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10月31日(木)

映画監督、フアン・アントニオ・バルデム氏死去

映画監督のフアン・アントニオ・バルデム氏が昨日、ボアディジャ・デル・モンテ(マドリッド)のモンテ・プリンシペ病院で亡くなった。享年80歳。バルデム氏は1年前から重い肝臓疾患を患っており、俳優であり映画監督でもある息子のミゲル・バルデム氏の話によると昨日の午後5時頃、背中に激しい痛みを訴えて病院に運び込まれ、間もなく息を引き取ったという。バルデム氏の遺体は今日の午後8時、アルコルコン墓地で荼毘に付される。
1922年6月マドリッド生まれのバルデム氏はスペイン映画史に残る映画監督で“Calle Mayor”“Muerte de un ciclista”(邦題「恐怖の逢いびき」)など20本以上の作品を世に送リ出した。ルイス・ガルシア・ベルランガ氏と共に、1950年代にスペイン映画に独自のカラーを確立したバルデム氏は、女優ピラール・バルデムさんの兄で、俳優のハビエル・バルデム氏の伯父にあたる。1953年“Comicos”で監督デビュー、翌年には“Felices Pascuas”を発表、1955年、“Muerte de un ciclista”でカンヌ国際映画祭国際批評家賞に輝いた。また1956年にはアルニチェスの喜劇を映画化した“Calle Mayor”を発表、この映画はベネチア国際映画祭で批評家賞を受賞している。

無認可薬品処方の医師、無罪と薬の効能を主張

エイズやガンの治療薬としてインターネット販売され、先週23人の逮捕者を出した無認可薬品Bio-Bacは、薬剤師フェルナンド・チャコン氏が“活性酵素による抗癌ワクチン”を開発、最終的にBio-Bacとなるにいたった薬であった。この薬はチャコン氏の開発から数年後の1970年から懲罰、論争、裁判の的となっていたものであるが、今回逮捕された医師たちは、無罪と薬品の効能を主張している。
厚生省薬事局のフェルナンド・ガルシア・アロンソ局長は昨日、「エイズにも肝炎にも、癌にも効く薬があればどんなにいいことか知れないが、実際にそういった薬は存在しない。」と述べたが、Bio-Bacがホームページで紹介している用法、効能について具体的に反論はしなかった。どのような物質でも、療法が書かれていれば薬品と見なされ、厚生省の登録が必要となる。Bio-BacとInmunobiol(注射できるタイプ)の製造者たちは1986年から1992年の間に3回、認可を取ろうとしたが、彼らが必要条件を満たしたことはなく、厚生省から販売許可を得るには至らなかった。
ガルシア・アロンソ局長によると、この薬は以前から何度も厚生省から懲罰、警告を受け、1992年には最高裁判所から判決も受けており、その度にいったん姿を消し、違う名前で再び現れるということを繰り返していたという。2000年には、スペイン消費者組合(UCE)が厚生省にインターネットでBio−Bacが商品化され、自然療法医師により処方されているとの告発をしていた。アナ・パストール厚生大臣によると、これを受けて厚生省とマドリッド自治区が調査をしたが証拠が見つからなかったため、治安警備隊に捜査を以来、このため摘発、逮捕が遅れたという。この遅れによりBio-Bacは2年間にわたり販売を行うことができた。薬事局副局長のラモン・パロップ氏によると、Bio-Bacの成分調査結果は2週間で出るという。
昨日の午前中、逮捕されすでに釈放されている医師6人はBio-Bacの無害性と効能を擁護、しかしBio-Bacを“医薬品”と呼ぶことは避け、アルベルト・マルティ・ボッシュ医師はBio-Bacを“治療効果のある栄養補助品”と定義した。出席した医師たちは、処方することによって報酬を受け取ったことは一度もなく、また患者にそれまでの治療や化学療法をやめるように言ったこともないと主張した。「治療の補助として服用することに効能があった。」とマルティ・ボッシュ医師は述べている。医師たちによると、Bio-Bacは医師会議では知られた存在であったといい、今回の事件には関与していない自然療法医師会のガブリエル・コントレラス会長も、自然療法会議にBio-Bacから代表が来ることがよくあったことを認めている。マルティ・ボッシュ医師は「一見、ちゃんとした薬のようにみえるものが、すべての認可条件を満たしているかどうか判断することはできなかったし、厚生省からのいかなる通知もなかった。」と弁明したが、これに対しパストール厚生大臣は「医者ならどれが認可されている薬なのか完全に把握しているはずです。なぜなら認可されている薬は、薬局や病院で手に入り、郵便で手に入れるものではない(インターネット販売されていたBio-Bacが宅急便で配達されていたことから)からです。」と反論した。この薬が知られた存在であったことを証明するため、医師グループの一人は、この薬を使った治療に社会保険が適用されていたことを指摘したが、パストール大臣はそれは1990年の薬事法改正の前であると答えている。

健康管理に気を遣えば、スペイン人の寿命は5.4年延びる??

世界保健機構(WHO)が昨日発表した年間報告書によると、人間の寿命は健康的な生活を送ることにより、5〜16年延ばせるという。世界で年間に死亡している人の40%は、栄養不良、無防備なセックス、高血圧、タバコ、アルコール、飲料に適さない水の摂取、非衛生的生活習慣、鉄分不足、火事での煙の吸引、コレステロール、肥満という10の原因のうちのいずれかで亡くなっていることが、今回報告されており、この報告書で明らかになったその他のデータは以下のとおり。
−寿命:健康的な生活習慣(料理に使う塩を減らす、栄養バランスのとれた食生活、適度な運動、飲酒とタバコをやめる、肥満に気をつける)により、スペイン人の寿命はさらに5.4年伸ばすことができる。同様にEU諸国内では5〜10年、中南米では6.9年、アメリカでは6.5年、アジアでは6年、寿命を延ばすことが可能。
−乳幼児の死亡:世界で1.7億人の子供たちが栄養不良に苦しんでおり、5歳以下の子供370万人がこれにより死亡。その60%は発展途上国の子供たち。
−肥満:年間に世界で300万人(西ヨーロッパでは32万人)の死亡原因となっている肥満は、WHOの予測では2020年には500万人の死亡原因になるという。
−性生活:エイズ死亡者の95%の感染が無防備なセックスによるもの。現在約4000万人のHIV感染者のうちアフリカの感染者数は2800万人、しかしエイズは全世界に急速に広がっている。
−飲料水:年間170万人(3分の1はアフリカ)が、飲料に適さない水または衛生的環境の不備により亡くなっている。
−アルコール:年間180万人が死亡。死亡原因の4%を占めるアルコールの摂取は、30%の胃がんの原因でもある。
−タバコ:現在、年間500万人が死亡しているが、2020年には900万人に増えることが予想されている。
−交通事故:年間120万人が死亡。経済的に発展している国では、10万人に12人がこの原因により死亡している。


10月30日(水)

教育法反対デモとストライキ行われる

昨日、スペイン全土で小中学校の教師、生徒、父兄による教育の質向上法反対デモ、ストライキが行われ、野党各党も参加した。地方自治体と労働組合のデータによるとストライキに参加したのは生徒の70%、教員の63%だというが、文部省は教員の参加を20%と発表している。首都マドリッドでは3万人、バルセロナでも2.5万人が教育の質向上法の撤回を求めデモを行った。
CCOO(労働者委員会)のフェルナンド・レスカノ教育部事務局長は「文部大臣に新法令に対する拒絶をはっきり知らせることができた」と今回のデモ、ストライキは成功だと評価、野党からもこの法律提案を撤回せよとの声があがっている。
しかしながらピラル・デル・カスティジョ文部大臣は、今回のストライキに参加した教育者は全体の20%にすぎず、「あらゆる教育分野の関係者との対話の結果生まれたこの法令に対して教師は同意している。」と彼女の見解を述べた。また、PPのサンドラ・モネオ教育担当秘書は、「法改正はすべての政党が参加できる議会で、必要とされる手続きを経て承認されたものである」ことを改めて強調した。
今回のデモでは特に文部大臣に対して非難が集中、「文部大臣は今すぐ辞職し、フランシスコ・フランコ財団の代表にでもなればいい。」「データを常に改ざんし、教育のプロを侮辱するような真似はすべきでない。今の文部大臣は彼らプロにはふさわしくない。」等の意見が参加者から聞かれた。
デモの参加者たちは、“幼児教育の欠如”、“不公平な教育”、“奨学金削減”、“教会が運営する私立学校への何百万ユーロものプレゼント”に対して抗議、マドリッドでのデモは「文部大臣は辞職せよ!」との叫びで締めくくられた。
バルセロナではデモの最後に一部の学生たちが警察のバンに瓶や石を投げつけ、5人の警官を含む10人の怪我人が出、4人が逮捕された。その他都市の参加者数は、サンティアゴ・デ・コンポステラ7000人、サラゴサ5000人等で、労働組合の発表によるとスペイン全土で抗議に参加した人の数は15万人以上だという。

国会、テロの脅威にさらされる議員警護のための法改正承認

昨日、PP(国民党)とPSOE(社労党)が提案していたテロによる脅迫を受けている議員の警護のための法改正が、国会で賛成299票、反対0票、棄権9票(バスク民族党、バスク連合、カタルニャ左翼連合)で承認可決された。これにより、ETA、バタスナ党による襲撃からバスク州、ナバラ州の議員を守るための警護化を目的として、刑法、犯罪者裁判法、政党融資法、選挙管理法、地方管理法、警察法の改正が始められる。この法改正により、議員への誹謗中傷、侮辱を罰するため刑法を強化、閣僚委員会によりテロリズムを賞賛、正当化する役場は解散させる、反逆、またはテロの罪に問われている者は、判決が決定していなくても選挙に立候補することはできない等の点で議員の安全が強化されることになる。
PPとPSOEが国会での審議にかける前にすでに話し合いで合意に達していたことについての批判はあったものの、投票に際し、反対票を投じた政党はなかったが、緊急に改正手続きを始める法を決定する際には、CiU(カタルニャ連合)、PNV(バスク民族党)、EA(バスク連合)が役場の解散という政府の権限について反対することが予想されている。
また、11月13日にはテロリズム対策協定の代表団が、昨日始動した法改正や政党法のように“スペイン民主主義”がテロとその政治的覆面組織バタスナ党と闘うために採っている対策とバスク地方の現状について説明するためのパリ訪問が予定されている。

スペインの教育投資、依然としてOECD平均以下

スペインは教育投資の不足を解消する絶好のチャンスを逃した。PP(国民党)政権はここ数年の経済成長を教育投資には生かさず、昨日発表されたデータによるとスペインの教育投資額は依然としてOECD(経済協力開発機構)加盟国平均以下だという。
1995年から1999年にかけて国が生徒一人あたりに費やした金額は、オーストラリア、スペイン、ギリシャ、ポーランド、ポルトガル、トルコ等で20%の成長が見られた。しかしOECDはスペインのケースは日本と同様、生徒の数がこの間に9%以上と大幅に減少したため起こった特例であるとしている。
「スペインの教育事情はこの20年間で格段に良くなっているが、諸外国との差は依然として大きい。」と昨日ロンドンでOECDの年間報告書“Education at a Glance”発表したOECDの分析部門部長ドイツ人、アンドレアス・シュライハー氏は述べた。シュライハー氏はスペイン政府関係者を招き「スペインはいまだに平均よりはるかに下回る状況にあり、日本のように具体的な目標を決めて状況改善に取り組むように」と要請した。
この統計結果が示しているように、ホセ・マリア・アスナル政権には、教育状況の改善という野心が欠けている。OECDは、スペインの教育への公的支出が1995年GDP(国内総生産)の4.7%だったのが、1999年には4.5%に落ちていることを指摘。しかし、これは世界的に見られる傾向で、この期間、OECD平均も5.4%から5.2%に落ちている。これは、経済の成長の早さに教育投資増加が追いつかなかったためだと見られている。しかし、このスペインの数値はOECD加盟諸国の中でも最も低いものの一つとなっており、対GDP教育投資パーセントでは28か国中19位についている。このGDPの4.5%という数値は、デンマーク(8.1%)、スウェーデン(7.7%)、ノルウェー(7.4%)といった国々のほか、ポルトガル(5.7%)、ポーランド(5.2%)、ハンガリー(4.7%)という国々よりも下回っている。
公的支出全般に対する教育投資の割合では、スペインの数値は1999年には1995年から0.7ポイント上がって11.3%となっている。しかしOECD平均は12.7%でスペインは25か国中17位という投資額の少なさ。メキシコは22.6%、韓国17.4%のほか、その他の国々の数値はノルウェー(15.6%)、スイス(15.2%)、デンマーク(14.9%)、オーストラリア(14.6%)、スロバキア(13.8%)、スウェーデン(13.6%)、アイルランド(13.2%)、ポルトガル(13.1%)等となっている。
OECDの報告書ではスペインが教師に対して世界で最も給料を払う国の一つで、中学校教師の労働時間は世界で最も少ない国のひとつだということもわかっている。15年間働いたスペインの高校教師の給料はGDP比1.77で、これを上回る国は韓国(2.48)、スイス(2.18)、トルコ(1.91)しかない。中学教師の給料(GDP比1.65)は4カ国、小学校教師の給料(1.52)は6カ国がそれぞれスペインを上回るだけ。小学校教師の労働時間は世界で最も多い国の一つ(年間ほぼ900時間)となっているが、中学校教師の労働時間は年間564時間と世界で最も少ない国の一つで、これより少ない国はハンガリー(555時間)と日本(557時間)だけである。


10月29日(火)

無認可薬品販売で、13人の医師を逮捕

治安警備隊は、癌、エイズ、肝炎などの薬としてBio-Bac、Inmubobiolという薬事局が認可していない薬品を販売していたとし、13人の医師とその他10人の人物を逮捕した。この薬品はエル・エスコリアル(マドリッド)にある秘密研究所で製造され、注射用12アンプル50ユーロ、シロップ形式で服用するタイプは1か月分として1箱に3瓶入って300ユーロでインターネット販売されていた。
この無認可薬品販売グループの責任者たちは、Bio-Bac、Inmubobiolと呼ばれる薬をエル・エスコリアルにある民家で製造、“強力な抗癌作用”と“臓器内のリンパ球増殖”の効果を持つと保証、癌やエイズの患者を顧客にしていた。この民家ではアンプル3万本と瓶入りBio-Bac1500本、拳銃5丁が見つかっている。
厚生省薬事局によると、この薬品は認可を得るのに不可欠な成分構成と使用上方法を明示していない上、一般的に知られたいかなる治療効果も持たない無認可薬品だという。グループのメンバーは会議やセミナーなどで知り合った医師、自然療法士などで、患者に薬品の処方をし、その後患者自信も知り合いに勧めるなどし、インターネットによる販売網が広がっていったと治安警備隊は見ている。メンバーは、マドリッド、バルセロナ、ア・コルニャ、グラナダ、テネリフェ、マジョルカ、カディス、ナバラ、マラガの医師、自然療法士で、それ以外にマドリッド、セビジャ、コルドバ、バレンシアの人間が関与していた。治安警備隊によると、その中にはバレンシア大学の生物学教授もいるという。
今年の初めの厚生省への告発により調査が始められ、合計23人の逮捕者を出すこととなった今回のこの無認可薬品販売網は、サウジアラビア(Bio-Bacのホームページによると会社が登記されている)と中南米数カ国にまで進出するところであった。
現在のところ、この薬品は“毒にも薬にもならない”ことがわかっているが、厚生省はさらに成分の調査を進める方針。この薬品が有害物質を含まないとしても、癌、エイズ、肝炎の重症患者に以前からの治療を止め、薬を変えさせたことにより、患者の命を危険にさらしたことには変わりない。薬剤安全局の副局長ホセ・ラモン・パロップ氏によると、これにより少なくとも1人のBio-Bac服用者が亡くなっていることがわかっているという。
厚生省は昨日、現在Bio-Bacを服用している患者たちに、服用をやめて元の治療法に戻るよう勧め、被害者のケアのために電話相談室を設けた。厚生省は、認可を受けていない薬品の販売は違法であることを重ねて述べ、またBio-Bacの臨床実験は数年前に禁止されていたことを明らかにした。
消費者・使用者機構(OCU)のホセ・マリア・ムヒカ代表によると、今回の無認可薬品販売摘発はインターネットを使ったニセ薬販売の“氷山の一角”にすぎないといい、スペイン消費者同盟が2000年にすでにBio-Bacの告発を行っていたにもかかわらず、厚生省の対応がここまで遅れたことに驚きを隠せないと述べた。厚生省側は、捜査の開始はスペイン薬事局が治安警備隊に告発したことから始まったもので、“専門家”と患者からのこの薬品販売についての告発を受けて行ったものであると主張している。

ハタミ・イラン大統領、スペイン訪問

イラン・イスラム共和国の政治的、宗教的リーダーであるモハメド・ハタミ大統領が、昨日の午後5時15分、マドリッドのバラハス空港に到着、アナ・パラシオ外務大臣が出迎えたが、大統領は女性に触れてはいけないというイスラム教の規則に従って、パラシオ外相には会釈をしたのみ。その後、ハタミ大統領はパルド宮でスペイン国王夫妻の歓迎を受けたが、国王とはがっちりと握手したものの、王妃には、外相と同様会釈をしただけであった。イランから国家のリーダーがスペインを訪問するのは1979年のホメイニ革命以来初めて。滞在初日はサルスエラ宮での晩餐で締めくくられた。
滞在2日目の今日は、アスナル首相との会談が予定されている。この会談では、イランとスペインの経済協力条約締結とイランの人権問題について話し合われることになっている。夜には、アルコールを提供するいかなる場所への立ち入りも禁止するイスラム教の決まりに従って通常行われる晩餐会の代わりに、国王夫妻による歓迎式典が行われる。明日はマドリッド市役所を訪問の予定。

