その日の午前中、闘牛士は、目的地に向かう旅の途中か、前日に到着した常宿のホテ
ルでゆっくりと、午後が来るのをまっています。昼を過ぎて、少し遅目の軽い食事を
取り、Sorteo(牛の抽選<別項参照>)が終わって闘牛場から戻ったマネ−ジャ−、助手
から当日対戦する闘牛の情報を聞き参考にします。
知人、友人、ファンが駆けつけて来るのもこの頃で、人気闘牛士程会う人が おおくなります。この人たちを嫌って、一人部屋に閉じこもって時間を待つ闘牛士も います。開始時間、90−120分前頃に、闘牛士はシャワ−を浴び、身体を清め一 人部屋に残ったMozo de Espada(剣係)と、Vestido de Luces(光の衣裳)着用と 言う厳粛な時間を持つことになり、そこは男二人だけの世界になります。
真裸になった闘牛士は、まず白く薄いLeotardo(レオタ−ド)をはき、その上に Taleguilla(闘牛ズボン)をはく作業にかかります。ピッタリと弛みのない Taleguillaを剣係は履かせ、ワイシャツ、ネクタイ、チョッキとなった所で一段落 し、剣係は仮祭壇をテ−ブルの上に用意し、闘牛士を残して部屋を去り沈黙の時間を 与えます。変身の時間は終わり、闘牛士はChaquetilla(上着)を着用、Capote de Paseo(行進用ケ−プ)、Montera(帽子)を左手に持って部屋を出ます。
扉の外で待っていた剣係は、その後に続 き、助手の待つホテル階下へと向かい、合流、助手たちと一緒の車で、闘牛場裏門に 向かいます。到着と同時に、闘牛場内にある礼拝堂へ赴くTorero、無表情になって近付きがたいTorero、神経質そうに、騒音のなかをウロウロするTorero、仲間と雑談を交わすTorero 等。
開始5分前には、Cuardilla(助手、槍方)とともに Puerta de Torero(闘牛士の門)に集まり、開始時間を待ちます。Presidente(主 催者長)の白いハンカチが出され、トランペットが鳴って闘牛の開始です。砂場内の Alguacilillos(騎馬先導役)が迎えにきて、闘牛士の門が開き砂場に入場です。
試合後、剣係の運転する車で、ホテルに戻り、まずは、光の衣裳を脱ぎシャワ−を浴びます。部屋の中では、マネジャ-、知 人、友人が雑談.良い結果の時には、闘牛士がシャワ−室から出てくるのを待って、 乾杯。今日のToreo(闘牛に対する演技)の花を咲かせ,ファンもかけつけます。逆 に、結果が悪い時は、皆黙して語らず、“触らぬ神に祟りなし”心境になり、ファン も近づきません。
明日、遠方での試合が予定 されていれば、早速ホテルを出、目的地にむかわなければなりませんが、夕食後ということになります。70年代、8月中に32闘牛をしたTorero(闘牛 士) は、フランス、ポルトガル、スペイン国内を北から南、南から東と連日の移動で一ヶ 月何万Kmを走破し、32日の厳粛な男の時間をもったわけです。ちなみにこの記録 は、まだ破られていません。
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