((((( Spain Nandemo Jouhou Real Time !! )))))

PENELOPE CRUZ

今スペインでどんな映画がはやってるのか、
最新の情報を現地から
ちょっと独断と偏見を交えてお届けします。


★スペイン映画界注目の俳優さんたちをこちらで紹介してます。★



インデックス

2005年の作品

* (2005/11/28)
* (2005/05/12)
* (2005/04/06)
* (2005/03/10)


TORRENTE 3 / トレンテ3


監督:Santiago Segura
出演: Fabio Testi, Silvia Gambino, Enrique Villen, Tony Leblanc, Carlos Latre, Yvonne Scio, Javi Gutierrez, Jose Mota, Santiago Segura, Luis Roderas


1998年に 第一部が発表された、トレンテの第3弾である。いつものように、主演も脚本も、サンティアゴ セグーラ本人だ。9月30日の封切り後、1週目で14万人が見に行ったらしい。今回のサブタイトルは、El protector "援護者" で、トレンテが、なんと、外交官を守るための警察部隊の指揮官として活躍(?)する。

ジンニナ リッチ、環境保護を訴える、イタリアの美人外交官。彼女が、環境汚染の源因になってる悪徳企業を訴えるために、マドリッドで行われる、世界会議に出席する。彼女を暗殺する計画を進めるこの企業の重役は、スペイン警察を買収し、協力を要請する。彼らは、暗殺計画を容易にさせるために、ジンニナ リッチを守るための責任者に、一番役立たずのトレンテを命名した。トテレンテは、自分で選び、訓練した特殊部隊を率いて暗殺団に立ち向かう、、。

今回のサンチョパンサ役(トレンテの映画には、毎回、必ず、トレンテを師として慕い、最後には、彼を助けることになる、純粋でおばかな人物が登場する。)は、コメディグループ、クルス イ ラジャの、芸達者で、インテリで、日本の、トンネルズのノリタケを髣髴させる、ホセ モタ。悪役には、テレビのレアリティショウに出演し、スペイン国民の前で、恋人との痴話げんかを演じて、有名になった、往年の正統派イタリア人映画俳優、ファビオ テスティ。そして、トレンテの息子役には、これも、テレビのナイトショーで活躍していた、物まねタレント、カルロス ラトレ。映画ポスターは、スターウォーズや、インディアナジョーンズを手がけた、Drew Struzann。主題歌は、かつて、国民的アイドルだった、ロサ。など、など、スペイン映画界で、一番ポピュラーなキャラの映画とあって、あちこちにスペイン人のミーハー心をくすぐる要素がちりばめられている。

さて、肝心の映画はというと、アクションあり、特写あり、エッチシーンあり、トレンテ特有のユーモアありのいつものパターンなのだが、全然面白くなかった。第一部は、私は本気で名作だと思っているし、第二部、マルベージャ大作戦は、前作には、及ばなかったものの、エンターテイメントの要素は、十分あったと思う。アトレティコマドリードのマークをつけたフェラーリは、その、最たるものだった(笑)。監督、サンティアゴ セグーラは、みんなが喜ぶ映画を作りたい、自分は、監督としてや、俳優として評価されようとは思っていない、しかし、ただの映画愛好者といわれると、頭にくるかもしれない、そして、この映画のできには、大変満足だ。と、インタビューでは、答えているが、本当にそうだろうか?彼が思っている、大衆の好みと、実際の大衆趣向に、違いが生じてきてはいないだろうか?監督として、俳優として、評価されたいとは思わないというのは、ただの負け惜しみに聞こえないか?頭のいい彼のことだから、うすうす気づいてはいるはずだ。それでも、撮り続けなければならない理由があるんだろうか?
確かに、トレンテは、微妙なキャラクターだ。下品で、デブで、(ちなみに、今回は、前作ほどは、太っていない。私は、サンティアゴ セグーラが、体力的にも、疲れてきている証拠だと思っている。)その上、右翼で、マチストで、厚顔無知だ。そんなやつが、大衆に受け入れられたのには、何か、特別な、理論的には、説明できない、魅力があったのだ。批評家に、スペイン人は、誰もが、心にトレンテを持っていると言わしめたのだ。それが、今回の作品には、表現されていない。トレンテ自体が、いつもどうりのトレンテを演じようとただむなしくがんばっているようにしか見えない。

