参加者から寄せられた声
*2008年10月半ばにご参加頂きました 丸山さんからのレポートです。
サンティアゴ巡礼・第8部
「El Camino de Santiago」
荷物は最低限にしたつもりでした。
特にそれを感じたのは、サンティアゴ到着の前日、朝から大雨でした。
到着の日は、この道とお別れする日でもありました。
私が歩きましたのはサリアから最後の110キロほどですので、全てを知るわけではないのですが、
この道は、「ひかりの園」にあるという風に思っています。
コムユニティ、SNJの皆様にお世話になり、心から感謝の気持ちをお伝えいたします。
丸山
このような道があることを、決して知らなかったわけではなく・・・でも、いきなり「歩きたい!」という思いに取り付かれたのは、
8月の中頃でした。
初めてザックを背負い歩く旅。
思いがけない展開に戸惑い何度も思い直そうとしてみても
「ホタテ貝の道しるべ」は既に舞い降り、心の中に刺さったまま、どうにもこうにも抜けなくなってしまっています。
憧れと不安、心の中は大きく二つに分かれ、バランスを取る事ができないまま東京を発ち、初めの日を迎えていました。
それでも小さな身体には負担が大きく、最初の10キロほど歩いたところ
で既に足の指先にマメと血豆ができ、夕方にはそれをかばうあまり足の平が踵から激痛がはしる程になりました。
その疲れや痛みがとれないまま、翌日には、ほとんど歩みが進まない状態でした。
そのような時でも、空は青く、雲は白く、小鳥のさえずり、かわいらしいきのこ、花々、
そして、牛や羊たちに励まされ、少しずつでも進んでいかれたと思うのです。
また、時を同じくしてこの道を歩かれた皆様とのふれあいや笑顔にたくさんの力をいただきました。
「道が人を歩かせるのだ」という表現を聞いたことがありますが、ほんとうに、この身体が、道に沿って
運ばれていくのだ、という思いがありました。
吐く息も白く手も冷たく・・・心も重く歩き始めてみて気づきました。
この道に満ちている何もかもが私の身体に降り注ぎ、あるいは、道筋に満ちて流れとなり、
先へ先へといざなってくれているのです。
「お天気が最悪!どうしよう・・・」という思いもしずくと共に消え去ってゆきました。
身体ごとすっぽりとカッパに包まれた姿でよそ見もできず、身体ひとつ、純粋に歩みを進める集中した時間が、
私の心身に新しい経験と力を与えてくれたように思います。
サンティアゴの大聖堂は、達成感と旅の終わりの寂しい思いとともに広場に立つ私の全てを受け止めてくれているようでした。
ここに居て、いつまでもその姿を見ていたい、そして大聖堂からも見守られていたい、そんな気持ちに浸っていました。
到着してすぐの夕方、「ボタフメイロ」のミサにあずかることができ、幸運でした。
香炉が輝き、感謝の思いで涙がたくさんこぼれおちていた頬の感触を忘れることはできません。
そして、夜の大聖堂はまた違ったおもむきで、私たちの前にその姿を現すのです。
どんなに寒くても離れがたく、ここに満ちている空気に包まれていたいのでした。
朝の光、昼の光、夕の光が本当に明るく、森や野原やお堂を照らし、美しい影を作っていました。
東京では毎日のように「景気が悪い」と取り沙汰され、世の中は不安に包まれていますが、
歩きゆく村々では、牛や羊を飼い、畑を耕し、同じような営みの中で、朝が来てまた夜が来るという日々が
繰り返し送られているのです。
どのようなことにもゆるぎない「落ち着いた世界」を感じ、大地の恵みとも言える食べ物から力をいただき、
この道だからこそ、一歩一歩、安心して歩みを進めてゆくことができたことを大切に思います。
そして、行程を一緒に過ごしていただきましたお二人に心身ともに温かく支えられ、旅の日々が彩り豊かであったことを
たいへん幸せに感じ、思い出深い旅を心から懐かしく振り返ることができるのです。
ありがとうございました。