6分に1軒が泥棒の被害

2002年1月1日から6月30日にかけて泥棒に入られた家は39,846軒。被害件数は地域によって大きな差があり、最も多いのはバレンシア州の11,095件で、この州より人口の多いアンダルシア、カタルニャ、マドリッドを凌ぐ数となっている。特にアリカンテ市とバレンシア市での被害が多く、その数はマドリッド市、バルセロナ市にも勝る。
6分ごとに1軒、1時間に9軒、1日に221軒、1ヶ月に6,641軒。これが、スペイン内務省が発表した今年に入って6ヶ月間のスペインにおける泥棒の被害状況である。調査期間中に最も被害の多かった州が人口の多さが4番目のバレンシア州だったことから、人口の多い州が必ずしも泥棒の多い州ではないことが明らかになった。バレンシア州での被害登録数は、200万人以上人口の多いカタルニャ、アンダルシア州の2倍、100万人以上人口の多いマドリッドの3倍。
人口1,461,925人のアリカンテ市と2,216,285人のバレンシア市では人口が5,423,384人のマドリッド市、4,805,927人のバルセロナ市を超える被害件数が登録されており、それぞれの市での被害件数はアリカンテ市5,629件、バレンシア市4,379件、マドリッド市4,208件、バルセロナ市3,309件となっている。
人口と被害件数の関係で見てみると、1月から6月にかけて泥棒の被害にあった家の数のスペイン平均は1000軒に0.9軒。バレンシア州より人口の多いアンダルシア、カタルニャ、マドリッド州のいずれもが0.8軒から0.7軒という数字であるのに対し、バレンシア州ではこの数字が2.6軒に跳ね上がる。この原因となっているのはアリカンテ市で、1000軒のうち3.8軒という高い数字になっている。バレンシア市は州平均の2.6軒より少ない2.1軒だが、バレンシア市より人口の多いバルセロナ市は1000軒に0.6軒しか被害にあっていないことを考えると楽観できる数字ではない。1000軒ごとの被害件数の多さではバレンシア州の次がバレアレス州(2.08軒)、ムルシア州(1.74軒)、カナリアス州(1,11軒)という結果が出ている。
今回のデータから、スペイン内務省の肝いりで警察による警備強化集中プランが今月初めからバレンシア、アリカンテ等特に泥棒の被害の多い5都市で始められている。


10月28日(月)

PSOE総選挙勝利20周年記念大会、開かれる

昨日、マドリッドのビスタアレグレ闘牛場で、1982年のPSOE(社労党)総選挙勝利の20周年を祝う集会が開かれ、2.5万人が参加し、ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ書記長を2004年首相選挙の候補者として推した。スペイン元首相フェリペ・ゴンサレス氏と元閣僚の支持を受け、サパテロ書記長は社会主義の原点を忘れず、“すべての国民のための国家”建設を約束した。また、サパテロ書記長は「権力者から権力を奪い、国民に自由と権利を取り戻します。」と述べ、ホセ・マリア・アスナル氏とPP(国民党)の“灰色で冷たく、無反応で、多くの社会問題を抱える国家”とは異なった国家の建設というPSOEの夢について語った。
サパテロ氏が2年間の書記長在位中でこれほどまでの拍手歓声を受けたのは初めて。書記長は演説で、フェリペ・ゴンサレス元首相の功績の言及についてかなりの時間を割き、彼への感謝を捧げた後、「右翼はあなたの功績を消し去ろうと躍起になっていますが、それは決して達成されることはないでしょう。PPが弱らせたスペインを我々が一丸となって若返らせようではないですか」と熱弁を振るった。また、PSOE政権を終わらせる原因となった汚職について「我々は自らの過ちと右翼の画策によって仕事の半ばで政権を手放しましたが、この経験で我々は学びました。我々の中には今後私腹を肥やすものは1人もいないでしょう。」と述べている。
今回のサパテロ書記長の演説は、1982年の選挙戦終盤とPSOEが勝利を収めたその年の10月28日夜のフェリペ・ゴンサレス氏の演説を元にしており、この時ゴンサレス氏が目指した国家こそが2004年にPSOEが勝利した場合にサパテロ氏が目指すスペインだという。サパテロ書記長は権力者に対するプロジェクトしかないPPの国家ではなく、より公正でより団結した国家を約束した。
サパテロ氏は、120年のPSOEの歴史を振り返り、「労働者と弱者を守るために結成されたという原点は決して忘れない」と述べ、出席していたUGT(労働者総同盟)のカンディド・メンデス書記長を壇上に上げた。「我々はすべて平等である。障害者、移民とその子供たち、若者、女性、同性愛者、そしてバスク地方の社会主義者たちも」とサパテロ氏が述べると、聴衆は立ち上がって「Libertad(自由)!」の叫び声をあげた。

89%のバスク州住民、自治領化の前にETA壊滅を求める

今月の10日から15日にかけてバスク州政府知事府社会調査室が行ったアンケートの結果によると、バスク州の89%の住民が、フアン・ホセ・イバレチェ知事は、住民にバスク州自治領の賛否を問う前に、ETAのテロを終わらせるべきだと考えていることが明らかになった。
この結果によると、63%の人が自治領化案に興味を示しているほか、この案が経済発展につながるのではと期待している人の数は44%。21%は懸念、20%は無関心、17%は不快感を表明しているという。

史上最大規模の医師採用試験

昨日、国家保健機構内に定職を獲得しようと2万人以上の医師が試験に挑戦した。この国家保健機構の採用試験は今後18ヶ月にわたって看護士から経営管理まで様々な分野にわたって5.5万人の専門家を対象に行われ、これにかかるコストは約230万ユーロ。専門家医対象の国家採用試験が最後に行われたのは1989年。
「旧Insaludで15年間も働いている我々にとってはこれが最後のチャンスだ。」と、非常勤専門医国家協会のスポークスマン、ペドロ・タルキス氏は述べた。「今後は、医療保健の権限が地方政府に移るため、このような規模での採用試験が行われることはないだろう。」とタルキス氏はみている。
厚生省に今回出された志願数は23.8万件以上。この中から7149人の専門医、13755人の衛生士、11089人の非衛生士、5085人の救命士を国家保健機構が採用、残り7.5万人はアンダルシア、ガリシア、バレンシア、ナバラ、カナリアス州が採用することになる。7.66の高倍率となっている今回の採用試験だが、厚生省ではこの原因を複数志願にあると見ている。「今回の採用試験は、非常勤で勤務を続けてきた人々に安定した職を与えるためのものです。」と厚生省は説明している。
心臓専門医、外科医、心臓血管外科医、産科医、婦人科医、眼科医といった専門医の間では出席率が80%以上となっており、志願者の大半、特に長い経験を持つ非常勤医は今回の採用試験により、定職を得ることがほぼ確実だという。今回の採用試験で採用されなかった場合は、次の採用試験が行われるまで非常勤勤務を続けなければならない。

週末のスポーツの結果

マラソン:フランクフルト・マラソンで、スペインのルゴ出身、マリア・アベル選手(28歳)が優勝。2時間26分59秒という記録は、1995年にアナ・イサベル・アロンソ選手が樹立したスペイン記録に8秒届かなかった。
ラグビー:2003年オーストラリアで開催される世界選手権予選敗者復活戦でスペイン代表チームはロシア代表チームに36−3で大勝。この後2勝すれば、世界選手権出場の道が開かれる。


10月25日(金)

サンタンデールの連続殺人犯、刑務所で刺殺される

スペインの歴史に残る連続殺人犯の1人で、サンタンデールの老女連続強姦殺人の犯人、ホセ・アントニオ・ロドリゲス・ベガ容疑者(44歳)が昨日、収監されていたサラマンカのトパス刑務所の中庭で他の服役者2人に刺殺された。ロドリゲス・ベガ容疑者は1987年から1988年にかけて61歳から93歳の老女を強姦、殺害した罪で440年の懲役を受けていた。
昨日、午前11時15分頃、刑務所で危険人物と見なされていた2人の服役者、エンリケ・V・G容疑者(35歳、窃盗と傷害により懲役60年)とダニエル・R・O容疑者(29歳、窃盗により懲役54年)が自分たちで作った串のようなものを手に、中庭でロドリゲス・ベガ容疑者に飛びかかった。トパス刑務所長のホセ・イグナシオ・ベルムデス氏の説明によると、丸腰の看守の1人が2人を止めようとしたが、1人が串のようなもので看守を脅し、その間にもう1人が怒りもあらわに繰り返しロドリゲス・ベガ容疑者を突き刺し、この襲撃者は彼が事切れた後も突き刺し続けていたという。この刑務所にすでに2年間収監されていた2人はのちに「刑務所の掟では強姦者は死ななければならない」と供述している。ロドリゲス・ベガ容疑者はアルメリアの刑務所でも1ヶ月前に他の服役者に殺されかけたため、2日前からこの刑務所に移っていたが、目撃していた看守の話では、3人の間では口論のようなものは一切なかったという。この看守は今回の襲撃が起こった原因として、最近テレビでロドリゲス・ベガ容疑者の犯罪を扱った番組が放送され、襲撃者たちがロドリゲス・ベガ容疑者が強姦殺人の犯人であることを知ったためであると見ている。ベルムデス所長によるとロドリゲス・ベガ容疑者には特に暴力的な態度は見られなかったという。
1988年5月、ロドリゲス・ベガ容疑者は一人暮らしの老女3人の殺害容疑で逮捕され、さらに6人の殺害を自供。その後自宅の真っ赤に塗られた壁の部屋から被害者たちの遺品が見つかったため、最終的に16件の殺人の罪に問われた。大工であったロドリゲス・ベガ容疑者は保険会社の調査員やテレビの修理人を装って被害者の家に入り込んでおり、遺体の大半は、衣類が注意深く整えられた状態でベッドに横たわっているところを発見されていたため、家族は最初は自然死だと思っていた。地元の新聞記者たちが連続殺人の疑いを持ち始めたときも、警察では当初相手にしていなかったが、医師により自然死と診断されていたものの死因の疑わしかった6人の遺体を解剖したところ、絞殺されていたことが判明、最初の犠牲者が出てから10ヵ月後、犯人逮捕となった。ロドリゲス・ベガ容疑者がなかなか逮捕されなかったもう一つの理由は、彼が少しも平静を失った様子を見せなかったことである。彼の弁護士は「冷酷な人物で、少しも罪の意識をもっていない」とロドリゲス・ベガ容疑者について述べている。冷酷であったが、同時に魅惑的でもあった容疑者は20歳の時にも強姦事件で逮捕されているが、刑務所から被害者たちに手紙を送り、一人を除く全員が彼を許すにいたっている。
離婚して1人の息子の父であるロドリゲス・ベガ容疑者は裁判で、老女達を強姦したのは彼自身の“恥知らずな母親”と“悪魔のような姑”によるひどい扱いへの復讐のためであり、「彼女達は罪に相応しい罰を受けた。」と供述。精神鑑定の結果、ロドリゲス・ベガ容疑者は異常性格者ではあるが、精神を病んではいず、したがって犯罪に対する責任を問えると判断されたため、懲役440年が宣告された。

2人の天才、オビエドで対面

アストゥリアス皇太子賞の今日の授与式を前に、昨日、オビエドのフェリペ皇太子公会堂で今年の文学賞受賞者アーサー・ミラー氏(87歳)と芸術賞受賞者ウディ・アレン氏(66歳)が公式記者会見を行った。アレン氏の記者会見が終わり、ミラー氏の記者会見が始まる前に両者は舞台で握手。2人はそれまで対面したことがなかったといい、アレン氏が「ミラー氏のように書きたいものです。」と述べる一方、ミラー氏はアレン氏の映画を”すばらしい”とコメントした。出席した記者たちが質問が矢のように投げかけたこの記者会見では両者ともそれぞれ、映画界、演劇界の金儲け主義を批判した。今日の午後6時から授賞式が開催されるアストゥリアス皇太子賞のその他の受賞者は以下の通り。
社会科学賞:アンソニー・ギデンズ氏(イギリス人社会学者)
コミュニケーションとヒューマニティー賞:ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー氏(ドイツ人作家)
平和賞:エドワード・サイド氏(パレスチナ系アメリカ人作家)とダニエル・バレンボイム氏(ユダヤ系アルゼンチン人音楽家)
スポーツ賞:サッカーブラジル代表チーム
国際協力賞:南極科学調査委員会(32カ国の代表で構成)
科学技術調査賞:ローレンス・ロバーツ、ロバート・カーン、ビントン・サーフ(アメリカ人)、ティム・バーナーズ・リー(イギリス人)各氏。インターネットの父。

ダニエル・バレンボイム氏にスペイン国籍

スペイン政府は昨日、パレスチナ系アメリカ人で作家のエドワード・サイド氏と共に今年度の平和賞を受賞したユダヤ系アルゼンチン人の音楽家ダニエル・バレンボイム氏にスペイン国籍を与えることを発表した。「ファジャやアルベニスの曲を演奏するときはいつも、スペイン人のような気分になったものだが、今回スペイン国籍をもらえるとは、またとない名誉です。」と昨日のコンサートの後、ピアニストで指揮者でもあるベレンボイム氏は述べた。このコンサートには、受賞理由となったウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラ(ベレンボイム氏がサイド氏と共に結成したユダヤ人とパレスチナ人の若者で構成されるオーケストラ)のメンバー2人も参加していた。
9月2日にベレンボイム氏が提出した申請は、プラシド・ドミンゴ氏、テレサ・ベルガンサ氏を始め、多くの財団にも支持され、政府はアストゥリアス皇太子賞の授賞式に間に合うよう、民法第21条の国籍授与の例外的理由を適用することを決定した。ホセ・マリア・ミチャビラ法務大臣は滞在先のブルゴスで、昨日”スペイン音楽を世界に伝播していること、スペインに居住していること、申請が様々な文化関係者の裏書を得ていること”からベレンボイム氏の国籍申請受理したことを発表した。ベレンボイム氏は、180日以内にスペイン憲法の遵守宣誓を行わなければならない。
1942年アルゼンチンで生まれたベレンボイム氏は、シカゴとベルリンで指揮者として仕事を持つが、1年のうちの一部はスペインで居住しており、アルゼンチンとイスラエルの二重国籍を所持している。スペインの法律では3つの国籍を持つことが認められていない上、イスラエルとスペインの間では二重国籍の協定が結ばれていないため、世間が彼をアルゼンチン人でイスラエル人でスペイン人であると認めても、法律上は、ベレンボイム氏はイスラエル国籍を捨てることになる。


10月24日(木)

司法権総合委員会、ETAメンバーの仮釈放についての調査を開始

ビルバオのルス・アロンソ判事が、10月9日にフェリックス・ラモン・ヒル・オストアガ容疑者(45歳)の仮釈放を認めたことから、司法権総合委員会が調査を始めた。刑務制度に反するとして検事もこの決定に控訴している。オストアガ容疑者はETAメンバーで、フランスで4年間服役した後、1994年1月20日スペインに送還された。1978年から1979年にかけて6件の暗殺と2件の暗殺未遂に関与した罪で全国管区裁判所により懲役298年の判決を受け、数ヶ所の刑務所で服役した後、1999年、政府とETAの間で休戦が成立したことから、コルドバの刑務所から他のETA服役者と共にナンクラレス刑務所(アラバ県)に移されていた。
今年の4月、オストアガ容疑者はナンクラレス刑務所仮釈放委員会に仮釈放を求めていたが、これは全員一致で却下、その後オストアガ容疑者はアロンソ判事に控訴していた。スペイン内務省によると、刑務所が判事の要求で提出した報告書では、その年に他のETAメンバーと2回のハンガーストライキにも参加しているオストアガ容疑者は“バスク政治犯”と定義づけられており、仮釈放に対するあらゆる否定的な見解しか報告書には載せられていなかったという。
旧刑法の判決を受けているオストアガ容疑者は労働により服役期間を伸ばすことができ、彼が刑務所での労働により稼いだ9年間が実際の服役期間に加えられた上、アロンソ判事がオストアガ容疑者のフランスでの服役期間も考慮に入れたため、オストアガ容疑者はすでに22年間服役したことになり、懲役期間(30年以上の服役者は30年)の3分の2を服役したとし、判事は仮釈放を認めている。
司法権総合委員会の委員長フランシスコ・ホセ・エルナンド氏は、監査局にこの件に関しての調査を命じたが、刑務判事広報係のフェリックス・パントハ氏はこれを「司法の自由を侵害する早まった決定である。」としている。アロンソ判事は「報告書を見て、仮釈放に肯定的な材料があったからこそ、仮釈放をきめたのであって、私の人生では具体的根拠なく仮釈放を認めたことはありません。」と語っている。
ホセ・マリア・ミチャビラ法務大臣は、昨日中央管区裁判所にテロと大規模麻薬密売にかかわった懲役者の監視にあたる刑務監査の判事を置くことを発表した。

プラド美術館、日祝日の開館時間延長

プラド美術館は現在は午前中だけ開館している日祝日を11月1日から午後も開館することを昨日発表した。これにより、土曜日の午後と日祝日の終日は無料で入館できることになる。この延長によりプラド美術館の開館時間は週60時間となり、これはロンドンのナショナル・ギャラリー、パリのルーブル美術館、アムステルダムの国立美術館を上回る長さ。

国会、予算修正提案を否決却下

昨日、国会ではPSOE(社労党)、IU(統一左翼)、PNV(バスク民族党)と連合政党の支持していた2003年度予算修正提案を否決した。これは与党PP(国民党)が、CiU(カタルニャ連合)、CC(カナリアス連合)の後押しを受け、達成したものであるが、否決に投票したものの、CiUからは政府の経済政策批判が噴出している。
国会の予算審議第二日目、PPは必要な票数を獲得した。PSOE、IU、PNV、連合政党(カタルニャ左翼連合、カタルニャによる主導党、バスク連合、アラゴン連盟)が提案した2003年度予算修正は、PP、CiU、CCの反対票により却下された。昨日の演説は連合政党の番だったが、モントロ大蔵大臣は一部に出席しただけ。マリアノ・ラホイ、ハビエル・アレナス、フェデリコ・トリジョ-フィゲロアの各大臣は投票のためだけに議場にやってきた。この午後2時に行われた投票に際し最も大きかった不在は、ホセ・マリア・アスナル首相で、モンクロアの首相官邸に商工会議所の新しい幹部の訪問を受けていたという。しかし、幹部が新しくなったのは7月。予算審議での投票日は、9月末にはすでに決められていた。

臓器移植数、新記録(マドリッド)

