でのたった一杯のビールがダメなんて、本当におかしいと思う。」と語った。同じような法律は、カンタブリア州、カスティージャ・イ・レオン州、カタルーニャ州にも存在する。

ラテンアメリカの経済危機により、スペインからの移民の帰国が過去最多を記録

テレサ・ダカルさん、エウへニオ・パラダさん夫婦が生まれ故郷ガリシアを後にしてアルゼンチンに移住したのは1950年。それから半世紀以上が経った今、ブエノス・アイレスで生まれた娘のテレサさん、44歳が両親の来た逆の道をたどる。国の経済危機によりマドリッドへ単身移住したテレサさんの目的は、両親と同じ。19歳と13歳の子供によりよい生活を送らせるためである。テレサ・パラダさんのケースは珍しいものではない。アルゼンチン、ベネズエラ、コロンビア、キューバといった国の経済危機により、たくさんのスペイン人移住者とその子供達がスペインに戻っている。2001年度には、スペイン人移住者の帰国が過去23年間で最多の47,788人を記録したことがこのほど、労働社会保障省の発表でわかった。
テレサ・パラダさんは両親から引き継いだスペイン国籍のお陰でスペインでの再出発は簡単なものになるだろうと思っていた。ブエノス・アイレスで会計士として働いていた彼女は、生活基盤を作るのにかかるのは3ヶ月ぐらいだろうと見ていた。しかし、現実は甘くなかった。1月にマドリッドに来て以来職業安定所、人材派遣会社を駆けずり回ってあらゆる職種で仕事を探しているが、この6ヶ月間ずっと失業状態が続いたままだ。
移住者の子供であることが救いになるのは、帰国移住者手当(最長18ヶ月間にわたって毎月310ユーロの支給)が受けられることである。不法移民たちのように、合法的滞在許可書類なしの生活を送ることもない。しかし、仕事がみつからないのは、スペインを出なかったスペイン人も、スペインを出てその後戻ってきたスペイン人も同じである。
「家事手伝いなど違法に仕事をすることもできる。でも、そうすると帰国移住者手当をもらえなくなってしまう。」と、アルゼンチンの度重なる経済危機のつど仕事を失ってきたテレサさんは語る。1997年から働いていた会社のリストラによって人生何度目かの解雇を2001年に受けたとき、彼女はスペインに来ることを決意した。
この数年間でラテンアメリカに移住したスペイン人の帰国が急増している。1999年には、帰国者35,422人のうちの29%しか占めていなかった(57%はヨーロッパ移住からの帰国者)ラテンアメリカからの帰国者の数は、2001年、労働省によると数少ない各国領事館への登録だけでも全体の46%を占めるようになっている。特に帰国が目立つのはアルゼンチンで、1999年に1501人だったのが、2001年には6539人で、その他この2年間で帰国が急増しているのはベネズエラ(2712人から4563人)、キューバ(585人から1104人)、ウルグアイ(341人から1600人)である。興味深いのはペルーの例で、1999年には572人だった帰国者が、2000年にはフジモリ大統領の政治スキャンダルによる失脚から起きた政情不安で、4563人がスペインに戻っている。これらの帰国者たちの行き先は1位が首都マドリッド、僅差で2位が自分または両親の出身地であるガリシア地方となっている。

生物学者マサグエー氏が、バルセロナ科学者団体の顧問委員長を辞任

バルセロナ科学者団体は、生物化学や薬学などの分野の研究促進のために、2年前にバルセロナ大学やCSICの協力の下に設立された。この団体の顧問委員会の委員長を務める生物学者ジョアン・マサグエー博士は、CellNature, Scienceという権威ある科学雑誌にこれまでに47の論文を発表し、生物学の分野では世界で2番目に嘱望されている学者といわれる。同博士は、スペイン科学技術省およびカタルーニャ州政府からの2002年度600万ユーロという予算歳出を拠りどころにして、国際的に知られている学者らをこの団体に集め、スペインでの研究レベルをさらに上げようとしていた。しかしながら、今年半ばになっても約束された600万ユーロは博士のもとには届かなかった。結局、科学技術省とカタルーニャ自治政府のプロジェクトへの関心の低さにしびれをきらしたマサグエー博士は顧問委員長を辞任する意向を明らかにした。
多くの科学者は、この辞任問題に関して、「国際的地位を獲得したスペインの研究機関が非常に少ない中、この団体の将来は確約されていたようなもの。スペインの科学分野において、またひとつの大切な発展の機会を失った」との見解で一致している。

市民戦争中に行方不明になっていた町助役の遺体が発掘される( レオン )

市民戦争中の1937年6月28日当時オナミオ町(レオン県)の助役だったホセ・フェルナンデス・フランガニーリョさんは、妻とふたりでソラマメを採るために山歩きをしていたところ、パトロール中の2人の市民警察官に道を聞かれた。ホセさんが説明しようと1歩前にでたところ、突然銃で撃たれた。銃声を聞きつけた妻がすぐに駆けつけたときには、すでにホセさんの息はなかった。妻は市民警察に遺体を家まで運んでくれるよう頼んだが拒否され、結局山中の墓穴に埋葬せざるをえなかった。
それから65年が経過した昨日、ARMH(歴史的記憶を取り戻すための考古学者およびボランティア協会)は、当時を知る人の証言などを元に、まる一日がかりで地元山中を掘搾機などを使って捜索にあたった。そして夜半になってようやくホセさんの遺体を掘り出すことに成功した。
この夏ARMHは、レオン県西部に広がるビエルソ地区とラシアナ地区で、市民戦争中に殺害された市民の遺体探しをボランティアで行っており、これまでに15人の遺体を発掘している。彼らの仕事はボランティアである上に、非常にコストもかかるため、遺体の掘り出しと身元の割り出しについては国に任せたい考え。またARMH会長のエミリオ・シルバ氏は、来週にもスイスに行き、国連に対してスペイン市民戦争中に行方不明になった数百人に上る名簿を提出する予定。これは来月ニューヨークで開かれる国連人権委員会に同協会の協力弁護士を出席させるための第一歩となる。シルバ会長は、「スペイン戦争中の行方不明事件が、チリで起きた事件と同じように扱われることを願っています。国連からスペイン政府に対して、きちんとした調査をするように圧力をかけてもらうのが狙い。」と語った。
今日はまた、トラル・デ・メラヨ町で“オレリャンのマエストロ(先生)”として知られていたビクトリーノ・コボ・ベガさん(1936年10月21日にファランヘ党員と見られる2人に殺害された)の遺体捜索を行うことになっている。

週末のスポーツの結果

ツール・ド・フランス:アメリカのランス・アームストロング選手が4年連続のマイヨジョーヌ(総合優勝)、スペインのヨセバ・ベロキ選手は7分17秒差で2位、3位に8分17秒差でリトアニアのライモンダス・ルムシャス選手が入賞した。ベロキ選手は3年連続で出場して3度とも表彰台に上がっている。マイヨブランアポアルージュ(山岳賞)はフランスのローラン・ジャラベール選手が2年連続で獲得、マイヨベール(スプリント賞)はオーストラリアのロビー・マキュアン選手が獲得した。チーム優勝はスペインのONCE-エロスキーチーム。
サッカー:ヨーロッパU19選手権でスペインが1−0でドイツを破って優勝。昨年のU16の決勝の時と同じく、フランシスコ・トレス選手(アトレティコ・マドリッド所属)が決勝点を決め、スペイン代表監督に就任が決まっているイニャキ・サエス監督の有終の美を飾った。
水泳:ベルリンで行われたヨーロッパ水泳選手権で、スペインがシンクロナイズド・スイミング団体競技でロシアチームに次いで2位。ジェンマ・メングアル選手はソロとパオラ・ティラドス選手とのデュオで銅メダル獲得。25キロ遠泳で銅メダルのダビ・メカ選手は、10キロ遠泳では6位に終わった。
F1:ドイツGPでマイケル・シューマッハ選手が優勝。スペインのペドロ・デ・ラ・ロサ選手は好スタートを切ったものの、マシンのトランスミッションの故障でリタイヤした。参加21台中完走したのはわずか9台という過酷なレースであった。
テニス:オーストラリアのキッツビューエルで行われた男子テニスのジェネラリ・オープンでスペインのアレックス・コレチャ選手が第2シードのフアン・カルロス・フェレロ選手(スペイン)を6−4、6−1、6−3で破って優勝。疲労の色が濃く、43ものミスが目立ったフェレロ選手に対し、コレチャ選手は「今年最もいい試合の一つ」と、過去2度の対戦で勝つことのできなかったフェレロ選手を破って満足気にコメントした。


7月26日(金)

スペイン内務省、軍用機でカナリア諸島の不法移民を移送

スペイン中央政府は数週間前から“一時的措置”として飽和状態になっているカナリア諸島の移民収容センターのうち、フエルテベントゥラ島とランサローテ島の移民収容センターから不法移民を軍用機でスペイン本土に移送している。カナリア諸島への不法移民の数は昨年同時期と比べて3倍にふくれあがっている。
今回の移送はカナリア州政府の中央政府への度重なる訴えにより実現したもので、先日の国会討論でアスナル首相が移送を約束し、その後議会、移民政策高等委員会でこの案が承認された。カナリア州政府の社会問題担当官マルシアル・モラレス氏は、「今回の移送により、受け入れ先の自治州で何らかの反応が起こることが予想されるが、その反応が反カナリア諸島でも反移民でもないことを願う。」と述べた。
内務省の広報官は、今回の移送はフエルテベントゥラ、ランサローテ両島の移民収容センター飽和状態緩和のための一時的措置で、現在中央政府はスペイン全土への移民収容センター建設を含む新たなプランを練っているところであると述べた。
これまでの移送のほとんどに軍用機が使われている理由について広報官は、「移送をただちに行わなければならない場合に手続きが早く済むため」としている。これまでの移送先は主にバルセロナ、バレンシア、ムルシアの移民収容センターであったが、現在収容している人数がカナリア諸島のセンターよりはるかに少ないその他の地域にも送られている。
法律で、移送を決定できるのは裁判官だけであると決められており、移送は移民の言い分を聞いてから裁判官の命により行われる。これまで内務省がしてきたように自由の身になった移民をラス・パルマス(グラン・カナリア島)に放置するのを避けるため、移送は彼らがスペインに到着してから40日以内に行われるという。
現在カナリア諸島では、4つある移民抑留センターに1000人、2つの移民保護センター(滞在41日以上の自由になった移民用)に各250人の不法移民を収容することができる。保護センターの一つ、ラス・パルマスのミジェル・バホ保護センターは、入所するのに1ヶ月から2ヶ月待ちで、スペイン到着後40日以上経ち、自由の身となっている移民は入所できるまでの間、野宿をしている。

ジプシーの子供達の就学状況報告

スペインに住むジプシーの子供達の小学校への就学率は、1994年に75%だったのに比べて、去年は94%にまで達している。しかしジプシーでない子供達に比べて、授業への欠席率は3割程度高いということが、このほどジプシー総合事務局基金、教育文化省、ユニセフおよび銀行のカハ・スールが共同でまとめた報告書により明らかになった。
小中学校の義務教育を受ける年齢にあるジプシーの子供は、国内に18万〜20万人いるといわれている。昨年は男女合わせて998人のジプシーの子供たちが、全国の各自治州にある62の小学校に入学した。この少数民族の学校教育が一般的になったのは、わずか30年前のことである。
今回の研究に参加した教師らのまとめでは、ジプシーの生徒の62.2%は順調に登校、24.4%は来たり来なかったり、そして12.9%の子供達の就学に関しては、教師らも非常に悲観的に見ているという。そして不登校や退学など、結局は就学に失敗してしまうケースがまだまだ多い(67%)といえる。また定住の習慣がなく、常に各地に移り住んでいるという家庭状況も欠席の多さに反映されている。
学力に関しては、36%は、他の生徒に比べて学力が劣り、31%は、平均を大きく下回る。また57%の生徒はは一切宿題をやってこないという。これは子供たちの問題というよりも、家庭環境によるもので、宿題をしない生徒は、94年から全く減っていない。 しかし授業中に練習問題を課すると、62%はいつも制限時間内で問題を解き終わるという。
またジプシーの生徒は、8年前に比べて休み時間にジプシーでない生徒と一緒に遊ぶ事が少なくなった(94年65%、昨年57%)ことがわかった。このような結果の背景には、いくつかの学校で、クラスでジプシー生徒の占める割合が非常に高いことが挙げられる。
研究報告では、保護者に対して学校教育に関心を持たせる必要を説いている。これから成長してスペイン社会で生活してゆく子供を持つジプシーの両親や家族の考え方も変わっていかなければならない。子供を学校に通わせている親の中でも、保護者会に参加しているジプシーの親は非常に少なく、80%が一度も出席したことがなく、また23%の親が、読み書きさえ習えば、その後は学校へ行く必要はないと考えている。
また就学前教育や幼稚園に通った子供(94年は54%、現在は74%)は、小学校に上がった時に、より適応しやすいという結果がでていることを踏まえて、フレスノ会長は、ジプシーの子供達が小学校に上がった時に早く環境に慣れることができるような方策をとる必要があると述べ、学校に対しても、民族の多様化に適応し、門戸解放を求めた。
名誉会長のマルセリーノ・オレハ氏も、「現在国内に60万人いるジプシーたちは、よりよい教育を受けて、現在の差別的状況から脱しなければならない。」とコメントした。ジプシーの子供たちの就学状況改善に向けてさらなる努力が必要である。

フェリペ皇太子の新邸宅、建築家やデザイナー団体が「悪趣味」と批判

6月26日に報道陣に公開されたサルスエラ宮殿の敷地内にあるフェリペ皇太子の新居に対して、バルセロナを中心に現代建築やデザインの促進を目的とした団体FAD(装飾芸術開発協会)が、「これが本当に皇太子のご趣味なのですか?」と邸宅の外観や、内部装飾について疑問を投げかけた。
FADは水曜日に所属する国内の建築家やデザイナーを招いて、この邸宅についての討論会を行った。この中で、デザイナーのハビエル・マリスカル氏は、フェリペ皇太子とこのテーマについて直接話す機会があったが、皇太子の答えは、「国が決めたことです。」とのことだったと語った。同氏は、「ご自分の住む家なのに、少しも自身の趣味が反映されないというのは非常に残念な事です。それゆえ今回敢えて批判の声を挙げることにしました。それにこの邸宅は、国を代表する建築のひとつなのですから。」と説明した。
この邸宅は、面積1.800平米、約424万ユーロという国家予算を投入して、国に所属する建築家マヌエル・デル・リオ氏が設計の指揮をとって完成した。
討論会では、「外観やインテリアについて、デザインを公募するべきだった。」、「このようなやり方では、建築家にとって大きなジレンマとなってしまう。」などの声があがり、全会一致でフェリペ皇太子の新邸宅は「恐ろしく悪趣味」と結論づけられてしまった。最後にデザイナーのクラレット・セライマ氏は、「美と文化を破壊し、国民を右よりに扇動する国の姿勢を反映している」と締めくくった。FADは、この討論会で挙げられた意見を元に、スペイン王室に書簡を送ることにしている。

ガリシア地方で、使徒サンティアゴの日が祝われる。

ガリシア地方の守護聖人であり、同時にスペインの守護聖人でもある使徒サンティアゴの日を祝って、昨日サンティアゴ・デ・コンポステラで様々な式典が開かれた。王家の代表として出席したクリスティナ王女はしきたりに従って聖人に国からの供物を捧げ、「最も尊い命と自由を脅かしているテロを終わらせるための知恵を我々にお与えください」と祈った。
ガリシアの日でもあるこの日は、急進民族主義者による3つのデモに600人が参加、大半は若者で、スペイン国旗が燃やされるなど数件の小さな事件があった。BNG(ガリシア民族主義団体)主催のデモには1万人が参加し、ガリシア州政府へのさらなる自治権を求めた。
ガリシア州政府では、20年間施行されている自治制法令を現状にあったものに改正するようにと社会労働党(PSOE)が求めているが、国民党(PP)は現行法令に改正の必要はないと強調、ガリシア政府にさらなる自治権は与えない姿勢。


7月25日(木)

バスク地方初の護衛付き司祭誕生

総務大臣ハビエル・アレナ氏は、民族主義の批判者であるビスカヤ県マルリ町の教区司祭、ハイメ・ラリナガ氏に護衛をつけるようにバスク地方の司教たちに要請し、ラリナガ氏は日曜日からバスク地方初の護衛つき司祭になった。これは、ラリンガ氏の発言記事が新聞に載った後、住民557人のマルリ(PNV―バスク国民党政権)町役場が、ラリナガ司教を“フランコ懐古者”と呼ぶ内容の手紙を住民に配達したためである。
この知らせを聞いて昨日、マルリ町長のヨセバ・アルサガ氏は今回の件の反響に“びっくりしている”と述べた。PNV所属のアルサガ氏はきっぱりと、「すでに5週間以上も前のことになるが、あの手紙を作成したのは、新聞の誤った情報からデモが起こるのを防ぐためと、町を守るためであった。」と述べた。前述の新聞記事で、ラリナガ氏は、30年以上も司祭を務めるマルリ町を“脅迫文が壁に書かれている敵意に満ちた土地で、緊迫した状態にある”としている。
これを受けてマルリ町役場は18日に満場一致で“問題のない土地でなざわざわざ問題の種を探すのか”というタイトルの文書を承認し、その中でフランコとカトリック教会の結びつきについて言及した上、「我々の教区司祭は、幸いにも過ぎ去ったあの時代の懐古主義者である。」と述べている。
2000年にも“社会の対立を無意味に深めた”“宗教と政治を取り違えている”と、マルリ町役場から糾弾されているラリンガ氏は、マルリ町のバスク民族主義政党の“高い位にいる人たち”の中傷の的になっているとし、書面でバスク内務省に保護を求めた。警察の専門家たちはこの内容では実際に司祭の身に危険が迫る可能性は今のところ低いとしているが、バスク内務省は司祭の要請を受理した。
パイス・バスコ政府の広報官は今回の事件を直接の政治批判とはとっていないが、アレナス大臣と、アンヘル・アセベス内務大臣は「バスク地方で行われている“非民族主義者の排除政策”の好例である」と述べている。
一方、バスク地方を統括するリカルド・ブラスケス司教は今回の件に関して一切コメントすることを避けている。「護衛がついてから、司教から電話の1本もないのは辛い。」とラリンガ司祭は語った。

