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PENELOPE CRUZ

今スペインでどんな映画がはやってるのか、
最新の情報を現地から
ちょっと独断と偏見を交えてお届けします。


★スペイン映画界注目の俳優さんたちをこちらで紹介してます。★



インデックス

2007年の作品

*Bajo las Estrellas / 星空の下で (2007/06/25)
*Un buen dia lo tiene cualquiera / 誰にでもいい日はある (2007/08/20)
*Mataharis / マタハリス (2007/12/14)


Bajo las Estrellas / 星空の下で


監督:Felix Viscarret
出演: Alberto San Juan, Emma Suarez


ベニートは、トランペッター志望だがマドリッドのバーでしがないウェイター生活を送っている。 夢だけは捨てていないものの、だらしなく、酔っ払っては深夜遅く帰宅し、彼女にも愛想をつかされている。 ある日、父親が危篤であるとの知らせを受け、気が乗らないまま数年ぶりに故郷のエステージャ(ナバラ)へと向かう。 街並みも、幼なじみ達も昔と変わらなかったが、ぼんやりとしてお人よしの弟に彼女ができたというので、喜んでいた。 だが相手はベニートの顔見知りのニネスで、悪い男につかまって未婚の母として荒れた生活をしていると聞かされ、 心配になった彼は町外れにある彼女の家を訪ねる決心をした。そこで出会ったニネスの娘アイナラとの間に意外な友情が芽生えていく。

Viscarret監督の長編デビュー作。処女作ながらマラガ映画祭で、作品賞、監督賞、主演男優賞など主要部門を獲得した。 同監督によれば、ナバラ風ロードムービーらしいが、ストーリーに関しては特に奇抜な発想や展開があるわけではなく、誰にでも起こり得るような事が、 自然な流れで描かれている。にもかかわらず最後まで飽きさせることなく、逆に引き込まれていく感じがするのは、 ベニートのキャラクターによるものだろうか。 最初は、ぐうたらで、うだつがあがらず、髪ぐしゃぐしゃにヒゲもじゃの大男にしか見えなかったのが、 アイナラとの交流が始まったあたりから彼の優しさが見え始め、最後には頼もしくて素敵な人に思えてくるから不思議だ。 これは、男優賞を授賞したAlberto San Juanの演技力によるものが大きい。どちらかというと脇役が多かったが、 ここでは主人公の心の変化をうまく出していると思う。またアイナラを演じる子役もいい味を出している。 私は、個人的に子役があまりませてたり、大人びたことを言いまくって大人を納得させたりするような映画は好きではないので、 子供らしい子供に好感が持てた。映画を見るまでは、ヒロインは、母親だと思っていたがロマンスに触れる部分は少なく、 ベニートとアイナラの不思議な友情がこの作品の軸となっている。

映像的な面では、最初にどちらかというと殺風景な市街地を見せておき、 その後ナバラ地方の緑に囲まれた美しい風景が続く。このコントラストも主人公の故郷に対する感情の変化を表しているように思える。 音楽も、ちょっとウエスタン風の曲が映画の雰囲気とあっていて文句なしと言いたい所だが、唯一気になったのは、ニネスの役どころ。 未婚の母で貧しい生活をしているにも関らず、初登場の場面以外はそういった生活臭の様なものをほとんど感じさせなかった。 これは、このキャラクターが余り重要視されなかったためか、Emma Suarez の演技力によるものなのか。この女優さんは可愛らしい顔をしていて昔から好きなんだけど、演技力に関してはちょっと疑問が、、、。ともあれ、ちょっと皮肉っぽい笑いを込めた、一見普通だけどどこか違うこの映画、機会があれば何度か見直したいものです。

byまりあじゃ(6月25日)