2002年1月から9月の間の9ヶ月間にマドリッドで行われた臓器移植は594件、昨年同時期は460件でこれまでの最多記録は1999年の740件であったことから、新記録が樹立される見込み。ホセ・イグナシオ・エチャニス厚生担当官が昨日発表したデータによると、594件の内訳は、腎臓移植335件、脾臓移植9件、肺移植26件、心臓移植54件、腸移植3件である。また、臓器提供の数も昨年同時期に比べると29%増の154件となっている上、死亡した家族の臓器提供に否定的な人の数も19%から16%に減少している。
この新記録にもかかわらず、マドリッドではいまだに900人の名前が移植待ちリストに載っている。エチャニス氏は、2000年のドナーカード導入からすでにマドリッドで1万人がドナー登録を済ませていることも合わせて報告した。


10月23日(水)

サパテロ書記長、予算会議で政府の予算案を批判

昨日、国会で2003年度予算審議が始まり、クリストバル・モントロ大蔵大臣が政府の2003年度予算案を発表した後、予定されていた経済担当広報官ジョルディ・セビジャ議員ではなく、ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロPSOE(社労党)書記長自らが壇上に立ち、PSOEの予算代替案について発表、また政府の予算案についての批判を始め、出席者を驚かせた。
書記長は政府の予算案を1.住宅の継続的な値上がりへの対応不足、2.治安の悪化を心配する市民への無神経さ−犯罪の増加しているマドリッド警察への投資がゼロ−、3.資金源を確立できていない新しい教育システム導入などの点で“非社会的で時代遅れ”だと評価、これを改良するには“予算を使わないのではなく、効率的に予算を使う”ことが必要だとPSOEの予算代替案を擁護した。サパテロ書記長が発表したPSOEの予算代替案の中で注目すべきは、電話代、電気代の凍結、住宅の値を下げるための土地法の改正、治安問題対策予算の組みなおしなどであるが、モントロ大蔵大臣の試算ではこの案を実行するにはさらに458億ユーロが必要で、スペインの国家負債が1995年のレベルに逆戻りし、スペインはユーロ加盟から除名されてしまうという。これに対しサパテロ書記長は国の負債をゼロにすることに反対しているのではないが、国民の生活保障という基本が確立されない予算では意味がないと反論した。サパテロ書記長が発表したPSOEの予算案優先10項目は次の通り:
1.調査と発展−スペインの経済主要問題は生産性が低いこと。スペインはヨーロッパ諸国の中でも特に科学技術部門では最後尾グループに属している。社労党はUE平均レベルに6年で到達するよう企業、公共機関、労組が協力することを提案している。
2.インフレ−サパテロ書記長は、政府がインフレに対しなんらの政策も取っておらず、税金の値上げにより今年の物価上昇を招いたと非難。書記長によるとインフレは低所得者に最もダメージを与える不公平な税金で、今年度は税金の引き上げを行わないよう提案している。
3.住宅−強制収用法、都市賃貸借法の改正を行い、賃貸の推進、生活保護者向け住宅提供の増加を提案。サパテロ書記長は、政府が住宅の値上がりを助長させ、値上がり(PPが政権に就いてから60%)に歯止めをかける対策をとらなかったことを非難した。
4.安定した雇用−大きな問題である不安定な雇用を解決するためとして、サパテロ書記長はまず関係機関の汚職をなくすために労働法を改正、国立職業安定所の改編、地方雇用プラン受給者の権利復活を提案している。
5.企業−最近の財界スキャンダルから、サパテロ書記長は企業の責任を規定する必要があると考えている。
6.社会政策−政府の発表した予算案は“非社会的”であると定義したサパテロ書記長は、教育の充実に焦点を当て、新しい教育の質向上法を求め、さらに奨学金減額を無効にするよう提案。
7.治安−書記長は現閣僚全員に、PPが政権を握って以来増加する犯罪に、不足した人員で対処しなければならない状況を理解するため、警察署、治安警備隊駐屯所を訪れるよう提案。治安維持への予算供出額を練り直すよう求めている。
8.身体障害者−彼らに対するさらなる援助を要求。
9.政府−科学技術省と文部省を一つにする、経済省と大蔵省を合併させる、行政省と首相府を合併させることを提案。地方自治政府へ自治権をさらに移譲することから、中央政府の高官の数を減らすよう求め、国会内に予算事務所と公共政策評価事務所を設置することを提案。
10.汚職−エンリケ・ヒメネス・レイナ元大蔵省事務次官や現職のエスタニスラオ・ロドリゲス・ポンガ氏のように元税理士が税務局長に就くことを不可能にすることにより、へスカルテラ事件のような汚職を防ぐことを提案。

欧州委員会、イバレチェ知事の自治領化案却下

昨日、欧州委員会はバスク州をスペインの自治領にするというイバレチェ知事の提案に対して「欧州連合条約に調印している国家のみが欧州委員会に提案をできるものであり、バスク州政府の提案は欧州連合条約で法的に認められているものではなく、この規定を変える必要も今のところはない」としてきっぱりと拒絶を示した。
欧州委員会がこのような回答をするに至ったのは、ロサ・ディエス社労党欧州議員の口頭質問が発端であった。彼女は委員会に、バスク州がスペインの自治領になる可能性は欧州連合条約で庇護されているのかと質問。ディエス議員は、イバレチェ知事が9月27日に発表したこの提案は、スペイン、フランスおよびその国民、ひいては欧州連合その他の加盟国の安定にもかかわる重大なものであると説明、条約第一条にある“ヨーロッパ諸国の間でさらに緊密な一つの連合を創る”という条項に反すると述べた。
これに対する委員会の返答はわずか2行。「いいえ。欧州連合条約はいかなる場合もイバレチェ氏の提案を受け入れる合法的根拠を持つことはないでしょう。」というものであった。ジョナサン・フォール欧州委員会広報官は「条約に調印しているのは国家で、国家だけが条約の適応対象となれる。それを変更する必要性は今のところないと考える」と述べ、ロヨラ・デ・パラシオ欧州委員会副委員長も「回答は充分はっきりしたものだと思います。」と述べ、満足の表情を隠さなかった。回答にあたって委員会では満場一致で、議論の必要もなかったという。
ディエス議員は「イバレチェ知事は、この欧州委員会の回答で民主主義の現実に目を向けるべきです。彼の提案はヨーロッパ民主主義にそぐわないものです。なぜなら、バスク州の住民をヨーロッパから分離、隔離、追放するものだからです。」と述べ、この回答はバスク州議会でPP(国民党)とPSOE(社労党)議員が展開した議論の正しさを裏書する重要なものであると締めくくった。

フアン・ホセ・ルカス氏、上院議長に就任

昨日行われた投票で、エスペランサ・アギレ前議長の後任にフアン・ホセ・ルカス氏が選ばれた。結果は、PP(国民党)、CiU(カタルニャ連合)、CC(カナリアス連合)の155票で決まったが、PSOE(社労党)とEntesa(カタルニャ進歩連盟)の白紙投票75票とPNV(バスク民族党)とその他連合の9票の無効票があった。
PSOEの広報官フアン・ホセ・ラボラダ氏はPSOEが白紙票を投じた理由について「我々は、アスナル首相がキンタニジャ・デ・オネシモ(アスナル首相の出身地バジャドリッド)で8月に行ったPPのミーティングですでに後継者がルカス氏に決まっていたことに気がついた。白紙票はこれに抗議するためのものである。」と“連合政権の悪用”にきっぱりと抗議した。またラボラダ氏は、フアン・イグナシオ・バレロ前議長は、エクストレマドゥラでの選挙に出るため1999年辞任、そしてアギレ議長もマドリッド知事選出馬のため辞任と、PPが政権に就いてからの上院議長で任期を全うした者がいないことを指摘。PPはこの地位を選挙運動に利用していると非難している。
PPの広報官エステバン・ゴンサレス・ポンス氏は「PSOEは(PP、PSOE)両党間での合意を得票稼ぎのために破った」と白紙投票を非難、PPからはルカス氏就任を後押しするためハビエル・アレナス行政大臣、エドゥアルド・サプラナ労働大臣、アナ・パストール厚生大臣、ミゲル・アリアス農業大臣が出席していた。


10月22日(火)

PSOE、国有会社民営化に関して5大臣の出頭要請

PSOE(社労党)はPP(国民党)が行った国有会社の民営化プロセス調査を広範囲にわたって進めたい意向。ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ書記長は主要元国有会社の大半が現在PPまたはアスナル首相の“友人”の手にあるのは、当時の売却経緯に原因があると見ている。
昨日PSOEは、国会に、テレフォニカ、タバカレラ、イベリア、インドラ、レプソル、アルヘンタリア、エンデサの売却経緯の説明のため、ロドリゴ・ラト経済大臣、クリストバル・モントロ大蔵大臣、フランシスコ・アルバレス−カスコス勧業大臣、ジョセップ・ピケ科学技術大臣、フェデリコ・トリジョ防衛大臣の5閣僚の出頭を要請した。PSOEは先週には、民営化された会社の9人の現・旧社長の出頭も要請しているが、この要請はPPに拒絶されている。
「スペイン国民は、なぜ国有会社が民営化されるにあたって首相やPPの友人の手に渡るに至ったのかを知る権利がある。」とサパテロ書記長はスペイン国営ラジオ放送で述べた。「民主主義においては、不透明なものはすべて悪である。我々は民営化プロセスを解明するためにはありとあらゆる民主主義的手段を用い、もしPSOEが次の選挙で再び政権に就けば、全ては明るみに出るであろう。」と書記長は主張、国会に国有会社民営化プロセスの解明のための、5大臣の出頭要請書を提出した。
マリアノ・ラホイ第一副首相はPSOEが民営会社の現・旧社長の国会出頭を要請したことを知って、「スペイン株式市場に上場している会社の社長が常に国会に足止めを食うのはいかがなものか。」というコメントをした。これを聞いたサパテロ書記長は「ラホイ副首相の発言は聞き流せない発言だ。これらの会社とその株価に影響を与えるような情報があるということなのか?」と反問している。
国会執行部では、社長に加えて大臣の出頭要請も認めるかどうかを決定しなければならない。ラト経済大臣はエンデサ(電力会社)の民営化による“効果”、電力部門における競争力について、また民営化による取締役会の改編、中南米への投資、政府による“金の株”の使用について明らかにすることを求められている上、同様の内容で、アルヘンタリア(銀行)、レプソル(燃料会社)、テレフォニカ(電話会社)についても説明が要求されている。アルバレス−カスコス勧業大臣には、イベリアとテレフォニカの民営化にかかる売却について説明が求められており、フェデリコ・トリジョ防衛大臣はインドラ(電力会社)の民営化についての情報を開示しなければならないだろう。クリストバル・モントロ大蔵大臣はタバカレラ(タバコ会社)、ジョセップ・ピケ科学技術大臣はテレフォニカの民営化についての説明をしなければならない。
テレフォニカの民営化に関しては3大臣の出頭が要請されており、PSOEの広報官アントニオ・クエバス氏は「すべてはテレフォニカに終わる」と皮肉にコメントしている。
5大臣の出頭は重要だがそれと同等に現・旧社長の出頭も重要。PSOEはテレフォニカ前社長フアン・ビジャロンガ氏、エンデサ前社長マルティン・ビジャ氏、イベリア社長シャビエル・デ・イララ氏、エンデサ社長マヌエル・ピサロ氏、アルヘンタリア前社長フランシスコ・ゴンサレス氏、インドラ社長ハビエル・モンソン氏、レプソル社長アルフォンソ・コルティナ社長、タバカレラ前社長で現在テレフォニカ社長のセサル・アリエルタ氏そしてアルタディス(タバカレラ社とセイタ社の合併会社)社長パブロ・イスラ氏の国会出頭を先週すでに要請している。

EU拡大に賛成なのは10人に5人だけ

アイルランドが国民投票でEU拡大にGOサインを出してからわずか24時間。春に行われた公式アンケートの結果が出、拡大へのEU住民の支持がかなり低いことが判明した。支持の低いのは特にイギリス(35%)、フランス(40%)、ドイツ(43%)というEUで最も力のある三国。スペインは賛成派の多い国の一つで、デンマーク(68%)とギリシャ(67%)についで64%が支持という数字が出ている。
この支持率のあまりの低さに昨日、欧州委員会はEU諸国、特に反対の多い国に対するEU拡大に関する情報伝播の新たなキャンペーン展開を決定。これは、3月29日から5月1日にかけて1.6万人を対象に行われたこのアンケートで情報量が充分であると答えた人が10人に2人しかいなかったためでもある。
反対派(47%)の数が賛成派(40%)を上回る唯一の国であるフランスでは、EU拡大による懸念は77%が失業率の増加、麻薬売買と犯罪の増加が75%、経済危機66%となっている。
EU拡大に伴う懸念は住民がアンケートで示した内容に限らない。現在最も論争の的となっているのは拡大に伴う費用分配に関してだが、この話し合いを今年の末までに終わらせるための、現加盟15ヶ国間でのいくつかの基本的条項の話し合いに用意されているのはわずか2週間。
この費用分配の主要問題は、2001年には280億ユーロだった農業従事者への直接援助金を2004年から加盟する国にどれだけ支給するかということである。ドイツは出資の増額を拒否、共通農業政策(PAC)で最も恩恵を受けているフランス(2001年には280億ユーロのうち93.5億ユーロを受給)は援助金の将来を危ぶんでいる。今日、ルクセンブルグでは各国外相が会合を開くが、木曜日と金曜日に予定されているブリュッセルでのサミットまでになんらかの進展が見られる可能性は極めて少ない。カギとなるのはサミットの数時間前に予定されているドイツのゲルハルト・シュレーダー首相とフランスのジャック・シラク大統領の会談でなんらかの解決策が模索される。シュレーダー首相はシラク大統領に2006年から農業援助金の受給額を下げることを了承するように求める意向で、そうなると昨年67.9億ユーロを受給しているスペインにも影響が出ることは必至。
このアンケートでは他にも様々なデータが出ているが、例えばEU諸国住民に最も恐怖を与えているのはテロ(78%。スペインでは87%)、続いて組織犯罪(71%)、核施設での事故(64%)。スペインでは平均をはるかに上回る高い確率(69%)で人々はEU内での民族紛争を危惧している。EU諸国住民が信用している組織は、軍隊(66%)、警察(65%)、慈善団体(58%)で、78%は政党、51%は政府が信用できないと答えている。
スペインではヨーロッパ平均より10ポイント低い、28%が自分はヨーロッパ人ではなくスペイン人であると意識、48%がヨーロッパ人というよりスペイン人、7%がスペイン人というよりヨーロッパ人、わずか4%がスペイン人ではなくヨーロッパ人であると意識していると答えている。

ギプスコア県の企業家、内部対立を回避

PNV(バスク民族党)の圧力は、ギプスコア県の企業家たちの態度を変えさせることに失敗した。内部対立の危機にあったギプスコア県の企業家組合アデギは、昨日会合を開き、イバレチェ知事のバスク州自治領化案に反対するというConfebaskの声明文全文を承認することを決定した。
アデギ幹部の話によると、執行部はまず最初に2時間の会合を開き、その後さらに2時間にわたって全体会議が開かれたという。どちらの会議でも意見の対立は見られたものの、会議の雰囲気は緊迫したものではなく、一時は2種類の書類を作成、提出する可能性についての提案も行われたものの、最終的には全会一致で「執行部と会長の決定を尊重、支持する」という内容の声明を作成、今週中に公にすることを決めた。この声明文では数人の出席者の要望どおりConfebaskという言葉は省かれ、イバレチェ知事の提案に反対する企業家の声明発表という内容になっている。ギプスコア県の企業家がクノール会長支持を示したことから、今度はビスカヤ県の建設業企業家の反応に注目が集まっている。
一方、ナバラ経営者協会(CEN)のホセ・マヌエル・アジェサ会長は昨日、ナバラ県がバスク州とは異なった状況にあることをヨーロッパ諸国に知らせるキャンペーンを行うのにちょうどいい時期であるとコメント。イバレチェ知事の自治領化提案に伴う否定的材料をあらかじめ回避する対策を取る方針。また、会長はイバレチェ知事のこの提案により、現在バスク州にある企業が地理的に近いナバラ県に移転する可能性もあるため、知事の提案はナバラ県に恩恵をもたらすこともありうるとも述べた。


10月21日(月)

サン・セバスティアンで10万人参加の民族主義反対デモ

“強制的民族主義”に反対するためサン・セバスティアンで土曜日に約10万人(地方警察発表)がデモに参加した。参加者10万人(主催者側の発表では12.5万人)という大規模なデモの行列は、約2キロにわたり、彼らはデモ参加の恐怖を克服し、自由を勝ち取るためにサン・セバスティアンの中心地を行進した。デモの雰囲気は緊迫したものではなく、どちらかといえば祭りのような楽しい和やかな雰囲気の中で行われ、このデモに備え、行進予定地域ではあらかじめすべてのゴミコンテナにテープがはられ、前夜から道路に駐車することが一切禁止されていたが、1件の事件も発生することはなかった。
彼らは“憲法と法律の尊重、強制的民族主義に反対”というモットーを掲げ行進、デモ隊の先頭にはテロの犠牲者の家族、ETAの標的となっているバスク大学の教授たち、元UGT(労働者総同盟)書記長、元CCOO(労働者委員会)書記長、造形芸術家アグスティン・イバロラ氏、マルタ・カルデナス氏らの姿が見られた。
テロの犠牲者とETAの標的となっている人たちを立てるため、政治家たちは第2グループの先頭を歩いた。中央政府から出席したのはアナ・パラシオ外務大臣、ホセ・マリア・ミチャビラ法務大臣、アンヘル・アセベス内務大臣で、 元スペイン内務大臣で現在はバスク州PP(国民党)代表のハイメ・マヨール・オレハ氏とバスク州PPの幹部全員、PSE(バスク社会党)のパチ・ロペス氏やトリニダ・ヒメネス氏、フアン・フェルナンド・ロペス氏等のPSOE(社労党)からの出席も見られた。さらに、スペイン各地からテロの犠牲者の家族、議員も参加、彼らへの支援を望むバスク地方の人々と歩を共にした。
この行進で特筆すべきは、デモの陽気な雰囲気で、彼らは手拍子を打ちながら「自由」「我々はバスク人で、ここに残る」「我々を立ち退かせることはできない」「バスク市民はガルソン判事と共に」「ETA、人殺し」などと繰り返し叫びながらデモ行進は行われ、バスクの旗とスペインの国旗の両方が掲げられた。
「このデモ行進でバスク地方にいるのが民族主義者ではないことをわかってほしい。バスク地方の現状は複雑で、二面性を持っているが、この二面性こそがバスクの現状なのです。」と参加した作家のフェルナンド・サバテル氏は述べた。デモ行進の最後には声明文がスペイン語、バスク語、フランス語で読み上げられた。
一方、昨日ビルバオでは対スペイン・バスクファランヘ党の集会が行われ、バスク警察による逮捕者が4名出ている。逮捕された4人は20歳から34歳のビスカヤ県出身者で、200人が出席したこの集会に反対し、彼らの車に投石するなどの行為から警察に逮捕されたもので、このうち1人の逮捕にあたっては、警官が空砲を発砲している。