国家警察、ボートから海に転落した2歳の不法移民の子供を捜索

スペイン-モロッコ間のペレヒル島危機解決後、スペインに再びボートで移民たちがたどり着くようになった。昨日、タリファ(カディス)では、39人(男性17名、女性20名、乳児2名)が逮捕された。移民たちはタイヤを使ったボートでジブラルタル海峡を渡ってきたという。スペイン国家警察は、両親の供述に従って、ボートが陸にたどり着く際に海に転落したという2歳の子供を捜索している。
39人が逮捕されたのはタリファのエル・カニュエロ・ビーチで、その後彼らのうち、乳児2名、妊婦2名とその他数名が赤十字のボランティアメンバーによってタリファの保健センターに運び込まれ、低体温状態と脱水症状の兆候が見られたため、医師の診断を受けた。
残りのメンバーは、スペイン内務省が準備したラ・イスラ・デ・ラス・パロマスの元兵舎を使った移民収容センターに移され、ここで赤十字によって暖かい食べ物と衣服が与えられた。子供の両親が息子が行方不明であることを話したのはこのときである。
国家警察関係者の話によると、両親の話を理解するのは困難で、最終的には両親のジェスチャーから理解した内容に基づいて捜索を開始したという。「通訳がいないため、子供が海に落ちたのが航海中だったのか、もしかしたらボートに乗るときだったのか、はっきりしたことが確認できないでいる。しかし、ジェスチャーから理解した内容どおりであるという仮定のもとに、我々は捜索を開始した。」と広報官は語った。
昨日は丸1日かけて、国家警察の海上サービスと、国立海難救助隊の2艘の船が付近の海をくまなく捜査したが、なんの手がかりも見つからなかった。子供の捜索を続けるかどうかは、今日の朝決められる。
今回逮捕された39人はアルヘシラスにある国家警察署に連れていかれ、そこで彼らを自国に送還する手続きが行われる。

国連、人間開発指数発表

国連が発表した今年度の人間開発指数によると、EU諸国の中でスペインはポルトガル、ギリシャに次いで3番目に低い指数を記録している。 この人間開発指数は、平均寿命、所得、識字率から計算されるもので、調査対象173カ国のうち、スペインは第21位との結果だった。(日本は9位。)この指数は先日発表された国連の人間開発報告書の中のもので、1999年にEU諸国の中で最も貧富の差の小さかったスペインは、今回貧富の差の大きさで第9位となっている。
国連開発計画(UNDP)のこの報告書によると、スペインでは10.1%が平均所得の半分を下回る収入を得ているいわゆる“貧困層”で、これはルクセンブルグの3.1%という数字にはとても及ばないが、アメリカ合衆国の16.9%よりはよい結果となっている。また、報告書では男女差の小ささで21位、女性の政治・経済進出度で15位と、スペインが女性の社会進出において発展を遂げてきていることを示している。
ノルウェーが昨年に続き第1位、最下位はシエラ・レオネで、下位28カ国すべてがアフリカ。2年前には3位だったアメリカは2年連続で6位、フランス、アイスランド、日本、スイスも順位を下げている。財政危機にも関わらず、東南アジア諸国は順位を上げており、中国が14、マレーシアも14、昨年から順位を上げた。
2000年の国連ミレニアム・サミットで設けられた貧困、飢餓の撲滅、基本的レベルでの教育、衛生普及の2015年をメドとする目標水準の4分の3以上に現在達しているのは、わずか55カ国、世界人口の23%にすぎず、33カ国、世界人口の26%は、目標水準の半分にも達していないという。

オスカル・セビジャ選手、ツール・ド・フランス棄権

ケルメ・コスタ・ブランカチーム所属、アルバセテ出身のオスカル・セビジャ選手が体の不調を訴えて昨日、第16ステージでレースを棄権した。セビジャ選手は、前日のレース終了時点で、トップのアームストロング選手から11分40秒遅れの14位についていた。
セビジャ選手はスタート前、棄権を考えた前日レース後よりはマシとしながらも体調がよくないと述べていた。「体調がよくありません。何が起こってるのかわからないけど、腹部が腫れているんです。レースには参加するけれど、結果については何の約束もできません。」というのがスタート前の彼の言葉だった。
セビジャ選手が1週間ほど前から体の不調を訴えていたにも関わらず、チームドクターが彼の診察をしたのは火曜日の午後であった。その日、必死の思いで35位でゴールに到着したセビジャ選手の腹部はパンパンに腫れており「皮膚が堅く張って太鼓の皮のようだった」とチーム監督のビセンテ・ベルダ氏は語った。チームドクターの1人、ジョランダ・フエンテス氏(チームのメインドクター、エウフェミオ・フエンテス氏の妹)は消化器系統の問題で、単に朝食のせいでガスが溜まっているのだと思った。そして、たまたま同じホテルに宿泊していたランプレのチームドクターのホセ・イバルグレン氏にも判断を仰いだ。「ツールの終わりに選手達によく起こる消化器系の問題だと僕も思った。なにしろこの暑さじゃね。ジョランダに頼まれて彼女が持っていなかったガスを散らす薬を渡したよ。」とイバルグレン氏は言う。
昨日の朝、フエンテス医師は問題はすべて解決したと述べた。「薬を投与したお陰で、セビジャ選手の腹部膨張はなくなりました。昨夜はよく眠れたようですし、今朝は朝食もきちんと食べていました。今日は元気ですよ。」と彼女は話したが、セビジャ選手の体調はすぐれなかった。レースには参加したものの、スタートから90キロの地点で棄権、その後車の中で気分が悪くなったという。
チームの公式発表によると、セビジャ選手棄権の理由は胃の不調。しかし、1週間ほど前から選手の肝機能がうまく働いていなかったという噂もある。ケルメチームのベルダ監督は噂を否定しているが、「詳しい診断結果を見るまではなんとも言えない。」とコメントしている。


7月24日(水)

アンダルシア州議会、デクレタソを憲法裁判所に起訴

昨日、アンダルシア州議会は、中央政府の改正失業者保護政令を憲法裁判所に起訴することを決定した。これは、数週間前から自治州知事マヌエル・チャベス氏(PSOE―社労党)が考えていたもので、起訴状には社労党だけでなく左翼連合議員も署名する見込み。
中央政府が5月末に承認したデクレタソ(とんでもない法令)によって、アンダルシアの日雇い農業従事者たち20万人は、補助金を受けることができなくなる。6月20日のゼネストを始めとする組合の相次ぐ政令反対運動の中、チャベス知事は改正政令執行を食い止めるために、“出きる限りすべてのこと”をすると宣言、その中に憲法裁判所への起訴案も含まれていた。
アンダルシア州政府広報官のエンリケ・セルベラ氏によると、今回の起訴の中で州政府は、デクレタソの憲法違反の例として訴訟中の給料支払いの件を集中的に取り上げるという。
改正法令以前、雇用主が正当な理由なく従業員を解雇し、従業員から訴えられた場合、雇用主は60日分の給与を支払う義務があり、それ以降判決が出るまで残りの給与は政府が払うことになっていた。しかし、現在従業員は、判決によって元雇用主が解雇に正当な理由がなかったことを認めるまでは、失業手当しかもらえない。
セルベラ広報官は改正法令に含まれる“労働規定の改定”は、就労のチャンスを与える、労働環境の改善、うまく機能していない失業手当のシステムを改善するという本来の目的に沿っていないため憲法違反と見なしうると述べた。
州政府はすでに労働法の専門家グループを雇って起訴状準備を着々と進めており、今月末には憲法裁判所に提出する見通しだという。

モロッコ、スペイン両国大使、9月に任地へ戻ることに

月曜日にラバトで行われた会談で、アナ・パラシオ、モハメド・ベナイサ両外務大臣は、2001年10月に自国政府の命によりモロッコに戻っていた駐スペインモロッコ大使を9月から復帰させるとともに、今回のペレヒル島事件の後、今月16日にスペインに戻っていた駐モロッコスペイン大使もモロッコに戻すことで合意した。
両大使の復帰は、ベナイサ大使の9月のマドリッド訪問に合わせて行われる見通しで、ペレヒル島占拠に以降悪化している両国の関係を強め、新たな対話への道を開く一歩となる。
パラシオ外務大臣は、昨日ブリュッセルでEUとNATOに、今回の危機においてのスペインへの支援に対し感謝を表明した。
一方、EU外交・ 安全保障政策上級代表、ハビエル・ソラナ氏は今回のペレヒル島危機の調停役からEUが降ろされた経緯について、モロッコ、マグレブ地域諸国とEU間の西サハラ問題が原因だと見ている。今月31日の国連安全保障理事会でこの問題がとりあげられることになっているが、ソラナ上級代表は「EU内にはこの問題に触れないでおこうとする傾向がある。それは、EU共通の見解がないからだ。現時点では共通の見解をもつことは難しいと思う。近い内にそれを持つ日が訪れればいいのだが。」と昨日語った。 ソラナ氏はによると、スペインとモロッコに起こった今回の危機の間中、EUは両国の外務省と緊密な連絡をとっていたという。そして直接国名を明らかにすることを避けた上で、“両国のうちの一方”が調停役をEUではなく、アメリカ合衆国に委ねてからもコンタクトを失うことなく、交渉の進展について逐一報告を受けていたと述べた。

PP、地方選挙候補者リストにさらに多くの女性候補を載せるとPSOEを挑発

政府与党である国民党(PP)は昨日、“女性にスペインでさらなる活躍の場を”と題した報告書を発表、その中でPP所属の女性政治家が国会、欧州議会、州議会、市町村議会、そして政府高官として活躍していることを強調、彼女たちよって女性社会保険加入者の増加、女性失業率の低下、そして女性が家庭と仕事を両立できる環境を整えるための改革がなされたと述べた。
ハビエル・アレナス国民党総書記長は、女性を特別に対象としたPP入党キャンペーンを発表、社労党(PSOE)政権時代と比べてこの6年間でPP政権でいかに女性の進出が行われてきているかを述べた。現在、63万2千人いるPP党員のうち32.7%、207,231人が女性で、PPが政権を握る前の6年前には全体の29.7%だった。
「口先だけで民衆を扇動してPPのイメージを損ねようとする者がいるが、我々は実績をもっている。我々は、お飾りで選挙リストに女性を載せるのではなく、実際に勝てる女性を候補にする」とアレナス氏はPSOEを攻撃し、“最低目標”として500人の女性市村長(現在は約350人)を次期地方選で獲得するという挑戦をPSOEに突きつけた。


7月23日(火)

スペインとモロッコ、2ヶ月の休戦

スペインのアナ・パラシオとモロッコのモハメッド・ベナイサ両外務大臣は、昨日4時間にわたる話し合いの末、共同声明“ペレヒル/レイラ島を2002年7月以前の状態に戻すための合意”を発表した。この共同声明は、“双方のきずなをさらに強めるための率直で正直な対話”の入口となるもので、ベナイサ、パラシオ両大臣は9月に今度はマドリッドで会談の場を持つことになった。
ベナイサ大臣がパラシオ大臣を空港に迎えに行かなかったことに始まり、今回の会談では両国の関係が冷却化していることを物語る数々のシーンが見られた。ベナイサ大臣は、会談の場であったモロッコ外務省に着いたパラシオ大臣を出迎えることもなく、会談の間で向かい合って座った両大臣の写真をカメラマン達が撮ったとき、両大臣とも視線を合わせることを避けた。
当初、2時間の予定であったが4時間に延びたこの会談で主に討議されたのは、コリン・パウエル・アメリカ合衆国国務長官の提案したペレヒル島の合意に関する共同声明の内容についてであった。ラモン・デ・ミゲル・ヨーロッパ問題書記官が昨日ブリュッセルで述べたところによると、仲介役にアメリカを選んだのはモロッコでそれは、アメリカがEUより“中立的”な位置にあるからという理由からであったという。
PSOE(社労党)の執行部は昨日、今回のペレヒル島の危機について分析し、スペイン政府を支持するとしながらも、アスナル首相のモロッコに対する姿勢について批判した。ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ党首はスペイン政府に、“モロッコ政府との新たな関係”を求め、その尽力にPSOEを参加させるよう要求した。

スペイン内務省、ラス・パルマスに1300人の不法移民を放置

今年の1月から5月までの間にカナリア諸島のフエルテベントゥラ島とランサローテ島に小舟でたどり着き、逮捕されたアフリカからの移民の数は2691人。6月20日までに自国に送還されたのはそのうちわずか1387人で、残りの1304人は隣のラス・パルマス島に連れていかれ、サンタ・カタリナ公園で自由の身となった。現在も約250人がラス・パルマスに残り、残りはマドリッドへ立ったと見られる。
15ヶ月前からラス・パルマスのサンタ・カタリナ公園に暮らす、平均して100人ほど(ピーク時は300人)の移民はカナリア諸島での大きな政治問題、近所の悩みの種となっている。
2691人のうち、1387人はナイジェリア、マグレブ地域(チュニジア・アルジェリア・モッロコ三国の総称) 国などスペインと送還協定を結ぶ国出身であったため、ただちに自国に送還されたが、それ以外はコンゴ、ガンビア、マリ、シエラ・レオネといった、スペインと送還協定をもたない、または政府が自国民の登録をコントロールできる状態にない国出身であった。彼らは40日間フエルテベントゥラ島に拘留されたが、その後自由の身となった。人口6万6千人の島に彼らが残って島の観光業に影響を及ぼさないために、移民局は彼らを人口36万5千人のグラン・カナリア島に送るよう指示した。グラン・カナリア島にはカナリア諸島唯一のミエル・バホ移民収容所があるが、収容人数は154人。
もちろん、収容所の収容人数は大幅に越えている。ラス・パルマスに送り込まれた1304人の不法移民は道端に住み、男性は物乞い、女性は売春で生計を立てるようになった。現在、市の中心にあり、商店に囲まれ、豪華客船が停泊するすぐそばのサンタ・カタリナ公園に住む不法移民たちは、ベンチをわけあって生活している。周囲の住民と商店主たちの不快感は増大する一方である。「これは中央政府の無責任さの表われだ。彼らは、不法移民たちを送還もせず、滞在を合法化することもない。移民たちだって外で暮らしたいわけではないのだから、政府は送還しない移民には合法化の書類を与えるべきだ。」とカナリア諸島の匿名の政治家は語った。6月には新たに833人の移民がアフリカから到着している。

マドリッドで急増するホテルに、業界が懸念

2012年のオリンピック開催地となるために、マドリッド市役所は昨年から今年にかけて新たに60のホテルの建設を許可しており、これによって新たに11751のベッドが増えることになる。マドリッドホテル業協会によるとすでにホテルの数は飽和状態で、需要の2倍の数のホテルがあるとさえ言われている。会長のヘスス・ガテル氏は「市役所にはすでにホテルの数が飽和状態であることを知らせてあるのに、引き続きホテル建築許可を出しつづけている」と抗議する。
9月11日のアメリカのテロ以来宿泊客は減っており、マドリッドに2001年に宿泊した観光客の数は558万人で、前年より20万人減っているという。 しかしながら、都市整備担当のイグナシオ・デル・リオ市会議員はホテルの数が飽和状態にあるとは考えていない。「我々は新たにホテルを建設したいという企業家にお役所的足かせをつけて、申し出を拒否したくない。企業家のホテル開業の可能性を否定することはできない。」と述べた。
マドリッドホテル業協会会長のガテル氏は、マドリッドでオリンピックを開催することに反対しているわけではないことを強調。しかし、「1年のうち、ホテルをみつけるのが困難な時期があるのは事実だが、だからといって計画性なく新しくホテルを建てていいということにはならない。オリンピック開催中は、どのホテルも満員になるだろう。でも、その後は?」とマドリッド市に将来をみすえたホテル建設計画を求めている。


7月22日(月)

スペイン、モロッコ両国の外務大臣、ペレヒル島問題について会談

スペインのアナ・パラシオ外務大臣とモロッコのモハメド・ベナイサ外務大臣は、今日モロッコの首都ラバトで、今回のペレヒル島問題についての会談を持つ。
会談は、午後1時(スペイン現地時間)から始まる予定で、基本的にはアメリカ政府の仲介で土曜日に特殊部隊を島から撤収させたスペインが、ペレヒル島を7月11日以前の状態に戻すことでモロッコに合意を求めるが、スペイン政府副首相府関係者の話によると、両国はこの合意について書面にサインするのではなく、会談はあくまでも島を以前の状態に戻すという確約を話題にとりあげるものにとどまる予定。
しかしながら、モロッコ外務省のタイエブ・ファッシ・フィーリ書記官は、昨日、今回の会談ではペレヒル島問題だけでなく、スペイン・モロッコ両国の良好な関係維持の妨げとなるすべての問題について取り上げると述べた。モロッコ政府が取り上げたいテーマの中に含まれるのは、今月末国連で取り上げられる西サハラ問題、スペインがモロッコを非難しているジブラルタル海峡ルートからの不法移民の急増、モロッコ政府が自国の海域に含まれているとみなしているカナリア諸島近海でのスペインの会社への海底石油調査の許可問題などである。