思わず、セルジオ越後のように、好き勝手に文句ばかり書いてしまったが、見に行ったときは、本当に期待してたんですよ。それが、あまりにもひどいから、、、。客の動員数も一週目以降、芳しくないようだ。映画批評も、サンティアゴ セグーラの映画監督としての限界だの、前2作の成功まで、否定してしまう、できの悪さだの、散々だ。第四作目も計画されているようだが、果たして、実現するかどうか?私は、ここでひとつ、提案がある。脚本を、他の誰かに任してしまうといいのではないかと思うのだ。トレンテというキャラクターは、もうすでに、サンティアゴ セグーラの手を離れてしまったように、私には思えるのだ。強いて言えば、トレンテの魅力というのは、ただのオヤジが、観ているるものを、びっくりするような新しさを提供するところにあるのだが、サンティアゴ セグーラには、もう、それを表現する力がないのだと思う。そうすれば、日本の寅さんのごとく、スペイン映画界で、トレンテが生き残って行く可能性が生まれてくると思うのだが、、、。

BY Aya(11月28日)



REINAS / 女王様達


監督:Manuel Gomez Pereira
出演: Veronica Forque, Carmen Maura, Marisa Paredes, Mercedes Sampietro, Betiana Blum, Gustavo Salmeron, Unax Ugarde, Hugo Silva, Daniel Hendler, Paco Leon, Raul Jimenez, Tito Varverde, Lluis Homar, Jorge Perugorria, Gines Garcia Millan.


伝説化しつつあるフラメンコ歌手、カマロン・デ・ラ・イスラの伝記、スペイン映画史上初といわれる、ハリウッド並超大作 ”El capitan Alatriste" がロケ中とあって、少し、自重気味(?)のスペイン映画界。そんな中で、唯一がんばっているのが、今回ご紹介する、コメディー映画の巨匠、マヌエル・ゴメス・ペレイラによる、レイナス(女王様達)である。

まず、えんえんと続く出演俳優のリストにご注目いただきたい。女王様達というタイトルにふさわしく、この監督の作品には定番のベロニカ・フォルケの他に、カルメン・マウラ、マリサ・パレデスなどの超ベテラン女優達が名を連ねている。それだけでも見る価値があるというものだ。その他に、テレビドラマでおなじみのパコ・レオンとティート・バルベルデ、ウナックス・ウガルデ、ダニエル・ヘンドレ−などの若手俳優のチェックもお忘れなく。

さて、これだけの俳優を集めてどんなストーリーが展開するかと期待が高まるところだが、まず、それぞれの役柄から説明しよう。何と、若い男優達は、スペインで、同性愛者の正式な結婚が認められた後に初めて行われる結婚式(結婚希望者がたくさんいるので、その日だけ、合同結婚式ということになっている。)で結婚する予定の、3組のホモカップル。オバタリアン(失礼!)女優達は、彼らのお母さん達なのである。

ベテラン女優達は、期待に反せず、いかにも現代風に活躍する女性を演じている。ベロニカ・フォルケは、精神カウンセラー無しではいられない、ちょっとニンフォマニア気味の中年女性、ヌリア、カルメン・マウラは超近代的なマンモスホテルを経営する女実業家、マグダ。マリサ・パレデスは、アルモドバルと撮った”Tacones Lejanos"での役を髣髴させる有名女優、レジェス。メルセデス・サンピエトロは、この集団結婚式の裁判長(スペインでは、市役所で結婚する場合も、いちいち裁判長の前で誓わなければならない。)、エレナ。それともう一人、アルゼンチン人女優バティアナ・ブルムは、アルゼンチンでレストランを取り仕切っているオフェリア。彼女は、息子の結婚を機にスペインに移り住もうと考えている。