PNV、バスク企業家に圧力

PNV(バスク民族党)がバスク州の企業家に対し、フアン・ホセ・イバレチェ知事のバスク自治領化案への拒絶を改めるようにと圧力をかけ始めたことが、企業家内に対立をもたらしている。ギプスコア県の企業家組合であるAdegiは今日会議を開く予定だが、民族主義グループが10月9日の声明文(Confebaskのロマン・クノール会長がイバレチェ知事との会談で読み上げたもの)から離脱するよう主張していることから会議が緊迫したものになることは必至。この声明文はバスク州内のすべての組合の合意を得たものではあるが、すでにビスカヤ県の建設業企業家の一部は声明文の部分修正を押し進めようとしている。
9月27日にイバレチェ知事が自治領化案を公にしてから、バスク州の企業家たちは意見を表明することなく沈黙を守っていた。その裏では各組織内でマラソン会議が行われており、その結果が10月9日のイバレチェ氏との会談で発表された声明文であった。ビスカヤのCebek、ギプスコアのAdegi、アラバのSEAの各県企業家組合がそれぞれ異なった提案を主張したことから、全組合で合意に達するのは至難の業であったとConfebaskの関係者は話している。最も自治領案に反対していたのはSEAで、何時間にもわたる話し合いの末、1.3万社以上が加盟するConfebaskは8日火曜日に知事の提案を受け入れない内容の声明文を作り上げた。しかし、PNVはクノール会長があまりにも急いで作り上げたこの声明文に関しては、企業家内で反対もあることを見抜き、アルサジュス党首は先週の月曜日、バスク地方の公共ラジオ放送でクノール会長を個人的に攻撃、会長としての手腕に疑問を投げかけた。食料品会社を経営するクノール氏は最近、ETAの脅しにより常に会長候補者不足にあえいでいるConfebaskの会長2期目に入ったところで、PNVからの圧力により、Confebaskと3つの企業家組合の間に亀裂が入りうることが現在、バスク州企業家の間で懸念されている。アルサジュス党首はPNVが組合の内部分裂を仕掛けているとは悪意に満ちた発言であるとコメントしているが、企業家組合の関係者たちはそれこそがPNVの画策していることだと確信している。

30個のゴミ箱焼かれる(サラゴサ)

土曜日の深夜に焼く約30個のゴミコンテナがサラゴサで焼かれる事件があった。これは、バルの閉店時間午前3時過ぎにサラゴサ市内で若者達が閉店に抗議して火をつけたもので、5人が逮捕、拘留され、さらに4人が裁判を待って自宅待機の身となった。
この事件は、サラゴサ旧市街のバルの集まる地域で起こったもので、参加した25〜30歳の若者のグループが、ゴミコンテナに火をつけ、ショーウィンドーのガラスを割り、シャッターを壊すなどした。
バルの閉店時間が午前3時に定められたことに対し、各バルは、抗議のためピラール祭の週末にバルを閉めると脅しをかけていたが、結局バルは閉められなかった。その後起こったのが今回の事件で、警察関係者の話では、騒ぎをさらに大きくするため客に爆竹を配ったバルもあったという。しかし、サラゴサのバル協会はこの事件との関与を否定している。

週末のスポーツの結果

バイク:オーストラリアGP、125CCクラスでは、パブロ・ニエト選手が3位。ダニエル・ペドロサ選手は5位入賞に終わったため、総合優勝は不可能となった。また、250CCクラスでもフォンシ・ニエト選手はイタリアのマルコ・メランドリ選手と0.007秒差で優勝することができず、1位のメランドリ選手が史上最年少で総合優勝を果たした。
テニス:マドリッドへの2012年オリンピック召致運動の一環として行われたマドリッド・マスターズ、優勝したのは、アメリカのアンドレ・アガシ選手。練習中に対戦相手のチェコのジリ・ノバク選手が負傷したため、不戦勝での優勝となった。
自転車:第39回モンジュイック登攀で、スペインのヨセバ・ベロキ選手が優勝。
ゴルフ:マッチプレイ世界選手権で、スペインのセルヒオ・ガルシア選手が南アフリカのアーニー・エルス選手に1−2で敗れ、優勝を逃した。


10月18日(金)

テンプレ作戦の逮捕者に判決

1997年から99年の間に52トンのコカインをスペインに密輸した組織に係わっていたとし、テンプレ作戦で逮捕された36人への判決が昨日出され、34人は8年から34年の有罪、2人は関与を示す証拠が不十分であるとして釈放という結果となった。昨日は、被告、家族、弁護士立会いのもと、判決文が読み上げられ、最も重い刑を受けたのは、スペイン側のボス、アルフォンソ・レオン被告で、判決では「人間の健康に大きなダメ−ジを与える物質を大量に供給した首謀者ではあるが、“後悔している”として警察に協力、新たな証拠を渡すことはなかったものの、逮捕後10ヶ月で、コロンビアカルテルのボゴタと地中海岸の責任者数名の名前を提供していることから情状酌量の余地はある。」として、検察側は60年の懲役を要求していたにもかかわらず、懲役34年10ヶ月、罰金4.16億ユーロの刑が宣告された。最も懲役の短かったのは、麻薬を運んでいた船トムサーレの乗組員であったロシア人2人で、それぞれ8年と13年の刑と罰金。今回の392ページわたる判決文の中では、この組織が行った密輸作戦の一つ一つが詳述され、コロンビア人とスペイン人メンバーの一人一人についても詳細に書かれている。被告の弁護士達はすでに上告の用意を進めているという。
テンプレ作戦の逮捕者への裁判は今年の1月14日に始められていたが、首謀者の1人であるカルロス・ルイス・サンタマリア“エル・ネグロ”容疑者が、口頭審問開始の直前、保釈中に逃亡、彼に課した保釈金が低かったとして、司法総合委員会がカルロス・セソン、フアン・ホセ・ロペス・オルテガ、カルロス・オジェロの3判事を交代、裁判が6月に一時中断される直前には17歳のホセ・マヌエル・ロドリゲス・サンイシドロ・“エル・ルビオ”容疑者も姿を消している。
これまでの調べによると、彼らは1997年半ば頃にらコロンビアのボゴタからスペインのガリシアへのコカインの密輸を始め、そののち密輸量は、15日ごとに1100キロにまで増大、ガリシアからマドリッドに運ばれたコカインは様々な建物に隠され、これが1999年5月まで続き、スペインに持ち込まれたコカインはここからイギリスへ運ばれ、ヨーロッパ諸国へ供給されていたという。

ETAの隠れ蓑会社で2名逮捕

昨日、フランス警察はエンダヤにあるオラベ社を捜索した。この会社は、ETAメンバーを従業員として雇うETAの隠れ蓑会社と見られており、7人が逮捕されたが5人はのち釈放された。
8月1日のマルコス・サガルサス容疑者逮捕から続けられていた捜索の糸は、オラベ社にたどりついた。この会社はフランスのエンダヤで“スペインの主要メーカー”の製品とペルーの製品をフランスに卸売りする会社で、アスパラガス、野菜、油、オリーブ、豆類、魚の缶詰等を供給していた。
通常のETA関連の捜査には、フランス国家警察の対テロ犯罪部があたるが、今回はスペイン警察がオラベ社をETAの経済、財政的隠れ蓑である疑いを持ったため、捜査にはフランス司法警察の金融犯罪部があたった。オラベ社は1992年3月に25万ユーロの資本金で設立されている。一見、売上が増加、銀行からの借り入れも順調に減少している健全な経営の会社に見えるが、輸出に関してのデータに、怪しい点がいくつか見られている。警察はオラベ社の他にも6ヶ所を捜査、膨大な量の会計書類とコンピューターが押収され、これからその調査が始められる。捜査官たちは、オラベ社がETAが不法に得た収入(特に革命税と呼ばれる、恐喝による収入)のマネーロンダリングを行い、中南米に潜伏しているETAメンバーに給与の支払いを行っていたのではないかと見ている。

バスク州政府、バタスナ党へのガルソン判事の判決に起訴状

バスク州政府は、9月17日に予告していたガルソン判事に対する職権濫用の疑いでの起訴状を昨日、最高裁判所に提出した。PNV(バスク民族党)、EA(バスク連盟)、IU(統一左翼)で構成され、フアン・ホセ・イバレチェ氏(PNV)が知事を務めるバスク州政府は、ガルソン判事がバタスナ党の活動停止命令を出し、バタスナ党の名前が出るいかなるデモの開催も禁止したことにより、デモ、集会の自由などの個人の基本的権利を奪っていると見なしている。一方、憲法裁判所はバスク州政府が提出していた、政党法は違憲であるという訴えを裁判にかけることを昨日決定している。


10月17日(木)

ガルソン判事、バタスナ党とETAの民族浄化を確信

昨日、全国管区裁判所のバルタサル・ガルソン判事は、バタスナ党とETAがバスク地方で“民族浄化”を行っていることを示すための協力を求めた。法務省、内務省、大蔵省、厚生省、労働省、文部省、企業家組合、労働組合、マスコミ、議会、地方政府、大学と必要とあればそれ以外の機関に多岐にわたって協力を求める判事はこれまでの中で最も大規模なうちの調査を開始した。
8月26日にアルナルド・オテギ氏が代表を務めるバタスナ党に対し3年間にわたる活動禁止命令を出した判事は、「バタスナ党員たちは、ETAに従って脅迫、強制、傷害、誹謗、侮辱、中傷などの手段により、自分達と異なったイデオロギーをもつ人々をバスク地方から追い立てている。」としており、これらの行為は刑法違反また、ローマ法令に定められた人間性に対する犯罪でもあると判事は考えている。ガルソン判事は現在バスク地方で行われている急進民族主義者の行いを、シシリアのマフィア、ドイツのナチスに匹敵するものととらえており、国家警察、治安警備隊に、民族浄化の証拠を集めた報告書を作成するよう命じた。
判事はバスク地方では政治家、国家警察官だけでなく、バスク州警察官、非民族主義政党議員、企業家、記者、作家、文化人、大学教授、弁護士、判事、検事さえもバスク地方以外に住むことを強いられているとし、ETA−バタスナ党の脅威によって、バスク地方では表現、情報、意見、政治参加の自由が奪われていると強調した。ガルソン判事の見解では、バタスナ党の最終目的は、非民族主義者がバスク地方を後にし、選挙人名簿からその名前が消えることにより、バスク地方で行われる住民投票の結果を有利にしようというもので、判事はバスク地方とスペインその他の地方の関係当局にバスク地方を去ったバスク出身者の数を報告するよう要請している。また、バスク地方を出た警察関係者、ボディガードつきで暮らしているまたはバスク地方を出た公職者の数も調査される。調査対象は選挙人名簿の移動に関与しているこの2年間の動きであるという。

PSOE、住宅の値上がり対策を政府に要求

火曜日に「スペインの好景気が住宅の値上がりを招いている。“たくさんのスペイン人”が現在は住宅を購入する余裕を持っている」と発言した勧業省のフランシスコ・アルバレス・カスコス大臣は、昨日さらに「スペイン人が今、株に投資するより不動産に投資したがっているため、住宅の値が上がっている」と発言、ロドリゴ・ラト経済大臣も、低い利息が住宅への投資を後押ししているとし、値上がりの責任を地方自治体の土地開発不足に押し付け、これが波紋を呼んでいる。
PSOE(社労党)のホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ書記長は、1998年から2002年の間に住宅が63.3%値上がりしたのに対し、スペイン人の収入は9.1%しか増えていないと指摘。政府は、2003年から2005年の間に直接援助と減税措置を含めて90.15億ユーロを住宅取得のための公的援助予算として組む考えだが、PSOEはこの政府の住宅プランに変わるものではなくあくまでもそれに付随するものであることを強調した上で、この援助額を90.15億ユーロから30億ユーロ増の12億ユーロにする提案をしている。住宅政策への予算はヨーロッパ平均、国内総生産(GDP)の2%であるが、スペインはGDPの0.5%とEU諸国の中でも最も住宅政策への予算が少ない国の一つであり、PSOEはこの数字を平均に近づけるよう政府に求め、さらに住宅取得にかかるIVA(付加価値税)を低所得者用住宅と最初の住宅に対してるは1〜2%と大幅に下げることを提案している。

国防省、マドリッドの軍事パレード用に戦車を借りる

10月12日の軍事パレードでマドリッドの中心地を行進し、パレードの花形となった戦車レオパルド2Eは、スペイン軍のものではなく、ドイツのクラウス・マフェイ社が15日間の期限でスペイン国防省に貸していたものである。この戦車は月曜日にサンタンデールに運ばれ、そこから船でドイツに返却される。国防省は、ギリシャのアテネで10月2日から5日まで開催されていた武器見本市で展示されていたこの戦車を、チャーターした飛行機アントノフで10月7日にマドリッドにあるトレホン基地まで運んだ。この戦車とパレードに参加したコルドバ部隊の乗組員の予行演習には4日しかなかったという。
国防省の発表によるとこのレンタルにかかった費用は11.2万ユーロ(1860万ペセタ)で、スペイン軍が実際にこのモデルの戦車を手に入れるのは2003年の9月だという。その後何ヶ月にもわたって詳細なチェックが行われ、実際の訓練にこの戦車が使われるのは2004年になる予定。
装甲が特殊陶器に変わり、55ミリ口径の大砲も1.3メートル長くなったため、重さは旧モデルより7.2トン増であるが、昨日この戦車はマドリッドのエル・ゴロソ基地で1995年からスペインがレンタルで所持しているレオパルドA4と同等の敏捷さを持ち合わせていることを披露した。

国王、Talgo350の試運転に出席

昨日、スペイン国王フアン・カルロス一世はサラゴサ−ジェイダ間行われたマドリッドとバルセロナを結ぶ予定の高速列車Talgo350の公式試運転に出席し、列車は62KMを13分で走破、時速350キロを記録した。3614万ユーロを投じたこの事業に関して、試運転の後国王は「最も素晴らしいのは、Talgo350がスペインの技術を用いてスペインで作られたことで、これをみんなで大いに利用しようではないか。」とコメントした。


10月16日(水)

会計監査院、大規模な横領を発見

会計監査院は、1996年から1998年にかけて継続職業能力開発基金(Forcem)が、労働者の職業能力開発の名のもとに大規模な公的資金の横領(年間6億ユーロ)を行っていたことを発見した。経営者と労組が運営しているForcemはその資金を主にInem(職業安定所)とEUのヨーロッパ社会基金から受けているが、96年から98年にかけて開かれた講座の多くが偽の領収書を使って支出を水増しし、実際には存在しない生徒、講座にも補助金が支給されていた。また、企業側は従業員の数を水増し、さらなる援助を受けるため、彼らの経済状況、学歴を偽り、他の補助金の受給を隠蔽するなどの不正行為を行っていた。
会計監査院は、96年から97年にかけて職業能力開発のための587講座に登録されていた生徒271,204人のうち、59,552人が社会保険庁に登録されていない、つまり存在しないことを見抜いている。合計では、受講者の22%が実際には存在していなかった。今回発見されたこの大規模な公金横領では、鉱業会社の職員がサッカーコーチの講座に、造船会社の職員がファゴットの専門家養成講座にと、実際の職業と関係のない講座に趣味として従業員が参加しているケースもあった。
会計監査院が捜査を進めるのは、INEMが出している資金についてだけであるが、この横領はマドリッド、バレアレス、カナリアス、アンダルシア、パイス・バスコ、バレンシア、ガリシアと多くの自治州で行われていたことがわかっている。
また、国立スペイン盲人協会(ONCE)は、開催した講座がすでにONCE基金から援助を受けていることをForcemに報告せず、二重に補助金を受けていたことから、会計監査院は社会保険庁にONCEに対する制裁措置をとるよう要請した。Forcemは受講者が受講資格を満たしているかの審査を正確に行っていなかったといい、会計監査院は、こうしたすべての不正はForcemのずさんな補助金支給体制にあると見ている。
不正の数はあまりに多く、さしあたって会計監査院は企業側(150万ユーロ以上)と労組に210万ユーロの返却を求め、さらに現行システムの改編を要求している。また、会計監査院は政府に対しても、スペイン全土で継続職業能力開発に投じられている公的資金の金額を正確に把握できる登録システムを構築することを要求した。

マドリッド市の不正再び発覚

PP(国民党)が政権を握るマドリッド市役所は失業者向け職業訓練講座での不正がみつかってヨーロッパ社会基金から受給した資金のうち約550ユーロの返還を求められている。これは、PSOE(社労党)が受講資格の審査がずさんであると指摘したことから調査が進められ、発覚したもので、これによりマリア・アントニア・スアレス(PP)・マドリッド労働担当議員は、昨日、マドリッド職業訓練協会(Imefe)代表を辞職した。
事の発端は20ヶ月前にさかのぼる。PSOEとIU(統一左翼)が、開かれなかった職業訓練講座に対し修了証が発行されているのを発見したことから、調査委員会の設置を市役所に提案。しかし、調査は5億ペセタの補助金が不正支給されたという野党の抗議をPPが受け入れることなくわずか2ヶ月で打ち切られた。そして、今、ヨーロッパ社会基金は受講資格と設置講座の審査がずさんであったとし、さらにEUが決めている方法にのっとって講座運営をしていなかった件でもImefeを糾弾しており、5月にすでに通告を受けていた180万ユーロにさらに350万ユーロを加えた金額の返還を求めている。この約550万ユーロという金額は受給していた基金の20%にあたるという。。
マドリッド市では、先月にも2人の議員が辞職している。辞職したのはシモン・ビニャレス・衛生担当議員とアントニオ・モレノ・資産委員で、葬儀会社の民営化をめぐる不正疑惑により、マドリッド高等裁判所が彼らに対し口頭審問を行うことを決めたため、辞表を提出した。野党勢力はこれら3議員の辞職についていずれも“遅すぎる上、責任のとり方が十分ではない”と非難している。