携帯電話のアンテナ不足で、夏のリゾート地で回線パンクの恐れ

スペインの大手携帯電話会社3社(テレフォニカ・モビレス、ヴォダフォン、アメナ)は、アンテナ設置に関する行政上の規制が、「電波の届く範囲を保証する」という基本的なサービスの質を低下させているという警告を発し、特にこの夏コスタ・デル・ソルなど、急に人口密度の高くなるリゾート地において、回線が“パンク”する恐れがあると指摘した。
この夏のバカンスシーズンにスペインの海岸リゾートを訪れるのは、国内からの大移動に加えて、800万人以上の外国人観光客。これにより、携帯電話の利用率は、他の季節に比べて約2.5倍に膨れ上がる。このような需要の急増に対して、各携帯電話会社はアンテナを増やして対応しなければならないが、昨年から無線用アンテナから発せられる電波の体への悪影響に対する恐れが社会問題化しているため、新しく施行された政令などを含めていくつもの規制が交錯しており、行政側からなかなか設置許可がおりないのが現状である。6月までにこれらの携帯電話会社から要請のあったアンテナ新規設置に関して、各市町村役場で許可されたのは、わずか20%に過ぎないという。
3社は、このような行政側からの規制の結果、現在リゾート客が集中している地中海岸や、コスタ・デル・ソルなどで様々な通信障害が発生しているとしている。さらにベニドルム、マルベーリャ、コルドバで、法的制限を解除しない限り、回線がパンク状態になるであろうと警告を発した。
これらの規制は、日々目覚しい発展を遂げている携帯電話のマルチメディア化や、インターネットへの高速接続が可能な第3世代携帯に対応するためにさらにアンテナ網の拡充が必要とされ、今後10年間で総額163億ユーロに上る投資が約束されているこの業界において、大きな足かせとなることが危惧される。

ワイン業界の危機に対して、農業省が対策を提言

スペインにおけるワイン用ブドウの栽培面積は114万ヘクタールに上り、平均生産量は約4000万ヘクトリットル。近年設備の向上や品種改良、灌漑量の増加と栽培方法には大きな進歩が見られているが、逆に需要が大きな危機を迎えている。スペインでは15年前と比べて、ワインの1人あたり年間消費量は46リットルから32リットルへと大きく減少した。そしてテーブルワイン離れが加速した(36リットルから23リットルへ)のに対して、原産地呼称(DO)などの比較的高価なワインが、6.3リットルから7.4リットルと消費を伸ばしており、いわば高級志向が進んでいるといえるのが特徴。
このような状況に対して農業省は、ブドウ栽培とワイン醸造業界で起きている消費量格差を打開するためのプランを発表した。主な対策は、需要の拡大と生産制限の強化。またDOワインとテーブルワインの格差を埋めるために、「第三の道」としてすでに多額の投資が行われているラ・マンチャに代表されるような高品質でしかもリーズナブルな価格の地方ワインの流通を強化していくという計画を打ち出している。そして供給の面では、助成金を増やす、ブドウやワインの長期個人契約を奨励、新しい醸造所を設立する際に支払う税金の凍結などを行い生産をさらに促進する、また需要促進のために、白ワインと赤ワインの混合を禁止するなどの品質保証を行うことなどが盛り込まれた。このような混合はEUレベルではすでに禁止されているものだが、これまでスペインだけが例外的に認められてきた。さらに過剰生産を防ぐために、ブドウの品質によって支払いをする、そしてワインが健康に良い飲み物であるという考えを普及させることも必要としている。
今のところこのプランには具体的な予算や財政計画などは盛り込まれていないが、正式に承認される前に各自治州や農業組合、共同組合などに提出され意見を聞くことになる。

FCバルセロナからリバウド選手退団、新しいスターはリケルメ選手に

本日午後9:00から、サッカーのFCバルセロナのホームグラウンド“ノウ・カンプ”で、新契約選手も参加しての公開練習が行われる。しかしこの中にはこれまでスター選手として活躍してきたリバウド選手の姿は見られないことになる。
リバウド選手は昨日、2003年6月30日に満了するはずだった契約の取り消しを行うことでクラブ側との合意に達した。リバウド選手は今年のワールドカップでブラジルチームの優勝に大きく貢献したが、FCバルセロナへの在籍は5年にわたり、130ゴールを決めた。リバウド選手との契約取り消しに関して同クラブ側は、あくまでもチームの技術面での問題として、経済的な理由ではないとしている。
本日新入団選手として公開練習に参加するのは、ルイス・ガルシア(バリャドリーから)、ロバート・エンケ(ベンフィカ)、リケルメ(ボカ・ジュニオール)、ガイツカ・メンディエタ(ラツィオ)の4選手。このうちメンディエタ選手に関しては今日昼に移籍発表が行われる。


7月19日(金)

仏警察当局とスペイン市民警察により“GRAPO”新幹部ら逮捕

2000年にカリスマ的指導者が逮捕された後、フランス、パリで再建されていた共産主義テロ組織“GRAPO”の新しい幹部ら14名が、昨日パリ、マドリッド、ビトリアの各地でフランス警察当局やスペインの市民警察の手により逮捕された。逮捕者の中には、マルコス・マルティン・ポンセとフェルナンド・イエロ・チョモンという2人の最高幹部が含まれている模様。この組織はパリやマドリッドに合計5件のアパートを所有していた。
旧“GRAPO”は、1975年にスペイン・マルクス−レーニン主義組織(OMLE)を母体として設立されたPCE−R(復興スペイン共産党)の実行部門として結成された。主に治安当局や軍に対するテロ活動や、現金輸送車襲撃などを行い、これまでに80人を殺害、グループの活動家も当局との衝突などで13人死亡している。2000年11月にカリスマ的指導者だったマヌエル・ペレス・マルティネス(カマラダ・アレナス)容疑者とフェルナンド・シルバ・サンデ容疑者が逮捕され、一時組織は壊滅したと見られていた。
再建された“GRAPO”壊滅作戦は、今年の6月に開始された。同組織と他のテロ・グループとの連絡係であったアントニオ・ラゴ・イグレシアス容疑者がパリに向かうという情報を入手したフランスとスペインの警察当局は、共同作戦網を張り、ラゴ容疑者がフランス国内のテロリストらとコンタクトを取っている間に、相手の身元などを掴んだ。
パリ在住の構成員ホセファ・バニョス・アンドゥハル容疑者がスペインに入国し、国内のメンバーとコンタクトをとったことが明らかになった時点で、この組織に関しての捜査の責任者であるバルタサール・ガルソン判事が、彼らの国際指名手配と家宅捜索の令状を出した。パリで逮捕された8人はいずれもGRAPOの中央委員会のメンバー、またスペイン国内での逮捕者は6人(ビトリアで1人、マドリッドで5人)。
新生“GRAPO”の現在の目的は、「将来のテロ活動のための資金と情報収集」であったと見られる。今回の逮捕者の多くも、スペイン国内での銀行強盗や現金輸送車襲撃などを行った疑いが持たれている。

バスク人に対する意識調査−−−HB支持者の多くもETAのテロ行為には反対

パイス・バスコ大学の政治科学部が毎年行っているアンケート調査“Euskobarometro”の集計結果が発表された。これは、バスク社会における市民の意識調査を目的としたもので、今年の5月15日から6月10日にかけて、バスクの1.200家庭を対象に行われた。
バスク人の多くは、PNVやEA、IUといった民族主義的政党の支持者であり、社会党支持者も22%いるものの、このアンケートの結果は主に民族主義的な有権者の意見を反映しているといえるであろう。しかしながら、ここ数ヶ月で、これらの民族主義政党が急進化してきていることから、有権者の間でも「自治」から「独立」へという気運が高まってきているのではないかと考えられる。それでもやはり連邦制や地方自治を望む声も多く、40%が、ゲルニカ議定書の見直しが必要と答えている。
また1981年にはETAのテロ行為を支持していたバスク人は8%いたが、今回の調査では1%まで下がり、民族主義を擁護しつつも、暴力的行為を支持する人がほとんどいなくなったことが明らかになった。今回アンケートの調査対象となったバスク人の59%はETAを完全に否定すると答え、さらにETAの政治母体であるバタスナ党を支持する有権者も、ETAのやり方から次第に気持ちが離れつつあるようだ。ETAの取って来た手段に対して、これを正当なやり方ではないと考える人が、前年の46%から、今回は72%と大きく増えた。しかしながら、これらのバタスナ党支持者は、「バスク独立」というETAの最終目標には賛同を示している。
新「政党法」によるバタスナ党非合法化については、半数以上の人が、「適切ではない」「バスク政治にとって有害」「反民主主義的」と答え、不支持を表明した。また38%の人が、いくつかのバスクの町や村では自由な選挙を行うことが出来ない状況にあると答えた。そしてこのような状況を打開するためには、民主主義政党が統一候補を擁立して戦っていかなければならないとした。
アンケートの回答は以下の通り
政治のことを話題にする自由があるか:
誰とでも話せる34%、誰とも話せない21%、相手によっては話せる44%、わからない・無回答1%
バスク人としての民族主義的感情:
ある43%、ない50%、わからない・無回答7%
バスク独立を希望するか:
強く希望31%、少し希望35%、全くない19%、無関心9%、わからない・無回答6%
新しい政党法によってテロ行為に関わる政党の非合法化を行うことについてどう思うか(4つに別れた質問):
・適切ではない59%、適切である18%、わからない・無回答23%
・実現性がある30%、実現性がない37%、わからない・無回答33%
・反民主主義的だと思う53%、民主主義的だと思う21%、わからない・無回答26%
・バスクにとって有益16%、有害だと思う58%、わからない・無回答26%
バスク人の現在の心配事:
失業69%、テロ暴力行為55%、不平等・社会福祉38%、住居・衛生・教育29%、麻薬13%、その他48%

欧州委員会とフランス、スペインにペレヒル島からの撤収を催促

スペイン特殊部隊によるペレヒル島奪回から1日経過した昨日、欧州委員会とフランスは、スペイン政府にペレヒル島からスペイン軍を撤収させ、7月11日以前の状態に戻すよう求めた。しかし、スペイン政府は再びペレヒル島を占拠しないという約束をモロッコからとりつけない限りは撤収しないとし、防衛大臣はさらに3部隊をメリジャ(北アフリカにあるスペイン領)に送りこんだ。
モロッコのモハメド・ベナイサ外務大臣は、昨日ラジオ局SERにスペイン軍がペレヒル島に駐屯している限り、スペイン政府との対話は実現しないこと、モロッコ政府に再びペレヒル島を占拠する意思がない事を表明した。
欧州委員会のスポークスマン、ジョナサン・フォール氏は、「欧州委員会はスペインを全面的に支持している」と述べ、一方フランス外務省広報官は「フランスはただ平和を求めるだけだ」とし、「そのためにはモロッコ憲兵隊占拠以前の状態に戻すことが不可欠である」とコメントした。フランスは、スペイン軍が島を奪回した水曜日、欧州連合からのスペイン支持の公式文書を、モロッコとの関係悪化を恐れて差し止めにしている。
モロッコ政府は、スペイン軍によるペレヒル島占拠に対するモロッコ側の言い分を国際的にアピールするキャンペーンを今日から始めると発表した。スペイン政府側は、欧州委員会、NATOから十分な支持を受けているためこれ以上は何もしない構え。スペイン軍がペレヒル島を奪回した際、欧州委員会はペレヒル島を“EUの領土”と認め、大西洋連合軍スポークスマンは「元の状態が回復された」と述べている。

ラバトのスペイン大使館前でデモ

「スペインは出て行け!」昨日正午頃、モロッコの首都ラバトにあるスペイン大使館前に300人ほどが集まり、スペイン語で抗議の声を上げた。モロッコ人権協会の主導によるこのデモでは、“民主主義と反植民地主義”を唱えて、メリジャ、セウタ、北部群島領土問題の平和的解決が求められた。デモ隊の中には“アスナル主義はフランコ主義と同じだ!”“我々の領土侵略を許すな!”などと書かれたプラカードが見られた。モロッコ人権協会(モロッコ政府に特に批判的なグループ)はスペイン軍によるレイラ島(ペレヒル島のモロッコ名)侵略を非難、セウタとメリジャの返還を繰り返し求めた。大使館前での抗議は約45分続き、代表者の1人が大使館に抗議文を提出した後デモ隊は解散した。
午後には民族主義政党イスティクラルの若者200人ほどが、ラバトのスペイン大使館前に集結、“スペインのレイラ島占拠後の危険な勢力拡大”に抗議、“モロッコ領土全土からスペイン領を一掃”することを支持すると表明した。
穏健イスラム主義者で知られる正義前進党の広報係アブデリア・ベンキラン氏は新聞記者団に「モロッコ政府はスペイン軍によるレイラ島選挙後、威厳ある行動をとっていない。我々は戦争をしたいわけではない。しかし、スペインとの国交断絶を求める。」と述べている。
一方セウタの南、約40キロに位置するテトゥアン(元スペイン領モロッコの首都)では、前日と同じく領事館前に抗議者が集まった。プラカードには“セウタ、メリジャ、レイラ―モロッコ領土”“一丸となった国民は決して打ち負かされない”等と書かれており、スペイン人を人種差別主義者、植民地主義者、テロリストとする内容や、“por que Gibraltar si, y Ceuta y Melilla no" と、スペインがイギリスにジブラルタル返還を求めていることから、なぜジブラルタルは返還されるべきでセウタとメリジャはダメなのかと問いかける内容のプラカードもあった。しかし、セウタを通じてのスペインとの商売により近年目覚しく発展しているテトゥアンでは参加者の数は少なく、状況は落ち着いたものとなっている。


7月18日(木)

スペイン特殊部隊、引き続きペレヒル島に駐屯

昨日午前6時20分頃、北アフリカにあるスペイン領セウタ沖のペレヒル島を奪回した28人のスペイン兵は、引き続き島に駐屯している。以前、モロッコの国旗が掲げられていた場所には現在、スペイン国旗がはためいている。
スペイン政府は、スペイン人部隊が島から撤収するのはモロッコ政府が二度とペレヒル島を占拠しないと保証したときであると昨日発表した。今回のスペイン特殊部隊による島の奪回を、モロッコ政府は“宣戦布告”であるとしたが、その後モロッコの外務大臣モハメッド・ベナイサ氏は「モロッコ政府は、“スペイン兵が島から撤退すれば”スペイン政府との対話の用意がある」と述べた。
アナ・パラシオ外務大臣は、スペイン政府がモロッコに対し、なんらかの報復措置をとる、または友好協力条約を撤回する可能性については否定し、モロッコ在住の約6000人のスペイン人、モロッコからの移民、そしてツーリストに対して事態は沈静化しているので心配しないようにとメッセージを送った。しかし、同時に「対話が実現しても、その席ではセルタとメリジャについてはとりあげるつもりはありません。どちらもセビジャやカディスと同じれっきとしたスペイン領土で、それは711年から続いていてモロッコ政府も承知していることですから。」と述べた。
アメリカ合衆国は両国に対し“平和に解決すること”を求め、フランスは、“友人である両国”の現状について“心配”していると述べた上で事態の収拾を求めた。欧州委員会のロマノ・プロディ委員長が「スペイン兵を撤収させ、島を元の状態に戻すためにスペインとモロッコ両国の対話を始めるときがやってきた。」と述べた一方、NATOはスペイン兵が島を奪回した現在の状況に“満足”しているとコメントした。モロッコ政府は、今回の事件を国連安全保証理事会に持ち込むと発表したが、イノセンシオ・アリアス・スペイン大使は昨日すでに同理事会に報告書を提出している。

BBVA銀行は、旧ビルバオ銀行の新たなジャージー島秘密口座の存在を報告

BBVA銀行は昨日、全国管区裁判所のバルタサール・ガルソン判事とCNMV(証券マーケット委員会)に対して、“タックス・ヘイブン”ジャージー島にこれまで明らかにされたものとは別の秘密口座を持った会社組織が存在しているとの報告を行った。それらは1979年に、エミリオ・イバラ氏が専務取締役だった時代の旧ビルバオ銀行により設立されたものを始めとする複数の会社で、今年4月に明るみに出たジャージー島のトラストなどを通じて行っていた資金流用と同時期に運営されていたもの。これらの口座は、最高で6.700万ドルの残高を擁していたこともあるが、現在の残高は2万ユーロほどという。

アルカイダに関与していたと見られる4人目の男を逮捕( マドリッド )

警察当局の発表によると、昨日マドリッドで、シリア出身のカマル・ハシッド・チャール(通称アブ・ヌール)容疑者が、オサマ・ビンラディン氏率いるイスラム過激派のテロ組織「アルカイダ」に資金面で関与していた疑いで逮捕され、自宅から書類などが押収された。同容疑者は、16日にマドリッドとカステリョンで、やはりアルカイダ関連容疑で逮捕された3人と同様に、現在服役中のアブ・ダーダー容疑者が率いていた分子グループのメンバーと見られる。これら3人の自宅などからは、昨年9月の米同時テロの標的となった世界貿易センタービルや、その他の標的を収めたビデオなどが押収されている。
昨年からスペイン国内のアルカイダ網を壊滅する目的で行われている“ダティル作戦”は、今回を含めてこれまでに3度実行されている。第1回目は、昨年11月から今年の1月にかけて行われ、13人が逮捕されている。彼らは、アブ・ダーダー服役囚の率いていたグループのメンバーらで、戦闘員を育てるために、イスラム教徒の若者をリクルート活動によって集め、アフガニスタンやその他の国々にある訓練施設に送っていたと見られる。第2回目は今年の4月で、ウサマ・ビン・ラディン氏の関与する組織または個人に資金提供を行っていた会社の存在などが明るみに出た。

