スペインについて、日本人はどのような情報を探しているのだろう?
気候と天気予報、さまざまなニュース、日常の出来事、音楽情報、コンサート情報、観光情報、
路線バスや鉄道の時刻表、治安情報、留学情報、スペイン料理レシピ情報など、人によって
実に様々なニーズがあるに違いない。
これらの全てを網羅する事は至難の業であろうが、どれもおろそかに出来るものではない。
とにかく出来る範囲で作ってみよう。
私は自分が最も得意とする観光情報から作成にかかり、徐々にその範囲を広げていった。
あらゆる情報を網羅して、スペインの文化を広く可能な限りリアルタイムで伝える情報誌
と言う意味をこめて、私はこのサイトに「スペインなんでも情報リアルタイム!」と言う
タイトルをつけた。
しかし作っているうちに、コンテンツは充実してくるが、最初に作った情報がすぐに
どんどん古くなっていくわけで、これでは生きた情報を流す事にはならなかった。
完成など待っていないで、準備の出来た分からどんどん公開していくしかないのでは
あるまいか。
そう言う判断に達した私は、3ヶ月かけて基本となるベースを作成した後、ついに、
それをインターネット上に公開した。
1998年9月5日のことである。
「9月5日、午前9時30分(日本時間で16時30分)、マドリッドの気温は18度、
お天気は快晴、、、、」
些細な情報だが、まさに日刊の新聞よろしく、インターネットで初の、現地から毎日更新で
スペイン情報を日本語で伝えるサイトが誕生、世界への窓が開いたのである。
一体、どれだけの人がこの情報を見るのだろうか?
インターネットそのものを良く理解していなかった私には皆目見当もつかなかった。
ただ、コンテンツをアップしたその時、かなりの緊張に襲われていたのは確かである。
そして同時に、何も判らない状態から、ついにここまで辿り着いたと言う満足感もあった。
実は作ること自体、それほど大変な事ではなく、それを維持する事こそが、本当に
大変なのだと言う事に気が付いたのはそれからしばらくたってからの事である。
これらの活動を始めるにあたって、全く一人でスタートを切った訳だが、友人の
協力を得るのに、そう時間はかからなかった。
私は自分が今からやろうとしている事を何人かの友人に説明した。
私本人がまだインターネットの事を完全に把握していなかったのだから、私の説明が
どれだけ的を射ていたのか、また、彼らがどれだけ私の言う事を理解してくれたのかは
疑問だったが、それでも、私と同様、スペインが好きで20年も30年も住んでいる仲間が、
スペインの本当の姿を日本に伝えるべく、この活動に参入してくれたのだ。
闘牛の文化に詳しい友人は、闘牛情報を担当してくれた。
サッカーに詳しい友人はサッカー情報を担当してくれた。
人それぞれ、得意分野があるわけで、仮にスペインに50年住んでいるからといって、
スペイン文化の全てにおいて詳しい人物など一人もいるはずがない。
「なんでも情報」などと言う大それたものを実現するためには、必ず何人もの人々の
協力が必要なのである。
周囲の協力のおかげで、徐々にその内容は充実していった。
98年の9月5日にオープンした時点では、勿論、このようなサイトの存在を知る人は
誰もおらず、アクセスする人など一人もいなかった。
私は、一生懸命、弟に教えられたとおり、いくつかの検索エンジンなるものに登録を依頼した。
それから1週間が経ち、2週間が経ち、ぱらぱらと訪問者が現れはじめた。
1日のアクセス数が10人となり、20人となり、50人となった。
徐々に読者が増えて行くのが実感できた。
そして、2ヶ月もたったろうか、ついに1日のアクセス数が100人を超えた。
日本にこれだけスペインの情報を探す人がいたのである。
それもまだまだ普及していなかったインターネットと言う新メディアを使ってである。
しかしこの頃、後にこのホームページが一日に10万件を越えるアクセスを持つに至るとは、
私をはじめ、誰も想像だに出来なかった。