トラック運転手、労災事故の増加に抗議し国境封鎖

昨日新たに3人の死者が出たことから、トラック運転手たちは抗議のため、ラ・ジョンケラ(ジロナ)、イルン(ギプスコア)、トゥイ(ポンテベドラ)、アヤモンテ(ウエルバ)、フエンテス・デ・オニョロ(サラマンカ)の道路を封鎖した。“疲労が死を招く”というスローガンのもと行われたこの道路封鎖により、特にフランス側で大規模な渋滞が起きた。トラック運転手たちは、労災事故増加の原因は、超過勤務にあるとし、現在の週60時間の過密労働を48時間に減らすよう求めている。CCOO(労働者委員会)とUGT(労働者総同盟)のデータによると2000年に労災事故で亡くなったトラック運転手はヨーロッパで3000人、そのうち611人がスペインで亡くなっているという。
ラ・ジョンケラでは、この道路封鎖により7号高速で大規模な渋滞が起きた。この渋滞は特に正午前のフランス側でひどく、午前8時半から午後1時ごろまで続いたこの断続的な道路封鎖により、警察は交通の一部を国道2号線に誘導し、ここでも一部渋滞が起きた。
イルン、トゥイ、アヤモンテ、フエンテス・デ・オニョロでも道路封鎖による渋滞が起き、ビルバオ−べオビア間(8号高速)では、トラックの渋滞が8キロに及んだ。この渋滞による一般運転手からの抗議は特に見られず、大半は忍耐強くトラック運転手達の抗議を見守っていた。
UGTのフアンホ・ペレス氏は、政府の発表しているトラック運転者の労災事故者数は、小型トラックと自治州のトラック運転手の数を含んでいない粉飾データであると抗議している。労組側によると最も過酷な労働を強いられているのは自治州のトラック運転手であるといい、彼らは過密スケジュールを強いられている上、積荷を下ろすのにかかる時間は休憩時間から引かれるという。フランスの労組も参加した今回の道路封鎖により、フランス側では最大20キロの渋滞が見られた。


10月15日(火)

サプラナ大臣、労災対策プラン作成を約束

昨日、CCOO(労働者委員会)、UGT(労働者総同盟)、CEOE(スペイン経営者連合会)と会談したエドゥアルド・サプラナ労働大臣は、急増している労災への緊急対策プランを今年の終わりまでに作成することを約束した。会談が行われた昨日は労災で5人が命を落としており、大臣の約束したプランでは、監督にかかわる人材と設備の充実を図ること、労災事故の40%を起こしている約3万の会社を徹底して監視し、従業員の多い会社、さらに下請け会社、人材派遣会社が法律を遵守しているかの監視を強化することが検討される。
また、サプラナ大臣は、これ以上のデクレタソ(大政令)修正はないと釘をさした上で、日雇い農業従事者問題の解決のため、労組との話し合いを開始することを約束した。この日雇い農業従事者の補助金をめぐる問題に関しては、今日、アンダルシア州、エクストレマドゥラ州のPP(国民党)と政府の間で話し合いが持たれることになっている。
統計によると、今年に入って最初の6ヶ月間に労災事故で亡くなった人の数は574人。政府、労組、経営者はこの大問題を早急に解決すべく、年内に労災対策プランを作成することを予定している。地方自治体の協力と平行して行われるこのプランでは、1000人以上の従業員のいる会社とその下請け会社に対し労働監督を置くこと、事故の多い会社に対してさらなる監視を進めることなどが盛り込まれている。昨日の労災対策会議は、EU内で最も労災の多い国から脱け出そうという目的のため1年ぶりに開かれたもので、サプラナ大臣は年内に対策プランを作成し、2003年から施行することを各労組の代表者に約束した。今回の対策プランの内容は以下の通り。
事故の多い会社:データによると、3%の企業(約30000社)が労災事故の40%を引き起こしており、2年前から行われている調査の結果で労災事故の多い会社に対して監督がさらに強化される。具体的には中央政府と地方自治体の両方の労働監督官が労災防止法令の不遵守を取り締まることを目的としており、この対策をすでに取り入れているアラゴン州では労災事故数の減少に成功している。このプランでは特に事故の多い建設業に焦点を置くことを検討している。
大会社:今回のプランの中で目新しい内容としてのこの大会社対策は、下請け会社、人事派遣会社からの従業員を含めて1000人以上の従業員がいる会社は、労働災害対策システムが万全であるか、労働省に提出する書類が正しく作成されているかなどの監督をする労働監督官を設置する。
下請け会社:危険回避法第24条を改正し、事故、法の不遵守の際の責任の所在がはっきりするようにする。
立ち入り検査の強化:現在700人いる労働監督官のうちの80%が所属する専門家協会の要請により、監督にかかわる人材と設備をさらに充実させることが検討されている。
報奨・懲罰制度:労災減少に成功した会社は社会保険料を割り引き、また事故、法の不遵守の増加が見られた会社には罰金を課すという制度を労働省は提案している。これは、過去に社会保険庁が提案したものの、算定基準の設置が困難であるため留保されている事項。
原因の究明:特に死亡事故の原因を究明、研究し、データの収集につとめる。
労災防止教育:会社に特に労災担当の専門の係をもたない会社に対して、労災防止のための教育を行う。

PNV、CiU、ETA支持市役所への中央政府の対策案に反対

バスク州でETAの標的となっている議員の警備を強化するために政府、PP(国民党)とPSOE(社労党)が署名、国会で審議が行われているテロリズム対策協定の中の主要項目の一つにPNV(バスク民族党)とCiU(カタルニャ連合)が反対している。これは、あらかじめ上院に相談した上で、閣僚会議がテロリストの賞賛、正当化を行った市町村役場を解散できるという項目。CiUが反対理由について、この権限は閣僚会議にではなく、地方政府に与えられるべきものであるとしている一方、PNVはいまだ具体的な反対の理由を明らかにしていない。ハビエル・アルサジュス・PNV党首はこの項目について昨日、“話し合いの余地なし”と断言、しかしながら2002年5月21日にPNV、EA(バスク連盟)、IU(統一左翼)の代表者と安全保障担当官の間で合意に達している項目に関しては支持していくと述べた。
PPとPSOEは国会での採決の前に、各党からできる限りの合意を得ようと先週、各党と会談を重ねたが、PNVの反対の及ぼす影響は大きく、PP、PSOEは自党の署名者より多くの署名を集めることはできなかった。この両党の努力の最終的な結果が出るのは10月29日。各党が投票により、テロリズム対策協定から生じたいくつかの法改正に対する賛否を表明する。

溺死した移民の数、13人に(カディス)

バルバテの漁船の連絡を受けて、昨日の午後、治安警備隊のパトロール艇がサハラ周辺地域住民女性1人の死体を回収した。その数時間前には同じ地域で潜水艦により男性1人の死体も見つけられており、火曜日にカディスにあるバルバテ沖で起こったボートの沈没により死亡した移民の数は13人となった。
火曜日から見つかっているのは女性7人男性6人の死体で、全員がサハラ周辺地域出身者。28人は無事救助されている。
カディス県の海岸にボートで来るというのは、不法入国者が最も良く使う手口の一つで、昨日の午前中には治安警備隊がジブラルタル海峡を越えて海からスペインに入国しようとしていた95人を逮捕している。このうち64人はタリファの海岸で逮捕されており、女性25人のうち1人は妊婦だった。残りの31人はバルバテビーチで逮捕。女性が11人と男性が20人という構成だった。さらに、治安警備隊は密入国の手引きをしたと自白したモロッコ人1人も逮捕している。
これらの95人の逮捕だけでなく、日曜日にはカディス港でモロッコのカサブランカから来ていたトラックに隠れて入国しようとしたモロッコ人11人も逮捕されている。日曜日から昨日までカディス県で不法入国を企て逮捕された者の総数は202人に上る。
IU(統一左翼)は、厳しい対策をとらないモロッコ政府の庇護を受けているマフィアの取り締まりに動き出すよう、国際犯罪裁判所にジブラルタル海峡での死者に関する報告書を提出するよう政府に要請している。

バルガス・リョサ氏、スペインとアメリカの絆を強める財団創設

ペルー出身の作家、バルガス。リョサ氏が昨日マドリッドで、自由のための国際財団(FIL)の創設を発表した。この財団は政治的、文化的、経済的つながりを自由の名のもとに、スペインとラテンアメリカ、アメリカ合衆国の間で強めようという目的で設けられたもので、リョサ氏は「我々は自由な政治、つまり民主主義を信じる自由主義者である。我々は例外なくありとあらゆる独裁政治に反対する。」とコメント、「我々はあらゆる国々において民主主義政治の発展を援護し、ラテンアメリカの歴史的災厄である、あらゆる軍国主義と権力主義に反対する。」と断言した。
バルガス・リョサ氏はキューバで自由のために戦う人々の援助をできる限り行うと述べ、ベネズエラのウーゴ・チャベス大統領を“大陸のその他地域への危険の見本”であると定義、「チャベス大統領は独裁者ではない。独裁者の見習いだ。彼の政策は民主主義の崩壊を招くものだ。」と述べた。
FILはマドリッドとワシントンに本部事務所を置き、ラテンアメリカの主要国首都に支部事務所を置く。この財団は約400のスペイン、ラテンアメリカ、アメリカ合衆国の文化団体、企業の努力の賜物で、創立に協力した財団の中には、ヘリテイジ財団、ブラジル大西洋協会、アルゼンチン自由協会、イベロアメリカ−ヨーロッパ協会などの名前が見られる。


10月14日(月)

第1子出産の遅いスペイン人女性

EU諸国の女性の結婚年齢と第1子を設ける年齢は年々高くなっている。その中でもスペイン人女性はイギリス人女性と並んで第1子を設けるのが最も遅い(29歳)という結果が、ヨーロッパ統計局の調査により明らかになった。これは、ヨーロッパ統計局により発表された“ヨーロッパの男女”という出版物からのデータで、この20年間における女性の社会進出の発展ぶりを示す内容となったこの出版物ではあるが、依然として男女間の経済格差は顕著で、男女の収入には18%の開きがあるという。“ヨーロッパの男女”に発表された最近のヨーロッパの主な傾向は以下の通り。
30代での結婚、出産:女性がさらなる教育を受け、その後仕事を始める傾向が年毎に強まっている。80年代には女性の平均結婚年齢は23.5歳であったのが、現在は28.5歳で、それにつれて第1子出産年齢も上がっている。
北欧での働く女性減少:デンマーク、フィンランド、スウェーデンの3国では、その他大勢の国の傾向に反して、働く女性の数がこの15年間で減少している。
自活の多い女性:EU15カ国内では、1人暮らし、または友人との共同生活により両親の家を出る傾向は男性より女性に多く見られる。例えば、20〜24歳男性の78%が両親と同居しているのに対し、女性は65%。スペイン人は子供が両親の家を出るのが最も遅い国の一つで、この年齢間に両親と同居している男性は96%、そして女性が92%とここでも女性の自活の方が多いことが見られる。
女性への教育:EU諸国内では大学に進学する女性の数の方が男性より多い。スペインでは18〜21歳の間で、女性の40%、男性の28%が大学で学んでいる。
育児への従事度:育児は依然として女性の仕事となっている。平均して女性が週に45時間子供の世話をしているのに対し、男性は30時間に満たない。男性の育児時間が30時間を越えているのはデンマークとスペインだけであるが、スペインはアイルランドと並んで女性の育児に費やす時間が最も長い国であることを考慮にいれなければならない。
上司は男性:ヨーロッパでは男性が管理職に就ける確率は女性の2倍となっている。仕事をしている人のうち、10.1%の男性が管理職に就いているが、女性管理職は5.7%のみ。しかし、スペインは女性の社会進出が進んでいる国の一つであり、ギリシャの6.1%に続いて、第二位のスペインは6%の女性が管理職に就いている。
不公平な給与:男女の給料格差は徐々に小さくなっていってはいるものの、依然として大きい。女性公務員の給与は男性の87%、一般企業女性従業員だと給与は男性の82%という結果が出ている。
一人暮らし高齢者の増加:ヨーロッパで65歳以上の女性の44%が一人暮らしをしているのに対し、男性は16%。ポルトガル、イタリア、ギリシャといった南ヨーロッパに見られる傾向を反映しているスペインの数字は、平均を下回る女性24%、男性8%。65歳以上で一人暮らしをしている人が少ない国には上記の南欧諸国のほかにアイルランド、ドイツの名が上がっている。しかし、スペインはフランスとともに、65歳以上で働いている人の数が最も少ない国で、4%という数字は、EUが推進している労働年齢の引き上げと柔軟な定年退職プランの構築という政策に逆行する形となっている。

モロッコ国王からのメッセージに対話再開の光

12日土曜日にモロッコのモハメド六世からスペイン国王フアン・カルロス一世に送られたメッセージに、スペイン政府はモロッコとの対話再開の光を見出した。このメッセージは、スペインの祝日に際し、モロッコ国王が“共通の歴史に富む”スペインとモロッコの友好関係を高める決意を表明したもので、スペイン政府はこのメッセージを受け取ったことを“またとない機会”と見ている。政府関係者は、「我々はここから対話の道を確立させるためにあらゆる努力をするだろう。」と述べ、スペイン政府は壊れるべきではなかった両国間の関係を回復することを強く望んでいると強調した。
スペイン、モロッコの関係に亀裂が生じたのは2001年4月の漁業交渉決裂。この亀裂は同年10月27日、国王が在スペイン大使を呼び戻したことでさらに深まり、1月のスペイン国王の誕生日にモロッコ国王が寄せた祝福のメッセージから回復されるかと思われたがそうはいかず、9月23日に予定された両国の外務相会談も、前日にペレヒル島にスペインのヘリコプターが着陸したとしてモロッコ側がキャンセル。スペインはこの事実を否定しているが、会談はいまだに持たれていない。
父王ハッサン二世と同様、モハメド六世も、スペイン国王と王家への態度とスペイン政府への態度は常に異なったものをとってきた。今回のモハメド六世のメッセージを楽天的に受け止めるスペイン政府と対照的にモロッコ政府は、両国の確執はモロッコ王家とホセ・マリア・アスナル・スペイン首相の間にあるもので、本当の和解はアスナル氏が政権を失うまで確立されないであろうと述べている。

週末のスポーツの結果

バイク:マレーシア・グランプリ、125CCクラスでダニ・ペドロサ選手が3位入賞。250CCクラスでは、フォンシ・ニエト選手が優勝、2位にトニ・エリアス選手が入った。フォンシ選手の優勝により、現在総合成績1位のメランドリ選手の総合優勝はおあずけ。モトGPクラスのカルロス・チェカ選手は7位に終わった。
トライアスロン:ポルトガル、マデイラ諸島のフンシャルで行われたトライアスロンワールドカップで、スペインのイバン・ラニャ選手がイギリスのマーク・ジェンキンズ選手を抑えて優勝。現在スペインとヨーロッパのチャンピオンで、2000年シドニーオリンピックでは5位だったラニャ選手は、11月3日からメキシコで開催される世界選手権のメダル獲得有力候補である。
自転車:ベルギーで行われた世界選手権、優勝したのはイタリアのマリオ・チッポリーニ選手。昨年の覇者、スペインのオスカル・フレイレ選手はゴール手前で自転車が故障。156位という無残な結果に終わった。


10月11日(金)

マドリッド北部で降雪、エル・プラット空港でさらなるフライトキャンセル−スペインの悪天候続く

マドリッド北部にあるナバセラダ峠、ソモシエラ峠の住人が昨日の朝目覚めると、周りは一面の雪であった。積雪は15センチから多いところでは25センチに及び、国道一号線は午前9時から10時半の間57キロ地点から117キロ地点で通行禁止となり、県道601号線では午後3時35分までタイヤチェーンの使用が義務づけられた。これらの地域では今日も雪が降ることが予想されているが、これから週末にかけては曇りがちではあるものの。、気温は上昇する見込み。
一方、バルセロナでは水曜日ほどの大きな影響は出なかったものの、大雨による被害が昨日も見られた。エル・プラット空港では予定されていた600便のうち104便がキャンセルとなり、キャンセルされなかった便にも大幅な遅れ(最高7時間)が見られ、空港内での状況は前日に引き続いて混乱を極めていた。前日に予定されていた便を待つ乗客を空港内で見かけることは珍しいことではなく、例えば水曜日の午後7時半に出発予定だったバルセロナ発マラガ行きの便がいつ出発するのか、昨日、木曜日の午後8時の時点では誰にもわからなかった。
2日にわたる今回の大雨で最も被害を受けたカステルデフェルスでは、社労党のアントニ・パディジャ町長が、モンテマル排水設備の建設の遅れについてカタルニャ政府を糾弾した。「この排水設備の建設は我々が何年も前から求めているもので、(9月12日と今回の)最近の2件の大雨の被害を受けた我々が求めるのは、今すぐ建設を始めることだ。」と住人の1人は述べた。モンテマル地区での浸水の被害は深刻で、最初の大雨が襲ってから24時間後の昨日でも、3家族が救助の手が届かない場所で孤立したままで、30家族が県立体育館に避難中、その他の住人は親戚、友人宅に身を寄せている状態であった。その北側のガバ町とビラデカンス町では、決壊した川の水に畑が浸かり、冬の収穫の全てがだめになったという。9月の洪水時と同様、ガバ町ラ・センティウ地区では近くのガラフゴミ処理場から大量の泥とゴミが流れ着いた。また4500軒で停電が起こったが電気はすぐに復旧した。