イゴル・ゴンサレス選手に虚偽のドーピング疑惑

ツール・ド・フランスで現在総合トップの座を守りつづけている、スペインのイゴル・ゴンサレス・デ・ガルデアーノ選手(ONCE)に、思いがけない「薬物違反疑惑」という噂が流れた。
UCI(国際自転車競技連盟)によると、12日のステージ終了後、イゴル選手は持病のアレルギー喘息(インドゥライン選手や、ウルリッヒ選手なども患っていた)治療に必要な吸入薬を使用しているため、アンチドーピングテストを受けた。この結果尿中1ml当りサルブタモール1.360ng(ナノグラム)が検出された。この数字は、すでに連盟に提出している投薬報告により認められた薬に含まれていることは明らかであったが、UCIの「喘息および運動誘発性喘息の予防および治療を目的とした吸入による場合、サルブタモールが尿中濃度1.000ng/mlを超える場合は、蛋白同化剤のカテゴリーにおいて陽性」という規定を土台に、バルセロナのアンチ・ドーピング研究所のジョルディ・セグラ氏が、吸入器を使用して、喘息治療のためだけに用いられたとすれば、1.000ngを超えるはずはないと指摘し、それ以上の数字が出たということは、禁止されている錠剤の服用を行ったのではないかと思われる、との見解を示した。
これに対してONCE-Eroskiチームのペドロ・セラヤ医師は、「この薬の吸入量は、喘息の度合いによって個人差があるのが普通。たとえば、発作が起きた時に吸入すれば、直後の検査では1000どころか6.000ngくらいまで検出されることもあり得る。吸入薬はすでに登録済みで、その時の発作の度合いによって、治療目的で量を調整して使用することが認められているはず。」と反論した。
結局、連盟自体が、イゴル選手の所持していた吸入薬は、連盟にあらかじめ登録され、認められているものでありドーピングとは言えない、との声明を発表し、ようやくイゴル選手のドーピング疑惑は晴れたことになった。しかしツール・ド・フランスは基本的にUCIのドーピング規定が適用されているものの、イゴル選手には、さらに「ドーピング防止委員会」というフランス独自の組織による検査という関門が待ち受けている。


7月17日(水)

モロッコ憲兵隊、ペレヒル島から退去

海軍部隊、地上特殊部隊、爆弾を搭載した飛行機F−18が、ペレヒル島を奪回した。上陸作戦は、コペロ(セビジャ)の陸軍部隊のヘリコプターの援助を受けながら、アリカンテに本部を置く陸軍特殊部隊員が遂行した。木曜日にモロッコ憲兵隊が上陸、占拠していたセウタ沖の小島、ペレヒル島を奪回する作戦プランは土曜日から練られ、今朝6時15分実行に移された。物的損害、負傷者はなく、占拠していたモロッコ憲兵隊員6人はモロッコに送還された。スペイン軍隊は引き続き、ペレヒル島に駐屯している。
モロッコ政府からの公式発表は今のところないが、広報大臣は、予定していたペレヒル島訪問は変更なく行われると述べている。
ペレヒル島を奪回するとすぐ、スペイン政府は話し合いの場を持つべくモロッコ政府に連絡し、その後奪回について国連安全保障理事会に報告した。
スペイン政府の発表した声明によると、作戦の実行中、アスナル首相はフアン・カルロス国王に進行状況を逐一報告、政府第一副首相も主要政党代表者に連絡をとっていたという。この声明文は、"スペインは、モロッコ王国との友好的協力関係の維持を望むことをここで繰り返します。そしてこの瞬間から話し合いの場を設ける準備ができていることを申し上げます。"と結ばれている。
今回のペレヒル島占拠は、モロッコの観光ビジネスにダメージを与えた。モロッコを訪れる主要観光客であるスペイン人の旅行予約は占拠が始まって以来20〜30%の減少をみせている。

フランスでETAの火薬倉庫見つかり6人逮捕

フランスの警察当局は、昨日フランス南部リビエールで、“zulo”と呼ばれるETAが地面に穴を掘って作った火薬・弾薬庫を発見した。面積30〜35平米のこの地下倉庫は、現在は廃屋となっている工場の敷地内にあり、中からは500キログラム以上のダイナマイト、銃や擲(てき)弾筒など150点に及ぶ武器類、さらに数千の弾薬や多量の書類などが押収された。“zulo”の地上入り口は草などでカムフラージュされ、油圧式の揚げ戸で開くようになっていた。内部は地下2階構造で、一番下の部分に今回の押収物が格納されていた。また逮捕者が6人出ており、この内4人は家族である。
逮捕されたのは、家族でこの弾薬庫に隣接した民家に住んでいたB.F.エルビナ(77)とその妻C.スビジャガ(70)、娘のミレン(45)、アマヤ(39)の各容疑者4人、その後D.メソナーブ容疑者(56)とI.エロスア・リサラス容疑者(74)の2人も同様に逮捕された。全員フランス国籍。C.スビジャガ容疑者は、ETAの元物流担当幹部サビノ・スビジャガ・ベロキ容疑者(1987年に仏で1.360Kgの爆薬をワゴン車で運搬中に逮捕される)の姉にあたる。
フランス警察当局は、10ヶ月前にダックス(仏)でA.オイアルサバル・チャパルテギ容疑者が逮捕された後の捜査のなかで入手した付近の見取り図をもとに、数ヶ月前からこの“zulo”の捜索を続け、ようやく今回の発見、関係者逮捕に至った。
アンヘル・アセベス内務大臣は、今回のETA物流壊滅作戦は、フランス警察とスペインの市民警察の協力体制によって成功を収めたもので、ETAによる和平協定破棄以来最大の武器・弾薬押収量であったと報告した。

昨年の一人当り国民所得が5.9%増

2001年の一人当りの国民所得は、16.148ユーロ(2.686.800ペセタ)となり、前年に比べて5.9%増えていたことがINE(国立統計局)の調査でわかった。またこの全国平均の指数を100として、自治州別の統計も発表された。指数が100を超え、一人当りの所得が全国平均を上回ったのはマドリッド(133.7、21.599ユーロ))、ナバーラ(126.9)、パイス・バスコ、カタルーニャ、バレアレス、ラ・リオハ、アラゴンの7つの自治州。その他の11の自治州は全国平均を下回った。最もポイントが低かったのはエクストレマドゥーラ州(64.7、10.461ユーロ)、アンダルシア州(74.9)、ガリシア(78.4)など。
2001年までの過去7年間で所得が著しく増加したのは、マドリッド州、バレンシア州(今回96.6ポイント)および依然として最下位に留まってはいるもののエクストレマドゥーラ州であった。逆に所得の伸びが比較的少なかったのは、アストゥリアスとカスティーリャ・イ・レオン。
カタルーニャ州は、これまでスペイン経済にとって最も重要な支柱となってきたが、このところその勢いが減速しかけているともいえる。逆に国への経済的貢献では2番手となるマドリッド州では成長が加速していることがわかった。また今回の統計にはっきりと示された地方格差が、今後のスペイン経済の減速傾向を強める要因となることが予想される。

アスナル首相対サパテロ党首 2人の国会討論に関してアンケート

アスナル首相とサパテロ社労党(PSOE)党首の国会における討論に関するアンケートが行われ、45.4%の人がアスナル首相の勝ち、30.6%がサパテロ党首の勝ちと答え、男性より女性のほうが、サパテロ党首に対して厳しい判断を下した。
7月15、16日の両日にわたって行われたこの電話によるアンケートでは、2人のリーダーのうち、どちらにより説得力があったか、攻撃的であったか、論理がわかりやすかったか、傑出していたか、聴衆の心をつかむものがあったかについても聞いている。これらすべてのポイントについて出た数字は似たようなものであったが、アスナル首相に対し、サパテロ党首の演説はより説得力があり(40%―アスナル首相37.4%)、攻撃的で(37.2%―同27.4%)、論理がわかりやすかった(35.7%―同33.4%)という結果がでている。それに対してアスナル首相の演説は、より聴衆の心をつかむものがあり、傑出した内容であったという。
これと同時に、PP(国民党)、PSOE(社労党)、CiU(カタルニャ連合)、IU(左翼連合)、PNV(バスク民衆党)のスペイン五大政党のスポークスマンに対してもアンケートが行われており、それによるとアスナル首相の演説はよかったまたはとてもよかった42.8%、普通30.3%、悪かったまたはとても悪かった21.9%との数字が出ており、またサパテロ党首の反論に対しては、よかったまたはとてもよかった40.7%、普通30.6%、悪かったまたはとても悪かった18.7%となっている。


7月16日(火)

国政に関する国会討論が行われる

昨日国会で行われた国政に関する討論会では、アスナル首相と社労党(PSOE)サパテロ党首ら野党代表がそれぞれ演説を行った。アスナル首相は、国民党(PP)が政権についてからのスペインの経済成長の著しさ、教育・衛生に関して設置された新たな法律や措置という具体的な成果を挙げて現政権を擁護した。これに対してPSOEやIU(左翼連合)などは、アスナル政権を「反社会的、独裁的」と定義し、スペインの民主主義の質が低下していると指摘した。また今回のアスナル首相の内閣改造を引き合いに出して、以前のアスナル内閣が失政であった証拠だとした。また社会的弱者により厳しい政治を行っているとして、教育資質法や“デクレタソ”と呼ばれる失業者保護令を全面撤回するよう引き続き求める姿勢を明らかにした。さらに不動産の値上がりや治安の悪化などの社会問題の深刻化を取り上げて、政府が解決のための役割を果たさなかった、などの批判を行った。
アスナル首相は、演説の中で政権発足以来最大の危機といわれる状況についての言及を避け、そのかわり次々と今後の多岐にわたる政策案を1時間にわたって発表し、論旨はさながら所信表明演説となった。具体的には、
1)モロッコのペレヒル島占領を受け入れない姿勢。
2)テロリズムとバスク:反テロリスト協定における政党間の結びつきをより強固にして、ETAからの脅迫を受けている議員らを保護していく。
3)犯罪防止:2002〜2004年に2万人の警察官を新規採用し、街頭パトロール強化。
4)外国人犯罪:6年以下の懲役刑を受けた不法移民の即時国外強制退去を進め、それ以上の懲役に関しては、4分の3の刑期が終了した時点で国外退去を命ずることができるようにする。
5)自治州の発展:PSOEに対して地方政治における両党の協力関係を進展させるための協定調印を求める。新しい地方財政のモデル作成。
6)財政改革:来年1月1日に財政改革が施行される。
7)雇用改革について労組との対話を進める。ただし全面撤回という要求は受けず、あくまでも実施を前提に支援を求めていく方針。
8)交通・通信分野の市場競争を活発にするための法案作り。
9)教育資質法案が19日に閣僚会議で可決される。
10)移民:受け入れは制限されるべき。現行の合法化特別措置だけが解決策とはいえないため外国人法の改正を行うべき。
11)ジブラルタル問題:住民の意思を尊重しつつ引き続き問題解決に努める。
この討論は本日も続けられる。

NATO、ペレヒル島からの即時退去をモロッコ政府に求める

フアン・プラット大使は昨日ジョージ・ロバートソンNATO事務総長に面会、モロッコ憲兵隊によるペレヒル島占拠と、スペイン海軍の同地域展開について報告した。その後、大西洋連合軍スポークスマンは「NATO(北大西洋条約機構)は、モロッコ憲兵隊によるペレヒル島の占拠に関して"非友好的行為"とみなし、モロッコ政府にただちに憲兵隊を引き上げるよう求める」と発表した。
プラット大使がロバートソン事務総長に述べたように、現在のところスペイン政府がNATOに支援を求める予定はないが、状況が悪化すれば北大西洋条約第4条"領土、国の独立性または安全性が脅威にさらされているとき、支援を求めることができる"を適用することも考えられる。
モロッコ政府は、昨日モハメド・ベナイサ外務大臣を通して、モロッコ領のペレヒル島から憲兵隊を引き上げる意思のないことを発表、プラット大使に、ペレヒル島占拠は麻薬密輸と不法移民取締りのためであると、占拠を正当化する内容の文書を送った。ベナイサ大臣は、北アフリカにあるその他のスペイン領土と今回の件は何のつながりももたないことを強調したが、ホセ・マリア・アスナル首相はスペインがこの既成事実を受け入れる用意はないことをきっぱりと通達している。

首都マドリッドでラッシュアワーの交通量22%減

マドリッド市役所交通局のハビエル・レラルタ氏によると、マドリッドに住む人々が最も多く首都を脱出するのは7月15日から8月31日の間であるという。夏休みシーズンを迎え、7月前半には、例年9月前半に見られるのと同じ程度の15%の交通量の減少が見られた。7月後半に入った今が、最もラッシュアワーの交通量が減少するときであるという。専門家によると、マドリッド市内の全体の交通量はこの後も減少しつづけ、最も少なくなる8月には通常時の40%減に達するという。

マドリッドのオテル・パラセ、90周年を迎える

マドリッドの五つ星ホテル、オテルパラセが創業90周年を記念して、マドリッドの21区から各一組の定年夫婦を抽選で選んで、スィートルームでの一夜に招待した。抽選に参加するためには夫婦のうちのどちらかが7月に誕生日を迎えるか、結婚記念日が7月であるかという条件が設けられた。参加夫婦のうちの結婚36周年のホセさん、フリアさん夫婦は「夢のようです。」とこの体験について語った。
この他の記念イベントとしてオテルパラセでは、今月22日から29日までガイド付きホテル見学ツアーも行われる。

スポーツ:リケルメ選手バルサ入団発表、ラウル・ロペス選手のNBA移籍発表

昨日ブエノスアイレスからバスセロナに到着したフアン・ラモン・リケルメ選手(24)は、来期から5シーズンの契約をしたFCバルセロナ(サッカー)のジョアン・ガスパール会長、監督復帰するファン・ハール氏とともに入団発表の記者会見を行った。プラット空港では「ついにリケルメが来た、今度こそ我々(バルセロナ)をチャンピオンにしてくれ」というプラカードをもったサポーターらや、たくさんの取材陣が到着を待ち受けており、同選手に対する期待のほどがうかがわれる。リケルメ選手は、会見の席で暖かく迎えられたことに感謝の意を表し、「いつも一流のクラブでプレーすることを夢見ていたが、バルセロナは自分には大きすぎるくらいのチーム。みなさんをがっかりさせないように頑張りたい、そして優勝に貢献したい」と抱負を語った。
またバスケットボールのレアル・マドリッド所属ラウル・ロペス選手が、来シーズンから米NBAのユタ・ジャズに移籍することが決定し、本日公式発表される。ロペス選手は昨年のNBAドラフト会議で24位に指名されたものの、結局昨シーズンが移籍が叶わなかった。しかしその後も両クラブによる交渉が続いていた。両チームの技術協力の取り決めや、親善試合開催なども契約内容に含まれているという。


7月15日(月)

モロッコは、ペレヒル島占領に関して本日記者会見を予定

先週木曜日に、モロッコ憲兵隊の一団がセウタ沖にあるペレヒル島(モロッコ側の呼び名はレイラ島)に突然上陸し、国旗を立てて「占領」した。事件当初から、スペイン、モロッコ共にこの島の領有権を主張している。EUはスペイン政府を全面的に支持し、モロッコに対してこの島からの即時撤退を要求しているが、逆にモロッコ政府は、外務大臣モハメド・ベナイサ氏を通じて、「現在の状況については、話し合いによって解決されるべきであるが、モロッコはこの10人の兵士によって、スペインの領土を侵害したわけではない。この小さな“島”はモロッコ沖わずか180メートルという、明らかにわが国の領海内にあり、さらにスペインはこれまで一度もレイラ(ペレヒル)島の統治権を主張したこともなかった。」と発表した。今日は、同大臣がラバトでこの事件に関しての記者会見が行われる予定。

アンダルシアの日雇い農夫がマドリッドに抗議の行進

木曜日にアンダルシア各地を出発した日雇い農夫達が昨日、マドリッドに到着した。「我々は片道切符だけでやってきた。」と、SOC(農業従事者組合)のディエゴ・カニャメロ総書記長は、政府の回答なしには帰らない姿勢を表明した。
彼らは前日の夜を過ごしたマドリッドのヘタフェ市を9時に出発、“平和的占拠”として、電車、地下鉄をタダ乗りした彼らをモンクロアの駅で迎えたのは、左翼連合、マドリッド共産党、学生組合の約300人のメンバーで、共に抗議に参加した。
行列は空軍の建物の前を一周した後、首相官邸に向かって歩き出したが、行列の先頭にいた人々は900メートル、最後尾の人々はまだほとんど歩かないうちに20人程の警官のバリケードに遭遇した。そのため、彼らはオエステ公園の歩道に沈黙のうちに座りこみ、政府が話し合いの場を設けてくれるのを待った。
8人の代表者が話し合いのために首相官邸に入ることを許され、彼らは農業雇用プラン(PER)の存続を求めることを基本としたデクレタソ(とんでもない政令)代替案を提出し、午後2時過ぎに首相官邸から出てきた。
現在は、35日分の仕事をこなした翌年は、農業雇用プラン(PER)により年間1562ユーロの援助金を受けられるが、今回のデクレタソによりこれが撤回されると若い世代は他地方に移住せざるをえなくなるだろう。
抗議に参加したハエン県のアントニア・バルガスさん(44歳)は新年をコルドバの黒オリーブ摘みで迎え、3月はナバラ地方でアスパラガス取り、9月はカスティジャ・ラ・マンチャ地方でのブドウの取り入れに従事する。彼女にとって旅は仕事を意味するが、今回だけは別。「出かけていっても仕事が見つからず、そのまま荷物をもって引き上げてくるときもある。食べていけてはいるけれど、銀行の預金残高はいつも赤字。」と話した。

闘牛士レイナ・リンコン氏殺害の容疑者として警官4人を逮捕

ペルーのリマで行方不明になった後、遺体で発見されたシウダー・レアル出身の闘牛士レイナ・リンコン氏(22歳)の殺害容疑者として、ペルー地方警察の3人と、ペルー国家警察の1人が逮捕された。
レイナ氏は、7月2日、数時間前に受け取った報酬1200ドルを持ったまま、夕食を摂りにホテルを出てから消息を断ち、1週間後に海岸で遺体で発見された。目撃者の話では、レイナ氏は麻薬でハイになっていた状態であったか、酔っ払っていたかで、露店に倒れこんだ後、そこでガードマンを殴ったという。それから通報を受けた地方警察が彼を逮捕し、彼を死に至らしめる暴行を加え、所持していた1200ドルを奪った。
その後の捜査で、逮捕者の内のルイス・ラウ・ウルビナとロベルト・ケベド両容疑者の家で現金800ドルとレイナ氏の靴がみつかっている。昨日の記者会見でペルー国家警察レミヒオ・エルナン将軍は、事件の首謀者4人が「つい、やり過ぎてしまった」とレイナ氏に加えた制裁について供述していると話した。今回の事態を重くみたペルー地方警察は、上級幹部レベルも含めた組織全体の改編を発表した。

