そして、スペイン居残り組の調子はどうかというと、、。

今回はテレビのコメディードラマ（7 VIDAS、AIDA)の監督、脚本家として有名な 、ナッチョ　ガルシアの最初の劇場映画、“フエラ　デ　カルタ”である。もち ろん、脚本も彼の手によるものだ。主人公はチュエカ（マドリッドにあるいわゆ る“新宿２丁目”）でグルメレストランを経営するゲイのコック、マキシ（ハビ エル　カマラ）。彼は自分に自信を持ち、毎日、独自の味覚の世界を追求してい る。そんな彼の夢はミシェランで星を獲得すること。ミシェランの調査員が訪れ るのを今か今かと待ちわびている。しかし、彼には、何と、洋服ダンスから出る 前（洋服ダンスから出る＝自分がゲイだと公表すること）に造った子供が２人も いたのだ。７年間会っていなかった１５歳の長男エドゥ（フニオ　バルベルデ） と顔も知らない６歳の娘だ。前妻の突然の死により彼らを引き取らなければなら なくなった。息子は、彼らを捨てて一度も会いに行かなかったマキシを恨んでお り、娘は娘でなかなか扱いが難しい。そんななかで彼は一番の親友アレックス（ ローラ　ドゥエーニャス）がモーションをかけている、向かいに住んでいる引退 サッカー選手、オラシオ（ベンジャミン　ベクーニャ）と関係ができてしまう、 、、。

同性者同士の結婚が合法化してから２年程たち、ホモの関係など珍しくもなくな った。しかし、映画の中でマキシのレストランの従業員達がたたく陰口、マキシ の父親が息子がホモだと分かってから連発しだしたらしいホモネタのジョークに は、ちょっとひやひやする。で、見終わってから気づいたのは、もしかして、こ の映画は、ハリウッド映画によくあるような、単純な、ロマンチックラブコメデ ィーではないだろうか!?と、いうことだ。この手の映画によく出てくる、ちょっ と冴えない主人公というのがマキシであり、その主人公に思いがけなく愛を捧げ る美形がオラシオである。普通だったら♀♂のところが♂♂に入れ替わっている のだ。そして、この映画を見るものはマキシに感情移入をしなくてはならないは ずなのだが、デブで、ちょっとどころかずいぶん冴えないマキシに自分の姿を重 ねる人は少ないと思う。けなげさに欠けるのだ。ハビエル　カマラの演技は相変 わらず上手くて、彼の演技だけで場を支えているところもずいぶんあるのだが、 やっぱり、役が彼には単純すぎる。そんなマキシに恋する美形オラシオと言うの もちょっと無理があるし（何で彼がマキシに惹かれるのかいまいちよく分からな い。）、アレックス役のローラ　ドゥエーニャスは才能のある女優であるが、恋 狂いのお頭の足らない女の役というのは、彼女にとっては薄っぺら過ぎてミステ イクである。

その上、ラブコメディーの王道を行くがごとくの単純な結末、、。恋愛問題だけ でなく、本当の親子関係とは何か?問う部分もあるのだがちょっと、内容が単純す ぎたという所か。かと言って、この映画が全然面白くないと言うわけではない。 話の展開のリズムはいいし、間延びするところもほとんどない。上手くまとまっ ている。それに、さすが、ナッチョ　ガルシアだけあって所々で大笑いさせてく れる。見た後に何も残らないけれども、楽しい時間は過ごせる。彼の今後の作品 に期待しましょう。それから、息子役のフニオ　バルベルデは今年2月のベルリン 映画祭出品された7月公開のスリラー映画“Eskalofrio"（監督：Isidro　Ortiz） で主役をしております。賞は取れなかったけど、彼のスリラーは迫力あるかも。 それと、最近ほとんど見なくなった大女優、チュス　ランプレアベがマキシのお 母さん役で出ています。（ハビエル　カマラとはトレンテでも親子役でしたね。 ）チョイ役なのに存在感は抜群です。