スペイン内務省、バスク州警察官200人増員に待った

スペイン中央政府とバスク州政府の2001年8月以来続く対テロ政策費用に関する対立が昨日再び火を噴いた。バスク州内務局のハビエル・バルサ氏は、昨日「中央政府が反対しようと、現在7500人いるバスク州警察の警官を200人増員する。」と発言、これに対しアンヘル・アセべス内務大臣は、バスク州警察の拡大は政府の承認を取ってからでないと行えないと反論した。
昨日マドリッドで行われた両氏の会談の第一の目的は、ETAの脅迫を受けている議員とPP(国民党)、PSOE(社労党)事務所の警備についての話し合いであった。この件に関しては、バスク州内はバスク州警察が、ナバラ州とその他スペイン領土内は国家警察と治安警備隊が警備を受け持つことで合意に達したが、その後両氏が個別に行った新聞記者との会見で、見解の相違が露出した。
今年の2月、両政府が経済協調令の改正をめぐる会談を持ったとき、クリストバル・モンテロ大蔵大臣は、バスク州政府が新しい財政システムに調印すれば、バスク州警察拡大を認めると約束した。しかし、それから8ヶ月が経ち、経済協調令が国会で承認されすでに施行されても、中央政府は200人のバスク州警官増員に許可を与えていず、アセベス内務大臣との2時間にわたる会談の後、バルサ氏は独断で増員を実行する前に再考の時間を設けるとしながらも、バスク州政府にはバスク州警察を拡大する合法的な権利があると述べた。一方のアセベス内務大臣は「新しい警官の雇用は、中央政府との合意があってのみ成立する。この合意は、話し合いによって得られるもので、割り当て金を納入せず、脅しをかけても得られるものではない。」と答え、バスク州政府が増員を強行した場合は憲法裁判所に訴えると述べている。それに対しバルサ氏は、バスク州が増員を強行し、それにかかる費用(約960万ユーロ)を国に収めるべき既得自治権への割り当て金から差し引くことは法に適っていると強気の姿勢を示した。

セビジャ−ベティス戦逮捕者への判決

“30,100ユーロの罰金と今後5年間にわたってスポーツ施設への立ち入り禁止”。これが、昨日マドリッドで国立反暴力委員会が提案した、日曜日のセビジャ・ベティス戦でガードマンを襲撃した3人と、グラウンドに降りベティスのキーパーに掴みかかった1人の逮捕者に対する懲罰である。この懲罰内容はどう委員会がこれまでに出したいかなる判決内容よりも厳しいものとなっているが、懲罰の最終的な決定はスペインサッカー協会の要請により、今日の競技委員会の話し合いを待ってから決められる。国立反暴力委員会ができた10年前からこれまでで最も厳しい懲罰は、30100ユーロの罰金と3年間のスポーツ施設への立ち入り禁止処分で、これは昨年のチャンピオンズ・リーグでのバルサ−マドリッドの試合での暴動に関与したマドリッドの過激ファンクラブ“ウルトラ・スル”のメンバー9人に課されたものであった。
襲撃に直接関与した4人以外にも、委員会は14人のファンに610から2000ユーロの罰金と、3ヶ月間のスポーツ施設への立ち入り禁止の罰を課すことを要請している。


10月10日(木)

欧州連合、25ヶ国加盟へ

2004年にEU(欧州連合)が新たに10カ国の加盟を迎えることが、昨日、ブリュッセルで開かれた欧州委員会で承認された。現在の加盟国15カ国は、将来の加盟国10カ国−ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア、リトアニア、ラトビア、エストニア、マルタ、キプロス−が、EU加盟に必要な条件を満たしているとみなした。しかし、彼らに対しては加盟後2年間の監視期間が設けられ、与えられた義務を果たさなかった国が加盟から外される可能性を残した。また、加盟国候補であったブルガリアとルーマニアは2007年まで待たなければならず、欧州委員会はトルコに対しては、死刑廃止などの努力は評価したものの、加盟交渉スタートの具体的な日程も組むことなく、門前払いにした。
欧州議会の報告書を発表するにあたって欧州委員会委員長のロマノ・プロディ氏は、「我々の大陸を一つにする歴史的な機会がやってきた。我々共通の目的は、平和、民主主義、法律の遵守、人権の擁護、少数派の尊重に基づく“1つのヨーロッパ”である。」と述べた。政治分野に関しては、ヨーロッパ内で東欧諸国の加盟に疑問を抱く者はいない。問題と不信感が生じるのは経済分野からである。
新たに10カ国が加盟することによってEU加盟国の数は15から25に増え、人口も16.5%(3.69億人から4.54億人)に増えるが、EU圏内総生産額は8.3%しか増えない。新加盟国の平均収入は現加盟国の44%に留まる。スペインを始めとする数ヶ国は現在EUからの補助金(地域開発基金、農業基金)を享受しているが、この大半が新たな加盟国に流れることが心配されている。最大の懸念材料はこれらの国々の行政能力で、国境警備、入国管理の強化、高い確率での汚職を排除すること、人権尊重などEU加盟により求められるレベルをクリアしているのは、今のところキプロス、マルタ、チェコとスロベニアだけである。
政治的、経済的にまだまだ不安定な国々の加盟から生じる結果に対して現加盟諸国政府は様々な不安を抱いているが、この解消策として加盟条約には記載されていない監視期間の設置が決められた。これについては新加盟国の間から批判が聞かれたが、ドイツのギュンター・フェアホイゲンEU拡大委員の案は最も緩やかな監視を提案するもので、数人の委員は監視期間を5年、ある委員は15年と提案していた。
昨日承認された文書の中には、新加盟国が2004年の加盟時までに農業基金、地域開発基金を正しく使うための組織の見直しを終えていない場合は、1ユーロ足りとも補助金を給付しないことが明記されている。さらに、来年1年間にわたって新加盟国は、EU加盟のために義務づけられた準備をきちんと行っているかどうかの監視を受けることも昨日の委員会で決められた。
これらの措置は、特にフランス、オランダ、イギリスといった、国民の間でも議会でも現時点でのEU拡大賛成に明らかな大多数の賛成が見られない国を安心させることになるであろう。しかし、新加盟10ヶ国との年末の話し合いの前に、現加盟国の間で拡大に伴う費用の分担についての話し合いが待っており、ドイツ、オランダ、イギリス、オーストリアという出費貢献国とその他の国々の間で大議論となることは必至である。

バスク州の企業家、イバレチェ氏のバスク州自治領化プランを拒否

バスク州の12000の企業が加盟しているバスク経営者協会(Confebask)は、昨日、“市民に国のあり様、政治形態を選ばせることはバスク社会に対立と断絶をもたらし、経済発展の維持を困難にする”と、バスク州知事フアン・ホセ・イバレチェ知事の提案しているバスク自治領化プランを拒否することを、知事に通告した。会長のロマン・クノール氏は「イバレチェ氏のプランを推進していけば、バスク州への投資、会社の設置やバスク州製品に大きな影響が出ることは間違いない」と述べている。
バスク州政府、労働組合と唯一交渉できるバスク州企業家のグループであるバスク経営者協会は、昨日、バスク州知事府でイバレチェ知事と会談、バスク州の法改正により州をスペインの自治領にするプランの推進に対して、厳しい答えを返した。イバレチェ知事との4時間にわたる会談の後、クノール会長は、先週から火曜日にかけての会議で練られ、8時間に及んだ火曜日の最終会議で承認されたバスク州企業家からの長い通告書を読み上げた。この通告書の中で、バスクの企業家たちは「このプランを承認すれば、市民の間に軋轢が生じ、バスク州がこれまでETAのテロに悩まされても、市民の団結により培ってきた経済発展の維持は困難になるだろう」とはっきりと述べており、イバレチェ知事の提案はバスク経済界への不信をもたらし、投資、バスク州の会社との取引などに大きな影響を及ぼすことになるだろうとしており、クノール会長は「現在バスク州政府が集中して取り組まなければならないのは、ETAのテロを根絶し、すべての人々の自由を取り戻すことであるべきだ。我々は、バスク州政府、スペイン中央政府、その他すべての民主主義政治勢力に対し、意見疎通の途絶から抜け出し、不可欠である対話の場を回復することを求める。」と結んだ。

悪天候により空の便に乱れ(バルセロナ)

昨日、スペインを襲った大雨により、バルセロナのエル・プラット空港の管制センターが浸水、208便がキャンセル、少なくとも150便で最大4時間の遅れが出るなどのほか、カタルニャ地方では道路、鉄道の遮断も起こり、各交通手段に大きな乱れが出た。
空港には何千もの人々が缶詰になり、チェックインカウンターには荷物が山積み。空港の内部は乗客とそのスーツケース、荷物カートでごった返し、その間を通り抜けるのは至難の業であった。カタルニャ地方に雨が降り始めた朝からすでにフライトには遅れが出ていたが、午前11時頃、1平方メートルあたり150リットルの雨が降り注いだことから、管制センターが浸水、空港に混乱が引き起こされた。
この管制センターは1000メートル四方の建物。空港にある鉄道駅の側にあるもので、海抜0mにある空港の他の施設よりさらに低い場所に建っており、建物の後ろにある小川は昨日の大雨で決壊した。職員の話では、昨日の午前11時頃の時点で、建物内の高電圧変圧器のある部屋に水が満ち始め、この水は50センチの高さまで達したという。直ちに非常事態対策措置がとられ、バルセロナで管制する便の数が50%にまで減らされたが、これは午後2時には“レベルゼロ”まで落とされた。つまり、空港は完全に機能しなくなったということである。あらゆる離着陸が行われなくなり、カタルニャ上空を通過することになっていた便は、マルセイユ、バレンシア、マドリッドなどへ迂回した。この後、バルセロナの空港機能が回復し始めたのは午後9時ごろ。
大雨による被害を受けたのは空の便だけではない。カタルニャ地方の各地で大雨による渋滞が起こり、20キロメートルを走行するのに6時間かかった例も見られた。バルセロナでは18の信号が故障、交通整理の警官の出動となった。地下鉄もこの大雨の被害を免れることはできず、5番線以外の全ての線で何らかの影響が出ており、午前中は5つの駅が閉鎖されたほか、国鉄も一部の線路の浸水と停電の影響を受け、一部の区間が運休になった上、道路も大雨による被害を受けていたため代替バスの運行もできなかった。


10月9日(水)

スペイン銀行、2003年の経済成長率を下方修正

ハイメ・カルアナ・スペイン銀行総裁は、昨日スペイン経済の成長率を下方修正した。政府の予想では、今年は2.2%、来年は3%となっているが、スペイン銀行は今年の成長率は2%を超えず、2003年は2.5%と予想している上、経済危機が広まった場合には、負債ゼロどころか“つつましい額の”負債が出ることも予想している。さらに総裁は一般家庭の借金額の増大に警鐘を鳴らし、住宅の値上がりに歯止めをかけることを求めた。
この数日間にスペイン銀行から政府にもたらされたニュースは消費の鈍化、企業の収益低下、住宅の値上がりなどよくないものばかりであった上、さらに昨日のニュースは2003年度予算に対するアスナル政権の楽観主義に待ったをかける形となった。
カルアナ総裁は国会予算委員会に出席し、スペイン経済の成長はブレーキがかかったままで、回復には予想よりさらに時間がかかるだろうと話した。今年に入って最初の3ヶ月間では引き続き経済成長の鈍化が見られており、経済の明らかな回復が見られるには年末まで待たなければいけないであろうと総裁は見ている。今年半年間の経済成長率が2%を超えなかったことから、2003年度に徐々に上がっていったとしても成長率は2.5%から3%の間で留まることが予想されている。
カルアナ総裁が特に懸念を示したのは、住宅の値上がり(3年間で48%の上昇)とその原因となっている活発な個人の不動産投資で、これにより今年の個人負債額の増大は確実なリズムで続いている。さらに、中南米の経済危機によるスペイン企業の負債額の増加も問題であるが、これに関しては企業の財政状態が今のところ安定しているため、それほどの不安材料にはなっていない。
総裁はまた、個人所得税の引き下げを、国の経済が脆弱な時期に行うのには危険が伴うため、経済成長状態と雇用増大状態を反映させた内容にし、1999年と同じ条件にはしないようにとしながらも、国の負債をなくすための政府の政策は擁護した。

マドリッドを襲った集中豪雨

昨日の正午、約2時間にわたって局地的な大雨が降り、これにより国道30号線では大規模な渋滞が起こった。マドリッド市とマドリッド自治区の消防車では80件以上の出動があり、正午に始まったこの局地的な嵐により、救急センターに寄せられた電話のうち、100件が水による被害の通報、48件は交通事故による通報であったが、大事にいたるものはなかった。
マドリッドの南西部で降り始めたこの大雨は次第に歩行上、マドリッド中心部では、シベレス、ネプトゥノ、アトチャといった主要ロータリーやゴヤ通り、セラノ通りなどでできた大規模な水溜りから水を出す作業が消防士によって行われた。また12時から17時の間に、消防士たちは地下室の浸水などにも出動、マドリッド市内でのこの雨による出動件数は61件であった。
特に被害が大きかったのはビジャビシオサ・デ・オドン、ナバルカルネロ、モストレスといったマドリッドの南西部で、3時間の間に消防車の出動件数は40件を超えた。

「殺されるかと思った。」ベティス−セビジャ戦のガードマン、恐怖を語る

日曜日にサンチェス・ピスフアン・スタジアムで行われたベティス−セビジャ戦で勤務中、セビジャの過激ファンクラブ“ビリス”の若者グループによって暴行を受けたガードマンが昨日、記者会見に臨んだ。鼻に包帯を巻いた痛々しい状態で姿を現したアントニオ・オレゴさん33歳は結婚して2人の娘がおり、鼻骨を骨折、激しい頭痛のため、夜も眠れない状態だという。
オレゴさんが語った生々しい証言によると、ウォーミングアップをしていたベティスのプラッツ・キーパ−のボールを盗もうとしていた若者のグループを止めようとしたオレゴさんに、彼らがつばをはきかけたことから襲撃が始まった。「ただ、彼らにボールを持っていかないようにと言っただけで、彼らは私たちに向かってきました。体中に打撃を浴びせられましたが、特にひどかったのは頭に受けた2回の打撃で、私はほとんど意識を失いそうになりました。」わき腹が痛むため、オレゴさんはこう切れ切れに話した。「生命の危険を感じましたか?」というある記者の質問に対し、オレゴさんは「はい」と告白、「頭に2発目の打撃を受けたとき、一瞬目の前が真っ暗になり、(もしあの松葉杖を奪わなければ俺は殺されるだろう)と考えました。」というオレゴさんに「どうして逃げなかったのですか?」という質問が向けられた時、彼は「襲撃が始まる前にそこから抜けられていたら…あの場所に最初からいなかったら…」と答えた。
事件から48時間後に記者団の前に姿を見せたオレゴさんはどうしてこのような暴力をふるうのか全く理解できないとコメント、「私を襲った若者達ともし直接話が出来たとしたら、暴力は何の役にも立たないと言ってやりたい。これは、教育の問題でしかない。あまりにも思いがけない出来事だったので、何もできなかった。加害者が未成年だからという理由ですぐに釈放されるのには納得がいかない。未成年者なら何をしても構わないというなら、彼らがもっとつけあがってしまう。」と話した。「もし、彼らが謝ってきたら許しますか?」との問いには、「彼らが心から謝罪し、2度と同じことをしないと約束するのなら。」とオレゴさんは答えた。
オレゴさんを襲撃し、逮捕された3人のうちオレゴさんを襲撃したことを認めた20歳の若者は、刑務所入りが決まった。この若者は襲撃のことは、麻薬を使っていたためよく覚えていないと供述している。オレゴさんを松葉杖で殴打した未成年の若者については、判事が未成年収監施設への入所を命じた。もう1人の若者はスタジアム入り口の防犯カメラに松葉杖をもって写っていたため逮捕されていたが、襲撃の様子を移したビデオには彼の姿が見られず、彼がグラウウンドに投げ入れた松葉杖が未成年者によって襲撃に使われ、彼自身の事件への直接の関与がなかったため釈放された。
一方、競技委員会は昨日この件に関する調査を開始、セビジャチームに対し、以後4ゲームのスタジアム使用禁止処分を課すことを検討しており、チームは金曜日の正午までに異議申し立てをすることになっている。

ベティス対レアル・マドリッド戦、続きが行われる

先月14日にルイス・デ・ロペラ・スタジアムの停電のため、試合が終了まで47分を残して中断されていたレアル・ベティス対レアル・マドリッドの試合の続きが昨日行われ、9月14日に1−0でベティスがリードしていた試合は、ラウル選手のゴールにより1−1の引き分けで終了した。
試合は、試合が中断していた場所から始められ、ラウル選手が試合開始6分後にゴールを決めるまでは、終始レアル・マドリッドのリードでゲームが進み、特にレアル・マドリッド中盤圧倒的な支配を見せていたが、ラウル選手のゴール後ベティスが奮起。終始ゲームを支配したが、得点にはつながらなかった。


10月8日(火)