週末のスポーツの結果

ツール・ド・フランス:第8ステージ、サン・マルタン・ド・ランデール〜プルエ間217Kmのレースが行われた。イゴル・ゴンサレス・デ・ガルデアーノ選手(ONCE)が引き続き総合トップでマイヨ・ジョーヌを着てレースを続けている。今日は1回目の個人タイムトライアルが行われる。これを得意とする3年連続優勝のアームストロング選手と、イゴル選手の34秒という微妙なタイム差に注目が集まる。現在の世界チャンピオンで、今回第2ステージで優勝したオスカル・フレイレ選手(MAPEI)は、転倒し尾てい骨損傷で帰国の途についた。
オートバイ世界選手権:オートバイの世界選手権シリーズ第8戦、英国グランプリ(GP)が英国のドニントンパークで行われ、3人の若いスペイン人選手が表彰台に上った。125ccクラスでは、ダニ・ペドロサ選手(ホンダ)が2位、総合成績でも現在1位のポジャーリ選手と16ポイント差で2位につけている。250ccでは、今期総合優勝を夢見るフォンシ・ニエト選手(アプリリア)が、メランドリ選手に阻まれて惜しくも2位、またスタートでギアが入らず大きな遅れをとったトニー・エリアス選手(アプリリア)が、その後自身も「これまでで一番のレースだった」と語るように、見事に挽回し3位となった。
イタリアのロッシ選手が自分のレース番号と同じ通算46勝目をあげたモトGP(旧500cc)クラスでは、スタートから首位を走っていたカルロス・チェカ選手(ESP)が、18週目で転倒した。結局このクラス、スペイン勢ではセテ・ジベルナウ選手(スズキ)の6位が最高だった。次回は21日ドイツGP。
サッカー:1部リーグ各チームは、夏休みを終えたチームから徐々に始動。今日午後には、FCバルセロナ最初のスター契約リケルメ選手が母国アルゼンチンからスペイン入り。バルセロナで、ガスパール会長やファン・ハール監督らと共に記者会見に臨む。また先ごろ来シーズンのスペインリーグ戦の日程表が発表された。リーグ開始は9月1日。伝統の一戦、レアル対バルサの試合は11月24日まで待たなければならない。来シーズンはワールドカップなど、大きな大会がないため、終了は来年の6月22日(一部)と、かなりゆっくりしたカレンダーとなった。
ローラー・ホッケー:フィレンツェで開催されていたローラー・ホッケーの欧州大会で、スペイン代表チーム(男子)は決勝まで勝ち進み、土曜日にポルトガルと対戦した。その結果4−2でスペインが勝利し優勝した。昨年の世界大会優勝に続いて、2大タイトルを手中に収め、名実共に世界チャンピオンとなった。


7月12日(金)

モロッコの憲兵隊グループが、セウタ近海の無人島を占領

昨日昼頃、モロッコ憲兵隊の指揮官とその一団が、アフリカ大陸にあるモロッコ沖に存在する無人の小島「ペレヒル島」に突然上陸した。彼らは上陸後2基のテントを張り、モロッコの国旗を2本立てた。スペイン国家警察のパトロール隊がこの様子を発見し、退去するよう求めたが、憲兵隊はこれを拒否し威嚇の姿勢をとったという。これをうけて、スペイン政府は海軍パトロール隊を出動させ、ペレヒル島近くに待機させた。今日未明になってもモロッコの一団は島を離れる様子はないという。
ペレヒル島は、アフリカ大陸北端のスペイン領セウタ自治州とモロッコの国境から数キロメートル西にあるレオナ岬沖(地中海)に存在する。面積13,5ヘクタールの小さな三角形の島で、海抜は高い所で74メートルになる。島には約200人を収容することが可能な大きさの洞窟がある。 1912年のスペイン−フランス協定では、モロッコにあるスペイン保護領の範囲を限定する項目を設けているが、ペレヒル島についての具体的な規定はなされていない。しかしながら、その後スペイン保護領が正式に成立した際にセウタ沖に存在するこのペレヒル島は、完全にスペインの占領下に置かれた、というのがスペイン政府の見解である。このペレヒル島の最後の住民は、スペイン海軍兵長1人と4人の兵士で、1960年代には彼らも島を後にし、それ以降無人島と化していた。現在のセウタ自治州法規には、ペレヒル島に関する記述はない。
このような見解に基づき、スペイン政府は昨日、この事件についてモロッコ政府に説明と憲兵隊の退去を求めた。それに対するモロッコ政府の説明によると、1956年にスペイン保護領規定の期限終了に伴い、同島はモロッコに返還されており、それ以降数々の軍事作戦の演習が行われてきたという。モロッコでは、この島を「レイラ島」と呼んでいる。さらに今回の上陸は、一時的な演習のためではなく、ジブラルタル海峡におけるテロリズムと不法移民を取り締まる作戦の一環として島への常駐を考えており、退去する意思のないことを明らかにした。
モロッコでは、国王モハメッド6世と情報処理技術者のサルマ・ベナニさんの結婚式を2日後に控え、今日から日曜日まで国をあげてお祝いをする準備が進められている。また今回のモロッコ憲兵隊の行動は、アスナル首相の内閣改編により、外務大臣が交代したというスペインの政治状況を利用したものではないかとの見方が強まっている。スペインとモロッコの外交関係は、モロッコ政府が在スペイン大使を本国に送還して以来、危機的な状況にある。さらに、つい1週間前には、モロッコの外務大臣モハメッド・ベナイサ氏が、ラバトのスペイン領事館に、スペイン領アルウエカス島からスペイン海軍の護衛艦5隻とヘリコプター1台が上陸したことに抗議していた。これについては海上警備の授業の一環として行われたものであったとの、スペイン政府からの説明がなされたが、これに対する“反撃”ともとれ、両国の関係悪化が心配される。

6月の消費者物価指数発表、インフレ加速にようやく歯止め

昨日INE(国立統計局)から、6月のIPC(消費者物価指数)が発表された。
5月に比べて平均的な物価の上昇率は0パーセントに留まったが、今年に入ってから物価は2.5%上昇、過去12ヶ月での物価上昇率(インフレ率)は3.4%となった。年間インフレ率は、5月の統計では3.6%であり、今回0.2ポイントという小さな数字ではあるものの、2002年に入ってから初めてグラフの線が下降を示した。このインフレ低下は、一時的なものであるとの見方が強く、最終的に今年の目標である3%という数字を達成する事は難しいと考えられる。今回の結果に大きく貢献したのは、夏のバーゲンセール期間が始まったことと、石油の値下げとユーロの対ドル高値の影響で、ガソリンの価格が下がったことである。その他の物価は全体的に上昇傾向が続いており、6月は特に観光・ホテル外食産業での価格の上昇と、ユーロ導入による端数切り上げによる値上げ(“レドンデオ”)が引き続き影響していることがわかった。5月〜6月の1ヶ月間で、団体旅行の価格は2.7%、ホテルは2.8%とそれぞれ上昇した。またユーロ導入圏でも、今回は大きな物価の変化はないとみられる。

この10年間で、140人が「エクスタシー」服用との関連で死亡

「エクスタシー」という錠剤ドラッグがスペインで流通し始めたのは、今から10年ほど前のことである。しかしこの10年間で140人が、その死亡原因にこの麻薬との関連性が挙げられているという。
昨日開催された「類似薬物が健康に与える影響について」という会議の席上で、オビエド大学医学部のピラール・サイス教授が行った報告によると、エクスタシー(MDMA)などの類似薬物を常用する若者は、中年以降老化現象が早期に始まる可能性が高いことが指摘されている。また専門家らの研究により、これらの麻薬が、精神状態や不安、睡眠などをつかさどる神経系統の伝達細胞に不可逆性の変質を起こしている複数のケースが報告されているが、同教授はこれも「氷山の一角にすぎない」としている。
さらに急性中毒や心拍急速、腎不全などの短期的に表れる症状のほかに、今回は、米国の麻薬過剰摂取についての国立研究機関(NIDA)から、常習・乱用者に、将来明らかな運動神経や記憶系統の神経の破壊が起きる可能性が高いことを指摘する報告書が発表された。これらの長期的症状は、見つかってからそれらの薬物の服用を止めたとしても一度破壊された神経は元には戻らないという。
国立麻薬防止計画のロブレス委員によると、スペインでは過去10年間に記録されたエクスタシー服用との関連性が疑われる140人の死亡者のうち、38人がそれが直接の死因であると診断されている。
スペインではここ数年、エクスタシーの消費量自体にそれほどの変化はないものの、服用の一般化により若者の間で危険に対する認識が低下してきているため、遊び半分で飲んでみるというような行動が目立つ。スペインの青少年の5.7%は、エクスタシーを試した経験があるという。
また麻薬常習者の治療に関しては、現在のところほとんどがヘロイン、コカイン中毒者などで占められているが、これから先は、これらの合成麻薬の中毒患者の数も増えていくことが予想される。


7月11日(木)

EUの新たな農業政策−今後7年間にわたって農業援助20%カット

欧州委員会は、昨日フランツ・フィシュラー農水委員の提案を採用し、農家への直接援助額を削減することを決めた。現在予算の半分を占めているこの援助額は、2004/2005年度から年間3%削減される見込みで、これにより、農業予算枠に20%の空きができることになる。この後EU加盟15ヶ国農業大臣の承認を受けなければならないこの提案に対し、加盟国の意見は二つに分かれている。ヨーロッパ南部の国々(フランス、スペイン、イタリア、ポルトガル、アイルランド、ギリシャ)は予算削減に反対、ヨーロッパ北部の国々(ドイツ、イギリス、スウェーデン、オランダ)は、EU拡大により補助金の金額が増大することを恐れて、この予算削減案を指示している。
フィシュラー委員が改革を提案している共同農業政策(PAC)にEUは昨年度は予算全体の45%、430億ユーロを費やしている。今回の提案は、農家への直接援助カットにより、PAC全体の46%を占めている援助額を年間3%ずつ7年間わたって減らしていくというもの。スペインのカット額は、7億ユーロに上る見込み。
この提案をふるいにかけるEU加盟15ヶ国農業大臣の会議は、月曜日にブリュッセルで行われる。ここでは1)農産物や家畜(特に穀類や牧牛)の過剰生産を避けるために、直接援助をカットする、2)米に関しては、発展途上国からEUへの輸入枠を拡大、3)今後他の項目で削減された予算が充当されていくと考えられている農村発展のために、EUとその加盟国による共同投資を行う、4)生産地公表、原産地呼称制度(DO)やエコロジー農産物などの品質保証システムへの各農家の積極的参加を促すための援助、5)現在30ある援助金の種類を大幅に削減・統合し、支払いの自動化や手続きの簡便化を図る、などの議案について話し合いが行われる予定。

ひと月に平均6人の女性が、パートナーによる暴力で死亡

銀行グループ、カイシャ財団の資金協力によりまとめられた「家庭内暴力報告書」(イネス・アルベルディ、ナタリア・マタス両氏の共同執筆)によると、1999年から2001年の間に、合計214人の女性が夫やパートナーから受けた暴力行為により死亡していたことがわかった。年間平均70人、週にひとりずつ亡くなっているという計算になる。
報告書によると、スペインでは18歳以上の女性の9.2%が、パートナーの男性から身体的、精神的あるいは性的暴力を日常的に受けており、その中でも50歳から65歳までの中年層に最も多いという。
加害者の男性のタイプなどにはこれといった特徴はなく、むしろ社会的階級、年齢、教育レベルに拘わらず暴力行為が行われているといえる。ただひとつ共通しているといえることは、彼らが皆、女性の社会進出や解放が進む中で、家父長的な掟や男性優位主義をかたくなに守ろうとする気持ちが極端な行動に表れたのではないかということだ。著者のひとりアルベルティ氏は、「スペイン社会におけるこれらの行動様式に関しては、教育を通して変えていくしかない」と話している。
近年、家庭内暴力被害者の数は増加の一途をたどっている。しかし多くの被害者女性が告発を避けて、あるいはできないでいる状況をかんがみると、出てきた数字が実際のものなのか、社会の目に映る表面的なものなのかはまだまだ見えてこない。少なくとも警察への届け出件数は、96年から2001年までの間に16.378件から24.158件と大幅に増えている。
著者は、今のスペインでは、性差における暴力を絶対に許さないという政治的定義が欠けており、警察当局の姿勢も大きく変化する必要があるという。また司法の動きも依然として非常に遅く、官僚的であり、問題は法律自体にあるのではなく、それを取り扱う裁判官や検察官の法の扱い方にあると指摘している。1998年から2001年の間にパートナーの暴力により死亡した女性の80%は、生存中に家庭内暴力の被害届を警察に出していたという。

イゴル・ゴンサレス選手、スペイン人選手として7年ぶりに“マイヨ・ジョーヌ”獲得

自転車競技の最高峰ツール・ド・フランスの第4ステージ、エペルネ〜シャトー・ティエリー間67.5Kmのチームタイムトライアルが行われた。この結果、スペインのONCE−EROSKIチームが、1時間19分49秒で優勝、そして同チーム所属のイゴル・ゴンサレス・デ・ガルデアノ選手(28)が、昨日の時点で総合成績トップに踊り出た。ツール史上最初にして未だ破られていない5連覇という偉業を果たした“鉄人”ミゲル・インデュライン元選手以来、7年ぶりにスペイン人選手が“マイヨ・ジョーヌ”(総合成績トップの選手に与えられる黄色のジャージ)を身に付けた。総合2位はやはりスペインのホセバ・ベロスキ選手(ONCE)、昨年まで3年連続総合優勝のランス・アームストロング選手(USポスタル)は3位となっている。ゴールのパリ・シャンゼリゼまで、あと16日間過酷なレースが続けられる。


7月10日(水)

アスナル首相、地方選をにらみ緊急内閣改造で8大臣を交代

政府与党PP(国民党、民衆党と訳されることもある)が1996年に政権について以来最大の危機を迎えていると評されるなか、ホセ・マリア・アスナル首相は昨日、来年の地方選(自治州および市町村)に備えて勢力の基盤固めをするべく、緊急の内閣改造を発表した。
この改編により、大臣職8つのポストで交代が実施された。新しく大臣に任命されたのは、外務大臣にアナ・パラシオ氏(欧州議員ロヨラ・デ・パラシオ氏の姉)、法務大臣ホセ・マリア・ミチャビラ氏、労働社会保障大臣エドゥアルド・サプラナ氏(現バレンシア自治州知事)、総務大臣ハビエル・アレナス氏(現職のPP幹事長を兼務)、厚生大臣にアナ・パストール氏。
また現内務大臣のマリアノ・ラホイ氏は第一副首相、首相府大臣、官房長官を兼任、現法務大臣のアンヘル・アセベス氏は内務大臣、そして現在外務大臣を務めているジョセップ・ピケ氏は、科学技術大臣にそれぞれ人事異動となった。
これにより、内閣から姿を消すことになったのは、フアン・ホセ・ルカス現首相府大臣、フアン・カルロス・アパリシオ現労働社会保障大臣、ヘスス・ポサダ総務大臣、セリア・ビジャロボス厚生大臣、アンナ・ビルレス科学技術大臣、そして現官房長官のピオ・カバニーリャス氏の6名である。このうち、20−Jゼネストが実施されたことなどにより今回内閣からの退陣を余儀なくされたアパリシオ氏はブルゴス市長選に、またビジャロボス氏はマラガ市長選にPPから立候補する可能性が取り沙汰されている。

PP、マドリッド市長候補にガジャルドン氏を正式指名

PP(国民党)は、マドリッド市長、知事候補の名前を発表した。市長には現マドリッド知事アルベルト・ルイス・ガジャルドン氏、知事には現上院議長エスペランサ・アギレ氏が与党PPの候補として立つことになる。
本来、PPは9月の党大会で候補者の名前を正式発表する予定であったが、今回のホセ・マリア・アスナル首相の内閣改編に合わせて発表が早められた。
1958年マドリッド生まれのルイス・ガジャルドン氏は25歳で市会議員当選など、政界で常に最年少記録を塗り替えてきた。生まれながらの政治家は、結婚して4人の子供がいる。
ルイス・ガジャルドン氏が友人に漏らしたところによると、先週の日曜日にアスナル首相から直接市長候補への打診があったという。
一方、エスペランサ・アギレ氏は50歳、最も得票数の多かった上院議員であるとともに、夫を持ち、3人の子供の母親でもある。1983年に市会議員として政界デビューし、アスナル首相のもと、文部大臣を務めたこともある。1999年から上院議長の彼女は、立候補を責任をともなう重大な挑戦だとし、「マドリッドをさらに豊かで自由な町にするために、努力を惜しまないつもりです。」と述べた。