Un buen dia lo tiene cualquiera/誰にでもいい日はある。


監督 Santiago Lorenzo
出演 Diego Martin, Maria Ruiz


アルトゥーロは、34歳で商売に失敗し、仕事も家も失ってしまった。親友のホアキンに助けを求めるが、 彼も知人のカフェテリアに居候の身。ホアキンに促されて、市役所の学生向けプロジェクトに応募する。 一人暮らしの高齢者の世話をしたり話し相手になるかわりに格安の家賃でその家に間借りできるというもので、 学生でもなく年齢制限にもひっかかるアルトゥーロは、それでも書類を偽造して、なんとか受け入れてもらえた。 彼の家主となるのは、昔マンションの管理人の仕事をしていたというオノフレ。 この家に住みながら、公務員試験を受けるつもりのアルトゥーロは、おとなしく生気のない老人を見て、 落ち着いて勉強ができると思ったのだが、、、。

Lorenzo監督の長編第2作かつ10年ぶりの映画。この間、興味深いテーマがみつからなかったんでしょーか。 それはさておき、仕事がなく持ち家もなく、でも自治体などの援助を受けるには年齢でひっかかってしまう、 というのは今のスペインで最も深刻なテーマの一つである。 コメディーとはいえ、タイムリーな話題を扱っているのでもう少し真面目な感じかと思ったが。 どちらかといえばドタバタ喜劇の類に入る作品だった。実際にはありえないようなエピソードなどもいくつかあったけど、 これはこれで楽しめました。キャストは、ほとんどがテレビや映画でおもに脇役として知られている人で、 アルトゥーロ役もどこかで見たことあるなと思っていたら、私が時々見ていたドラマシリーズに出ていた人のようです。。 たしか、彼女がいるのにゲイの人を好きになる役だったような、、

でも、この映画の中でもっとも特徴あるキャラクターは、家主の老人オノフレ。 一晩明けたらまったくの別人で、パワー全開。観客もみんなあっけにとられてた感じでした。 俳優さん自体かなりの年にみえるのにこんなに動いて大丈夫なのかと余計な心配をしてしまいました。 ちなみにスペインでは、アパートの管理人のおじさん(おばさん)というのは総じておしゃべりで、 話し出したら止まらず、詮索好きで小うるさい、という定評?があるので、それを見事に体現したキャラクターでした。 多少つじつまの合わない所や説明不足の点もあったけれど、小難しい台詞もあまりない軽いノリの映画なので、 余りスペイン語が分からない人も楽しめるような作品でした。

byまりあじゃ(8月20日)


Mataharis / マタハリス


監督 Iciar Bollain
出演 Najwa Nimri,Tristan Ulloa, Maria Vazquez


マタハリといえば男を誘惑する魅惑的な女スパイだが、現代のマタハリたちはそんな華麗なことばかりやってられない。家に帰れば、家事や育児、猫の世話もしなければならない。

マドリッドのとある探偵事務所で働く三人の女性が主人公。ベテランでリーダー格のカルメン、家庭と仕事の両立に必死のエバ、やる気はあるが新米で、 モラルと仕事の問題に直面するイネス。それぞれが請け負った仕事やプライベートに関わる事件が淡々と語られていく。
スパイ映画でもなければ大どんでん返しが起きるわけでもないが、誰にも起こり得るような出来事につい「あー、あるよな、こういう事」とうなずいてしまう場面がいくつかあった。
夫の不審な行動に、はからずも尾行してしまうエバ(さすがにプロだけあってうまい)一方イネスは、大企業の依頼で社員らをスパイするも、ひどい待遇に真摯に戦って行こうとする労組の青年に好意を抱いてしまう。
この後イネスがどういう行動を起こすのかという場面はちょっとドキドキものだった。

監督は、DVを扱った映画Te doy mis ojosで話題をさらったIciar Bollain。
この名前にピンとこなくてもVictor Erice監督の映画「エル・スール」(1983)で主人公のティーン・エイジャー時代を演じた女優といえばなんとなく覚えている人もいるかもしれない。
また、大企業の労組で働くマヌエル役は、前回紹介した映画Un buen dia lo tiene cualquieraで主役を演じだDiego Martin。この俳優さんは、今が旬のようで映画だけでなくテレビシリーズでも刑事役で人気を博している。

byまりあじゃ(12月14日)