砂場(ARENA)にある2つの白(あるいは赤茶)線の円は、槍方の場のもので、外側の大円は板(TABLA) から7M、小円は9Mに位置しています。槍方は板から7Mの大円の間で戦い、大円を越えて内側(MEDIOS) に入らぬように義務付けられ、闘牛士、助手は闘牛を槍方の馬に誘導するときに、闘牛・槍方の馬間 の距離を少なくとも2M以上離して位置させる為の目印が、小円になっています。これは、闘牛の攻撃 の美しさ、秘めた攻撃能力を見るためのものですが、闘争心・攻撃能力のない闘牛には無理な距離 になってしまいます。
[4] 銛打ちの場(TERCIO DE BANDERILLAS)
PRESIDENTEが白いハンカチを取り出し、トランペットが鳴り、場面は銛打ちの場と変わります。
銛は木製円筒型で、色紙を張って装飾され長さは約70CM位のもので、先端に鉄の銛がついています。 歴史的には、18世紀後半ペドロ・ロメロ時代には使用されていました。ただ2本ずつ打つのではなく、 一本一本打っていました。
この場面は、批評家によっては、単なる飾り(ADORNO)だとする考えもあるようですが、槍方の場面 での闘牛の激しい戦の後の"休息の時間"、そして闘牛士(TORERO)がこの場面で、再び闘牛(TORO) の 能力を見、本人もつかの間の休息をとる時間と考えると納得できそうです。
助手(SUBALTERNO)は3人おりますが、一番、二番、三番と順番があります。第一番助手(BREGA)が 2本ずつ2回、第三番助手が2本を一回、計3回6本の銛を打つことが規定になっています。第二番助手 は。第一、第三助手が、TOROに対して、銛を打ち易いようにカポテを使って位置させるのが役目です。
[5] ムレタ技の場(TERCIO DE MULETA)
トラペットが響き渡って、TOEROの出現です。ムレタという赤いフランネルの布を持って、これから TOROとの戦いです。闘牛規約に従って、TOREROは自分の一頭目のTOROの死を、形式的に必ず PRESIDENTEにささげなければいけません。TOREROはPRESIDENTEのいるPALCOに近づき、モンテラ (闘牛士帽)を高々と掲げ、"CON SU PERMISO. 貴方の許可を。"とPRESIDENTEに挨拶します。
観客、知人、友人に向かって、その闘牛の死を捧げることもありますが、この場合はTOROがある程度 行けると、確信したときで、駄目と分かっているとき、疑問のときはBRINDIS(闘牛の死を捧げる)は しません。もちろん例外はあります。
この場で初めて、光と陰の世界にTOREROとTOROが残され、戦いがスタートします。闘牛の基本は 「ムレタを使って、闘牛を闘牛の行きたくない方向に、スピードを調整しながら行かせること。」 です。その為の技術がTOREROに必要とされるわけです。闘牛の出現からずっと見極めてきたTOROの 能力、性格をTORERO自身が自らの能力で判断し、ムレタを使った演技へと導きます。制限時間は真実 の瞬間(LA HORA DE LA VERDAD)、殺しの場を含めて10分。その10分間に、TOREROの持つ闘牛に対する 感性の美の表現を、起承転結させなければなりません。
ムレタ技の終わりが"真実の瞬間"と呼ばれる"殺しの場面"です。普通この場面に入る前にTOREROは 持っているアルミニウムか木のニセ剣を真剣に替えにタプラ(板)のところに戻ります。最初から真剣 を使っていると、重いので疲れること、危険であることなどから軽いニセ剣を使い始めたわけです。 しかし、闘牛士によっては最初から真剣を使っている人もいます。真剣は長さ約75CM、柄は6CM位の が普通に使われています。
闘牛士は左手でムレタを使いながら、闘牛の前足をそろえさせて、殺しの準備をします。右手で 剣を構え、左手でムレタを使い、TOROの首の後ろの隆起部の中心に剣を45度の角度で突き刺し、心臓 近くの大動脈、大静脈を切ります。パーフェクトにきまると、TOROは数秒後、もんどりうって倒れ ます。
美しい死はなかなか与えられません。肺に剣が刺されると、TOROは口から苦しそうに血を吐き 死んでいきます。最高の死は、TOROが一瞬にして倒れ、TOROの両足が天を向くのが良いとされて います。美しい死を与えることは闘牛試合にとって不可欠の要素になります。闘牛士たちによる、 よってたかっての殺しは、闘牛試合そのものを残酷にしてしまいます。
当サイトに記載のすべての事項に関して無断転載を禁じます