ユーロ導入諸国内でGDP(国内総生産)、昨年同時期に比べて0.3%の成長

いくつかの国々での赤字予算に対する懸念が引き続きあるものの、ユーロ圏経済は転換期を迎えつつある。今年度最初の3ヶ月間のユーロ導入諸国内GDPは、昨年同時期に比べると予想を0.1ポイント上回って、0.3%の成長をしていることが昨日EUROSTAT(ヨーロッパ統計局)の発表によりわかった。今年度第2期には0.3%〜0.6%、第3期は0.7%〜1%の成長が見込まれており、さらに昨日発表の報告書には、成長リズムに“加速”が見られ、“ゆるやかに”2001年末の一時的な経済収縮から回復しつつあると述べられている。
2001年の最終期に0.3%の後退を見せたユーロ圏経済は、今年に入って少しずつ回復(現在、GDP成長率1、3%)し、景気後退から完全に立ち直ったようだが、今年度に入って最も経済成長を見せている3カ国(アメリカ1.5%、日本1.4%、カナダ1.4%)には及んでいない。
欧州委員会の経済・通貨委員、ペドロ・ソルベス氏によると、フランス、イタリア、ポルトガルなど国債額が増大している国々が、2004年度EU予算成立に関して新たな要求をしてくると思われること、そしてユーロ圏内需要が伸び悩んでいることがEUの現在の懸念であるという。需要の伸び悩みは、物価の上昇(インフレ率の緩やかな上昇も報告書には述べられている)に伴う消費者の買い控えによるものとみられている。
しかしながら、昨日ブリュッセルで発表された3つの報告書は、ドルに対するユーロの価値が上がってきていることなどから、どれも楽観的な内容となっている。

ペルーで行方不明中のスペイン人闘牛士の遺体が発見される

今月2日から行方不明になり、ペルー警察当局により捜索が続けられていたスペイン人闘牛士、ホセ・レイナ・リンコンさん(23)が、昨日午後、太平洋沿岸ミラフローレス地区の海岸で、遺体となって発見された。ペルー側の情報筋によると、レイナ・リンコンさんの遺体は、2日にホテルを出たときと同じ服を身に付けており、体に強打の跡があったものの、暴力を受けた痕跡は見られなかったという。
現在のところペルー国家警察当局は、体に残された複数の血腫は、海中の岩石などにぶつかってできたものと見て、殺人の可能性を否定している。昨日は、被害者の家族らも現場に到着し、遺体収容の許可が下りるのを待った。
レイナ・リンコンさんの友人で、今回ペルー北部のチョタ祭で興行を共にしていたバンデリリェーロ(銛打ち士)のアレハンドロさんは、「ホセは、今回耳を2つも取って、一流の闘牛士になるのを夢見ていた。」と語り、うつ病で自殺未遂を起こしていたという噂についても否定した。また消息を絶つ直前に、1400ドルという大金を所持してホテルを出たことに関しては、同僚の闘牛士フランシスコ・マルティネスさんによると、「お土産の民芸品を買おうとしていた。」ということだが、当日非常に落ち込んだ様子を見せていたなどの証言もあり、いまのところ死亡の原因は謎のままである。
レイナ・リンコンさんは、1979年シウダー・レアル(ラ・マンチャ)生まれ。先月からペルーに来ており、前出のフェルナンド・マルティネスさんやペルー人ピカドールやレホネアドールらと共に国内各地で闘牛興行を行っていた。成績もよく、ペルーでの闘牛士契約を更新したばかりだった。

サン・フェルミン祭の“牛追い”3日目、長く危険なレースとなる

毎年夏に行われるパンプローナのサン・フェルミン祭で、恒例の“エンシエロ”(闘牛の闘牛場への囲い込み)が3日目を迎えた。昨日は、サンティアゴ・ドメック牧場の牛が登場した。いつものようにサント・ドミンゴ坂を出発した闘牛たちは、非常にゆっくりとした歩調で順路を進み、結局、ミウラ牧場の牛が約25分かけてエンシエロを行った1959年以来最も遅い12分7秒で、ようやく闘牛場に到着した。しかし、ゆっくりとではあるものの、同時にたいへん危険なレースでもあった。アメリカ大陸から参加した3人とナバーラ出身の2人の合計5人が、牛の角に刺されて大きな怪我をするに至った。
最初に負傷したのは、米国ニューメキシコからやって来た、ジェームス・ブランドーさん(69)で、左足に角が突き刺さり10センチにわたる傷を負った。ブランドーさんは、この祭を世界的に有名にした立役者、米国人作家のアーネスト・ヘミングウェイ氏に非常に良く似た、白髪に真っ白なひげを生やした男性で、治療を受けているナバーラ病院のベッドで微笑む写真が国内の新聞各紙に公表された。ジェームスさんが怪我を負った後も、メルカデレス通り以降、牛の勢いはさらに増したようで、39歳のフランシスコ・J・アルバレスさんが負傷、さらにホルヘ・R・ビジャオさん(21)に至っては、20センチにわたる裂傷を2つも被った鳥肌の立つような現場が、生中継のテレビ画面に映し出された。その他にも22歳のアメリカ人男性と30歳のプエルトリコ人の男性が、それぞれ太ももや大腿骨に大きな怪我を負った。いずれも重傷ではあるが、命に別状はないという。

FCバルセロナでリケルメ選手の契約成立

現在各クラブチームで、来シーズンに向けての新たな選手契約“フィチャヘ”が進んでいるスペイン・サッカー界だが、昨日FCバルセロナのジョアン・ガスパール会長より、アルゼンチン、ボカ・ジュニオール所属のセンター、フアン・ロマン・リケルメ選手(24)と正式に5期の契約を交わしたことが発表された。移籍金は600万ユーロ(約9億9.800万ペセタ)で、リケルメ選手の年俸は250万ユーロ(約4億1.600万ペセタ)。
しかしながら、EU圏外の選手の入団については登録が4人、実際にプレーできるのは3人までという規定がある。リケルメ選手が入団すると、現在のバルサには、リバウド、サビオラ、ホッケンバック、ジョバンニの4選手に加えて、合計5人のEU圏外選手が登録されることになる。そのため来シーズンから監督に復帰するファン・ハール氏の裁量により、1年目には他のチームにレンタルも可能という条件が契約に盛り込まれている。


7月9日(火)

アスナル首相、ガジャルドン知事にマドリッド市長選立候補を要請

与党PPのマドリッド市長選戦略に大きな変化が起きた。スペイン政府首相ホセ・マリア・アスナル氏は、アルベルト・ルイス・ガジャルドン・マドリッド州知事に、知事3期目を務めようというプランを変えて、マドリッド市長選に立候補することを要請した模様。昨日、知事による夏恒例の食事会でデザートの前に知事が立ち上がり、乾杯の変わりに異例の軽いスピーチをした。その中で知事は「これからの数日間で、マドリッドのわが党に大きな変化が起こるであろう」と述べ、集まった50人ほどのPPの議員たちに支援と理解を求めた。5月末にPPが6000人に対して行ったアンケートでは、PPはマドリッド州議会で過半数維持がギリギリの状態という結果が出ており、これを考慮してアスナル首相は今回の決定をしたものと思われる。これにより、マドリッド州知事候補にはエスペランサ・アギレ氏(現上院議長)、ピオ・ガルシア・エスクデロ氏(現マドリッドPP代表)の名が新たに浮上した。
2003年5月25日の選挙で現職市長アルバレス・マンサノ氏に勝つことができれば、PP党首としてのアスナル氏の手腕は議論すべくもないものとなる。アスナル氏のこういった画策の外にいるマンサノ市長は、官邸における首相との話し合いを求めている。マンサノ氏は、現在の状況に不快感を表しながらも、ガリシア州議会のマヌエル・フラガ議長のように社会党の4度目の勝利を信じている。

米国船籍の帆船から700キログラムのコカインを押収( カディス )

昨日、カリブの港を出発したスペイン行きの帆船(アメリカ合衆国船籍)が、全国管区裁判所が主導している「キンケー作戦」により捕らえられた。マドリッド、ガリシア、カディスの国家警察各管区が共同で行っている税関監視業務(SVA)の検査により、この帆船からコカインの密輸品700キログラム(純度80〜90%)が押収され、船員二人と3人のスペイン人が逮捕された。
逮捕された5人は、プンタ・ウンブリージャ(ウエルバ県)の実業家らを頂点とする密輸組織の一員であることがわかっている。麻薬・組織犯罪防止グループ(Udyco)のオリベイラ局長は、700キロという量はこれまでにアンダルシア州内での押収量としては最大と話している。
今回の大規模コカイン密輸に関しては、すでに今年の4月から全国管区裁判所が調査を開始、先週末になって、船体に水が浸入して困難な航海状況にあった帆船“チェ”の捕獲を命じた。これにより警察当局は、リスボンの西方200マイル沖でこの帆船を発見、捕獲した。当局によると、積んでいたコカインはコロンビア、ペルーあるいはエクアドルで生産されたと見られており、カリブの港で帆船“チェ”に積み込まれた後、大西洋を横断し、リスボン沖で複数の船に分散されてアンダルシアの各地に運ばれることになっていたという。
逮捕者のうち、二人は船員でフランス人の男性(34)とトリニダード・トバゴ出身の女性(24)、その後セビージャとプンタ・ウンブリアで3人のスペイン人が逮捕された。現在プンタ・ウンブリアに捜査本部が設置され、今後もこの密輸組織についてさらに捜査が進められていく予定。

テレビで無料放映されるべきスポーツ・イベントのリストが発表される

スペインでは、今年のサッカー・ワールドカップのテレビ放映権をデジタル放送局「ビア・ディヒタル」が購入し有料放送となったため、例年のように全試合を国営チャンネルで観戦することができなかった。しかしながら、FIFAの定めるサッカー法の「一般的関心事への権利保護」規定に、自国代表チームの全試合、開会試合、準決勝および決勝戦などの試合は無料放送されなければならないという決まりがあり、ビア・ディヒタルは無料放送のライセンスを持っておらず、また技術的にも難しいことから、規定されている試合に関しては、民放のアンテナ3により放映された。
この度スペインのCERD(スポーツ番組・中継放送に関する常設委員会、ホセ・アントニオ・ゴメス・アングロ委員長)は、来シーズン(2002-2003)このような「一般的関心事」と定義され、誰もが無料でテレビ観戦できるスポーツ・イベントのリストを作成し、今月29日に同委員会で承認を得る予定。
スペインで最も国民の関心を得ているスポーツといえばサッカーである。この中でこれまでリストに入っていたのは、スペイン代表チームの出場する公式マッチと国際親善試合であるが、今回はこの他にU−17とU−19の欧州選手権の決勝トーナメントも加えられた。その他には、国王杯、スーペルコパ(国内および欧州)、インターナショナル・カップの準決勝(ホーム&アウェー)、決勝戦。また欧州チャンピオンズ・リーグ予選で、スペインチームの出場する試合、およびその決勝戦、UEFA杯の場合は、スペインのチームが準決勝、決勝に出場する場合には放映するという案になっている。
サッカーの次にはバスケットボール。これに関しては、今年の世界大会、来年の欧州大会の準決勝と決勝を放映。ハンドボールは、スペイン代表戦、世界大会の決勝。自転車競技では、ツール・ド・フランス、ブエルタ・エスパーニャ。テニスのデイビス・カップ、フェデレーション・カップ、全仏オープン(スペイン人が勝ち残っていれば準々決勝から)。二輪の世界選手権、世界陸上、屋外陸上の世界大会など。
昨日行われた委員会では、水泳と馬術もスペイン国民にとって一般的に関心のあるスポーツであるという意見から、2003年の国際水泳大会と2003年の世界馬術大会において、スペイン人選手の出場する競技および決勝大会の中継もリストに加えられた。

リマでスペイン人闘牛士が行方不明

ペルー警察は、7月2日から行方不明になっているスペイン人闘牛士ホセ・レイナ・リンコン氏を捜索してホテル、病院、死体安置所を調べたが、今のところ何の手がかりも見つかっていない。レイナ・リンコン氏は先週の火曜日の午後8時ごろ、1人でホテルを出て洗濯屋に行ったのを最後に消息を絶っている。
スペイン国営ラジオによると、父ホセ・トマス・レイナ氏は、以降何の連絡も受けていないことから誘拐の可能性を否定している。先週の火曜に父親は電話で息子とペルーでの闘牛(耳を2つ獲得)について話しており、その5日後の日曜日、仕事先のトルヒジョの闘牛場にレイナ・リンコン氏が現れなかったことから事件が発覚した。
 シウダ・レアル出身のホセ・レイナ・リンコン氏は22歳で、マドリッドデビューは1999年3月21日。ギジェルモ・アルバン氏、アルベルト・ムニョス氏と出場した。正闘牛士となるための進級儀式(アルテルナティバ)を受けたのは、2000年5月7日で、介添え役闘牛士(パドリノ)はフリオ・アパリシオ氏、証人役闘牛士(テスティゴ)はウセダ・レアル氏が務めた。しかし、その後の契約状態は芳しくなく、2000年にはわずかに8つの興行に出場しただけであった。

ツール・ド・フランス、第2ステージでオスカル・フレイレ選手が優勝

自転車競技の最高峰ツール・ド・フランスの第2ステージ(ルクセンブルグ〜サールブリュック、181Km)が行われ、スペイン人のオスカル・フレイレ選手(Mapei)が4時間19分51秒というタイムで優勝した。フレイレ選手は、過去に2度世界ロードレース選手権で優勝しており、今回のツールでも昨年獲得した虹色のジャージを着てレースに臨んでいる。昨日は、最後の1Kmでザベル、マキュアン選手らとともに素晴らしいスプリントを見せ、見事1位に輝いた。彼にとってツールでのステージ優勝はこれが初めて。フレイレ選手は、総合では9位につけている。


7月8日(月)

バルセロナで国際エイズ会議開催

世界中で1日に14000人が感染、24時間ごとに8千人がエイズで死亡している。昨日からバロセロナで開催されている第14回国際エイズ会議では、裕福な国の受動的な態度が糾弾されている。2001年の終わりに創設された対策資金には、今年102億ユーロが集まっていなければならないが、これまでのところ各国政府から得た金額は、27億ユーロに満たない。
今まで最高の出席人数、15000人近くを集めた今回の会議の開催セレモニーで、オヌシダの代表、ピーター・ピオット氏は各国が割り当てられた金額を早急に支払うことを要求した。この会議には、発展途上国と500のNGO(非政府組織)の代表者も参加している。感染者の95%は発展途上国に住んでおり、100人に4人しか治療を受けることができていない。
主要NGOが昨日主張したのは、資金提供をしていない国が世界でも豊かな国々であるということで、例えばスペインは、5千万ユーロ以上を提供するべきところを、その21%しか負担していない。
パラウ・デ・サン・ジョルディでのセレモニーに出席したセリア・ビジャロボス厚生大臣は、演説に際し大きなブーイングによって迎えられた。ブーイングはあまりにうるさく、彼女の演説はほとんど聞き取れないほどであった。このブーイングは、スペインの不十分な資金援助と、いくつかの貧しい国でスペイン大使館、領事館がなかなかビザを発給しないことへのNGOからの抗議を示すためのものであった。
ユーロピアン・フォー・ソリダリティ財団代表のホセ・マリア・メンディルセ氏はその演説の中で「我々は、失敗つづきのサミットにうんざりしている。執政者たちの近視的エゴイズムにもうんざりしているし、責任者達の無責任さにもうんざりしている。」と述べ、さらにバルセロナでの会議出席者たちに“前向きな結果と、行動を起こすための早急な約束のとりつけ”を求めた。
開催セレモニーの中で、最も感動的な瞬間だったのは、この残酷な病気の犠牲者を偲んで15000本のロウソクが灯されたときで、セレモニーはエレナ王女の 「エイズとの闘いにおいて“決定的な前進”が得られますように」との励ましの言葉で締めくくられた。

サン・フェルミン祭始まる( パンプローナ )

"Pamploneses, pamplonesas, Viva San Fermin, Gora San Fermin"(パンプローナの皆さん、サン・フェルミン万歳!)という社会党議員ロベルト・ヒメネス氏の掛け声とともに、チュピナソと呼ばれる恒例のロケット花火が打ち上げられ、世界的にその名を知られているサン・フェルミン“牛追い”祭の開幕が告げられた。市役所広場とその周辺の通りは、白いシャツ、赤いスカーフを首に巻いたたくさんの人々で溢れんばかりになった。9日間、204時間にわたる祭りの始まりである。人々は踊りに興じ、ワインを飲んでお祭り騒ぎ、そして伝統の「エンシエロ」が期間中毎朝8時から行われる。「エンシエロ」とはいわずとしれた闘牛の闘牛場への囲い込みである。
例年パンプローナ人をはじめとする、お祭りに参加する人々は、純粋にお祭りを楽しむ目的で来ているのであるが、今年はETAの政治母体であるバタスナ党非合法化を意図して「政党法」が政府与党中心に可決されたこともあり、例年になくテロリズムに対する緊張が高まっている中での祭り開催となった。土曜日には、若者グループと警察官らが衝突し警官二人が怪我、昨日の聖人パレードでは多くの人が当局に対して非難の声をあげるなどのもみ合いがあった。
日曜日、聖フェルミンの祝日となった昨日は、エンシエロ第1日目が行われた。午前8時、合図と共にサント・ドミンゴ坂に放たれたマルケス・デ・ドメック牧場の闘牛は、7分5秒というかなりゆっくりとした速度で市役所広場、メルカデレス通りを駆け抜けた。
エスタフェタ通りにさしかかるカーブで牛たちはバラバラになり、その内の1頭が、道路右側で見物していた若者のグループに突っ込んだ。暴走する牛の前を走る若者達の緊張と興奮はさらに増した。まず最初に角にひっかけられたのは、19歳のオーストラリア人リュークさんで、左ひざを中心におよそ10センチにわたり、筋肉組織を破壊されるという大怪我を負い、病院で手術を受けた。
その後、アメリカ人の19歳になる女性が、やはり左ひざの裏側に角が食い込み重傷、マドリッドから来た22歳の男性も右太ももの裏側に一撃を受け、昨日は合計3人が重傷、その他にも3人が病院に運ばれ、約30人が軽い怪我という結果になった。
また2日目の今日は、エレデロス・デ・セバダ・ガゴ牧場の牛によりエンシエロが行われ、昨日とは逆に2分50秒という早さで闘牛場に到着した。44歳のグアダラハラから来た男性が、左肩を角で刺されて病院に運ばれたが、重傷ではないという。その他にスペイン人とアメリカ人二人が怪我をして病院で治療を受けた。
20世紀に入ってから、エンシエロ中に牛の角に刺されたり、投げ飛ばされたりして、これまでに13人が死亡している。最後に亡くなったのは、1995年当時22歳のアメリカ人男性だった。