労働大臣、デクレタソ修正案について労組代表と会談

昨日、エドゥアルド・サプラナ労働大臣は、スペインの2大労働組合であるCCOO(労働者委員会)のホセ・マリア・フィダルゴ書記長とUGT(労働者総同盟)のカンディド・メンデス書記長と会談、6月20日のゼネストの原因となったデクレタソ(大政令)の30ページにわたる修正内容を通知した。
この修正内容はこの後与党PP(国民党)が議会を通して修正案を提出することになっているが、両労働組合はこの修正を“大変重要である”としながらも、労組が要求した8項目の修正のうち、政府が唯一、日雇い農業従事者への補助金撤廃(デクレタソ施行以前は、年間35件以下の仕事しか得られなかったアンダルシアとエクストレマドゥラの日雇い農業従事者は仕事のない間、月額120ユーロの補助金を得ていた)について譲歩しなかったため修正は“十分ではない”とし、この点での不一致をめぐって政府と労組の争いは続くとコメントした。争点になっている農業従事者への補助金撤廃について、サプラナ労働大臣は「これ以上の譲歩が不可能なためである」とし、9月16日にPPが国会で提案した対策案(日雇い労働者が他の仕事を見つけられるよう、職業訓練を行うという新しい政策)について言及するに留めた。
一方、この修正案に対し雇用主側の組合CEOE(スペイン経営者連合会)は不快感を示している。デクレタソ施行以前は、解雇をめぐって雇用者と被雇用者の間で裁判が起こり解雇が不当だと認められた場合は、雇用者は訴訟から判決が出るまでの間、最高2か月分の給料を被雇用者に支払うことになっており、2ヶ月以上裁判がかかった場合は国がそれ以上の期間の給料を支払っていたが、今回の修正により、雇用者側は上限なしで判決が出るまでの給料を支払わなければならなくなる。PSOE(社労党)は、デクレタソの部分的修正ではなく完全撤廃に向けて投票すると発表している。
政府と労組の間の不一致は完全に解消されたわけではないが、昨日サプラナ大臣は「労組との話し合いの新たな段階に入った」と満足感を隠し切れなかった。実際、大臣は来週の月曜日に、フィダルゴ、メンデス両書記長と再び会談の場を設け、労災問題について話し合うことになっている。なぜ、ゼネスト前ではなく今になってデクレタソを修正するのかという問いかけに対し大臣は、「当時から我々に勘違いはあったかもしれないが、労組側の対応が今と違っていた」ためであるとし、この発言は政府の過ちを認めるものではないことを強調しながら、政府と労組の間の緊張状態が今とは比べものにならなかったことを理由として挙げた。今回、政府が提案した修正内容は次の通り。
非常勤職員への失業手当給付:不定期労働者である観光業、非常勤教師が、仕事がない間失業手当をもらえるというデクレタソ以前の状態に戻す。
適切な再就職先紹介:CiU(カタルニャ連合)が提案したように、仕事を失った労働者は、失業者の80%が自力で再就職先を見つけている100日の期限内で自由に再就職先を探すことができ、その後、INEMが公共交通機関があるか、契約の内容、期間と失業者の職歴を十分考慮した上で再就職先を斡旋する。
裁判中の給与支払い:従業員を解雇し、その従業員が解雇を不当とみなしたとき、雇用主が48時間以内に裁判所に賠償金を納めれば、その時点で話し合いは決着する。もし、48時間以内に賠償金を払わず、解雇から約20日後に行われる話し合いで両者が和解すれば、それまでの期間分の給与を雇用主は元従業員に支払わなければならない。雇用主があくまでも裁判で決着をつけようとし、元従業員が勝訴した場合、雇用主は賠償金だけでなく、結審するまでの間の給与の全額を元従業員に支払わなければならない。(デクレタソ以前は、雇用主が支払いを義務づけられていたのは最高2ヶ月までで、それ以降は裁判の遅れは行政側の責任として政府が結審までの給与の支払いをしていた。)
複数収入の許容:法律で定められた限度額を超えない解雇賠償金は、収入とみなされず、失業者はデクレタソ施行以前と同じように、失業保険と賠償金の両方を受給できる。
未消化休暇:契約が終了した時点で従業員の休暇が未消化で残っていれば、雇用主は従業員にその期間分の給与支払いをし、社会保険がそれにかかる年金、社会保険料を徴収する。
自営業者:自分で事業を起こそうと考える労働者は、失業保険をまとめて受給することができ、最初に従業員を雇用した際に社会保険料の割引が適用される。

アルジェリア大統領、スペイン訪問

昨日、アルジェリアのアブデラジズ・ブテフリカ大統領が、初めてスペインを公式訪問、マドリッドに到着した。大統領はサルスエラ宮で国王夫妻と非公式の昼食を採り、公式晩餐はその後王宮で設けられた。また、大統領は経済大臣、エネルギー大臣などからなる代表団と共にCEOE(スペイン経営者連合会)本部で行われたフォーラムに出席、アルジェリア電話市場へのスペイン資本の参加を呼びかけた。
アナ・パラシオ外務大臣は「アルジェリア政府が不法移民問題に関して約束しているのと同様の素晴らしい協力態度を“他のマグレブ諸国(アフリカ北西部、チュニジア・アルジェリア・モロッコ三国の総称)”とも持ちたいものです。」と、明らかにモロッコ政府に言及している形で述べた。
アルジェリアのアブデラジズ・ベルジャデム外務大臣と共に開いた記者会見で、パラシオ大臣は、今日調印される予定の隣国友好協力条約について「これにより、スペインとアルジェリアの関係は、スペインが他のどの国と持つより高いレベルでの協力関係となるでしょう。」と述べた後、アルジェリアとアルメリア県の間での原油送油管プロジェクト、2000メガワットの送電線プロジェクトなど、今後推進されていく両国間でのプロジェクトについて説明し、パラシオ大臣が「特に問題がない」と述べた両国間の漁業問題についてはほとんど時間は割かれなかった。一方のベルジャデム外務大臣も、スペインとの良好な関係を強調、西サハラ問題については、先月半ばニューヨークの国連会議で両国外相間ですでに話されているとしてあえて言及せず、“住民が自分達で決定することである”とし、パラシオ大臣も問題の解決は国連に任せると発言するに留めた。
しかし、国王とブテフリカ大統領の間では、昨夜国際問題に関する意見の相違が見られた。特にイラク問題に関しては、フアン・カルロス1世が一切言及しなかったのに対し、アルジェリア大統領は不適当な武力行使の拒絶を示し、あらゆる軍事行動は破壊行為を招くだけであると述べている。
昨日両国外相の間で調印された司法協力協定にも盛り込まれているテロ問題に関しては、大統領は12年にわたるアルジェリアの不安定な状態について言及し、「アルジェリアは立ち直りの段階にあり、社会の建て直しを図っているところである。」と述べ、国王は大統領が政治の自由と人権の尊重について約束したことを評価した。
アムネスティ・インターナショナルは、1993年以降アルジェリアで逮捕され行方不明になっている4000人と、毎月200人の死亡が報告されているアルジェリアの現状についての調査を、アルジェリア政府が国際機関に許可するよう働きかけることを、今日ブテフリカ大統領と会談するアスナル首相に要請している。

セビジャ-ベティス戦の逮捕者、合計5人に

日曜日のセビジャ−ベティス戦での騒動に関する逮捕者は合計5人となった。5人とも前科はなく、全員の身元がすでに判明し、今日にも司法手続きが取られる。競技場のガードマン襲撃に参加して現在逮捕されているのは未成年者1人と20歳と23歳の若者の3人で、ベティスのゴールキーパーを襲おうとしたのは29歳、ETA支持の垂れ幕を下げて逮捕されたのは28歳の若者であった。グラウンドに降り、ベティスのプラッツ選手に近寄った29歳の若者はセビジャチームのファンクラブ会員であったが、彼の会員証は永久に剥奪されることとなり、チーム関係者によると、今後も同様の事件に対しては同じ処置が取られるという。
昨日セビジャ警察は、この5人の逮捕以外にも、日曜日の午後5時ごろ(試合開始の約3時間半前)、パトロール中の警官がセビジャの歴史地区内にあるバルに25人のベティスファンが集まってアルコール飲料を摂取し、公共物を破壊しているのをみつけ、ベティスの過激ファン16人からナイフ5本、包丁1本、カッター1本、金属製の鎖、発煙筒6本等を押収したことを発表した。


10月7日(月)

ローマ法王、オプス・デイ創立者を列聖

昨日、バチカンのサン・ピエトロ広場を30万人の人々が埋めた。これは、オプス・デイの創立者で、スペインのバルバストロ生まれのホセマリア・エスクリバ・デ・バラゲル氏の列聖を祝うためで、3時間にわたって行われた式典には、レフ・ワレサ・元ポーランド大統領を除いて主にスペインとイタリアから著名人が出席した。スペインからの出席者は、アナ・パラシオ外務大臣、ホセ・マリア・ミチェビラ法務大臣とその妻、ミゲル・サンス・ナバラ州知事、アントニオ・コスクジュエラ・バルバストロ市長、ヘスス・カルデナル・検事局長、ホセ・マリア・アルバレス・デル・マンサノ・マドリッド市長、フェデリコ・トリジョ・防衛大臣(公式代表としてではなく、会員であることから家族全員で参加)等で、エスクリバ氏と生前つながりの深かったカタルニャ州からは、州政府知事ジョルディ・プジョル氏の妻、サッカーチーム、バルサのジョアン・ガスパール会長も参加した。また、列席者の中には、福者エスクリバ氏の祈りのカードにより、不治と宣告されていた皮膚がんが治癒した(昨年12月バチカンにより奇跡と認定)とされるスペイン人医師マヌエル・ネバド・レイ氏、70歳の姿もあった。
エスクリバ氏の創立したオプス・デイとは、会員が第二バチカン公会議で認められた属人区という教会組織と各自の教区の両方に所属し、信仰に完全に一致した生活を送るよう勧める、ローマ・カトリック教会内で最も保守的な宣教修道組織として知られる組織で、政財界との強いつながりを持つことでも知られ、現在、会員約10万人を擁しており、スペイン、中南米を中心に、その会員はケニア、アメリカ、ヨーロッパ諸国、アメリカ、オーストラリア、日本など世界各地84カ国に広がる。
しかし、ローマ・カトリック教会ではオプス・デイの創立者列聖に反対する勢力もあり、ローマ・カトリック教会革新派とオプス・デイの対立はすでに長年にわたっているもので、さらにオプス・デイが秘密組織的な性格を持っていることによる批判も聞かれる。昨日のローマの新聞には、スペイン人神学者ヘスス・ロペス・サエス氏の論文が掲載され、ロペス氏はその中でオプス・デイの組織が“独裁的”であると述べており、1981年にはイギリスで、ヒューム枢機卿がオプス・デイの責任者たちに個人会員の組織への入退会の自由を尊重するようにと意見している。
エスクリバ氏は法王フアン・パブロ2世が在位24年間に列聖した第465番目の聖人で、列聖にあたって法王は、オプス・デイの教会への貢献を感謝し、個人の内面から世界を神に近づけようというエスクリバ氏の理念について述べ、「聖ホセマリアは、祈祷の実践の師であった」とコメントした。

ロナウド選手、アラベス戦でデビュー

サンティアゴ・ベルナベウ・スタジアムで75000人が見守る中、昨日の対アラベス戦でファン待望のロナウド選手のデビューが叶った。ロナウド選手は試合開始後64分でハビエル・ポルティジョ選手と交代、その1分後には早くもレアル・マドリッドの選手として初めてのゴールを決め、会場を沸かせた。その14分後にはチームメイトのマクマナマン選手が速攻からのパスをロナウド選手に出し、ロナウド選手は初試合で出場時間25分、2ゴールという活躍となった。ジダン選手が1ゴール、フィーゴ選手も2ゴールを決めた昨日の試合は、スター選手を揃えるレアル・マドリッドが5−2でアラベスを下している。

セビジャ−ベティス戦、3人が逮捕

国家警察は、サンチェス・ピスフアン・スタジアムで行われた昨日のセビジャ−ベティス戦で、ベティスのゴールキーパ−とガードマンに暴行を加えた2人を逮捕した。
逮捕された1人は、試合開始約20分前にスタジアムのガードマンに暴行を加えた若者で、これは、試合開始前にグラウンドに降り、選手がウォーミングアップをしていたボールを盗もうとした若者のグループを阻止しようとしたガードマンに彼らが殴る蹴るの暴行を加えたもので、金属製の松葉杖でも暴行を受けたガードマンは直ちに病院に運ばれ、鼻骨骨折と複数の外傷により、一時入院を余儀なくされたものである。現在逮捕されているのは1人だが、警察は、暴行に参加した他の若者も捜索をしている。
もう1人は、試合開始11分後にグラウンドに降り、アウェイチームであるベティスのゴールキーパー、トニ・プラッツ選手に近づこうとした若者で、最後の1人は、警察が入場券を見せるよう要求したところ抵抗したため、公務執行妨害で逮捕された若者。
セビジャ対レアル・ベティスの対戦は常にファンの激しい対立が起きるため、関係者は警備に気を配り、ベティスの過激ファンには入場券を売らないなどの対策を取っていたにもかかわらず、今回の騒動が起きた。

その他週末のスポーツの結果

バイク:茂木サーキットで行われたパシフィックGP、125CCクラスでダニエル・ペドロサ選手が優勝、パブロ・ニエト選手が4位、エクトル・バルベラ選手が5位に入賞した。250CCクラスでは、トニ・エリアス選手が優勝、4位にフォンシ・ニエト選手、5位にエミリオ・アルサモラ選手が入り、モトGPではカルロス・チェカ選手が5位入賞、スペイン勢の活躍が目立った。
モータースポーツ:ニュージーランド・ラリ−で、スペインのカルロス・サインス選手が4位入賞。レースは前日、2度目の世界チャンピオン就くことを確定させていたフィンランドのマーカス・グロンホルム選手が制している。
バレーボール:ポーランドに3-1で敗れたスペインチームは、アルゼンチンで開かれている世界選手権準々決勝入りを逃した。


10月4日(金)

3年間でスペインの住宅、48%の値上がり

スペイン銀行の発表したデータによると、1998年から2001年の間にスペインでの住宅は48%値上がりしているといい、同銀行は政府の発表した“スペイン経済発展の鈍化”に異議を唱えているが、政府はこの数ヶ月以内に不動産ブームが止まるとの予測を強調した。
過去にない勢いで新しい住宅の建築が進み(1999年から2002年の間には年間平均50万戸)、過去にない高値がつき(去年は15%の値上がり)、賃貸用にはほとんど回されない(全体のわずか9%)。これが、スペイン銀行が発行した最新の経済白書(9月号)による住宅市場データである。ローンに対する利率が低いこと、住宅購入者への税金の優遇措置により住宅購入者が増えている一方、地価の値上がりにより住宅は不足、中古住宅の購入が増加している。
こういった現象が始まったのは1997年のことで、スペイン銀行によるとこの年からの住宅の値上がりは地域を問わず、スペイン全体で始まったという。3年間で48%の値上がりという数値は、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中でも際立った上昇率で、国土省のデータによると今年最初の3ヶ月間での住宅の値上がりは15.4%、値下がりが始まるだろうという楽天的な予測を覆している。
この値上がりにより影響を受けているのは、スペインの人口の3分の1にあたると見られている自由市場で住宅を購入する経済的余裕のない家族で、低所得家族向け住宅(VPO)建設の減少は著しく、購入を援助し、最高価格を据え置く政府のプランを適用した住宅は、80年代最初には新しく建設された住宅の60%だったのが、2001年はわずか10%にとどまっている。
賃貸住宅というオプションも厳しい状況にある。スペイン全土で賃貸に出されている住宅はわずか9%で、賃貸住宅を増やそうと、政府が最高60%までの所得税減税を新しい所得税法で貸主に約束したものの、需要と供給のバランスは崩れたままである。スペイン銀行は、賃貸住宅の不足が、転職の増加の原因にもなりうると述べている。現在のローンへの利率は史上最低額を記録しているが、2001年のデータでは、住宅を購入した家族は、ローンの利息支払いに給与の36%を奪われていると出ている。
1999年から昨年までに年間50万戸が新たに建設されているにもかかわらず、住宅が値上がりを続けるのはなぜか。スペイン銀行は昨年と一昨年の間に新たな需要を満たそうと、“本当に必要とされている住宅”の152%が新たに建設されたとしている。さらに、海岸部や島での住宅の需要増加も原因として挙げられる。この増加の一部は外国人が担っていると見られ、実際、この8年間で外国からの不動産投資額は31%上昇している。

教育の質向上法の審議行われる

政府は昨日、野党から提出された計10の修正案に対し、教育の質向上法を単独で擁護、国会審議での与党PP(国民党)の賛成票とCC(カナリアス連合)の棄権により、修正案は却下された。ピラール・デル・カスティジョ文部大臣は審議を開始するにあたって、静粛を求め、法改正に必要とされる資金の政府による増額調達を約束し、この改正は「すべての人にチャンスを与え、学校教育での失敗を無くすためのもので、地方自治権は尊重します」と述べた。しかし、議論は白熱化、この法令は“差別的”、“時代遅れ”、“非社会的”などのそしりを受けた。
この法改正に反対する政党は地方自治権の侵害、私立学校教育への援助、宗教科目の推進を反対理由に挙げている。社労党のカルメン・チャコン議員は生徒の就学の可能性を減じるとして修正案を提出、政府の改正案では学校と両親のつながりが薄くなること、改正案が平等性に欠けること、私立学校教育偏重などを反対の理由に挙げた。月曜日に修正案を提出すると発表、政府にショックを与えたカタルニャ連合(CiU)のジョルディ・マルティ議員は、「政府は教育分野にLOAPA(80年代に違憲部分があると宣告された地方自治プロセス調和法)を持ち込もうとしている。もし政府がこの法改正を推し進めるならば、憲法裁判所における政府と地方自治政府の対立は増大するであろう。」と述べた。
残りのグループも、この法律の内容だけでなく、政府の姿勢に地方自治州との協調、対話が不足していることからも、この法律に対する断固とした拒絶を表明した。

国旗表敬式典へのその後のコメント

政府国会関係担当官のホルヘ・フェルナンデス氏は、水曜日に行われ、今後毎月マドリッドのコロン広場で行われる国旗表敬式典の目的は、バスク州政府に対する答えであると、カタルニャ州政府のラジオ放送で答えた。また、ガリシア州政府知事のマヌエル・フラガ氏は、国旗への表敬は何ら挑発的ではなく、“挑発的”なのは憲法違反のような問題を起こしている人々であると答えた。しかし、PNV(バスク民族党)のスポークスマン、イニャキ・アナガスティ氏は「アスナル氏は、イバレチェ氏に対話ではなく、軍事力によって答えを出そうとしている」とコメントしている。
社労党のホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロ書記長は、1年前からの国旗の掲揚には異論を唱えなかったが、表敬式典に関しては、他政党への通知、理解なしに行われたことに不快感を示し、政府に“分別”と“慎重さ”を求めた。さらに書記長は「スペイン国旗は、憲法と同じくすべての人々のもので、すべての国民のシンボルを利用する際には、政府は目的について慎重になるべきだ」と付け加えた。


10月3日(木)