この、スペイン初の同性愛者同士の結婚式(もちろん、自分の息子の結婚式でもある。)をしたたかにビジネスに利用するマグダは、結婚式の後のパーティーを自分のホテルで催すことにするが、その前日に、自分の愛人であるコック長の誘導による従業員のストに、絶体絶命の危機に陥る。ヌリアは、いつもの病気が出て息子の信用を失い、エレナは、自分の家で十年以上働く庭師(彼の息子が、彼女の息子の許婚者。)が気になってしょうがない。他のお母さん達もそれぞれ悩み、戸惑いながら、結婚式の日を迎えるまでの3日間が、監督が初めて採用したという、時間を前後させながら展開する構成で語られていく。

気の利いた会話、上品なユ−モア、同性愛者同士の正式に認められた結婚という主題。(ちなみに、スペインでは今年から認められる予定で、いろいろ議論をかもし出している。)マドリッドでも一番現代風と思われる場所で行われたロケ。(主な舞台になっているホテルは、レアルマドリードの選手が、ホームゲームの前日に合宿する、全室スイートルームのミラシエラスイートホテル。)どれをとっても、今、スペインではどんな人達や生活が最も流行の先端を行っていると思われているかの見本のような印象を受ける。

同性愛者同士の結婚式ならば、レズのカップルも登場してもいいはずなのに、ストーリーには絡んでこない。やはり、ホモカップルのほうがファッショナブルなのか?娘と、その嫁、姑の葛藤というほうが、どろどろしてスペインらしいと思うのだが、初めての100%ワーナーブラザーズ出資の国産映画とあって、軽めのアメリカ風のコメディーに仕上がっている。多分、監督は、スペイン版、フォーウエディングみたいな映画を撮ろうとしたんだと思う。スペインで、監督業を続けようと思うと、いろいろ大変なんだろうなあと同情するが、スペイン映画好きの方には、おなじみの俳優がたくさん登場するという、親近感があるだろうし、見た後の気分は、決して悪くない。

BY Aya(5月12日)



El penalti más largo del mundo/ 世界で一番長いペナルティーキック


監督: Roberto Santiago
出演: Fernando Tejero, María Botto, Marta Larralde, Carlos Kanioesky y Javier Gutiérrez


さて、今、スペインで一番ポピュラーな俳優は誰でしょう?
ハビエル バルデン?違います。ぺネロペ クルス?この人は、スペインでは、既に、流行遅れの女優と言われてます。(まだ、大作にでてるし、話題にもなっているので、そんな風に言わなくても、、、という感じですが。)実は、映画、”サッカーの日々”で大ブレイクした、フェルナンド テヘロであります。
そして、調子に乗ったスペイン人達は、彼だけを売りに、映画を一本作ってしまった。タイトルは、”世界で一番長いペナルティーキック”。前作、”サッカーの日々” に続いての、サッカー物だ。この映画には、監督、ロベルト サンチアゴは、否定するが、このような二番煎じが沢山隠されている。映画での、フェルナンド扮する、駄目男の名前が、本人と同じく、フェルナンド。フェルナンド テヘロのこの映画での役が、彼の人気を決定付けた、テレビドラマ ”Aqui no hay quien viva" と同じ、管理人。(スペイン語では、同じ,"portero"。)前に紹介した映画、”Leon y Olvido" で、ちょっと問題ありの弟の世話を、イライラしながらしなければならなかった、女優、マルタ ララルデ が、今度は、フェルナンドに例の、視線を向けております。
安易といえば、安易なのだが、私のように、フェルナンド テヘロを見ていられれば、幸せと言う人には、お薦めです。


場所は、監督の故郷、カラバンチェール。今は、閉鎖になったが、牢獄があるので有名なマドリードの下町だ。そこのローカルチームの、ホームでの、優勝をかけた、リーグ最終戦。あと数分で、初めてのリーグ優勝というところで、審判の横暴もあり、、自分達のエリアそれもゴール正面でのペナルティーを取られてしまう。その上、ゴールキーパーは、負傷。そこで、万年ベンチのフェルナンドに白羽の矢が、、、。突然の指名にうろたえて,自家中毒を起こしたフェルナンド、ゴールに立ったとたん、げーげー吐き出してしまう。それを見た観客は、さっきの審判への怒りも相俟って、暴徒と化し、グランドになだれこみ、試合は、次の日曜日まで、延期になってしまう。
一躍、町の注目の的となってしまったフェルナンド。一生懸命、練習すると思いきや、彼の関心は、もっぱら、このチャンスを利用して、憧れの女性(マルタ ララルデ)の関心を引くことだけに向けられている。そんな、彼の、運命の日までの一週間が、周りの人間模様といっしょに綴られている。