市民戦争中の犠牲者の遺体探しが進行中( レオン )

レオンのピエドラフィタ・デ・バビアで先週から、1937年11月5日の夜にに射殺された37人の共和政側国民兵の遺体の掘り起こしが行われている。
住人の証言と残されたデータに基づき村の入口から300メートルほどの場所にある丘を掘ったところ、まず最初に1本の大腿骨がみつかり、その後も次々と小さな骨が出てきた。2体の骸骨が見つかったときには、居合わせた人々は驚きの声をあげた。
「『今さらどうして昔のことを?』と聞く人に私はこう答えるの。『あなたは、自分の大切な人をお墓に埋めたくない?その辺の道端じゃなくて。』」と、84歳のイサベル・ゴンサレスさんは話した。彼の兄、エドゥアルド(当時22歳)氏が、降伏すれば命は助けるという嘘で説得されたとき、彼女は19歳だった。それから8時間後、エドゥアルド氏は義兄フランシスコ氏と共に、現在残りの35人の同志と共に捜索が行われている溝のなかに死体となって転がっていた。イサベルさんの望みは、兄を両親と先に亡くなった妹と同じ墓地に埋葬することだ。
ピエドラフィタ・デ・バビアでの事件の発見者は、1937年、当時14歳だったリカルド・スアレス少年だった。リカルド少年がいつものように畑仕事に向かう途中、連れていた犬がいきなり吠え出した。犬が吠えている場所に近付いた少年は、地面に広がる血の海をみて驚いた。しかし、報復を恐れた少年は、家族に知らせるにとどめ、それから今日まで、37人の射殺された遺体の上には時が土を降り積もらせるだけであった。
 「犠牲者の家族は8人を残してすべて亡くなってしまった。私はずっとこの日を夢にみていた。今、我々は感動的な瞬間の中にいる。死者たちが口を開くときがやってきた。これがスペインの本当の歴史、我々が知っておくべき歴史なんだ。」と立ち会ったうちの1人は語った。

週末のスポーツの結果

トライアスロン:ヨーロッパ選手権がハンガリーで行われた。ア・コルーニャのオルデス出身の23歳、イバン・ラニャ選手が優勝し、ヨーロッパ・チャンピオンに輝いた。トライアスロンは、水泳1.5Km、自転車40Km、さらに10Kmのマラソンという過酷な競技である。コーチのカルロス・バレラ氏は、「彼が15才の時から、将来必ずオリンピックで金メダルを取れる選手になると確信していた」と話している。体重1kg当りの最大酸素消費量が70ミリリットル以上というのが、一流のアスリートの条件のひとつであるが、ラニャ選手の場合はそれが80ミリリットル以上であるという。
2000年のシドニー・オリンピックでは5位だったが、ヨーロッパ・チャンピオンとなった今、2004年のアテネ・オリンピックでも期待の星となるのは間違いないであろう。
ツール・ド・フランス:日曜日、第1ステージ(ルクセンブルグ 192.5Km)が行われた。スペインのオスカル・フレイレ選手(Mapei)が5位につけた。総合成績では、現在のところ、イゴル・ゴンサレス選手(ONE)の10位がスペイン人選手としては最高。
F1カーレース: イギリスGPが行われ、M.シューマッハ選手が優勝。スペインのP.デ・ラ・ロサ選手(ジャガー)は11位という結果。
サッカー:ワールドカップも終わり、現在は各チーム新選手の獲得、移籍話などが進められている。アトレティコ・デ・マドリッドは、エメルソン(デポルティーボから)、セルジ(バルサ)、アルベルティーニ(ミラン)など、すでに6人の移籍加入が決定している。FCバルセロナとレアル・マドリッドの獲得選手については、まだ発表されていないが、ボカ・ジュニオール(アルゼンチン)のリケルメ選手のFCバルセロナ移籍が有力とされている。


7月5日(金)

バスク州政府幹部は、ガルソン判事のバタスナ党財産差し押さえ決定を批判

バスク自治州の政権を主導する各民族主義政党は、おととい全国管区裁判所のガルソン判事が、青少年組織セヒの街頭テロ行為の民事連帯責任がバタスナ党にあるとして、2.400万ユーロの支払いを命じた判決に対して、強い反発を表している。
EA−PNV(穏健派民族主義)+IU(統一左翼)の各代表は、この決定を「違法」で「嘆かわしい」とし、IUのアントン・カレーラ議員は、「モンクロア(首相府)の手で画策された政治的、司法的策略である」と批判した。またバスク司法委員のホセバ・アスカラガ氏(EA)は、「ガルソン判事は、政治に対する司法の独立性をないがしろにした」と非難、バスク州議会のフアン・マリア・アトゥチュア議長も、「たった1度の裁判でバタスナ党の財産差押えを決定するというのは不可能なこと」と反発を露にした。バタスナ党のアルナルド・オテギ党首は、ラジオ局SERのインタビューに答えて、同党が、ガルソン判事の差し押さえ判決に反対するのではなく、むしろ政治的見地から、相手にする必要もないと語った。
バルタサール・ガルソン判事が、今年に入ってから指揮を取ってきたバタスナ党包囲作戦により、これまでに3回判決が下されている。
@2002年4月30日
2月にバスクとナバーラで逮捕された「セヒ」メンバー11人に対して、46件の街頭テロ行為を行ったとして1.800万ユーロの損害賠償を請求、ガルソン判事指揮による捜査で、200人の警察官を動員して、セヒの事務所やETAの集会所「エリコ・タベルナ」などの家宅捜索が行われた。その結果街頭テロ行為実施に関わる書類や物的証拠が多数押収された。そして4月30日に、「これらの街頭テロ行為は、ETA−Ekinの指示の下に実行されたものである」との判決。
A同5月2日
エリコ・タベルナとの関連の疑いで11人のバタスナ党議員が逮捕される。ガルソン判事は、エリコ・タベルナが「新しい構成員の獲得、ETAのテロリズム実施委員会による武器や爆薬の保管、また爆破装置などの製作、将来の標的選考の話し合いなどに使用されている集会所」であり、また「独占的、直接的にバタスナ党に依存している」と定義した。判決は、経済・財政面での嫌疑内容分析により、バタスナ党がテロ組織ETA−KAS−Ekinを構成する一組織であることは間違いないとの判断。
B同7月3日
セヒの行った街頭テロ行為に関して、「バタスナ党は、ETAという親会社の指導に従い、合法的業務を行う隠れ蓑」であるとし、バタスナ党の民事連帯責任を問うた。ガルソン判事の下した判決は、「バタスナ党は、ハライ−ハイカ−セヒという複合組織に対して、非道徳的行為実施や街頭テロのための爆発物などの保管を支援し、その隠れ蓑の役割を果たした。」

フランコ将軍の騎馬像が生地フェロールの広場から撤去される

ガリシア地方の港町フェロール(ア・コルーニャ県)は、スペイン内戦終結後の1939年から1975年に死去するまで36年間にわたり長期独裁政権を築いたフランシスコ・フランコ将軍の生まれ故郷である。かつては"Ferrol del Caudillo(指導者のフェロール)"とも呼ばれていた。この町の入り口であるスペイン広場には、1967年から馬に乗ったフランコ将軍の巨大な銅像が建ち、常に町に出入りする市民や観光客を馬上から見下ろしていた。
フランコ将軍の銅像が今回撤去されることになった直接のきっかけは、旧市街へのアクセスを容易にするために、この広場の下に625台分の地下駐車場を建設するという計画が持ち上がったことにあるが、騎馬像は長い間民族主義や独立主義を掲げる人々の格好の標的となっていた。近年は、真っ赤にペンキで塗られたり、楔に爆竹が仕掛けられたりするなど、独裁のシンボルであるこの像を嫌う動きが目立っていた。この結果、市長以下BNG(ガリシア民族主義政党)−PSOEが中心となっているフェロール市役所では最終的に銅像の撤去を決定した。
昨夜午前0時20分からシャイメ・ベジョ市長を始めとするフェロール市役所幹部や、多くの市民が見守るなか、銅像の撤去作業が行われた。銅像は、連結車で巨大な“檻”に収められ、暫定的に市内の別の場所に移された。大多数の市民は、ようやく実現されたフランコ像撤去を喜び、港町の夜は音楽やシャンパンでお祭りムードになった。
ガリシア地方では、フェロールの騎馬像ほど大きくはないものの、依然としていくつかのフランコ像が残されている町があるという。
この銅像は、今後スペイン海軍の所有となり、海軍博物館に展示されることになる。

バルセロナのリセオ劇場、インターネットでオペラを15大学に配信。

バルセロナのリセオ劇場は来シーズン、“デジタル・オペラ”と称して、世界の15大学に中継でオペラを配信することを発表した。配信されるのは、シュトラウスの『ナクソス島のアリアドネ』(11月12日)、モーツァルトの『ドン・ジョバンニ』(12月17日)、ベッリーニの『ノルマ』(1月9日)、チャイコフスキーの『スペードの女王』の4作品。
“デジタル・オペラ”の企画に参加する大学は、クオリティの高い音と画像を受信できる新しい設備を備えている。バレンシア大、ジェイダ大、オビエド大、パイス・バスコ大、ポンペウ・ファブラ大、バルセロナ自治大、カタルニャ総合工科大、マドリッドのカルロス3世大、ローマのサピエンツァ大、ドレスデン大、シカゴ大、ベネツィア建築学校、パリ高等経営学学校、チリのメトロポリタナ大では、この4作品が7カ国語対応の字幕つきで見られる。
この企画は基本的には学習目的のもので、登録している生徒だけがオペラを見られる。例えば、バレンシア大で自由選択科目となるこの授業は120人の登録を限度とし、出席生徒には3単位が与えられる。
もう一つの目的は、最新技術を利用して若い世代にもっとオペラに親しんでもらうことで、リセオ劇場支配人のジョセップ・カミナル氏は「オペラへの興味が若者たちの間で高まりつつある。この企画を通して、我々はオペラの世界に若く、活気に満ちた、新鮮な感覚をもつ聴衆を呼びたい。」と述べた。

マドリッド市長、今月末にもオリンピック開催候補地に名乗り

昨日、マドリッド市長ホセ・マリア・アルバレス・デル・マンサノ氏は、今月末にもスペインオリンピック委員会に、2012年オリンピック開催候補地として立候補届けを出すと発表した。開催にあたっては、マドリッド自治区スタジアム(通称ラ・ペイネタ)とマドリッド見本市会場(Ifema)の施設を使用する予定で、テニスと水泳用の施設を新たに作る必要がある。海上スポーツに関しては、「サッカーと同様、スペイン国内で開催地を分散することになるだろう。」と市長は述べ、ヨット協会に、8月に競技を開催するのに最適な場所の調査をすでに依頼したことを付け加えた。
マンサノ市長は、ラ・ペイネタを改築して、その周囲をオリンピック都市として発展させたい意向。2万人収容のラ・ペイネタをオリンピックメイン会場にするためには、7万5千人収容に改築しなければならない。現在、ラ・ペイネタはマドリッド市ではなく、マドリッド自治区のものであるが、アルベルト・ルイス・ガジャルドン知事は、2012年までの期限付きで、マドリッド市所有の競技場パラシオ・デ・デポルティボと交換する用意があることを2週間前に発表している。


7月4日(木)

ガルソン判事は、街頭テロ行為に関して、バタスナ党の民事責任判決を下す

全国管区裁判所のバルタサール・ガルソン判事は、2001年6月の創設以来、バスク解放運動(MLNV)の流れを汲む青年組織セヒのメンバーが行った街頭暴力行為(バスク語でkale borroka)による損害に関して、彼らがバタスナ党の指令によって行動したのは明らかとして、バタスナ党の連帯的民事責任を問う判決を下した。これにより、バタスナ党は、24時間以内に2.400万ユーロ(内1.800ユーロの損害額に加えて、被害の評価額が上昇したときのためにさらに600万ユーロ)を支払う義務がある。もしそれが実行されなかった場合は、銀行口座、有価証券、動産・不動産など党財産の差し押さえが行われる。ガルソン判事は、すでに警察当局に対してバタスナ党の資財の特定を依頼した。
この判決が施行され、差し押さえが行われれば、バタスナ党が所有する全ての銀行口座の差し止めが行われ、貸し付けや助成金受領の道も閉ざされることになる。いまのところ、バタスナ党に対する民事責任追及はセヒによる街頭テロ行為で生じた損害についてのみであるが、ガルソン判事は今後、ETAとエキン、ハライ、ハイカ、HB,EH,エリコ・タベルナやその他ETAの指示下にある複合組織などにより市民生命、自由、公共および民間施設に損害を与えたすべてのテロ行為に関しても、民事責任の追及を広げていく方針。
ガルソン判事は、セヒとバタスナ党は、ETAという親会社の指示のもとに活動する隠れ蓑であると定義したが、その全容は、他にも合法的な財政運営(助成金など)を取り仕切る対外セクション(シャキ)、労働組合、メディア(エヒン)、戦闘組織およびその予備校、、政治犯を管理し、非合法活動を支援するアムネスティ事務局−アスカタスナ、弁護士組織(ZZ)などで構成される一大複合組織なのである。
またこの判決により、ETAのテロ行為の被害者が、バタスナ党にその責任を求めることができるという道を開いた。

15歳以上の成績不良の生徒にも中等義務教育(ESO)卒業の道

現在は、16才以上で中等義務教育(ESO)を卒業できなかった生徒は社会保証プログラムを受講し、これに合格すると専門技術職養成コース(FP)の中級に入学できることになっている。しかし、昨日ピラル・デル・カスティジョ文部大臣の発表した改革案によると、15歳の成績不良の生徒は新しい教育プログラムへの参加を選ぶことによって、2年間の学業を修めた場合はバチジェラト(日本の高校に相当)、または専門技術職養成コースへ入学することを許される。
この新しいプログラムは、数学、語学などの基礎科目の授業と、専門技術養成のための授業とで構成される。基礎科目の授業は、中等義務教育レベルの学力をつけるためで、専門技術養成のための授業も受けるこのプログラムの生徒は、1年でこのプログラムをやめる場合、専門技術職養成コースの上級に編入できる。
しかし、社会労働党のアドルフォ・ナバロ教育コーディネーターは「15歳の生徒だけを特別扱いする今回の案を実行に移すのは難しいだろう。」と述べる。同氏は、この新しい教育プログラムを実行しても、中等義務教育を卒業できる生徒の数はあまり増えないと見ている。

差別的な評価のつけられた面接書類250通をそのままゴミ箱に破棄

マドリッドを中心に展開するスーパーマーケット・チェーンが、面接の際に提出された応募書類に、面接官による手書きの評価メモをつけたもの約250通が、社屋脇の道路にゴミ袋に入ったまま放置されていたことがわかった。これは、ラジオ局SERの記者が発見したもので、これらの書類には、面接官の評価として、「ジプシー、不器量、肥満、外国人、顔にニキビ、ブタのような顔、低所得者地区出身」など、志願者を外見や出身地、社会的身分、家庭環境により蔑視し、侮辱するような言葉が並べられたメモが、1枚1枚ホチキスで止められていた。
今回発見された応募書類は、2000年末から翌年初めにかけて、同スーパーチェーンが、駐車場係、秘書、マーケティング・ディレクター、キャッシャー係などを募集した際に、志願者が面接時に直接持参した応募書類である。
会社側では、「これまでに、外見や出身地などで、応募者を差別したことは1度もない」とし、また面接官のメモの存在についても「全く関知していなかった」としているが、この事件に関しては、州政府に所属するデータ保護局が数日中に調査を開始することにしている。

陸上競技:「ミーティング・マドリッド2012」大会が開催される

昨日マドリッド州スタジアムで開かれたこの大会では、砲丸投げのマノロ・マルティネス選手が20.55mという記録で優勝。レオン出身のマルティネス選手は、2001年9月以来の16連勝を達成した。走り幅跳びでは、男子でヤゴ・ラメラ選手が8.13mという記録で、自身の最高記録8.56m(1999年)には及ばないものの、復活の兆しを見せた。また女子ではニウルカ・モンタルボ選手も6.80mで今年の最高記録を出した。800m走ではアントニオ・レイナ選手が1分46秒34、100mハードルでグローリー・アロシエ選手(12秒77)でそれぞれ優勝した。女子棒高跳びではナロア・アヒーレ選手は、4.35mで念願の自己最高の成績を挙げた。


7月3日(水)

6月の失業率は、過去15年間の平均低下率を下回る

5月27日に新しい失業者に関する政令が施行されてから、初めての雇用統計が発表された。この結果、6月の失業者数は21.597人減少し、5月の統計に比べて1.36%減少したことがわかった。失業者が前月比17.547人減となった昨年同月より好成績となった。しかしながら、この6月の失業者減少数は、過去15年間の平均(−30.685人)を大きく下回っている。この1年間を通じて、失業者の数は全体で106.804人増加(+7.31%)したことになる。
労働省の発表によると、現在INEM(国立職業安定局)に登録されている求職者の数は、1.567.390人で、これは労働人口の8.4%にあたる。また6月に交わされた雇用契約の数は、1.074.375件で、これは昨年同月と比較して、114.610件減少(−9.64%)した。このうち、無期限契約の占める割合も、15.52%まで落ち込んだ。
前月までと同じように、女性の雇用状況が厳しくなっている。女性の失業者は、全体の60.1%(941.302人)を占めており、5月の統計と比較しても、8.658人しか減っていない。逆に男性の失業者は、12.939人減少し、626.088人となった。
年齢層別では、女性の雇用と同じように非常に厳しい状況にある25歳以下の失業者数に若干の減少傾向が見られた。また産業別では、第一次産業で最も顕著に失業者減少が見られ(−13.781人)、次に工業(−5.879人)、建設業(−4.020人)となった。
これらの結果について、経済省のロドリゴ・ラト大臣は、新しい失業者保護令の効果が生まれていると述べ、逆に労組側は、6月の雇用統計は観光業に依存するところが大きく、実際の失業率は決して下がっていないと反論している。