バスク州政府、PSOEとPPの事務所警備を強化

昨日、バスク州政府安全会議に出席したバタスナ党を除くすべての政党は、バスク州にある100近くのPSOE(社労党)とPP(国民党)の警備を強化することを決定した。
バスク州政府安全会議で可決されたのは、バスク州内にある12のPPの事務所と81のPSOEの集会所の警備強化。州政府内務担当官のハビエル・バルサ氏は、24時間以内にバスク州警察が配置につくと発表、中央政府内務省の支援協力を求めた。政党事務所警備強化と、町で行われる破壊行為への援助金としてバスク州政府安全会議では事務所あたりまたは破壊された物品あたり最高9万ユーロまでを支給することを決めている。
PP、PSOEで構成されているアンチテロリズム協定会議では、ETAの脅迫を受けている議員を警備するため6つの法改正を検討中で、増額可能な300万ユーロの基金を作って警備を強化することを今日にも承認する見込み。内務省は、PPとPSOEの行う公共活動の警備も強化する。
一方、治安警備隊は昨日午後、ギプスコア県ウスルビルでETAの倉庫を発見しており、30キロの爆薬、数種の武器、爆弾を作るための電気部品が見つかった。この倉庫は、日曜日に逮捕されたETAメンバーのジョキン・エラスティ容疑者(25歳)、オイアナ・リサソ容疑者(23歳)が住んでいた家の裏庭で見つかっている。彼らが逮捕された日曜日、すでにこの家は警察により家宅捜査されていたが、その日は武器庫の発見にいたらず、昨日、警察が再びガレージと裏庭に捜査範囲を広げたところ、武器庫が見つかった。先週土曜日から警察の捜査“対ドノスティ・グループ作戦”が行われており、18ヶ所が家宅捜査を受け、うち2箇所でETAの倉庫が発見され、7人が逮捕されている。
また、バルタサル・ガルソン判事は、先月16日にボルドー近くのタレンセで逮捕された2人のうちの1人、フアン・アントニオ・オララ・グリディ容疑者の身柄引渡しを要請した。これは、1997年4月12日のマドリッドのアパートでの爆発事件に関しての裁判に掛けるためで、判事はホセ・ルイス・アルバレス・サンタクリスティナ・“チェリス”容疑者に対しても、暗殺、テロ、傷害などの容疑のためフランスに身柄引渡しを求めている。

国旗掲揚をめぐる論争

昨日、マドリッドのコロン広場で、国防省とマドリッド市によるスペイン国旗への表敬式典が行われ、フランシスコ・トリジョ−フィゲロア国防大臣、ホセ・マリア・アルバレス・マンサノ・マドリッド知事、軍の高官が出席した。コロン広場には昨年10月12日から、294平方メートルのスペインで最も大きな国旗が高さ50メートル、重さ19トンの支柱で掲揚されており、国防大臣は今後、毎月最終水曜日に陸海空軍が交代で表敬式典を行うと発表した。このアイディアの発案者はマンサノ知事で、今年の1月28日に書簡で国防大臣に毎月1度は旗のメンテナンスのために国旗を降ろし、表敬式典を行うことを提案、ところがこのマンサノ知事自身が昨日、この式典について「国旗はスペイン国家の統一を表すもので、誰にもそれを侵害することを許さないということを示すのに格好の機会だ」とコメントし、国防大臣も同様のコメントを行ったことが論争の始まりとなった。
これらのコメントに対する反応は実にすばやく、PSOE(社労党)国会スポークスマンのヘスス・カルデラ氏は国防大臣にこういったタイプの式典開催の意義を考え直すように要請、PSOEからの“憲法により国の代表と定められているシンボル”への敬意を表しながらも、「“同様の敬意に値するシンボル”を持つ他の自治州の感情を害しうるような行動は避けるように十分注意しなければならない」と述べた。
PNV(バスク民族党)のジョセ・ジョアン・ゴンサレス・デ・チャバリ議員は「このような儀式は、過去の軍国主義体制へ我々を引き戻すものだ」と断言、ERC(カタルニャ左翼連合)のジョアン・プイグセルコス議員はこの式典を“不必要な挑発行為”だとみなした。また、IU(統一左翼)のガスパル・ジャマサレス党首は今回の行為を“政治的に無責任な行為”と定義、こういった愛国主義により、2台の電車のようにスペインとバスクが正面から衝突することになりかねないと非難した。
内務大臣のアンヘル・アセベス氏は、憲法で定められている国旗に敬意を表することは、昔の愛国主義(軍国主義)にあたるとは思わないと、この表敬式典を肯定的に受けとめており、PP国会スポークスマンのルイス・デ・グランデス氏も昨日の式典が誰かを怒らせたり傷つけたりすることはないと述べ、「スペインの国旗を掲揚し、簡単な敬意を表することがなぜスキャンダルに発展するのか全く理解できない。」とコメントした。
スペインでの国旗への表敬式典は、セウタのアフリカ広場で毎週木曜日に行われているという例外もあるが、軍事施設や特定の日付以外では一般的なものではない。

シベレス広場の女神像修復に590キロの大理石を寄贈(マドリッド)

トレド県モンテスクラロス(住民484人)のホセ・ホアキン・マンサナル村長は、一昨日マドリッドのホセ・マリア・アルバレス・デル・マンサノ知事に先月21日に酔っ払った若者のグループによって壊されたシベレス広場女神像の左手修復用にと590キロの大理石を渡した。この大理石は、女神像の作者ベントゥラ・ロドリゲスが1782年に使ったのと同じ素材で、修復作業には彫刻家のホセ・ルイス・パレス氏があたる。この日は市役所で寄贈式典が行われたが、激しい雨による渋滞のため、大理石の到着は1時間遅れとなった。これほどの報道陣の前でスピーチを行ったことがないと告白したマンサナル町長は、緊張気味ながらも、半ページにわたるスピーチの中で、「我々の村の石切り場の石がマドリッド市で最も有名な噴水の彫刻に使われるのを光栄に思います。」と述べた。
市役所によると修復にかかる費用は2.84万ユーロだが、これはサッカーチーム、レアル・マドリッドと、某時計メーカーが負担を申し出ている。犯人の若者達はすでに警察により見つけられ、裁判待ちで、マンサノ知事は彼らに関し、「経済的制裁よりも、2週間にわたってラス・クンブレス・ゴミ処理場で左手を探す罰がふさわしい(若者達が、持ち去った女神像の左手は通りのゴミコンテナに捨てたと供述しているため。)と思う。」とコメントした。


10月2日(水)

政府、失業改正法を修正

揶揄をこめてデクレタソ(大政令)と呼ばれる、政府の改正法案の中で最も物議をかもし、6月20日のゼネストの原因ともなった失業改正法の一部を修正することを昨日、エドゥアルド・サプラナ労働大臣がCCOO(労働者委員会)、UGT(労働者総同盟)を始めとする各労働組合の代表者に電話で伝えた。これによると、与党PP(国民党)は、デクレタソ承認を支持したCiU(カタルニャ連合)とCC(カナリアス連合)の修正案を受け入れ、デクレタソ承認により廃止されたいくつかの条項を見直すという。今回修正される項目の主なものは以下の通り。

・裁判中の給与:デクレタソが施行される前は、解雇された従業員がそれを不服とし裁判所に訴え勝訴した場合、会社側は判決で命じられた賠償金の支払いのほか、解雇から判決が下りるまでの期間分の給与を元従業員に支払わなければならなかった。その期間が2ヶ月以上の場合は、裁判手続きに時間がかかった責任を国が取って2ヶ月以上分の給与は国が会社に代わって支払うことになっていた。しかし、デクレタソ施行によりこれらの支払いの一切がなくなり、会社は2か月分の給与支払いを免れることになった。
今回の修正案では、会社が解雇してから従業員との示談に失敗し、従業員が裁判所に訴えるまでの期間分の給与として会社側が15〜20日分の給与を支払うことを義務づけることが検討される。
・適切な再就職先紹介:職業安定所から紹介される再就職先が自宅から30キロ以内の場合は、失業者はその仕事を受けなければならないという内容が緩和される。職業安定所は失業者の家族構成、人格、職歴、職場までの公共交通機関の有無などを考慮に入れた上で、再就職先を紹介するという。
・常雇者で不定期勤務である従業員:非常勤の労働形態で働く人々が、デクレタソ施行前と同様、仕事がない間に失業手当をもらえるようにする。この雇用形態は特に観光業、教育の部門で多く見られ、彼らへの失業手当支給廃止は、被雇用者からも雇用者からも意義が申し立てられていた。
・複数収入の許容:デクレタソ施行前と同様、失業に対する賠償金、社会保険からの補助金などが失業手当と両立して受けられるように戻される。

サプラナ労働大臣は来週の月曜日7日に各労働組合の代表を集め、今回の修正案説明会を開く予定。その2日前には労組によるマドリッドでのデクレタソ反対の大規模なデモが予定されており、これにはCCOOとUGTの召集でコルドバからマドリッドに向かうデクレタソ反対行進参加者も加わる。彼らは出発から6日目の昨日、カスティジャ・ラ・マンチャ州に入った。マラガからやってきた100人ほどの参加者も加わり、現在行進を続けているのは400人ほど。今日は、マンサナレス(シウダ・レアル)まで歩き、その後彼らはバスでアランフェスまで移動、そこからまた行進を始め、土曜のマドリッドでのデモに参加する。

ピケ大臣、セアット社の説得に失敗

イビサ(セアット社の2ドア小型車)の生産の10%をバルセロナにあるマルトレルからスロバキアのブラティスロバに移すという計画を考え直すようにという中央政府とカタルニャ州政府の説得は失敗に終わった。昨日ジョセップ・ピケ科学・技術大臣はセアット社のアンドレアス・シュリーフ社長との1時間以上にわたる会談を行ったが、セアット社の計画を変えさせることはできなかった。労働組合は、この移転により約500人の従業員が影響を受けることになると見積もっている。会談の後行われた記者会見でピケ大臣は、今年の3月にアウディ社の人事部長からセアットの社長に就任したシュリーフ社長が少なくとも短期間にわたってはマルトレル工場の人員削減は行わないと約束したことを発表、企業と労組の間で柔軟性を持った勤務体制が取られるようになることを確信していると述べた。
セアット社はマルトレル工場でのイビサの生産を増やすことを考えていたが、労働組合側が増産による労働カレンダーの調整を拒否したため、今回の移転が決められた。セアット社は今後も引き続き、マルトレル工場で1日950台を生産、ブラティスラバ工場には1日100台ほどの生産が移転される。イビサはセアット社の製品の中で、ヨーロッパで唯一売上の伸びている車種で、社長はマルトレル工場の生産高が需要の増加に対応できていないと判断した。セアット社の今年度決算では1994年以来初めて黒字から転落することが見込まれている。
セアット社は1993年の危機に際し、スペイン政府とカタルニャ州政府から資金援助を受けている。この年、同社はバルセロナにあるソナ・フランカ工場の閉鎖のための人員削減にかかる費用として460億ペセタ(2.76億ユーロ)を受けとった。2年後の1995年には欧州連合からも4417億ペセタ(26.5億ユーロ)の補助金も受けた。欧州連合が補助金受給を決めた理由の一つとして、フォルクスワーゲン社が新しい投資、製品、施設の見直し、閉鎖、リストラ等の再編計画を発表したことが挙げられる。
フォルクスワーゲン社は1986年の増資の際に、セアット社の株の過半数を握る株主となった。フォルクスワーゲン社は800億ペセタ(4.81億ユーロ)を投じてセアット社を、公共機関である当時の筆頭株主の国立工業協会(INI)から購入した。この際、INIはセアット社の抱えていた負債2200億ペセタ(13億ユーロ)を引き受けている。つまり、セアット社は負債をスペインの公共団体に引渡し、フォルクスワーゲン社は負債のないきれいな会社を買い取り、思う存分投資をすることができたわけである。
セアット社がドイツの会社に買い取られてから、同社はスペイン市場に大きな賭けをした。1991年、同社は15億ユーロを投じてのマルトレル工場建設を含む投資プランを始動させた。この投資はドイツマルクをベースに行われ、この換金コストがセアット社の命取りとなり、同社は1992年には9.01億ユーロの負債を抱えるにいたった。

ミス・エスパニャ、ナイジェリアで開催のミス・ワールド大会不参加

国会の女性の権利委員会からの呼びかけに答え、ミス・エスパニャ委員会は、ナイジェリアで開催されるミス・ワールド大会に参加しないことを昨日、発表した。ナイジェリアでは姦淫の罪で、アミナ・ラワルさんが石投げによる死刑を宣告されており、女性の人権を尊重しない国への抗議をミス・ワールド大会不参加で表明するインターナショナル・キャンペーンが行われている。
しかしながら、2002年度ミス・エスパニャのロラ・アルコセルさんの不参加を発表した後、ミス・エスパニャ委員会は、「今でも、ナイジェリアへの抗議を表す最良の方法はボイコットではなく、世界中のミスが大会に参加し、140カ国以上で放送されるミス・ワールド大会で共同抗議声明を発表することだと思っている」とコメントしている。


10月1日(火)

イバレチェ知事、バタスナ党を自治領推進派に組み入れ

バスク州政府のフアン・ホセ・イバレチェ知事は、バタスナ党を、バスク自治領化にむけた検討会へ組み入れる予定であることを昨日明らかにした。これによりイバレチェ知事は、ETAとそのテロ活動を公の場で糾弾しない限りバタスナ党をあらゆる政府会議から締め出すという2001年の選挙での公約を破ることになる。バスク州政府関係者によると、イバレチェ氏の態度が変わったのは、「政治環境が変わったため」であるという。知事は、昨日ラジオ局カデナ・セルのインタンビューでバスク州の未来を決める住民投票の開催を、2005年の春をメドに考えていると述べた。イバレチェ知事の当初の予定では、政党関係者を集める前に、社会、労組、企業、教育・文化関係者15〜20人を集めて協議を始めることが考えられている。一方、PP(国民党)とPSE(バスク社会党)のバスク議会代表者たちは、ブリュッセルで開かれる欧州会議に出席することを拒否した。これは、この会議にバスク独立主義者たちのグループの参加が認められたためである。IU(統一左翼)も“スケジュールの都合がつかないため”出席せず、これにより、今日から開かれるこの会議にバスク州議会から出席するのは、PNV(バスク民族党)、EA(バスク連合)、とバタスナ党のみとなった。
ホセ・マリア・アスナル首相、ホセ・ルイス・ロドリゲス・サパテロス社労党書記長は、バスク州をスペインの自治領にしようというイバレチェ知事の提案が発展することはないだろうと断言している。「スペインという国家が、民族主義をふりかざす数人の狂信者によってかき回されることはない」とアスナル首相は述べた。

1月から6月の間にスペインの主要空港で9万便に遅延

今年度にはいって最初の6ヶ月間にスペインの主要5空港で、4便に1便が予定より遅れて出発していたことがこのほど明らかになった。公式データによると、マドリッド、バルセロナ、パルマ・デ・マジョルカ、マラガ、セビジャの5空港から出発した398,631便のうち22.6%(90,321便)が予定時刻より15分以上遅れて出発している。遅延が最もひどいのはマジョルカのソン・サン・ジョアン空港で、3便に1便は遅れている。マラガでの数字も似たようなもので、約27%のフライトが遅れて出発してしている。
バラハス空港(マドリッド)、エル・プラット空港(バルセロナ)に続いてスペインで3番目に利用客の多いパルマ・デ・マジョルカのソン・サン・ジョアン空港では今年に入ってからの6ヶ月間で61,958便が遅れて出発、特に遅れが見られたのは聖週間と夏休み開始すぐであった。この空港からのフライトが昨年は85%の便で時間どおりに出ているのに対し、今年のデータは、3月62%、6月65%といった形で大幅に遅れて出発する便が増えている。
スペイン全土の空港の管理責任者であり、国土省の独立機関であるAENAは、遅延の理由を指摘することはできず、「パルマの空港は、需要を完全にカバーできるだけの規模・施設をもった空港です」と繰り返すだけで、飛行機の出発が遅れる理由は、機体の整備、部品の交換、過剰な空の便の運行、気候不順など空港の運営には関係のないことで十分ありうると述べた。
一方、マドリッドとバルセロナの空港では、どちらも1月から6月の間に遅延した便は21%。セビジャで約19%となっている。昨年遅延した便が全体の30%であったことを考えると状況はかなり改善されたいえる。しかしパルマ・デ・マジョルカの空港では昨年は15分以上の遅延が14%であったのが、今年に入って状況が急に悪化している。各空港の平均遅延時間は、パルマ23分、マラガ22分、マドリッド15.4分、バルセロナ14.2分となっている。
昨日は、労働条件改善を求めてエアーヨーロッパ従業員のストが行われ、170便で15〜45分の遅れが出た。このストにより荷物のチェックイン、フライトの出発に遅延が見られたほか、航空券販売窓口は閉められ、機内では、朝食、昼食、飲み物のサービスが行われなかった。最も影響を受けたのは、パルマ・デ・マジョルカの空港で、予定されていたフライト45便のうち、40便で最高1.5時間までの遅延が出た。バルセロナでは、19便で最高2時間の遅れが出たという。

カルメン・イグレシアスさん、王立アカデミー入り

男性で占められている分野に女性として最初に踏み込むことに慣れている歴史家のカルメン・イグレシアスさん(1942年マドリッド生まれ)が、昨日スペイン王立アカデミー入りを果たした。彼女は、歴史アカデミー唯一の女性で、現在3人いるスペイン王立アカデミー入りした女性の中で唯一の歴史家(あと2人は文学者アナ・マリア・マトゥテさん、科学者マルガリタ・サラスさん)で、スペイン王家の家庭教師でもある。昨日の式典には、ソフィア王妃、フェリペ王子、クリスティナ王女も出席したほか、友人や多くの政財界の著名人、文化関係者たちが集まった。アカデミー入りにあたって彼女が読み上げた演説は200ページにわたるもので、現代の様相と文学への言及に富む素晴らしい文章であった。その演説の中で特に繰り返して挙げられた名前は、シュタイナー、ボルヘス、ガーダマー、ポッパー、バロハなどで、マヌエル・アルバル氏、エドゥアルド・ガルシア・デ・エンテリア氏に謝辞が捧げられた。




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