やっぱり、ずーずーしいながらも、わずかな繊細さを感じさせられる、フェルナンド テヘロの演技は、面白い。スペイン人ならではの個性だと思う。30過ぎてから役者を目指したため、家族の理解は、一切得られなかった(あたりまえだっツーの。)フェルナンド、マンネリだなどという批判に負けず、がんばって欲しい。スペインの、ごく、普通の人たちを描こうとしたという、この映画、何か、スペイン映画特有の”毒”が、少ないなと思ったら、原作は、ブエノスアイレスを舞台にした、同名小説だそうだ。そんなところも、スペイン映画ファンにとっては、ちょっと物足りないか。

BY Aya(4月6日)



LEON Y OLVIDO / レオン と オルビド


監督:Xavier Bermudez
出演:Marta Larrralde, Guillen Jimenez, Gary Piquer, Miguello Branco y Jaime Vazquez 他


アレハンドロ アメナバルも無事、オスカーを獲得し、世界映画界に不動の地を築いたといわれるスペイン映画だが、やはり、日本人にとって魅力なのは、スペインマイナー映画だろう。どうも、大衆受けするスペインセンスというものに、あまりおもしろみを感じないのは、私だけではあるまい。

そこで、ご紹介するのは、マイナーの王者と言われていた、ハビエル ベルムデス 監督、脚本による ”Leon y Olvido"(レオン”ライオン”と、オルビド"忘却”)である。レオン と オルビド という(女の子に”忘却”と、つける親はいないと思うが)双子、または歳の近い姉弟(または、兄妹)の物語である。この姉弟が普通の姉弟と違うところは、弟(レオン)が、ダウン症を患っているところである。
その上、この二人には親がいない。設定では、安い借家と、古い車だけを残して、何年か前に亡くなってしまったという事になっている。施設に入れても馴染めず、すぐ、追い出され、いつまでも、子供のように、オルビドに自分の世話をしてもらいたがるレオン。人間関係や、経済危機も相俟ってオルビドの不満は、募っていく、、、、。
ロケは、スペイン、ガリシア地方、ラ コルーニャで行われ、レオン役には、ロケ初日の一週間前に決定されたバルセロナ出身のギジェン ヒメネス、オルビドには、やはり、バルセロの出身の新進女優、マルタ ララルデ。マルタは、この映画で、名のある女優としての一歩を歩み出した事になる。
2月11日の封切り前に、既に、チェコ共和国の、(ヨーロッパでは権威のあるらしい)Kariovy Vary 映画祭で、最優秀監督、最優秀主演女優として、クリスタルグローブ、そのほか、マラが映画祭、ギリシャ、フランス、エストニアなどで、数々の賞を受賞しており、初日は、マドリッド市長、サッカーのジダン選手、結婚式ごっこ前のロナルド選手とその婚約者なども押しかけ、盛大に行われた。
映画批評も、絶賛だったにもかかわらず、今では、マドリッドでも、場末の映画館2ヶ所でしか、この映画を見ることができない。興行的には、成功していないようだ。
これが、この映画に限らず、ほとんどのスペイン映画がたどる道である。スペインの売れない映画監督達は、それでも低予算で、感性だけで撮り続ける。そして、この状況は、ハビエル ヒメネス監督の言う、この映画のコンセプト、現実は、あくまで現実、そして、そこには、私達の、期待も、知性も入る余地はないという言葉と重なるのが面白い。

この映画も、これからじわじわと、水面下でのロングランを続けていくのだろう。そして私達は、この環境が変わらぬ限り、スペインマイナー映画を楽しめるというわけだ。

BY Aya(3月10日)