国王夫妻がスロバキア訪問、スペイン芸術海外展示プログラムを開幕

スロバキア共和国を訪問中のスペイン国王夫妻は昨日、首都のブラティスラバ近郊のクノボ・ダヌビアナ美術館で、スペイン人彫刻家マルティン・チリーノさんの展覧会の開幕式を行った。この展覧会は、スペイン外務省と、Seacex(国営海外文化活動協会)が共同で行っている「海外におけるスペイン芸術発表プログラム」の一環として開かれたもの。チリーノさんは1925年生まれで、カナリア諸島のラス・パルマスの出身、彫刻家としての活動は約半世紀に及ぶ。今回は14の彫刻と4枚の素描が展示されている。
フアン・カルロス国王夫妻は、展覧会の責任者マリア・ルイサ・マルティンさんと、館長のビンセント・ポラコビッチ氏に伴われ、チリーノさんの各時代、数シリーズにわたる作品を鑑賞した。また国王夫妻は、スペイン語教師など、スロバキア在住のスペイン人約90人と会話を持った。
このプログラムは、スペインの現代芸術と現代文化を海外に広く伝え、2005年までに、現代のスペイン社会のダイナミズムと呼応する前衛的スペインのイメージを広げる目的で創設された。これまでに、アントニオ・サウラ、グスタボ・トルネル、マヌエル・リベラ、ホセ・カバジェロ各氏の展覧会が各地で開かれている。8月末まで開かれているこの展覧会で、錬鉄を使ったチリーノさんの彫刻は、欧州連合加盟が近づいているスロバキアとスペインが芸術を通して対話を分かち合う機会を提供することになるであろう。

カマチョ氏、代表監督辞任表明。後任はサエス氏が有力。

サッカーのスペイン代表チームの監督を98年9月から4年間務め、先に行われたワールドカップでは1950年以来のの準々決勝進出を果たしたホセ・アントニオ・カマチョ氏が昨日、代表監督辞任を発表する記者会見を行った。カマチョ“前”監督は、昨日もワールドカップの放映で常に話題に上ったブルーのワイシャツを着て、いつものように真摯な眼差しで会見に臨んだ。
退任の理由は?
「人生には周期というものがあり、私にとっては今ひとつの周期が終了したところだ。47歳という年齢にとっては、2年後の欧州杯、4年後のワールドカップは遠すぎる。今私に必要なのは、毎日不安や心配を繰り返すような落ち着きのない仕事。それはクラブチームでしか味わえないものだ。」
この返答に続いて、退任の理由をサッカー連盟や、ビジャール連盟会長との対立、W杯での指揮に対する批判などスキャンダラスな方向に求める記者団からの質問が相次いだが、カマチョ氏はそれらの全てをきっぱりと否定した。また新たに監督として就任するクラブチームとして、レアル・マドリッドの名が挙げられたが、これに対しても「今の(デル・ボスケ)監督は、私の親友。それだけで答えになるはず。」とマドリッド行きについても否定した。最後に、「今日からスペイン代表チーム最強のサポーター」を自認するカマチョ氏は、夏休みはイビサ島で過ごすと言い、この日の会見で唯一の笑顔を見せた。
ホセ・アントニオ・カマチョ氏は、ムルシア県のシエサ生まれ。選手としては1972年のアルバセーテ・バロンピエでデビュー、その後74年から1部リーグのレアル・マドリッドで15季プレーし、414試合、国際マッチは81試合出場。9度のリーグ優勝、4度の国王杯、UEFA杯2度に貢献し、89年に引退。90年に監督としての仕事を始め、R.マドリッド・ジュニアで指揮をとる。その後R.マドリッドの副監督を経て、ラジョ・バジェカーノ、エスパニョールを1部リーグに昇格させた。98〜2002年まで代表監督を務め、44試合中28勝7敗9引き分けという成績を残した。
今後の代表チームには、8月21日のハンガリー戦、9月から始まる欧州杯予選での第一戦でギリシャとの試合が待っており、一日も早く後任の監督を探す必要がある。この日の午後には、臨時に代表チームの責任者となったサッカー連盟の事務局長ヘラルド・ゴンサレス氏が、若手選手の育成に秀で、後任最有力候補とされるイニャキ・サエス氏と面会した。

王家のワイン蔵復活。アランフェスで“ロイヤル・ワイン”生産

マドリッドに、新たな“ボデガ”(ワイン醸造所、酒蔵)がオープンし、近々Real Cortijo(王立農園)という名のワインが誕生することになる。このワインの生産をするのは、マドリッド近郊のアランフェス市。ここには、1778年に国王カルロス3世が、王室へのワイン供給のために建設を命じた酒蔵がある。長い間、修復のためにその門は閉じられていたが、このたび農園役所の所有として、新たにオープンすることになった。
アランフェスのサン・イシドロ王立農園は、現在はアランフェス市に依存しているものの、マドリッド州で唯一小規模地方自治体として独自の役所や助役を擁する。ここには約400人の住民が生活している。農園は、スペイン王家の離宮から約6Km離れたところにあり、耕作に適した土壌と、木々の生い茂る小道が走る。農園の中心となる建物は、1766年にグリマルディ侯爵の命により建造され、農園主の住居、王家の邸宅、厩舎、教会などから成っている。住民のほとんどは農業に従事、あるいはアランフェス市内で働いている。王立農園と、ドセ・カジェスと呼ばれる草木の生い茂る小道や畑で結ばれる離宮により、アランフェスは、ユネスコから文化景観遺産として登録されることが予定されている。
ワイン製造は民間の醸造会社が請負い、今年の10月には元王立農園で作られたワインが市場に登場する予定。この会社は100人の共同経営者から成り、ひとり1台のワイン樽を所有している。年間26.000本のワインを生産する見込み。製造に使われるブドウは、フーカル川流域の農場で栽培されているという。


7月2日(火)

スペイン人学生の30%が希望学部に進学できず

スペイン大学白書によると、スペインの大学生の30%が、第一希望の学部に進学できていなかったという。今回の調べで、学生の進学希望が人文学系学部から理工学系学部に移行していることもわかった。出生率の低下により理工学系への入学が以前より簡単になっており、理工学系学部に入学する生徒の成績は以前より悪くなっている。
また、1998年には450,000ペセタだった全公立大学平均生徒一人当たりのコストは、541,000ペセタに上がっているとの結果もでた。生徒一人当たりに最もお金を使っているのがバルセロナのポンペウ・ファブラ大学(993,000ペセタ)、逆に最もお金を使っていないのがセビジャのパブロ・デ・オラビデ大学(336,000ペセタ)。しかし、卒業するのに最もお金がかかるのはポンペウ。ファブラ大ではなく、エルチェ・ミゲル・エルナンデス大(8.4百万ペセタ)、続いてマドリッド総合工科大(7.3)、パブロ・オラビデ大(5.8)、ラ・ラグナ大(5.5)となっている。卒業するのに最もお金がかからないのはハエン大(2.7百万)、カスティジャ・ラ・マンチャ大(2.9)、ブルゴス大(3)、ムルシア大(3.1)であった。スペインがわずか15%の学生にしか奨学金を出していないことも明らかになっており、EU平均はこれの3倍(40%)。
今回の調査はスペインの48公立大学の2000−2001年度のデータに基づいたもので、スペイン大学学長会(CRUE)により異なった大学から6人の教育経済専門家が選ばれ、ハエン大学のフアン・エルナンデス・アルメンテロス氏の指揮のもと行われた。

社会党サパテロ党首は、アスナル首相に対して労組幹部との会談を行うよう要請

社会党(PSOE)のホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ党首は昨日、スペインのアスナル首相に対して、依然として失業者保護令の全面撤回を求めているカンディド・メンデス(UGT)、ホセ・マリア・フィダルゴ(CCOO)の両労組書記長と会談し、対話を持つ必要性を強く訴えた。サパテロ氏の見解によると、6月20日のゼネストやデモ集会は、この政令に関して国民が政府に反対しているということは誰の目にも明らかであるという。
またマドリッドCCOOは、最高裁に対して、20−Jゼネストに参加したという理由で会社を解雇されたケース全てについて調査をするように求めていく方針を決めた。このようなケースは、マドリッド州で20件、全国で合計50件報告されている。

夏のバーゲンセール始まる

昨日7月1日から、全国で夏のバーゲンセールが始まった。すでにバーゲン開始を6月下旬に繰上げて始めていたマドリッドを初めとするいくつかの州を除いては、昨日が全国一斉開始日となった。スペイン商業連盟の予測によると、このバーゲン期間に国民一人あたり、120〜150ユーロの買い物をするという。内容は主に、洋服や個人使用の品物など。値下げを行う商店は全国でおよそ10万店、平均25%のディスカウント。また消費者連盟は各商店に対して、買い物客にわかりやすいように値札に旧通貨ペセタとユーロの併記をするよう勧めている。

バレンシアで過去41年で最大の7月台風

日曜の夜から昨日未明にかけて、地中海沿岸のバレンシア市を中心に襲った大型の台風は、7月にやって来た台風としては、過去41年間で最も勢力の強いものであった。バレンシア市内では、24時間足らずで128.7平方リットル、2時間で60平方リットルの降水量を記録。消防救急隊の出動回数は、日曜の午後11時から翌午前5時までの間で100回に及んだ。ブルハソット(バレンシア)では家屋1軒が倒壊、ムルシア県のカラバカ・デ・ラ・クルスでは、アルゴス川の氾濫によって、取り残された民宿の従業員や客など7人が警察の手で救出された。バレアレス諸島では、海水浴を楽しんでいた二人が海で溺れて亡くなった。またアルバセテとの県境にあるラ・バル・デ・コフレンテス市では、10以上の町村で、フーカル川氾濫の恐れで一時は避難待機命令も出たが、その後解除された。
予報では、今日は内陸部に残っていた雨も止み、気温も再び上昇する見込み。

ガルソン判事、4年にわたるETAの周辺調査を終了

バルタサル・ガルソン判事は昨日、1998年5月28日から始まった4年にわたるテロリスト集団ETAの政治的、財政的背景捜査を終了した。これにより64人に対する大掛かりな裁判が開始される。大半は、ETAへの所属または協力による立件。
ガルソン判事はETAは単に暗殺と爆薬をしかけるだけの集団ではないとする。判事は、ETAは政治的、文化的賛同者が占める大部分と、犯罪行為を働く少数のメンバーによって構成される複合的組織と見なしている。今後この64人の裁判で、ガルソン判事と同様にETAの定義付けがされる場合は、すでに始まっているその他のETAの逮捕メンバーの裁判結果にも影響を与えていくことになる。
64人の中には、もとバスク議会議員ホセ・アントニオ・エチェベリア・アルべライツ氏、パブロ・ゴロスティアガ氏、もとエギン紙編集長ハビエル・サルトレギ氏、雑誌アルディ・ベルチャ(黒い羊)のペペ・レイ氏、ETA国際部門シャキの元部長エレナ・ベロキ氏、ETA青年部ハライの元広報担当アンネ・リサラルデ氏などが含まれている。


7月1日(月)

マヨール選対委員長は、PP党大会に向けて地方選綱領を準備

2003年5月25日に行われる地方選挙(自治州および市町村)に向けて、与党国民党(Partido Popular、民衆党と訳されることもある)は、選挙綱領をまとめる作業を続けている。この取りまとめ作業の指揮を取っているのは、内務大臣、バスクPP代表を歴任してきたハイメ・マヨール・オレハ氏。アスナル首相から今回の地方選の選対委員長を任されたマヨール氏は、この1ヶ月半の間にPP幹部で構成される委員会を3回召集し、選挙綱領の枠組み作りに熱心に取り組んでいる。委員らの話によると、マヨール氏はこの任務に対して情熱以上の信念を持っているようだ。アスナル首相の後継者に最も近い“子分”と噂されながら、いまひとつ役不足との感が拭えないが、マヨール氏自身にとっては、今回の選対委員長抜擢が、国政ポスト返り咲きの大きなチャンスであることは間違いない。
今年の秋に次々と開催される予定の党分科会で、綱領の最終取りまとめと、選挙の争点となるであろう国政の重要課題に対するPPの姿勢を固める見通し。これらの課題とは、大きく分けて第二次地方分権促進、自治政府と各市町村の財政的関連や分業を見直す地方協定(Pacto Local)、移民問題、そして綱領の目玉として家族への財政援助・支援措置を挙げていく方針。
PPは、地方選の5ヶ月前に当たる来年1月末に、年に1度の全国党大会を開催することにしている。この1年、国政から遠ざかっていたマヨール氏の手腕が問われるこの選挙綱領は、この大会で発表される。

52歳以上の早期退職者は、再就職活動を要求されることに。

国立職業安定局(INEM)は通達PR-2/02で、“全ての早期退職者は失業者と同じとみなし、積極的に再就職先を探すことを求めていく”と発表した。50代で早期退職する人はすべて、積極的に再就職先を探すという書類にサインしなければならず、INEMの提供するいかなる職業にでも就くか、キャリアアップのための講座に通わなければならない。さらに、現在135.400人いる50歳以上の補助金を受けている早期退職者は、低所得者証明書類に退職手当を所得として申告しなければならなくなる。
法律的には、30年以上社会保険を納めてきた60歳または61歳の人が定年を早めるというのはあっても、早期退職というのものは存在しない。しかし、会社が50歳以上の従業員に早期退職を求めるのは近年一般化している。これらの早期退職者がこれまで得ていた利点は、退職手当が所得としてみなされていなかったため、低所得者としての補助金を受けられていたことである。しかし、今回のデクレタソ(とんでもない法令)承認により失業者保護令が改正され、退職手当だけでなく早期退職者の貯蓄も所得としてみなされるようになった上、低所得者用補助金を失わないためには毎年INEMでその証明をしなければならなくなる。
INEMの通達では、52歳以上の早期退職者が現在受けている補助金を失わないためには、INEMがすでに用意している特別の書類に毎年当人とその家族の所得申告をしなければならない。これには、当人の最新の所得税申告書のコピーの添付が必要で、“INEMが必要とみなした場合”は、それ以外の書類のコピーの添付も求められる。この書類は、受給の権利が発生してから15日以内に提出しなければならず、期間内に提出されない場合は受給権利が剥奪される。
補助金受給に対してのINEMの決定が不服の場合は不服申し立てができるが、申し立て拒否の場合INEMはその旨を通知しないので、45日経っても回答がない場合は申し立ては拒否されたとみなければならない。その場合は、司法機関に訴えることができる。

セビジャの立てこもり移民に助言者

セビジャのパブロ・オラビデ大学に立てこもりを続けている400人以上の移民グループにアンドレス・ロドリゲス・べノ教授をリーダーとする法律助言者グループがつくことになりそうだ。このグループは、仲介を目的とするのではなく、移民グル−プの17人の代表者がスペイン滞在の合法化について仲介者と話し合うのを助けるためのものである。
昨日電話で代表者の1人に確認したところによると、移民グループは仲介者のアンダルシア人権擁護委員のホセ・チャミソ氏と話し合いを持つために連絡を取り、チャミソ氏に前科者(人数は不明)を除く立てこもり者全員との話し合いを求めた模様。
一方、ヨーロッパ・プレスは、昨日セビジャ司法学校のホセ・ホアキン・ガジャルド教授が、立てこもり移民たちに無料の法律助言を提供したと報道した。
400人以上が立てこもるパブロ・オラビデ大学の状況は日毎に緊張を増している。

週末のスポーツの結果

オートバイ:世界選手権シリーズ第7戦、オランダGPが開催され、スペイン人選手が大いに活躍した。125ccでは、ダニ・ペドロサ選手(ホンダ)が優勝、同じくホンダ所属のジョアン・オリベー選手が3位。二人にとっては、これまでで最高の成績となった。250ccでは、昨年のオランダGP125ccで優勝したトニー・エリアス選手(アプリリア)が、今シーズンから移った250ccでも実力を発揮している。しかし昨日は、スタートから先頭を走っていたが、マルコ・メランドリ選手に抜かれ、惜しくも2位。旧500ccクラスのモトGPでは、カルロス・チェカ選手(ヤマハ)が3位と、各クラスでスペイン人選手が表彰台に上った。
テニス:ウインブルドン選手権6日目。男子で、初出場のフェリシアーノ・ロペス選手が準々決勝に進出を果たした。トレド出身、20歳の左利きの選手で、今大会で彗星のごとく登場した。スペイン人選手がウインブルドンで準々決勝に進出するのは、1998年のパト・クラベット選手以来。ブラジルのアンドレ・サ選手(世界ランキング90位)と対戦する。しかしこの新しい星の誕生と対比するように、スペイン女子テニス界の黄金時代を築き上げ、16年間世界を舞台にプレーをし続けているコンチータ・マルティネス選手にとっては、力の限界がきているようだ。ウインブルドンでは94年に優勝、昨年は準決勝進出を果たしたが、今回は予選第3リーグで敗退した。一般的にウインブルドンの芝コートは苦手とされるスペイン勢だが、今回も準々決勝までたどり着いたのは、ロペス選手たったひとり。
自転車競技:スペイン耐久ロードレース選手権が行われ、ベテランのフアン・カルロス・ギリャモン選手(Jazztel)が優勝した。この大会は、今月6日から始まるツール・ド・フランスに向けた最後のリハーサルとなった。この3年間、アメリカのランス・アームストロング選手の一人舞台となっているツールで、スペイン人選手がどこまで力を発揮できるかが期待される。




QUEDA TOTALMENTE PROHIBIDO LA REPRODUCCIÓN, LA REPUBLICACIÓN, O COPIAR CUALQUIER CONTENIDO DE NUESTRAS PÁGINAS.
全て内容おいて無断で使用・転載・複製することを禁じます

メールコンタクトはspnews@spainnews.comまで